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亡命王子は星を導く~運命の婚約者と祝福された結婚~  作者: 和田 モエコ
第一部 タルール【幼馴染編】

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第56話 葬儀

 川原で落ち合ったアレクシスは、リゼットをオリガに託し、巨大馬エリサでジンシャーンまで一人戻ることになった。

 

 ヴィクトルは、ミハイルとロナルドの遺体を翼竜でジンシャーンまで運ばせ、ミハイルの遺体はそのまま、ジンシャーンの外れに埋葬させた。

 葬儀も帝国関係者のみ参列の、略式で行われた。

 

 

 アレクシスがジンシャーンに帰ってくると、アレクシスの指示でロナルドの遺体は、大使公邸(ドーム)の庭の一角に葬られることになった。

 王国風の葬儀を知る者がいないので、帝国風の流儀で葬儀は行われた。

 

 ジンシャーンに残っていたジーラント帝国人のほとんどの者が、参列者として大使公邸を訪れ、それぞれ花を手向(たむ)けた。

 リゼットはお悔やみの言葉を言われ、アレクシスの横で気丈にお礼を言い、涙を(こら)えていた。

 

 大使公邸を訪れたタルール人達の数は、ジーラント人以上だった。タルール・シェグファ藩国を代表して、ワンチェシー王子も参列した。

 

 ワンチェシーらタルール人達は、墓前で追悼のダンスを踊った。

 深い悲しみの輪はダンスとともにだんだん広がり、何の能力も持たないジーラント人ですら、何故か涙してしまうほど……。

 

 ……まさに「思念」を通して生きるタルール人の、哀悼の表現だった。

 

 

 故人はタルールを愛し、よく理解し、タルール人からも広く、深く愛された人物だった。


 喪主として気丈に振る舞っていたリゼットだったが、このダンスが始まると、涙と嗚咽を(こら)えることが出来なくなった。

 アレクシスに背中から抱えられながら、大きめのタオルで目元と口を押さえながら泣き崩れた。

 

 ……その姿を見て、ジーラント人達もまた、もらい泣きした。

 

 

 ***

 

 

 ジンシャーン中が哀しみに包まれた一日が終わり、撤退作業が再開された。

 ジーラント帝国には、国境のダリヤーム川が凍りつく前にたどり着かなくてはならない。

 

 アレクシスはリゼットのそばについていてやりたかったが、持ち出し禁止のタルールの農作物を、せっかく育てたからと持ち出そうとする者は後を絶たず、シーグーの港湾作業は、アレクシス待ち状態だった。

 アレクシスは仕方なく、港湾作業員用の宿舎へ戻った。

 

 リゼットの放心状態は続いており、全く自身の引越作業をしなくなっていた。

 アレクシスは作業の合間を見ては時々(ドーム)に戻り、リゼットの代わりにタルール人達に指示を出した。


 自身の研究室の始末や引っ越し作業も、タルール人達に手伝ってもらいながら行った。

 


 また、ロナルド自身がヴォリアーシャ地方にあるグレーンフィーン家の拝領地へ引っ越し荷物を運んでいたが、それもできなくなったので、アレクシスは父親のエドウィンに手紙を書いた。

 

 タルールに来て三年、初めて書く手紙だった。

 エアデーン王国人とは、普段から思念通話を使っている分、アレクシスは手紙という原始的な通信手段が苦手だった。

 

 父からアレクシス宛ての手紙を受け取っても、ロナルドがアレクシスの代わりに近況を知らせているからと、ずっと自分で連絡を取ることをしてこなかった。


 ……それだけ自分はロナルドに甘えて来たのだ。

 

 伝えたいことはたくさんあるが、何と書けば良いか迷った挙げ句、時間もないので箇条書きで要点だけ書いた。

 

 

┏━━━━━━━



 父上へ

 手紙は苦手なので要点だけ。

 

 1.ロナルドがミハイルに冤罪で殺された。

 

 2.ミハイルはその後自害した。

 

 3.ロナルド、ミハイルの遺体はジンシャーンに埋葬された。

 

 4.現在リゼットは放心状態である。

 

 5.自分は港湾作業で忙しく、彼女を十分にケア出来ていない。

 

 6.リゼットを迎えに来てほしい。

 

 7.自分は帝国に渡り、食料問題解決に取り組む。

 

 8.ロナルドとの約束で、リゼットは帝国に連れていかない。

 

 9.自分とリゼットとは婚約関係にあるので保護を頼む。

 

 アレクシス

 


┗━━━━━━━

 

 

 ひどい出来だと自分でも思ったが、封筒に宛名を書き、次の便で帰国する仲間に、王国での補給時に配達員に渡すよう頼み、配達料金を渡した。

 

 

 またアレクシスは、バオアン平原で入植者の子孫が農業をすることの無いよう、文字の読めないタルール人にも分かるような図案を描いた。


 それをタルール人達に渡し、大使公邸(ドーム)の横に警告の石碑を建てるよう頼んだ。

 

 アレクシスは古代エアデーン人達が「ギフト」と呼んだ毒物の存在に到達するまで、三年の歳月をかけてしまった。

 将来この情報が風化して、また同じことが繰り返されることの無いようにしたかった。

 

 

 そうして、殆どの帝国人の撤退が完了し、最後の定期船がやって来た。

 

 その船には、アレクシスの父、セントレナード公爵エドウィンが乗っていた。

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