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ゴブリン強襲

ふうん……あまり文明レベルは変わっていなさそうね。


私は花園の中にあった衛士たちのであろうテントの中に入り物色する。


テントの中は意外と狭くなかった。中央に長方形の机があり、それを挟むように椅子が一つずつ設置され、その隣に簡易的なベッドが置かれている。


食事は携帯食糧で済ませているようだし、荷物もそこまで多くない。花畑を囲う森の中に本拠点でもあるのだろうか。


ベッドの上に置かれた布の袋をひっくり返す。


袋の口から分厚い本や携帯食糧、木の板が落ちてくる。


分厚い本は魔法書。題名は『初級魔法教本』ね。


魔法は『初級』『中級』『上級』と難易度に合わせて段階があった筈。あの衛士の片方は魔法について学んでいたのだろうか。


私は本をベッドに置いて木の板を手に取る。


これは……一体何なの?公爵家の令嬢として育てられていたから平民が使うものはあまり分からないけど、これは何か違う気がする。


とりあえず、何があるのか分からないし魔素を流してみましょうか。


魔素を木の板に流すと板に光の文字が浮かび上がる。


――――――――――

名称:なし

スキル:《光魔法:EX》《聖魔法:A》《闇魔法:EX》《魔素操作:A》《魅惑の肢体:EX》《魅了の魔眼:EX》《悪魔眼:B》《魅了:EX》《暗視》《飛行》《収納》《悪魔威圧》《気配偽装:A》《真実吐き:A》《色欲》《魔のカリスマ》《マナドレイン:EX》《エナジードレイン:EX》《ウィズダムドレイン:EX》《イクスペリィドレイン:EX》《剣術:C》


天性:《色欲の悪魔》


加護:《光神の加護》《魔神の加護》

――――――――――


これは……技能(スキル)に天性、加護?


私は木の板に浮かび上がった文字に目を傾ける。


確かにこういったものがあるとは知っていたけどそれはアルザ教会が『神の奇跡』と称してそういった道具を持っていた筈よ。


けどこれは平民でも簡単に手に入る程度の物でしか作られてない。『神の奇跡』が人の技術に堕ちたのね。


私は微かに口角を上げる。


300年、その歳月で人は正しく発展してくれていた。それは喜ばしいことね。外に出た意味もある。


それにしても……ここまでスキルがあったとは。


公爵令嬢だった頃はパーティーや最低限の教育、読書以外は殆んどを自室で外を眺めているだけだったのに。……いや違うか。殆んどが悪魔に転生してからのものね。


そして天性にある《色欲の悪魔》は不名誉極まりない。私はただの一度も男性と交わった事がないというのに。


まあ、そんな感情は殆んどないけど。どうも、感情が無いというよりも感情が起こりにくいといった感じなのかもしれない。


そして加護である《光神の加護》と《魔神の加護》は……一体なぜ私が持っているのか分からない。


光神と魔神はアルザ教会の二大主神とされ互いに聖と魔の二面性を持つ神様だった筈だ。


まあ、考え事はさっさと切り上げましょう。


そもそも、元人間とはいえ悪魔である私がアルザ教会の二大主神の加護を宿している何て知られたらろくなことにならないと目に見えて分かっている。


それにしても……名前がないんだ。まあ、悪魔と今の私は同じ記憶や人格を有していても異なる生物だから当たり前か。


名乗る名前は……アスモディアとでも名乗っておきましょうか。


教典に書かれている色欲の悪魔の名前を少し変えただけだけど、悪魔に転生して尚且つ《色欲の悪魔》となってしまったのだから。


私は木の板と魔法書を開けた異空間に放り込む。


今のが《収納》か。便利なスキルね。開閉の際に僅かに魔素を消費するようだけどその程度なら誤差の範囲内だし。


私は地面に置かれた水桶の中を覗き込むとみずが溜められ、水面に私の顔が写る。


顔の造形そのものは人間だった頃と変わらなかった。しかし、それ以外が大きく変わっている。


元々浅黒かった肌は雪のように、それでいて健康的に白い。エメラルドのようだと讃えられた瞳は右目はルビーのように赤く左目はサファイアのように青い。短く切り揃えられた金色の髪は腰まで届くほど伸び色も薄いピンクになっている。


元々の顔立ちや体型が変わってないだけまだマシね。けど、やはり違和感が大きい。その違和感も少しずつ慣れていくでしょう。


物色を終え私はテントから出て森の中に入っていく。


森の中なんて始めて入った。貴族として森の中に入るのは男だけだった訳だし、こんな感じなのね。


「ギギッ!!」


おっと。


草むらから飛び出してきた緑色の肌をした小鬼の棍棒を身体を僅かに逸らして躱し無造作に蹴り飛ばす。


小鬼は木に叩きつけられ血を吐いて息絶える。


ふぅ……。今のはゴブリンでしょうか。本で読んだ情報とそう大差なかった。


森に入ってはいけないのは魔物が出てくるため。魔物の中には人の女性を用いて生殖活動を行う種もいると言われている。


その一つにゴブリンが含まれている。


大繁殖しているとお父様は騎士や冒険者を派遣して事に当たっていたけれど……。


「ギギギギッ!!」


まあ、そんな事はゴブリンたちにとっては関係ないか。


草むらから現れる十数匹のゴブリンたちが舌舐めずりしながら近づいてくる。


おおよそ、私を打ち倒して苗床にでも使おうという算段なのでしょうけど……無駄な話ね。だって、見て分かるもの。私よりも遥かに弱いことが。


私は魔素を操作して翼や尾、角を生やす。


それと同時に溢れる魔素にゴブリンたちは冷や汗を掻きながら後退り始める。


流石に分かり始めましたか。けれど、もう遅い。


手を振り降ろすと同時に光の槍がゴブリンの一体を貫く。


《魔素操作:A》で魔素を操作でき魔力に変換し魔法を自在に扱う事ができるのね。


それなら、少し試してみましょうか。


私は薄ら笑いを浮かべながら指を弾く。


「ギギッ!?」


パチン、という音と同時にゴブリンたちの影から黒い鎖が飛び出しゴブリンたちを縛りつける。


《闇魔法》も簡単にできるのね。さて、後は。


私は鎖に抵抗しているゴブリンの一匹に近づいて頭に触れる。


ゴブリンは次第に抵抗を止め目を虚ろに変えて干からびて死亡する。


衛士の反応から考えるにドレイン系のスキルを発動している際には快楽の海に溺れるようね。


私が拘束されたゴブリンたちを見るとより一層冷や汗を掻きながら鎖を解こうと躍起になる。


私の目的は貴方たちの全て。貴方たちに何の罪があるのかどうかすら私には関係ない。


それでは、いただきます。

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