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亡命王子は星を導く~運命の婚約者と祝福された結婚~  作者: 和田 モエコ
第一部 タルール【幼馴染編】

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第23話 変化

 リゼットに生理が来たらしい。


 やはり十四才でまだ来ていないのは、遅い方だったらしいが、とりあえず、一安心だ。


 こんな研究を始めたせいか、自分は思ったより、リゼットの成長が遅いことを心配し、気にしていたようだ。

 

 リゼットは帝国人がよく食べる食べ物は大好きだが、体に合わないようで、腹を壊す。ロナルドもそうらしい。


 王国人には、タルール人の食べ物のほうが合うようだが、リゼットの成長が遅いのはタルール人と同じものを食べているせいではないのか?

 

 アレクシス自身はタルール人の土着料理を食べ続け、何も影響を感じたことはないが、純粋のエアデーン人に与える影響は?

 タルールについての疑問は膨らむばかりだ。

 


 アレクシスはバロンの首輪の下に埋め込まれた「星屑」に残る記憶を確認した。

 リゼットは薬も飲まずに、時おり(うめ)き声を上げながら寝ていたようだ。


 薬箱の中から、アレクシスは予め用意しておいた生理痛の薬を取りだし、リゼットに渡すようンケイラに伝える。

 

 そして、大変めんどくさいが、父親のロナルドに一応報告だけした。

 予想通り、大変めんどくさい反応が帰ってきたので、すぐ部屋をあとにした。

 


 (ドーム)を出るとき、二階の階段上からリゼットがパジャマのまま飛び出してきて、

 

「アレク! 薬、ありがとう。その……さっきは、出てってとか言ってごめん」

 

 と赤い顔をして謝ってきた。

 ──この可愛い生き物はこれだから……。

 

〈やっと人間になれてよかったな。……また来る〉

 

 いつもの憎まれ口を叩いて(ドーム)を出た。背中でリゼットのいつもの悔しげな呻き声を聞けたので満足した。

 


 ──人間になったんじゃない。大人の女性の仲間入りをしたんだ。

 

 リゼットはこれからどんどん綺麗になるだろう。

 彼女の未来は、父親同様、タルールに縛られたものになるのか、そしてその時、彼女の隣にいるのは誰なのか……。

 


 ……アレクシスは考えることを、すぐに放棄した。

 

 

 ***

 

 

 リゼットは、週に三回、アーインという名のタルール人の笛吹きから直接、横笛を習うようになっていた。

 

 楽譜を持たないタルール人は、曲を耳で覚えて伝承していくらしい。

 リゼットは、まずはタルールの代表的な曲から、譜面に落とすことにした。

 

 タルールの横笛の特徴を生かすような、不思議な旋律を書き留めることは難しかった。

 リゼットは、アーインが機嫌良く吹いている途中で何度も止めて、正しく書き表せているか確認したが、気の良い彼女は嫌がらず、何度も繰り返し吹いてくれた。

 

 そしてアーインの来ない日は、その曲を練習する。

 まだ上手く吹けなくても、まずは曲のレパートリーを増やしたかったので、アーインの来る日は、譜面作りに専念した。

 

 そうしてアーインが知ってる殆どの曲を、楽譜に出来たので、リゼットはその中の簡単な曲から、本格的に練習し始めた。

 アレクシスが卒業した後も、リゼットはアーインと放課後の横笛の練習を続けていた。

 

 

 アーインは、タルール・シェグファ藩国内を巡る笛吹き芸人という職業柄、ちょっとした有名人であり、顔が広かった。


 帝国人との間に問題を抱えるようになったタルール人が、時々アーイン経由でリゼットに通訳をして欲しいと、頼んでくるようになった。


 ロナルドは、帝国人から依頼を受けて通訳をすることが多く、タルール人からは頼みづらいらしかった。

 


 最初の仕事は帝国人が経営する料理屋だった。

 タルール人が、言葉を使わずに帝国人から注文を取り、それを帝国人シェフに伝え、料理を運ぶことが出来るようになったのは、指差しのルールを説明したリゼットの通訳のお陰だった。

 

 そんなリゼットの噂が噂を呼び、放課後はタルール人が校門のところでリゼットのことを待ち構えているようになり、横笛を吹く時間がだんだんなくなっていってしまった。


 リゼットは、困っているジーラント帝国人とタルール人の役に立てるのが嬉しく、充実した日々を過ごすようになった。

 

 

 そして、その噂がヴィクトルの耳にも届いたようだった。


 その頃には、ヴィクトルは実は帝国第三皇子で、タルール・シェグファ藩国で社会勉強するよう、皇帝に言われて派遣されていると、知れ渡っていた。

 

 ヴィクトルはリゼットに、研究所に閉じ込もってしまったアレクシスの代わりに、通訳をして欲しいと頼んだ。


 帝国総督のミハイルと主に仕事をしているロナルドには、頼みづらいから……、とヴィクトルにも言われてしまった。

  


 リゼットは、ロナルドやアレクシスに言わないという約束で了承した。

 

 タルール人に頼まれるのは良くても、第三皇子のヴィクトルの依頼となると、まだ十四才の学生なのに仕事をしているようで、二人に怒られそうな気がしたからだ。

 

 

 ヴィクトルも、アレクシスにバレると厄介なのは承知していた。

 なので、はじめは案件ごとにタルール人を執務室まで呼び出して、他の人に見つからないように通訳をしていた。


 タルール人は文字を持たないので、メッセンジャー役のタルール人に、リゼットが伝言を伝えて呼び出すのだが、この方法はすぐに行き詰まった。

 やはり現場へ直接出向く方が理解が早い。

 

 ヴィクトルは、夕刻までに家に帰れる距離であることを条件に、リゼットを自身の巨大馬の前に乗せ、現地へ出向くようになった。

 

 

 以降、フード付きの断熱マントを深く被ったリゼットを、巨大馬で連れ回すヴィクトルの姿が、ジンシャーン内で度々目撃されるようになる。

 

 そしてそれが、ヴィクトルやアレクシスのことが好きなジーラント人の女子たちの妬みを買うことになった。

 

 

 アレクシスはそんな女子たちから、『ヴィクトル殿下の今の彼女はリゼットだ』と密告を受けた。

 

『二人はしょっちゅう巨大馬に乗って、デートに出かけている……』と。

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