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亡命王子は星を導く~運命の婚約者と祝福された結婚~  作者: 和田 モエコ
第一部 タルール【幼馴染編】

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第18話 自覚

 アレクシスが学校へ通いだして一年が過ぎ、アレクシスはヴィクトルと女子の人気を二分するような中等部のチームの中心選手になっていた。

 

 アレクシスはそんな女子たちを相手にしなかったが、ヴィクトルは色んな女子と付き合っては別れていた。


 全くタイプの違う二人だったが、試合では抜群の連携プレイを見せた。

 


 リゼットの横笛も密かに聞き耳をたてている生徒も多く、「音楽の妖精」と呼ぶ者もいた。


 

***

  

 

 いつもの放課後。アレクシスは運動場にいた。


 運動場が見渡せる教室で横笛を吹くリゼットの横に、今日は人影が見えるのに気がついた。最近、リゼットにやたら話しかける転校生の男子ではないだろうか。

 

『どうした、アレク。今日はやけにミスが多いな』

 

 ヴィクトルがアレクシスに集中するよう声をかける。

 

『すまない。今日は調子が悪い。帰るよ』

 

 アレクシスは驚くチームメイトと別れて、運動場を後にした。

 

 

 アレクシスは焦っていた。

 横笛の音が止んだ。アレクシスは嫌な予感がして、ペール用のシューズのまま、階段を上り、ずんずんと教室に近づいて行く……。

 

 誰かと話し、笑っているリゼットの声が聞こえてきた。その話し相手は、先月帝国からやってきて中等部に入った男子だった。

 

 

 ***

 

 

 リゼットは、横笛を聞かせて欲しいという転校生の男子学生とともに、教室に残っていた。

 

 彼は、帝国人にしては珍しく、音楽に興味があるらしい。

 リゼットはノーミスで吹けそうな曲をいくつか披露した後、次の曲を探そうとパラパラと譜面帳をめくった。


 その時、リゼットが手書きした譜面を、彼に目敏(めざと)く見つけられてしまった。

 

『これは?』

『……ちょっと思いついたメロディをメモしてるだけよ』

『すごいなぁ、リゼットは作曲も出来るんだ!』

『自分に吹けそうな、ちょうどの曲がもうなくて……』

  

 実は、もう持っているクラヴィアの曲の譜面から、メロディを横笛で吹くのは、音域の問題や、リゼットの技量との兼ね合いで、難しくなっていた。

 

 だが、彼はそんなリゼットの悩みには興味がないようで、


『僕にもちょっと吹かせてよ』

 

 と言い、『えっ……』と戸惑うリゼットに近づき、その横笛を持つ手の上に、自分の手を重ねてきた。

 その時、バン!!と、ものすごい勢いで扉が開いた。


 リゼットが驚いて戸口を見ると、そこにはアレクシスがいた。


 

〈リゼ、帰るぞ〉


 アレクシスは戸口で腕を組み、リゼットの横にいる男子生徒を睨み付ける。

 

「え、アレク今日は練習どうし……」

『リゼの笛を吹かせろとか、気持ちわりーこと言ってんじゃねーよ!』


 リゼットの問いを掻き消すように、アレクシスは帝国語で怒鳴る。

 

《リゼに二度と近づくな!》

 

 アレクシスは、久しぶりに「暗示支配」の祝福(レーン)を使った。

 男子生徒は、腰を抜かし、這うように教室から出ていった。

 

 

 リゼットはキョトンとしていたが、やがてため息をついた。

 彼がまた祝福(レーン)を使ったことに気付いたからだ。

 

「また『祝福(レーン)』使って……。それにアレクはペールチームに入ってから、どんどん言葉使いが悪くなっていくね。せっかく私にも横笛仲間が出来そうだったのに……」

〈はぁ? あんなのお前の(くわ)えた笛吹かせろとか、ただの変態だろ!〉

「横笛だから(くわ)えてない! 唇にあてて息を吹きかけてるの!」

 

 そう言ってリゼットは、笛を口にあてて見せた。

 アレクシスは、そんなノンキなことを言うリゼットにイライラしながら、

 

〈んなもんどっちだって同じだろ! お前もあんなのに引っ掛かってるんじゃねーよ! 明日から放課後ここで待たなくていい。スーか、ンケイラを迎えに越さすから、授業終わったら真っ直ぐ家に帰れ!〉

 

 と思念で怒鳴った。リゼットは、負けずに言い返した。

 

「ひど~いっ! 横暴~っ! ただでさえみんなと話したり遊んだり我慢してるのに~っ!」

〈じゃあ、横笛の上手いタルール人を放課後学校に呼んで、お前にレッスンつけるよう親父さんに頼む〉

 

 それを聞き、リゼットの顔がパァッと明るくなる。

 

「あ、それいい! それいいかも! わーい、ありがと、アレクシス!」


 リゼットはアレクシスにギュッと抱きついた。

 ……タルール人に直接習うことが出来たら、リゼットの曲のレパートリーも増えて楽しいはずだ!

 

 

 アレクシスも、急に機嫌を直したリゼットの肩に、手を回そうとして……

 ……視線に気づいた。


『てか、お前ら見てんじゃねーよ!』

 

 リゼットは、急に大声を出したアレクシスに驚き、彼の目線の先を見た。


 そこには、ヴィクトルをはじめ、ペールのチームメンバー全員が、廊下に通じる戸口や窓から、ニヨニヨと自分たちを眺めていた。

 

 リゼットは驚いて、抱きついていたアレクシスからバッと離れ、アレクシスはそんなリゼットを背中に隠した。

 

 二人のことを覗き見していたチームメンバーは、『わー、逃げろ~っ』と叫びながら、逃げていった。

 

 

 アレクシスのペールの仲間たちはリゼットのことを、ひそかに「姫」と呼んでいた。

 ……アレクシスの「姫」だ。


 ヴィクトルは、アレクシスが集中力を無くした時に、『姫に何かあったに違いない!』とピンと来た。

 

 それを確認するために、こっそり後をつけようとしたところ、全員付いてきてしまった。

 そして……普段クールなアレクシスの、面白いものがみれた! と、逃げながら喜んだ。

 

 

 アレクシスは明日からこのネタでいじってくるであろう、うっとおしい仲間のことを思った。

 だが、うっとおしいからといって、もうその程度の事では、仲間のことを暗示支配したりはしない。

 

 だが、さっきの転校生は、苛立ちのあまり、つい暗示支配して、リゼットの前から追い払ってしまった。

 

 

 ……アレクシスはこうした自分の感情が何なのか、薄々と気が付いていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 見た目完璧王子様のクソガキ(すみません。。)が落ちるのはニヨニヨです [一言] 続きを読むのが楽しみです!
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