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川を飛ぶ子供の目  作者: 羊
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川を飛ぶ子供の目 1

あぁ、いつまでも、川を飛ぶ子供の目



 市営バスの最後部席。車窓から行き過ぎる停留所に咲くオオイヌノフグリを見ていた。薄いブルー。風は向かいから。微かに揺れていた。窓を開けていたので、自分の無手入れの長髪も揺れる。

 菊は隣で何やら難しい顔で、掌にジャリ銭を広げてその数を慎重に数えていた。もうすぐ午後三時。自分は小脇に卵やら椎茸やら、そんな食品類が入ったスーパーの袋を抱えていた。本当はもっと大荷物になるやろから、一人では持ち切れんやろうなぁ、と二人で来たのだが、そもそもそんなにたくさん買う金がなかった。

「どしたん?」

 あまりに難しい顔なので聞いてみると菊は、

「お釣りが五十円足りひん」

 なんてため息をつき、言う。

「はぁ、それならすぐに引き返して取りに行こや。レシートはあるんやろ?」

「それはまぁ、あるはあるんやけど」

「けど?」

「けど、もうバスに乗ってしまってるやん」

「え、だから?」

「だからって、一人で取りに戻るとしても一度降りてまた乗ったらまた二百二十円かかるんよ。それを往復したら四百四十円」

「あぁ、そうね……」

「五十円のためにそれはないやろ」

「まぁ」

 アホーな自分でも流石にその不利益性は分かった。

 ちくしょう。

 自分は心の中で静かに呟いた。

 そんなことになってしまうのはそもそも借家賃をケチって集落から離れたアパートに居を構えたりなんかしたからで、もしこれが集落近辺、もしくは集落内に借家できていたらスーパーにまで歩いて行けた。歩くだけならもちろんタダで何のトラブルもなく五十円の釣り銭を回収できたのだ。計算を間違えた店員に嫌味の一つだって言える。今となってはもう遅いのだが。借家を決める際、例によって金がなかったのだ。

 まぁでも、確かにそもそもの話から蒸し返せば前述した原因に、借家の話に行き着くのだが、それは根本の話で、根本から物事をひっくり返すのは少し乱暴で、そういうやり方は自分はあまり好きではない。

 では何が言いたいかというと、要は車で、原因は金に困って車を手放してしまったところにある、と再考したのだ。それはつい先日の話。それまで我夫婦は市営バスになど乗らずに車でスーパーまで行っていた。もちろん乗車賃など払わずに。

 あの時、車を売ろうという話になった時、正直このようなケースまでは想定していなかった。釣り銭を取りに帰るなんて。

 車を売った理由は剥いた話、ただただ日銭のため。有金が尽きそうだったから。最初に提案したのは菊だが、自分もすぐにそれに乗った。元々安モンの軽だし、もうかなり乗ってボロだし、痩せこけた老牛のような、なんとかかんとか動いてます的な感じの頼りのない奴だった。それにもかかわらず最近は燃費も悪く、軽自動車税というものも侮れず、家計の負担になっていた。で、そんならもう、市営バス乗ったらええやん、売ったらええやん、という結論に達したのだ。

 驚くことにあんな鉄屑でも多少の金にはなった。それは大変ありがたかったのだが。しかーし、乗ってみて初めて気づいたのだが市営バスの乗車賃というものも積もれば山で、案外馬鹿にできないものだった。だからこのペースでは売金もいつ消えるやもしれない。結果、マイナスなんてことになったら何のことか分からん。

 ちくしょう。

 やー、でも待てよ。待て、待て。冷静に考えたらあの時車を売っていなかったら自分等は今は完全な銭無しになっていたというのも一つの事実で、そしたらこうやって卵やら椎茸やらを買うこともできず、下手し、二人飢餓で死んでいた可能性だってあるのだ。それはあかんよなぁ。うん。死んでもうたら意味ない。そう考えるとやっぱ車はあのタイミングで売っておいて良かった。うん、うん、うん。

 なーんてそんな感じで巡り巡った自頭中の考えを隣の菊に伝えると、

「うん」

 と頷くだけで素っ気なし。

 心のどっか、後悔しているのだろうか。自分は勘ぐる。でも車売るって言い出したのは菊の方なのに? あれはもう苦肉の策やったのかなぁ。まぁ、無くはないな。そう思って菊の横顔を盗み見る。今は何も考えていなさそうな顔だった。

 実際、我家計は火の車、つか火達磨、マジックショー大失敗的な。本当に笑えない状態なのである。やはり菊のパートタイムの賃金だけでは借家賃を払い、大人二人食べていくには辛いのだ。

 しかし、それもこれも自分が音楽で成功すれば全て解決する話ではある。

 それは間違いではない。音楽を続けていく限り、明日、明後日、とそんな直近では流石に不可能ではあるが、来週、再来週、来月、再来月、と時を重ねる毎に自分が音楽で成功する可能性は上がっていく。これも一つの事実である。

 話は前後するが、自分はバンドマンであり、音楽で成功したいと思っている。本気でやっている。サイノー。とりあえずそれはある。自分には他人とは違う何かセンスのようなものがある。そう思ってる。ほんなら、よーし、あとはタイミングの問題かー、なんて思い始めて早十年。なかなかチャンスに恵まれず、気付けば齢は三十を過ぎ、内縁ではあるが妻を娶り、それなのに未だに決まった職にも就かずにボロボロのジャケットと高校の体育ジャージで毎日ふらふらと出歩くような人間に自分はなっていた。はは。

 車窓の外、また路肩にオオイヌノフグリ。やあ。なんて。美しいな。優しいな。お前は。自分は君みたいな曲を書きたい。てか書く。帰ったら書く。ビール一杯飲んでから書く。

「着いたで」

 菊が自分の脇腹を突く。

「うん」

 自分は握りしめていた乗車賃二百二十円を労働の対価として運ちゃんに支払い、「ありがとう」と言う。感謝の意。微笑む運ちゃん。やがてバスは鈍色の路面を駆け上がって消えた。



 翌日はライブだった。

 会場入りした時、バックステージはもう既に若い自称芸術家達で溢れていた。今日は自分が過去に属していた大学の軽音サークルのライブイベントで、我バンドはそれにOB枠として出演するのだ。

 特別親しくはないが、何となく顔は見知った現役大学生のバンドマン達の中から寺尾の顔を見つける。ほぼ同時に奴も自分を見つけた。

「テメー、マジ遅え」

 大学生の中に一人、多分居づらかったのだろう。寺尾。相変わらず目立つ馬鹿みたいなボリュームの天然パーマ。自分は寺尾にワリー、ワリーなんて言って周りを見渡した。十年間変わりばえのしないライブハウス。大学時代からのホームであった。壁は煙草のヤニですっかり黄色くなっている。熱気か、不気味な汗をかいている。そしてたくさんの名も無きバンドマン達のサイン。その中に風化しつつある十年前の自分達のサイン。意味もなく指でなぞってみる。もうすぐ一番最初のバンドの演奏が始まる頃合いだった。

「今日は何番目やっけ?」

「四番目。てか、こんな遅刻しやがって、出番一番やったらどうする気やってん」

「何となく一番目は無いと思ってた」

 そう自分が言うと、寺尾は呆れ顔でため息をついた。

「中村は?」

「中村は一番目のバンドと掛け持ちやから今スタンバってる」

「あ、そう。相変わらず忙しい奴ね」

 そう言って自分はギターケースを開けて愛機の赤色ストラトキャスターのチューニングを始めた。

 寺尾とバンドを組んだのはもう十年ほど前。あれは確か三流大学一年の夏。出会いは軽音サークルだった。ゴミ屑みたいなサークルハウス、弦の切れたバトミントンのラケットとか、くっせぇ体育館シューズとか、誰がどのようなタイミングで使用したんか知らんがコンドームの袋なんかが散乱していた部屋。そんな混沌の中で我々は出会った。バンド命名ガウチョ。最初はもう一人いた。ドラムの綴。こいつもまぁ、最近、とは言ってももうあれはもう三年ほど前か、まではバンドにいた。

 綴が辞めると言った時、自分も寺尾も止めた。ずっと一緒にやってきた仲間やったし。喫茶店かなんかで話し合った。コーヒーにミルクを溶かした後、辞めてどうすんねん? と問い詰めて聞くと、綴はけっこうマジな顔で、逆に続けてどうすんねん? と言ってきた。それで辞めた。今はどうも普通にサラリーマンをしているらしい。まぁー、我々も大分といい歳だし。三十超えてるし。その生き方も分かる気もする。綴とはそれ以来会っていない。それからドラムはサポートを迎えつつ代わる代わる誰かに叩いてもらっていた。で、今は中村という奴が叩いている。この中村というのはまだ大学生で、我々よりも十近く若いサークルの後輩である。そのくせにドラムは割合上手くて、サークル内でも人気者で、今日もそうだがいくつかのバンドを掛け持ちしている。正直、うちのバンドにサポートに入っているのは完全にお情けで、軽音サークルの先輩から言われてしゃあなしに、と言う感じだった。そういう態度だった。上手いのだがそういう気怠い感じがモロに音に出る。それが自分は嫌だった。

 ガウチョさん、スタンバイお願いしまーす、とスタッフの学生に言われた時、寺尾も自分も缶ビールはまだ二杯目、煙草は三本目という頃合いだった。ほどよい酩酊。ライブをするにはそれくらがちょうどいい。向こうで他のバンドの奴と話していた中村もそれを聞いてだるそうにステージの方へ歩き出す。

 ステージに上がると観客は超満員、というほどでもないが、まぁ、まぁ入ってる。やはり若い奴が多く、良い感じで酒も入ってるのか、自分が手をあげてみると、「ウェー」とか「オー」とか叫んでる。それで良い気になった自分はストラトをかきむしる。轟音。ライブハウスに溢れ出す。視線を中村に向けるとすっと逸らしてスネアを打ち始める。相変わらずいけ好かないやつだ。多分、自分や寺尾のことなんてただの生き遅れの老害だと思って見ているのだろう。なぁ、寺尾どう思う? と寺尾を見ると既にリズムに乗って目を瞑り、陶酔って感じで揺れていた。寺尾。こいつは決して悪いベーシストではない。地味だが、何気に上手い。テクニックがある。ただ、華はない。でも、うん、いつか二人、天下を取ろうな。メジャーでミリオン行こ、ミリオン。そんで中村を見返そう。なんて。

 つーわけで、一曲目、サムゲタン!


 サムゲタン、熱し

 サムゲタン、熱し

 やっぱ、熱し

 ふぅ、街角の中華料理、食い物の温気、酒

 貴さんがその気なら、鳥になって神々の都打ち

 魔法に打たれた悪童の銀河鉄道、相席乗車

 ふぅ、しかしサムゲタン、熱し

 サムゲタン、熱し

 サムゲタン、熱し

 やっぱ、熱し

 ふぅ、天邪鬼の会話、その隙間から見える銃口

 砕け散るマッシュルーム、あれは誰だろうか

 火炎放射の街が見える、君の微笑、相席乗車

 ふぅ、しかしサムゲタン、熱し


 熱唱した。ほんでギターソロ。滴る汗。ベースライン。感無量という感じで弦を弾く寺尾。観客は皆、ビートに身を任せながら揺れる。その表情、ノッていてるのかポカンとしてるのかよう分からん。

 はー。

 分からんのは腹が立つ。テメー等。

 自分の音楽が分からんか。

 はー?

 興奮して、

「テメー等みたいな若者には分からんか? 勉強不足かっ? ダボどもめ!」

 思いっきりシャウトすると、半数のオーディエンスは「オー」とか言ってたけど、もう半数は何やら白けて自分を睨んでいるような感じに見えた。そんなの関係ねえ。なんて更にギターを弾く。飛ぶように時間は過ぎて、音楽は生きて。俺はアウトプットして。


セットリスト

一、サムゲタン

二、涙と涙

三、発汗性

四、プープーペイ

五、勤人

六、ろくでもない


 弦が二本切れた。それでもちゃんと最後まで歌った。良いライブだった。たくさん汗をかいた。



 行燈の照らす居酒屋は薄暗かった。

 そんな中を掘り込み炬燵席四列を貸し切り、クソバンドマン達は打ち上げ、いわゆる「お疲れ様」をやっていた。ビールのピッチャーが次から次へと舞う。店員さんも舞う。ほとんどが、てか自分と寺尾以外全員が大学生だからか飲み方が汚い。やれイッキだ、コールだ、なんて。自分は酒は好きだが、大好きだが、そういう飲み方は好かない。というかまぁ、卒業したという感じだな。現役時代は自分も寺尾も随分無茶をやった。現役時代、もう十年も前の話だ。

 そういうわけだから寺尾と末席に小さくなってちびちびと二人で熱燗をやった。向こうの方で中村がまたイッキをやった。タームタム! タームタム! なんて意味不明なコール。かなりの酩酊具合。飲み干した足元がふらついていた。中村は酒もなかなか強いのだが、相当飲んでいるようだった。

「寺尾さぁ」

「ん?」

 寺尾は既に頬を朱に染めてしぱしぱの目をしていた。決して酒に弱い男なわけではないのだが、飲み放題をいいことに注文しまくった熱燗が確実に脳にキテいた。

「ここの支払いって幾らって言うてたっけ?」

「え? いや、覚えてないけど。三、四千くらいちゃうの? 普通」

「やっぱそれくらいやんなー」

「どしたん?」

「実は俺、今五百円しか持ってへん」

「お前、それでよく来たな。何をどう考えても足りひんやろ」

「まぁ、そうやけどさ。そこは何となくノリでいけるかなって」

「どうすんの。俺もそんな手持ちないで」

「うん。てかさー、箱代もまだ割ってないやんな」

「あ、確かに」

 それでまたしばらく熱燗を飲む。

 周りは相変わらず、コール、コール。馬鹿やって笑ってる。昔は我々も、向こう側にいたんやなぁ、なんて思って。青春ドラマの再放送を観ているような気持ちになった。今現在の我々はと言うと、重苦しく押し黙っていた。

「なぁ、もうバックレへん?」

 しばらくして自分は寺尾に言った。

「マジ?」

「うん。言うてお前も金無いやろ」

「そりゃ無いけどさ、箱代も飲み代も払わずにバックレたら流石に次からはもう顔出せへんで」

「せやけどさ。まぁ、ここはもうよくないか? オーディエンスのノリも、なんかちょいどうなんかなぁって感じやし」

「ま、それは思ってた。歳も離れてるしなー。問題は中村か」

「あぁ、それは確かに」

「あいつはなかなか上手いぞ」

「ムカつくけどな」

「まぁ、それはそうやけど」

「とりあえずええんちゃう。今は考えんで」

「うん」

 それで自分と寺尾は宴の喧騒の中、トイレに行くフリをして順番に店を出た。一気に行くとバレそうなので。先に寺尾、十分後くらいに自分も荷物をまとめて、ってもギターしかないのだが、そっと席を立った。

 曲がり角を曲がった時、酒を運ぶ女店員とぶつかりそうになり、謝る。すると何の偶然か運営管理をしている学生とトイレ前で鉢合わせた。吐いてきた帰りなのか顔が白い。クソ生意気にポールスミスのジャケットなんて着てやがる。自分なんてもう何年も前に買ったノーブランドのけばけばのジャケットなのに。

「アレ? もう帰るんですか?」

「あ、うん。明日も早いし」

 適当なことを言った。

「あー、そうですか」

「じゃあまた」

 そそくさと横を通り抜ける。しかし。

「あ、お金」

 なんてくだらんことを思い出したくだらん野郎の声が背中にかかる。気付くなダボ、酔っ払い。

「お金払いました?」

「あー、お金ね。あの、渡したよ、さっき。隣の席にいたやつに」

「隣にいたやつ?」

「あのー、なんか赤いセーター着てたやつ」

 これも適当だった。野郎は一瞬自分のことを疑うような目で見たが、

「そうすか。じゃお疲れ様です」

 なんてふらふらと自席に戻って行った。

 危ないところだった。それで店を出る。

「遅えよ。寒い」

 ダウンジャケットに身を包んだ寺尾が向かいの路地に座り込んで煙草を吸っていた。十二月の空の色、黒。空気は鋭いくらいに澄んでいた。

「危うく捕まるとこやった」

「何が?」

「いや、幹事のやつに」

「そうか。もう早よ行こ」

「うん。ラーメンでも食べて帰る?」

「いやお前、五百円しかないんやろ」

「あ、そやった」

「何が、あ、そやった、や白々しい。上手いこと言うて足りん分俺に出させる気やったんやろ」

 はは、なんて笑って誤魔化す。遠からず当たっていた。

「でもまぁ、もう一杯くらい飲もうよ。コンビニででも酒買って」

「そうするか」

 それで目に付いたコンビニでワンカップとスルメイカかなんかを買って、少しでも電車代をケチろうと次の駅まで線路沿いを歩きながら二人で飲んだ。線路沿いの道は誰もいなくて、藍。街灯も少なく暗かった。

「寺尾、お前明日は仕事か?」

「あぁ。昼からやけど」

「大変やな」

 寺尾は大学在学中からずっとレンタルビデオ屋でバイトをしている。だからもう勤続十年以上ということで、バイトリーダーとしての存在感、スキル、とうにマックス値まで達しており、その実力は店長クラス、下手しエリアマネージャークラスとも肩を並べるレベルなのだとかなんとか。知らんが。

「お前は相変わらず働いてないんか?」

「うん」

「ほんで毎日何してる?」

「曲作ったり、酒飲んだり、あとは野良ついてる」

「はぁー、ええご身分ですな」

「それほどでもないよ」

「いや、褒めてへんから。菊ちゃんは何も言わんの?」

「何もって?」

「や、働けとか。普通あるやんそういうの」

「ないなー」

「まぁ、あの子もちょっと変わってるしなぁ。結婚して何年やっけ?」

「三年? かな。ちゃんと籍は入れてないけど」

「で、それから生活は全部菊ちゃんの収入なんやろ?」

「そう。だからだいぶキチーよ」

「やかましい。キチーよ、じゃねーわ。ヒモ野郎。テメーが働けよ」

「なぁ」

 そう言って自分は煙草をふかす。

 今の寺尾の言葉だけを聞くと、自分はクソで、働く気のまったく無い腑抜けのように聞こえてしまうかもしれないが、それはちょっと違って、誤解なのである。

 自分は働く気が無いわけではない。むしろあるのだ。もちろんまぁ、本流は音楽なのであくまで当面の生活のためだが、働きたい、そう思う。ただ、自分が不運なのは自分と適正の合う職業がなかなか見つからない、ということなのだ。

 大学を出てから、一応職に就いたこともある。二回だ。警備員と印刷会社の営業。警備員はバイトだったが、印刷会社の方は契約社員だった。しかし、どちらも残念ながら自分には合わなかった。

 まず警備員。これは非常にシンプルな業務内容で、ビルの前に立って往来する人々の通行証を確認したり、疲れきった彼らに「お疲れ様です」なんて優しく声をかけたりしていた。立ち仕事がしんどかった、というのもまぁあるのだが、決定打は働き出して五日目、フト思った。例えば今、凶暴な悪漢が当ビルを強襲してきたりしたらどうなるのであろうか? なんて。で、結論。自分は立場上この悪漢を無視することはできないから、「あかんですよ」なんて声をかけなければならないのだが、相手は悪漢なわけで、そう易々と「あ、そうすか」なんて踵を返すことにはおそらくならず、直ぐに戦闘に入るだろう。そしてそうなると多分、自分はすぐにやられるのだろうなぁ、と思った。自分はどちらかと言うと痩せ型で、もちろん格闘技など全く縁のない人生を歩いてきた漢である。完膚無きまでにやられるであろう。それって、ダメやん。何も警備できてねぇ。と思った。

 できないことを引き受けるのは良くない。それでそんなことになる前に自分は早々に警備の職を辞した。

 印刷会社の方は営業で、こちらは周囲の人も優しくなかなか良い職場であった。

 ただ、良くないのは景気で、印刷会社。このご時世、上り調子なわけがない。ウェブ化・ウェブ化のこの時代、世間の誰もが印刷と聞いて先行き明るいイメージは持たないだろう。自分はそんなことを考えて就職先を選ぶ頭もなかったクチだが、まぁ、そんな業界である。

 よく客先でも聞かれた。印刷業界は今はキッツいですよねぇ、なんて。自分は一応営業なので、相手を不安にさせるのも良くないと思い、やぁ、まぁ最近はいろいろ手広くやってますよー、ほら、あのー、その、ウェブとかもね、手広く、ははは、なんて言っていたのだが、まぁ、キツい。勤めていたのは短い期間ではあったが、確実に業績は落ち続けていた。実際、キッツかった。

 で、売り上げがキツいと、だんだん社内の空気も悪くなる。

 キッツいと、上層部は自分のような営業課員に対して、とにかく仕事を取ってきなさい、と言う。新規受注。これは至極まともな話であり、売上が足りない→仕事を取って来なければならない、というのは自然の摂理。腹が減ったからコンビニにカップ麺とおにぎりを買いに行かなあかんなぁ、というのと同意義で、これを営業課員が断る理由は無い。そしてもちろんそこには各々の計画、目標なるものが設定され、つまりこれは、どれだけの食い物を食べれば生命体として今後も活動が維持できるか、という話であり、絶対的に達成をしなければならないものなのだ。当然である。当然だからこそそれに届かぬ者は未達成、落第者、駄目駄目君と印を押され、上層部からはそれなりのお叱りを受けることになる。

 自分は、お叱りをいただくこと自体は別に構わないのだが、とにかく無理なのだ。できないのだ。売上が上層部の思ったように上がらない。だって、ウェブ、ウェブなんやもん。ペーパレスなんやもん。そりゃ自分だって頑張った。奇跡的に多少の成果も上げた。しかしそんなものは最早焼け石に水で、何にもならんかった。

 で、自分はだんだんそういう暗いアレコレが嫌になってしまったのだ。無理なことをやれと言われることも、無理だと素直に言えないから無理だということを遠回しに伝える技術も、何もかもが無駄でしょうもないことに思えたのだ。茶番と言うか、くだらん堂々巡り。やがて自分はこの職も辞した。ぎりぎり一年もたなかった。それが確か菊と一緒になる少し前だ。

 で、そこから自分は職に就いていない。理由は、自分に合う職業が見つからないからだ。

「次のライブって予定ないよなぁ」

 フイに寺尾がボヤく。

「うん」

「これからどうしよう」

 そう言った寺尾の声は氷のように冷たくて、自分は少し驚いた。

「おい、おい。ライブの予定なんてまた入れればええやろ。そんな悲観せんでも」

「だってサークルのイベントももう出れねぇし、先行き暗いぜ、実際」

「実力があればどうにかなる話やろ」

「それがなかったら?」

 自分は黙ってワンカップをまた一口やった。

「やるしかねぇーよ。ここまできたら」

「そりゃ、そうやけどさぁ」

「何?」

「あまりに戦略がないよなぁ、俺たちの活動には」

 まぁ、それは確かに。

 ずっと向こうに駅の灯りが見えた。この様子ではまだ二十分ほどは歩くだろう。電車が何本も我々を追い越して行った。すごいスピードだった。



 家へ帰るともう零時を超えていたのだが、菊は台所に立って何かを作っていた。

「おかえり」

「うん。何? こんな時間に料理?」

「料理って言うか、実験て言うか」

 フライパンの上には薄いベージュ色の何かが薄く切られて炒められていた。

「何、これ?」

「キクイモ。根の部分が食べられるって聞いて裏の山沿いで集めてきたのよ」

「え、裏の?」

「そう。調べたら食べられるって書いてあったから」

 自分は驚きで背中に背負ったギターを置くのも忘れていた。野生の草花。まさか自家のフライパン上でお会いすることになるとは思ってもみなかった。

「だって、昨日スーパーでいろいろ買ったやん。あれは? あの食材はどないしたん?」

「あれはまぁ、あれであるけど、備えあれば憂いなしというやつよ」

「こんなことまでせんとあかんの?」

「んー、まぁ貯金は多分また近々底を尽くしね」

 厳しい現実をさらっと伝えてくれる。

 それで菊は菜箸でフライパンの中のそのキクイモをひとかけら取って口に入れた。

「ん、いける」

「いけるの?」

「いける、いける。食べてみる?」

「うん」

 それで自分もひとかけら食べてみたのだが、これが意外と、確かにいけた。

「じゃがいもみたいね」

「そうそう」

 フライパンの中には炒められたキクイモの根がまだたくさんあった。量からして、おそらくそれなりに苦労して集めてきたのだと思う。

「もっと食べる?」

「や、今はもういいよ」

「そう」

 菊は少し残念そうに残りのキクイモをタッパーに移した。自分は蛇口の水をコップに注いで飲む。

「ライブはどうやった?」

「まぁ、いつも通りやったよ」

「ほんま。寺尾君、元気やった?」

「うん。相変わらず」

「次あたり私も久しぶりにライブ行こうかな」

「あー、うん。まだ予定決まってないんやけどな」

「決まったら教えてよ」

「うん」

 それで菊は、おやすみ、なんて言って寝室へ入って行く。自分はその背中を見送った。

「普通は働けとか言うよなぁ」

 取り残されたリビング、自分は独り言のように言った。ほんとにそう思う。普通の人は野生のキクイモなんて採取して食べないのだ。泣けてくる。いや、泣けてくるのは菊の方か。自分には涙する資格すらない。しかし菊は泣かないのだ。これはもしかするとすごいことなのではないだろうか。って何を少し離れた第三者的な目線で言っとる。感謝しなければ。菊に。もっと、もっと。野草なんかではなく美味いものを食べさせてやらねば、強く思った。

 そんなことを思いつつ自分は畳に横になった。頭が曇だ。眠気が脳を蝕んでゆく感じ。じわじわっと侵食していく感じ。

 問題はいつも明日に有って、今日には無い。訳の分からん理論でこの日はそのまま就寝。



 人間の頭というものは都合の良いもので、一晩しっかり寝るとほんわかとして、昨夜の悩みや決意なんていうものも、太陽煙る布団の上で平和な朝を迎えてしまうと、なんだかもう、急にどうでもいいことのように思えてしまう。少なくとも自分の頭はそういう造りになっているようであった。

 だからあの日、ライブ終わりにキクイモを食べたあの日の決意、菊に美味いものを~というのも翌朝には何だか少し面倒になっていて、コーヒーを一杯飲んでベランダに出て煙草をふかしている頃には何かをどうにかしてやろうという気持ちは自分の中から完全に消えていた。

 で、それからもう二週間程経つが、自分は相変わらず野良ついている。

 ただ一つ、一週間前に小さな奇跡が起きた。

 何かと言うとこれ、自転車である。折りたたみ式のやつで変速やライトのようなものは仕様外であったが、タイヤ、ホイール、ブレーキ等の基本部分は問題なし。少し重いのが玉に瑕だが、割に綺麗だ。そんなものをどうしたのかと言うと、拾ったのだ。近所のゴミ捨て場に捨ててあった。最初にそれを見つけた時、自分は煙草を吸って野良野良歩いていたのだけど、目を疑った。なぜならそれは周囲にある他のゴミ達とは違う、明らかに異彩のオーラを放っていたから。オーラって言っても分かりづらいな。なんと言うか、良品の、正常な感じ。オレ、使えるぜって感じで発光していたのだ。

 自分はすぐにそれを手に取り、試しにブレーキを握ってみた。良品だった。圧倒的に。

 それでそのままの勢いでサドルに跨り、すぐにその場を離れた。自分は自転車を手に入れたのだった。

 実際に乗ってみて思ったのだが、自転車。バイシクル。これは素晴らしい乗り物だった。と言うのも借家から件のスーパーまでは乗車賃を支払いバスに乗れば十五分だが、徒歩だと四十五分はかかり、日常的に通うことを考えるとこれは絶望的な距離であったのだが、自転車ならなんとその半分の二十分で着ける。信号の具合によってはバスに勝るとも劣らない。もちろん無賃。素晴らしかった。これがあればもう乗車賃を払ってバスになど乗らなくてよいじゃあないか。自転車。なぜこんな簡単なことに自分も菊も気づけなかったのか。まったく、どうかしていた。

 更に、自分はこの乗り物を活用して、夕方は最寄駅までパートタイムから帰る菊を迎えに行った。菊のパートタイムは交通費支給なのでちゃんとバスの乗車賃も出るのであるが、往路の分だけでもケチれたら週五日、二百二十円×五で千百円の金が手元に残る計算である。これは非常にでかい。

 それからの自分のライフスタイルは昼起きる→自転車で駅まで降りる→昼からやっている安居酒屋で酒を飲む→夕方に菊を迎える→二人で家に帰り夕飯を食べる→日によってはやる、寝る、という形で定まった。往路のバス乗車賃をケチれているという優越感で昼酒も美味いし、これは本当に夢のような生活であった。

 今日も自分はいつも通り暖床で十一時頃に目覚めた。窓から見える屋外は当然明るく、鳥が二羽ばさばさと窓枠の外、左から右へと横切るのが見えた。起き上がり台所であぁぁぁぁとうがいをする。換気扇を付けて煙草を吸う。

 テレビをつけるともう昼時のバラエティ番組が始まっていて、最近売り出し中の男性アイドルグループが番宣か何かで出ていた。彼等は五人組で、皆揃って端整な顔立ちをしていた。自分は煙草を吸いながら彼等を見て、自分もこういう顔立ちで生まれていたのなら今頃、三十過ぎの頃合い、いったい何をしていたのだろうかなぁ、なんて考えた。そして、まぁ、おそらく女抱きまくってたんやろなぁ、ってそれしか浮かばなかった。だって、そやないか、普通。普通は。しかしそんなことしか考えつかない自分は世間から言わせるとやはり下衆で。そんな下衆がこの先どんなに頑張ってもこのような端正な顔立ちに輪廻転生することはおそらくない。あってたまるか。

 てかそもそも輪廻転生って何よ。例え次世で自分が何かの間違いでこのようなウェーブした茶髪と王子様のような衣装の似合うクールガイに成れたとしても、それはあくまで次世のことであって、言い方によってはそれは自分かもしれないのだが最早もう自分であって自分ではない。前世が何だったのであろうと今は今で、現に自分は前世の記憶など微塵も無い。つまりは死んだらそこには死があるのみで、輪廻転生なんてものはもっと上の、おそらく神的な管理者が頭を悩ますことであって、一般レベルでは輪廻転生なんてものは存在せず、そこにあるのはただの死なのだ。うん。

 つまりはまぁ、自分が自分である限りあのような端整な顔立ちになることはまずない、ということである。

 それで今日も愛車に乗って駅前まで行った。

 もうすでに行きつけになっている安居酒屋に入り、瓶ビールと板わさ、タコの唐揚げを注文し一杯やる。醤油に山葵を溶く。昼酒なんて、と思うことなかれ、意外とこんな時間でも安居酒屋には客は入っていて、決して自分一人なわけではないのだ。仲間達。ほら、今日も皆ぼろぼろのジャケットを着込んで何やら不景気そうな顔して酒をやってる。はは。まぁ、向こうも向こうで自分のこと、そんなように思っているかもしれんけど。もちろん誰も会話したりしない。自分を含め、皆、黙々と酒を飲むだけなのである。

 それで店内に携帯のバイブ音。

 誰? 誰? って、あ、なんだ自分か。自分の携帯か。

 表示を見るとこの前のライブイベントで運営管理役だった学生からの電話だった。あの日、帰りしなにすれ違った奴だ。あれからというもの、毎日毎日電話を掛けてくる。おそらく、てか間違いなく金の話だろう。自分は彼からの電話を全て無視していた。しかし、十も若い大学生に金を取り立てられる自分、ミソージ、それってどーなんやろ。そんな気持ちを今日もアルコールで洗う。

 身体のことを思って、自分は毎日瓶ビールは一本にして、あとは酒に切り替えることにしていた。安居酒屋の商業用アルコールのような日本酒。悪酔いしちまいそう。しかしそんな酒が最近、一番グッドバイブレーションなのである。って、え、え、今のグッドバイブレーションって何? 言葉の使い方間違ってるくない? そう思った時にはもう遅し。酔いは波のように思考の砂浜を色濃く染めていた。

 そうして野良野良で飲んで外に出ると十六時近辺で、菊のパートタイムは十七時までで、いつもだいたい十七時十五分くらいには最寄駅まで帰ってくる。自分は残りの一時間程度をコンビニで立ち読みでもして時間を潰し、菊を待とうと考えた。

 酔いの回った頭で街を見渡すと、シティは完全に機能していて、奥様方はスーパー帰りでレジ袋をぶら下げ、外回りのサラリーマンは今から戻って伝票処理でもするのであろう、皆キリッとした顔をしてる。小学生達はけらけらと笑い合って夕飯時のアニメ漫画を観るために家路を急ぐ。何千年と続いてきた生活のサイクル。自分は今、それから外れてしまっている人間なのだなぁ、と改めて感じた。

「おい、牧村」

 その時、フイに背後から声を掛けられた。振り向くとそこにはスーツ姿の綴がいた。

「おお。綴、久しぶりやん」

「久しぶりやな。なんや、また飲んでんのか?」

「あぁ、まぁ今日はたまたまな。お前こそなんやー、その格好は」

「なんやってお前、サラリーマンなんやから当たり前やろ」

「髪も短くなって。えらい様変わりしたな」

 一緒にバンドをやっていた頃の綴は腰近くまで届く長い長髪だった。

「そりゃ切るわ。俺、一応営業マンやからな。今も外回り中や」

「はぁ、大変やな。営業は昔少しやったことあるから分かるわ。仕事、長く続いてるんか?」

「せやなぁ。バンド辞めてすぐ就職したからもうすぐ三年か。実はあれから結婚してもうすぐ子供も生まれる」

「わ、マジか。何も聞いとらんぞ」

「何か言いにくかったからなぁ。俺、すっかり一般人、つうか普通の社会人になってもうたから、牧村は何となく怒るかなって」

「怒らん、怒らん。おめでとう」

「ありがとう。ほな、俺、仕事戻らなあかんから」

「忙しいな、務め人は。ほなまた」

 それで綴は改札の方へ歩いて行った。自分は手を振りその背中を見送る。気持ち、早足な気がした。

 しかし綴が結婚かー。子供かー。あのドラム馬鹿が。長い髪を振り乱して叩くドラム。野生的やったなぁ、奴のドラムは。てかマジ子供って。就職して、結婚して、子供できてって、トントン拍子やないですか。ははは。

 その時、心の中にシコりを感じた。

 え?

 何?

 あ、怒ってる?

 いやいや、別に怒ってなんていない。

 何だ、これは。自分は内なるそのシコりに付ける相応しい名を知らなかった。分からんが何かが胸を締め付ける。酷く苦しい。

 嫉妬?

 や、それも違う。自分は断じてサラリーマンなんかに、普通の社会人なんかになりたいとは思わない。出世して、主任になって、課長代理になって、課長になって、部長になって、本部長になって、なんて、そんなことしたくない。社会の歯車なんかになりたくない。

 それで自分は気付いた。

 自分はそんなふうに普通を望めない自分が苦しいのだ。怖いのだ。

 音楽で成功したい。

 バンドで売れたい。

 それしかなかった。

 自分は、社会を生き抜くためのイロハだとか、日経新聞の一面だとか、そういうものにはまったく興味が持てなくて、目に止まるというと、街行く非行少女の表情だとか、薄暮の感じとか、ラーメンから立ち昇る生糸のような湯気だとか、そういったものばかり。あと、水芭蕉とか。世間ではそんなもの、一円の価値も無いのに。それなのに自分にとってはたまらなく愛しい。

 土台、普通の務め人とは向かう方向が違うのだ。

 音楽を志す以上、それはそれでいいのだが、仕方がないのだが、過去に同じく音楽の道を志した友の変わってしまった真っ当な務め人姿を目の当たりにして、自分の中の何かが一瞬揺らいでしまった。昔はそんなことはなかったのに。自分も歳を取った。気付けばもう、かなり遠くまで来てしまっていた。

 駅前の雑踏の中、自分は愛車を手にそのまま立ち尽くしていた。

 十七時二十分。改札から菊が出てきた。菊はこれまた自分と同じく何年も着込んだジャンパーを着て、ボリュームのあるマフラーを首に巻いていた。スヌードつうのかああいうのは。

「ただいま」

「あ、おかえり」

 菊に声を掛けられて自分は少しばかり正気を取り戻した。

「どしたん? 顔色悪いけど」

「そうかなぁ」

「何かあったん?」

「や、別に」

「ふぅん」

 菊はそう言って歩き出す。吐き出す息が白い。一目見ただけで頬は冷たいのだろうなぁ、と分かる感じだった。

「菊」

 呼んでみた。すぐ隣にいるのに。

「なに」

 そう言った菊は少し怪訝そうな顔だった。

「や、乗りや」

 自分は愛車に跨って言った。本当に言いたかったことは喉の奥にしまった。菊は小さく頷き後ろに乗った。今日綴に会ったことは、菊や寺尾には黙っておこうと思った。それで可能であれば自分も忘れてしまおうと思った。

 家に帰ってほうれん草と豚肉だけが入った鍋を食べて寝た。

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