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亡命王子は星を導く~運命の婚約者と祝福された結婚~  作者: 和田 モエコ
第一部 タルール【幼馴染編】

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第15話 星の嵐

 相変わらず授業中は何を考えてるか分からないアレクシスだが、ペールチームに正式に加入してからは、キャプテンのヴィクトルのお陰もあって、急速にチームになじみ、帝国小社会に溶け込んでいった。

 

 リゼットは陰ながら応援しようと、チームのサポート役の仕事をしたいと訴え出た。……初日は歓迎されたが、翌日には断られた。

 ──アレクシスがまた何かやったような気がする……。

 


 リゼットは諦めて、涼しい教室から運動場を眺めて過ごしていた。

 帰りはアレクシスやみんなと話しながら、一緒に帰りたいのだ。

 

 だがあまりに暇なので、退屈しのぎにタルール人の民族楽器の横笛を練習し始めた。

 帝国人にはちょっと小さいサイズの横笛だし、もともと帝国人は音楽を趣味としないらしい。だから、横笛では仲間が出来なかった。


 それでも、クラヴィア用の譜面を横笛用に自分でアレンジし、難しい曲がだんだん吹けるようになっていくのは嬉しかった。

 

 そうしてアレクシスたちの練習が終わるのを待ち、一緒に坂を上って帰るのだった。

 

 

 ***

 

 

 今朝から、風がだんだん強くなってきている。こんな風は大きな嵐の来る前触れ。

 


 明日の学校は休みになった。

 王国大使公邸(ドーム)は敷地ごと、遠くから見るとキラキラ反射する透明な魔光幕に丸く覆われており、嵐が来ても、少し風が強い程度にしか感じない。なのでロナルドは余裕の構え。


 タルール人の使用人たちは、食料の備蓄や、ジャングルの中にある実家の手伝いで休みをとる者もおり、忙しそうだ。

 

 アレクシスは、ひと月前の初めての嵐はドーム内で過ごして〈外の気配が感じられずつまらなかった〉と言い、今日のうちからヴィクトルの家に泊まりに行った。

 ヴィクトルの家はジンシャーンの高台にあるプール付きの豪邸だ。

 

 リゼットが「なら私もオリガの家に泊まりに行きたい!」と言うと、二人に「他人に迷惑をかけてはいけない」と反対された。──なぜ?

 

 

 リゼットは家から出て、敷地の端まで行ってみた。


 いつもは触れずに通り抜けられる「魔光幕」と呼ばれる空気の層が、今日は目には見えないが固い壁のようになっていて、手で触れることが出来る。古代技術は本当に不思議だ。


 壁の向こうでは、音は聞こえないが、雨が横殴りに降り、木が斜めにしなって激しく揺れている。


 ──アレクシスはこの様子を見るだけじゃダメだったのかな?

 

 

***

 

 

 アレクシスは、ジンシャーンで一番の高台にあるヴィクトルの家にいた。


 ひと夏に数回訪れる「星の嵐」。

 この嵐の襲来が、タルール人たちがジャングル内部に住む理由だろう。

 ジャングルそのものが嵐の風の影響を防ぐからだ。


 また、彼らの家は複雑に絡んだジャングルの木の根で覆われた繭のような形状をしていて、隙間を苔で塞いでおり、星の嵐の時も安全で浸水などしないらしい。


 タルール人の使用人たちの知性レベルからすると、想像以上に自然に依存した原始的な暮らしぶりのようだ。


 タルールに関する情報は「神の石」内部で何かロックがかかっているようで、詳細が不明なものが多く、今後も解析が必要だ。

 


 ヴィクトルの家に泊まらせてもらって初めてわかったことだが、ヴィクトルの親は帝国におり、一緒に住んでいるのは親の部下であり、乳兄弟の家族らしい。……それは、リゼットの親友オリガだった。


 ……リゼットをオリガの家に泊まらせなくて正解だった。 

 


 ヴィクトルはオリガの兄と乳兄弟だったが、兄はリーフォスと呼ばれる、空を飛ぶ翼竜からの転落事故で、亡くなっているらしい。


 ヴィクトルは父親にタルール・シェグファ藩国で「社会勉強」してくるよう言われて、ジンシャーンにやって来たそうだ。


 ……今のところ、ペールをしているだけにしか見えないが。

 


 社会勉強……、何処かで聞いた話だと思ったら、アレクシス自身もリゼットにそのように説明していたことを思い出し、一人で笑った。


 彼にも何か事情があるのだろうが、アレクシスは、それ以上のことは敢えて聞かなかった。

 


 ジンシャーンにある家々は、父エドウィンが星の嵐に耐える家として設計したらしいが、この家は高台にあるせいか、もろに雨と風を受けている。


 窓には滝のように雨が打ちつけ、風はガタガタと激しく窓を吹き叩く。

 尖ったものが勢いよく飛来してきたら、窓は割れてしまうかもしれず、嵐の前はこの窓は補強した方がいいと思った。

 

 アレクシスは「神の石」を取り出した。星の衛生画像の記録を呼び出す。

 赤道付近で発生した星の嵐は、しばらく海上をウロウロした後、進路を北東に定めた。つまり、真っ直ぐ王国へ向かっていた。

 

 が、途中何かに阻まれる様に進路を変え、王国領土の西の海上をゆっくり南下し、タルール・シェグファ国領の西の海上に突入すると、再び進路を東向きに変え陸地を目指しスピードを上げた。

 

 前回の星の嵐でもその動きに違和感を感じたが、王国は何らかの古代技術で星の嵐の進路を妨害していると確信した。

 

 王国を襲うはずだった星の嵐が、ことごとくタルールの最北西部にあるジンシャーンにやって来ているような図式だ。

 

 

 ヴィクトルがやって来たので、アレクシスは「神の石」を鞄に仕舞った。

 ヴィクトルの家の中にはかなり広めの運動室がある。外は大嵐だが、ヴィクトルには関係ないようだ。

 

 オリガと三人で、基礎的な動きの反復練習や、壁打ちやドリブル、敵役を一人設定し、交替しながら、パスをつなぐ練習など、ヴィクトルが考えた練習メニューをこなす。

 

 アレクシスは、ヴィクトルがあっさり泊まらせてくれた訳がわかった。

 ヴィクトルは星の嵐の時の自宅練習メニューに、メンバーが一人増えてバリエーションが出来たことを喜んでいた。

 

 

 アレクシスはその後も、時折、星の嵐が来るとヴィクトルの家に泊まるようになった。

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