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少女契約

ゴブリンたちが暗闇の中から飛び出してくる。


影の刃でゴブリンたちを一薙ぎで切り裂いて前に進む。


《闇魔法》というのが使い方がわからないけど何となく影に魔力を干渉させて操っているけど……結局、この魔法の使い方は何だろうか。


私は異空間の門を開門し魔法書を取り出す。


こういった魔法に関わる本や政治に関わる本は男の教育だとして令嬢だった私は読めなかったな。幼い頃、見つけて読もうとしたらお父様に怒られてしまったしね。


過去を思い出しながら魔法書を開き歩きながら読み進めていく。


えっと《闇魔法》についてのページは……あった。これだ。


――――――――――

《闇魔法》:《闇魔法》は闇に干渉し操作したり闇を生みだす魔法である。ここで言われる闇とは非常に広義的であり影の操作、暗闇の作成、精神干渉、重力干渉、異界召喚など様々な効果を持つ。この魔法を使う者の多くは悪魔に与した者や魔物に転じた者が多く、ごく稀に生まれつき使える者がいる。

――――――――――


なるほど、参考になった。


私は異空間の門に魔法書を入れて閉じる。


「ギギッ!!」


それと同時に岩の影と影の隙間の暗闇からゴブリンが現れ頭めがけて棍棒を振り下ろしてくる。


影に干渉して盾状に伸ばして防ぎ形状を剣に変えて首を切り落とす。


影の操作は恐らく《闇魔法》においては初歩的な技。けど、非常に汎用性がある。魔素の量も感覚的にだけど殆んど減っておらず非常に使いやすい。


当面の武器はこれにしておきましょう。光があればどこにでもあるもの。


「ギギギギッ!!」


奥からゴブリンが私に向かって駆けてくる。何匹かの棍棒には血が付着していた。


先程の本に書いてあった《闇魔法》、使ってみましょうか。


私は周囲の光に干渉し通路一帯の光の殆んどを奪う。


「ギ?」

「ギギギギッ!?」


流石に驚いているか。無理もない。私だってここまで強力だとは思ってもいなかった。


先鋒のゴブリンの頭を挟むように掴んで捻って殺し、倒れると同時に拾った棍棒で顔面を殴打する。


「ギッ!?」

「ギギギギギギギギッ!!」


流石に気づくかな。


仲間が二人も殺られるとゴブリンたちも声を掛け合い背中を合わせる。


そうね、それなら誰かが殺られても他のゴブリンたちが気づくものね。


けれど。


周囲の闇を操作してゴブリンたちを挟むように壁を造る。


私がパンッ!と手を叩くと同時に壁が動いてゴブリンたちを押し潰す。


この暗闇は私の領域。《暗視》が機能するほどに光の少ないこの空間で固まった時点で敗北が決定している。


光を戻して私は通路を進む。


それにしても、奥に進んでいるけどゴブリンの出現頻度はそこまで多くない。何か理由でもあるのでしょう……ん?


私は通路に漂う異様な臭いを嗅ぎとる。


この臭いはなんでしょうか。不思議と気分は悪くないけれど……まあ、どうでも良いでしょう。


そのまま奥に進むとより一層臭いが濃くなっていく。


この違和感に眉間に皺を寄せていると奥から何かが走ってくるのを察知する。


またゴブリン……いえ、違う。ゴブリンよりは悪臭がしない。


「た、助けて下さ……!?」


ああ、人間だったか。


走ってきたコーラルのような深い赤色の髪が特徴的な全裸の少女は私の姿を見て絶句する。


そういえば、翼や尾、角を隠していませんでしたね。まあ、後の祭りだけれど。


「ははは……もうダメだぁ……」


少女は悲観したように笑い地面に座り込む。


「ギギギッギギギッ!」


少女に近づこう足を踏み出すと同時に奥からゴブリンたちがやってくる。


話がしたいから邪魔しないで。


天井の岩と岩の隙間に生まれた影を操作して触手のように動かしてゴブリンたちの心臓を突き刺す。


「えっ……」


少女が驚いている間に少女に近づきしゃがみこんで少女の目線に合わせて笑顔を作る。


「私に、何か用でしょうか」

「えっ!?」


何をそんなに驚いているのでしょうか。


「あ、あの……襲わないの?」

「一々吸収するのも面倒ですので。私はそこまで食い意地を張っている訳ではありません」


少女がポカンと口を開いて驚いているけれど……そんなに驚くことなのだろうか。


「それで、私に何か用でしょうか」

「た、助けて下さい!仲間たちがゴブリンに……!」


平伏する少女の話を聞くと、彼女は冒険者で幼なじみの女子四人でゴブリン退治に来た。けれど予想していた以上にゴブリンが多くて背後から襲われて捕まり、巣に持ち帰られ汚される前に縛られた縄を解いて逃げ出すことができた。


その際に仲間は別の部屋にいたらしく、装備も剥ぎ取られていたため助ける事ができず、外に出て近くに駐在している騎士たちに助けを求めるつもりだったらしい。


駐在している騎士……私の監視をしていた衛士たちの事でしょうか。そうだとしたら、殺してしまいましたけど。


「そうですね……契約、しませんか?」

「け、契約……?」


私は立ち上がり冷淡な無表情で少女を見下ろす。少女は身体を抱えるようにすくめて警戒心を高める。


「捕まった人たちの命だけは助けます。ですが、何があっても私を裏切らないでください」

「えっ……?」


命を確実に助けて貰えるのだから非常に安い契約でしょう。


あくまで、表面上は。


「う、裏切ったらどうするんですか?」

「地の果てまで追いかけて……まあ、言わないでおきましょう」


私は裏切りを許さない。


あの日、家族に売られた時の怒りと絶望は殆んど欠落した中でも覚えている。突き動かされる事は無くとも、受けた事を繰り返すつもりはない。


「それで、どうしますか?」

「け、契約します!契約するのでみんなを助けて下さい!」


すがり付くように懇願する少女の目を見て首肯する。


捕まった者たちの救助、ね。手っ取り早くやりましょうか。


私は約束は必ず履行するようにしているので。


「ま、待って下さい!」


私がさっさと歩き始めると少女は慌ててついてくる。


「貴女、名前は?」

「アクティです。平民なので、名字はありません」

「……そう」


平民にも名字を付けるべきという意見が貴族院から出ていたらしいけれど……結局、それも無駄になってしまったのね。

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