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亡命王子は星を導く~運命の婚約者と祝福された結婚~  作者: 和田 モエコ
第一部 タルール【幼馴染編】

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第49話 作戦会議

 アレクシスは、上空を飛び回る翼竜の群れを着陸させる場所をタルール人たちに尋ねた。


 タルール人たちは初めて見る翼竜に腰を抜かし、その着陸場所など想像出来ないようなので、「神の石」の衛星画像を検索した。

 

 画像は少し先に川原があると示していたので、上空に合図をして方向を教えた。

 アレクシスとヴィクトルは、巨大馬エリサを連れて、チーム・ヴィクトルの仲間と合流した。

 アレクシスを襲ったタルール人たちも、なぜか付いて来ていた。

 

 

 翼竜は全部で九頭。

 ヴィクトルの乗っていた翼竜も騎手なしで付いて来ており、よく訓練されていると思ったら、その翼竜だけは特別に、ヴィクトルが幼い頃から乗っていた翼竜を送ってもらったらしい。名前は……

 

『ヨックーだろ?』

『すごいな、何で分かったんだ!』

『お前の巨大馬の名前はキョバーだからな』

 


 そんな雑談をしながら、アレクシスは「神の石」でルオフー上空の衛星画像を確認した。

 

 洞窟を抜けた先にあるルオフー城は、城の上空以外は岩山に覆われている。

 帝国人兵士の見張りは船に数名、洞窟入り口に数名、城の入り口に数名確認できたが、翼竜が帝国から届くという情報は伝わっていないらしく、ルオフー城の屋上に見張りはいない。空からの侵入には無警戒のようだ。

 

 突入するなら当然、屋上からだろう。

 アレクシスはヴィクトルに尋ねた。

 

『ミハイルの狙いはなんだ? もう人事に納得が行かないだけではないだろう。タルール撤退のことを知ったのかもな』

『ああ。バオアン平原租借地を得たのはミハイルの功績だ。もちろん通訳のロナルドがいなければ、契約の成立もなかったが……。全てを否定されたミハイルは、その怒りを弱いロナルドにぶつけたんだろう』

 

 ヴィクトルは翼竜「ヨックー」に、川の水を飲ませながら答えた。

 

『わざわざルオフーまで連れてきたのは、撤退作業でジンシャーンを離れられない俺たちの隙を突くためか……。だが、タルール人を巻き込む理由はなんだ?』

『まったく、お前は理由とか、意味とか、そういうことを考えるのが好きだな』

 

 ヴィクトルは、難しくなりそうな会話を切り上げようとした。

 

 二人の会話はタルール人たちには伝わっていないはずだが、そのうちの一人がアレクシスに告げた。

 

〈ミハイル、バオアンかえすから、サファルさまにホウセキのゲンセキをかえせとイった。あれはキツネイシだった。イマはもうない〉

〈狐石?〉

〈ヒスイのニセモノ。ダマされた。サファルさま、ロナルドがダマした、とおこってロウにいれた〉

〈ロナルドに罪を被せたということか。対価を返せないサファル王に何を要求する気だ?〉

〈……オウのイスといった〉

 

 ……玉座か。

 ミハイルは、一応租借地の返上の挨拶という名目で来たらしいが、意思疎通が出来ないタルール人の王になって、何が出来ると言うのだろう……。

 それは口実で、別な狙いがあるのか? 手ぶらで帰国したくないということか?

 

 これ以上は答えが出ない。アレクシスも考えるのをやめた。

 

 

〈牢と言ったな? それはどこにある?〉

 

 タルール人に聞くと、牢は城の半地下部分にあり、小さなタルール人なら城の地下の抜け道から牢の前までは侵入出来るが、牢の前にはジーラント人兵士がいるので助け出せないらしい。

 また、侵入ルートからはロナルドを脱出させられないと言う。

 そして、ミハイルは城の上階部分のどこかにいるらしい。

 

 それをヴィクトルに伝えると、


『了解、俺たちは上から潜入して、ミハイルを取り押さえるぜ!』

 

 と請け負った。すると、仲間の一人がヴィクトルに尋ねた。

 

『待て。ミハイルたちは帯剣している。俺たちも武器がいる』

『バカ。帝国人同士で本気でやりあってどうする? 第三皇子の俺様が目に入らぬか! ってやるんだ。』

 

 ヴィクトルはアレクシスに目配せしながらふんぞり返る。

 アレクシスは、暗示支配をかけろということか、と理解した。


 アレクシスは、どうすればよいか控えめに尋ねてきたタルール人に作戦を説明した。

 

〈俺たちはまず、ミハイルが乗ってきた船をこっち側につかせる。その後、城の外側にいる帝国人兵士の注目を集めながら、屋上に降りて暴れるから、そっちはそっちで隙を見て二人を救出してくれ。こっちが上手く行きそうになったら、援護に向かう〉

 

 アレクシスから作戦を聞いたタルール人たちは、一声高く鳴いた。

 そして直立不動で立ち上がったかと思うと、一定のリズムで足踏みを始め、不思議な声で鳴き出した。

 周囲のタルール人たちもそれに(なら)ってゆく。

 

『な、なんだ? 何が始まったんだ?』

 

 ヴィクトルたちはその場で怯んだ。

 タルール人たちは、アレクシスたちを取り囲むようにだんだん円くなり、不思議なリズムの足踏みと声を上げ、体を上下に揺すり、一体となって踊り出す。

 

『温厚なタルール人たちが、自分達を鼓舞しているんだろう』

 

 アレクシスも初めて見る不思議なダンスをしばらく魅入っていたが、

 

『俺たちは行くぞ! タルール人たちを援護するために、なるべく多くの帝国人兵士に見つかるようなルートで飛んでくれ。まずはミハイルの旗艦からだ!』

 

 アレクシスは乗ってきた愛馬を躍り続けるタルール人たちに預けると、ヴィクトルの翼竜「ヨックー」の後ろに同乗した。

 そうして、チーム・ヴィクトル翼竜部隊はルオフー城目指して出発した。

 

 

 タルール人たちの姿は遠く見えなくなっても、その声はしばらく密林に響き渡っていた。

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