小梅太夫
親愛なるアンドリウスへ
「まずは簡単な自己紹介をお願いします」
「はい!私は安藤祐介と申し…んあ!」
またダメだった
これで何社目だろう。毎日履歴書を深夜まで書いては送り朝から選考に奔走する生活を始め1ヶ月は経つ
夏になろうとしている…スーツなんて着たくない…なんで大学を中退してしまったんだ…このまま親の財布から盗んだ金でパチンコしながら暮らそうか?暑さに負け嫌なことばかりを考えてしまう。カバンを引きずってしまいそうなくらいうなだれ目線を落とし歩いていた…
キキーッ!ドンッ!
あ
走り高跳びのような形で地面を背に飛ばされながら一瞬赤の信号が見えた
なんだったんすかねこの人生
地面が目のmguuusascjiutd
…ゆうs…ゆうすけ
ガバッ
「祐介!もう7時よ!今日あんた一限でしょ!はやく行きなさい!」
「うるせえよばばんぁ!もうおきてんあ!だろ!」
「はやくご飯食べなさい、」
バターン!
母さん…俺は中退したから実家にいるんだよ。高齢出産とはいえついにボケちまったか…
、、、一限?大学は中退した。夢を見ているのか?ドッキリか?てかアラームが鳴ってる。母さんが携帯を空けてまでとは考え辛い。中退後はリセ狩りのために9時に設定していたはずだ、7時に鳴るなんてありえない。ホームの日付も…12月?!間違いなく昨日は六月の半ばだった。暑い中スーツを着ていたし履歴書に日付を書きまくった。ありえない。
大学まではかなりの距離がある、家から本当にこの時間に一限に通っているのか?休んで調べるか…?
バーン!
「ゆうすけ!なにダラダラしてるの!間に合わなくなるでしょ!」
「母さんあ!本当に今日んあ!大学なんあ!のか?俺をんあ!騙そうとしんあ!てないか?」
「騙そうとしてるのはあなたじゃないの?サボって学費はどうする気?」
「いや…ブチィウチから通えるんあ!ような距離じゃなんあ!いだろ俺の大学ブチィは」
「何を言ってるの…毎日通ってるでしょ?演技はチックだけしか通じませんからね!グーグルでもなんでも使っていいから行きなさい!」
こっちは狂いそうなんだがしょうがない…状況を調べたかったが母さんがいるうちは集中して調べさせてもらえないだろう。とりあえず家を出よう。折角よそってくれていたが、酷い夢を見た後でご飯を食べる気にもなれず、着替えて歯だけ磨いて家を出た。その間は特に違和感もなく、俺が21年慣れ親しんだ家で間違いなかった。
実家から大学に通ったことなんてないぞ…調べるしかない。家の近くの公園で座り込み携帯を取り出した。前日に見ていたであろうryokiのニコ生をスライドで消しグーグルで検索…?東海大学が…存在しない…?
嫌な予感がする…母さんに電話で聞くか…?そもそも何を使って通っていたんだ?もしかしたら定期が…
確かパチ屋のを纏めたカードケースが…あった
パチ屋のカードの名義…安藤祐介変わらない。保険証の名前や住所…変わらない、色も紫色のままだ。
あった!学生証!倒怪大学…?トゥレット症専攻…?なんだこれ…俺は東海大学の商学部だったはず…ドッキリにしてはあまりにも手が込み過ぎている…リスナーのイタズラか?侵入されたと考える方が怖いし考え難い。多分これは現実なんだ。
鳥肌が止まらない。理不尽に対する恐怖だと思う。が人生をやり直せるかもしれない喜びにも感じる。
とにかく大学に行くしかない。カードケースの中には電車の障害者半額定期も入っていた。着は最寄りから30分程度で行ける場所だ。
「お!アンドリウスくんやんおはよう!こんな時間から公園でなんしよん!」
あの無垢の巨人みたいな顔のチビは…じゃっくくん!岡山にいるはずなのになんでここに?旅行中か?
「いくら3級クラスとはいえ無視は酷いやん!君も今日一限やっけ?一緒に大学行こうや!」
肩を叩きながら言ってきた。何を言ってるんだこの高卒フリーターは?お前大学落ちただろ?まさかここにも変化が?
「なあじゃっくくんあ!3級クラスってんあ!なに」
「何を言いよるん?とにかく駅に行きながら話そうで」
俺はうなずいてじゃっくの隣を歩いた
「3級っつつったら倒級手帳やん。アンドリウスくんはチックやから3級。僕は軽度発達やから等級なしやね」
「聖闘士星矢みたいなブチィもんか」
「例えが古くてわかりにくいんよwどうせパチンコやろ〜w」
じゃっくくん…神奈川に住んでること以外は何も変わってないいいやつだ。学校に着くまでじゃっくくんからおおまかな情報をもらった。倒怪大学は能力を使い暴走する障害者を毒を以て毒を制すために作られた学校で防衛大学みたいなものらしい。障害者にはその重さに比例して強力な固有の能力が与えられる世界になっているようで、重度になるほど無論自我等に問題があり暴走してしまう。そんな害児になった者を止めるため、理解を深め研修するもの、訓練をし力を得るものに別れ日々努力し、世界を守ることが僕たちの使命のようだ
意味がわからない。理解出来たのは障害者に能力が与えられる世界に生まれかわってしまったであろうということだけだ。
…じゃあ僕にはどんな能力があるんだ?
「じゃっんあ!くん僕の能力をブチィ教えて欲しいんあ!だけど」
「仲間でも能力を言わないのが決まりやろ?だから僕と君くらいの仲でも互いに知らんのよ」
「なんあ!で?仲間だんあ!よね?」
「障害者は仲間だけど一度ガイジになってしまうともう戻れないんよ。そんな時互いに不利になってしまうからね。本当は信用して教えたいんやけど」
じゃっくくん…朝からそんなに悲しそうな顔しないで…
考えることが多すぎる。能力の事に関しても学校に行って調べるしか無さそうだ。能力を与えられるシステムな以上家から通えているとはいえまともな扱いを受けているとは思えない。きっと監獄のような所だ…
「アンドリウスくんついたで!降りるよー!」
「ダマレブス」
考えすぎて寝てしまっていた。起きた時にしか出ない汚言症が出てしまった。ごめん石井くん本当はそんなこと思ってないよ。
「僕ちょっと待ち合わせてるから後はさっき言った通りの道でいいと思うで!ごめんな!」
電車が着くなり急いで走って行った。ここまで連れてきてくれてありがとうじゃっくくん。気をつけて走ってね
駅には生徒であろう障害をもってそうな顔の若い人が沢山いる。駅の構造自体は変わってないようだ。階段を超え改札前の窓から見える大学であろう場所は…東京ドームで量れる様なサイズじゃない。大きすぎる。ひとつの町のように見える。もう少しで改札を超えれば俺もここの仲間に…新鮮だな…俺も入った時は期待に溢れて…
ブス
鈍い音がした。すぐ後ろの女の子が矢のようなものに真っ直ぐ綺麗に胸を貫かれている。改札にいるフードを深く被った男から放たれたであろうたった一本の矢で、少し前まで若者が談笑しながら歩いていた歩道橋が一瞬で阿鼻叫喚の嵐だ。みんな互い違いに押し合い潰し合いをし電車の方に戻ろうとしている。そこに撃ち続けられる弓。床は血塗れになり滑った人で連鎖的に事故が起きている。詰まって誰も動けなくなったところに降る理不尽な矢の雨。醜い障害者が目も当てられない汚さだ
なんで最前列で呆然と見ている俺は許されているんだ?というかこいつらは能力者じゃないのか?
「アンドリウスくんさぁ…きみほんとに何も知らないんやねw」
なんで君が…フードを外すと見慣れた気持ち悪い顔が
「じゃっんあ!くんなんでこんなブチィことを」
「僕は粉王ryokiに命じられて障害者狩りをしてるんよw倒怪大学に通ってないと駅にさえ入れないのになぜか君のおかげで高卒の僕が楽に入れたからねw」
「障害者んあ!は能力がブチィあるのになんでんあ!」
「君さぁ…w障害者は思い入れのある物があって初めて力を解放できるんよwで、ガイジは信用されてないから勝手に暴走せんように学校に保管されてるわけw僕の場合はこの県8位に入れた弓。普段はバラけてるし一人一人狙っても周回してる高等級に狩られるけどこの駅でなら纏めて殺せるわけなんよwまあ君は長い付き合いやし協力してくれたからねw最後に殺したるでw」
なんで…僕達は高校生から四年来の中のはずじゃ…そんな植松みたいな行為…友達として絶対に許せない…思い入れのあるもの…特別なもの?きっと障害者は基本的にひとつにしか執着できないから…恐らく俺が保管しているものはゲームキューブ…?なにかカバンに入ってないか?
じゃっくくんが打った隙を狙って…なにか入っててくれ!
これは…そうか俺の最も大切なものの一つ
「じゃっくんもう君の自由にはさせないよんあ!」
「演技チックが調子に乗るな」
じゃっくんが照準を俺に向けて…
ピカッ
「目が見えんのよ!」
「俺のんあ!大切なもののひとつんあ!…ミラーボールブチィ」
全身が虹色に発光している…血の海に乱反射して周りが全く見えない。これが俺の能力…?確かに凄いが…というかなぜミラーボールがカバンに入っていたんだ…?
「見えないんよ!見えないんよ!」
石井くんが絶叫しながら悶えている。変身時の光は今の比じゃなかったのだろう。目が写輪眼のように充血し万華鏡覚醒時の様に血を流している。
「ごめんねじゃっくくん…んあ!君を僕は…んあ!殺さなくちゃいけなんあ!い」
ミラーボールを手に持ち頭に向け振り下ろ…
ビタッ
フードを深く被った巨体の男に止められた。すごい力だ。確かに一人で来るとは思えないしフードで光はかなり守れるだろう。
「今は引かせてもらう」
低い声だった…らいめいくん?粉界隈では何が起きているんだ…この世界はなんなんだ…
あれ…頬が暖かい…もしかして倒れてる?韋駄天のツンツンに抜かれたみたいだ…速すぎる…気づかなかった…ガイジの血…臭い…
知らない天井だ。白い
「うるさい!いま看とるけん!あ起きとるやん!あんたギフトね!」
この白衣のおばさんは…?
「あんたをウチが最強にしちゃるけん!」
続く
障害者が幸せに生きられる社会をめざして