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八話 見た目は幼女、中身は大商人。

 目に留めて頂きありがとうございます!今回はペトラの可愛くて無邪気な姿を強くイメージしました!五歳児の女の子くらいに見えるけど、実際は成人しているペトラさん。

 出発してから一時間程が経ち、道は少し山なりに上がってきていた。どうやらここから下り坂になるようだ。緩い傾斜を登り切ると、パルサの街が姿を見せた。



「うわっ!なんだあのデカさは!こんなに大きい街だったのかっ――」



 街道の道幅が四メートルとかなり広めであった事から、それなりに大きい街だろうと、想像を膨らませていたが、最初に泊まった村の何倍か分からない程大きい。


 街の門まで距離にすると約一キロメートルほどではあるが、視界の幅がほとんど街の防壁で埋まっている。



 言うまでもないが、元の世界は平和で街の外壁などはない。単純に大きさで比べれば自分の住んでいる街よりかなり小さいだろう。


 だが、その長く続く防壁は、佐藤さんを圧倒するには十分な迫力を持っていた。



「街であんまりはしゃがないでね!田舎者っぽくて恥ずかしいんだからっ!」


 リーシャは、サトーが転生してきた事を既に知っており、はしゃぐのも仕方ないと分かってはいるが、あまり奇想天外な事をされると自分まで恥をかくため、釘を刺さずにはいられなかった。




「分かってるって!」

(俺は子供じゃないんだから大丈夫だっての!)


 だが、佐藤さんの表情は、「早く街が見たい!」と言っているようにしか見えない。子供が遊園地を目の前に、目を輝かせているような顔だ。



 リーシャは首を落としながら、苦笑いをしている自分の顔を押さえた――






「そんなに驚く程でかいですかー?南にもこれくらいの街はあったのですよー?サトーはどこから来たのですかー?」ペトラは、当然の疑問を投げかけた。




 しまった……サトーは軽くパニックになり言い訳が全く出てこない。子犬の様な目で、リーシャを見つめた。




 言わんこっちゃないと言う様な顔をしながら、リーシャが説明した。

「サトーは、記憶喪失で最近までの記憶がほとんど抜け落ちてて。見た事ない訳がないのに、こんなに驚いてるのはそうゆう事なの。」




「そ、そうなんだ、俺ほとんど記憶がなくて、あはは!あいたっ!」




 リーシャに耳を引っ張られ小声で、「少し黙ってて。」とちょっと怒った様な声で言われた。




 下手に言い訳をすると、嘘がバレてしまうためリーシャは無理やり黙らせた。佐藤さんは、とんでもなく嘘が下手なのである。




 ペトラは気付いていない様だから良かったが、嘘がバレて商人からの信用を失えば、これから住むであろうあの街に住みづらくなってしまう。




 更に不味いのは、バレて本当の事を話しても信じてもらえず、腹を立てられる可能性がある。そもそも話しても良いかどうか見極めるのは難しい。



 リーシャは、サトーが転生者であり、嘘が下手な事も重々承知しているが――いや、むしろ嘘が下手な男は好きなようだが、少しは慎重になって欲しいと感じていた。



(な、何で怒ってんだリーシャ……なんかすごい怖かったんだけど、ちょっと静かにしとこう……)



「なるほどですよー!それなら納得ですー!なんだか変な事を聞いてごめんなさいなのですー!」


 ペトラは、特に変わらず子供のような可愛い笑顔だ。これで成人しているとは言うのだから、驚きだ。




 そんな話をしている内に、かなり街の近くまで来ていた。佐藤さんは段々と近づく壁に気付いていて、内心は走り出したいくらいだが、隣の人の鋭い視線が自分に刺さっている。下手な動きをすまいと、ロボットの様な堅い動きになっていた。




「兵士さんご苦労さまなのですよー!」

「おー、ペトラさんお疲れ様です。後ろの方はどなたでしょうか?」兵士が、堅い動きをしているサトーを見ながら言った。


「私の命の恩人なのですよー!」


「なんと。いや、ペトラさんの恩人に申し訳なく誠に言いづらいのですが…」



「荷物検査ならどうぞ。構いませんよ、大した量でもないですし。」

 リーシャは、優しそうな笑顔で武器や荷物を差し出した。




「感謝致します――――ありがとうございます。パルサへようこそ。」同時に門がゆっくり開かれた。




 二人は、荷物を受け取り中へと歩いていく。扉を開けると五メートルほどのトンネルになっており、内側にはレンガが敷き詰められている。その先には、円形の広場になっていて中央には、等身大、いやもうすこし大きいか――女神のような石像が建てられている。




 その奥は三方向に道が分かれており、道の通りには様々な露店が並んでいる。日が落ちてきているせいか、そこまで活気があるとゆう感じではないが、家の壁や道がとても清潔で赤いレンガと相まって、明るさを感じる。




 ぱっと見、ここら辺はレンガ造りの家が多い。自分が住む家はどんな家になるだろうと、妄想が膨らむ。


 勿論、無駄にお金を使うわけにはいかないから良さげな家には住めないだろうが、どんな家でも楽しみではある。



 


 ペトラの案内で、ストラウスという者の家の前に到着した。夕日が落ち、暗さが増してきた。


 貴族なのだろうか、この周辺ではこの家だけが広い庭があり、家も付近にある家のざっと五倍くらいはありそうだ。


 私達の世界の一般的な一軒家で言うと三軒分に相当するだろう。庭の広さは家と同じくらいの敷地だ。




 どうも、この世界の家はあまり高さのない平屋が多く、宿屋や公共の施設は二階建ての大きめの建物が多い。



 それ故に尚更、この家は大きく見える。



 庭を通り扉の前までくると、ペトラが小さい体を目一杯背伸びさせながら、扉を叩く。なんだこの可愛さは――この世界では、いきなり幼女を抱きしめたら犯罪に問われるだろうか……いや、犯罪に問われる前に隣の人が何かしかねないと思い、留まった。





「どなたでしょうか。」

 その声はとても低く、頭を通り越して響くようなハッキリとした強さを感じるが、その中に暖かさのような優しさを感じた。決して大きな声ではない。



 軍の隊を任されるような人望のある人だったり、大勢の人の前に立つ人は、遠くまでよく声が通ると聞いた事がある。




 家を見れば高い地位である事は分かるし、優れた剣術をもつとの前情報もあるが、佐藤さんは声を聞いただけで、この人が人望が厚く、カリスマ性を持っているに違いないと感じていた。


「ペトラなのですー!ファビオさんから伝言を預かっているのですよー!」


 ペトラはいつも通りの言い回しで説明する。仮に王様が相手でもこの喋り方で許されそうなくらい可愛い――




 扉が開き、ストラウスが出てきた。その姿は、想像よりもずっと華奢だ。ファビオの体格がゴツかったのでそれに近いものを想像してしまったせいもあるが、剛ではなく、明らかに柔である。動きもしなやかに感じる。



 だが、顔立ちは精悍で迫力を感じる、圧力と言い換えてもいい。顔から歳が割り出せない、若さも感じるが、歳を重ねたような渋さもある。


(なるほど、この人から教われば俺でも強くなれそうだ。)




「ファビオさんから手紙を預かっているのですよー!」そう言いながら、ストラウスに手紙を渡した。



「ありがとう、ペトラ殿。ふむ――――なるほど。この少年が。サトー殿とお呼びすればよろしいかな?お隣にいる美しい女性がリーシャ殿ですね?」



「いえ、呼び捨てで構いません、サトー、リーシャとお呼びください。」佐藤さんは、すぐに訂正した。リーシャもそれに頷いた。




「ありがとう、今日はもう遅いが宿などはとってあるかな?」




「この御二方は私の命の恩人なのです!ですので、今日は私がもてなそうと思っているのですー!住む場所についても私が責任を持って仲介するのですよ!」




「なるほど、了解した。では、街に来て最初は色々生活の準備もせねばなるまい、落ち着いてから私の剣術場に来てくれるかな?ペトラ殿に案内をお願いしてもいいだろうか?」



「お任せ下さいなのですよー!」

 ペトラは小さくお辞儀をした。


 三人は挨拶を済ませ、ストラウスの豪邸を後にする。




 数分歩き、ペトラの家らしき場所に到着した。これは何度も言っていることだが――見た目は子供にしか見えないが、家を見れば腕の立つ商人である事は伺える。平屋ではあるが、広さはストラウスの家に匹敵する大きさだ。庭は流石にない。




「おー!ペトラさんもすごいですなー!」

 佐藤さんは、ペトラの肩をゆさゆさ動かしながら褒めた。




「むふっ、ペトラはすごいのですよー!」


 ペトラは腰に手を当てて胸を張った。佐藤は、何か理由をこじつけて抱き上げる事はできないだろうか、などと企んでいる――いつもは佐藤を抑制するリーシャだが、実はリーシャもペトラをなんとか抱っこさせてもらえないだろうかと、考えを巡らせていた。




 だが、機嫌を損ねられるのが怖くて二人は行動を移せず、満面の笑みでモジモジしていた。


 すると、ペトラが家の中を案内すると言って、小走りでちょこちょこ動きながら説明を始めた。



 ついて回ってはいるが、二人はその姿が可愛すぎて全く内容が頭に入ってこない。




 家の中には沢山の客室に、台所がついている大きなリビング、台所と言っても石窯であるが、そして石でできたお風呂まであると言うではないか!


 ――だが、沸かすには人がつきっきりでないと使えない。大勢人を呼んだ時だけ人を雇って風呂を使うらしい。普段は水浴びである。



 が、ペトラは街についてすぐに、料理を手伝う者、部屋を清掃する者、風呂を沸かす者を手配していたようで、メイドのような格好をした者が数名、与えられた仕事をテキパキとこなしている。




「お風呂!?ほんとに入っていいの!?ペトラ大好き!」

 リーシャはそう言いながら、ペトラに抱きついた。ペトラを抱きしめながらドヤ顔でこちらを見上げている。悔しいが、佐藤さんにはその戦法は実戦できそうにない。




 リーシャはお風呂に入れる事を知って、珍しく目を輝かせている。サディストになる時以外は、珍しい――であるが。



 前にリーシャが言っていたように、貴族くらいでもなければお風呂に入れるなんて事はないのだろう。もう入れないかもしれないお風呂だ、今日はゆっくりと浸かろう……




 お風呂が沸いたようで、リーシャがスキップでお風呂場に向かって行った。既に防具は外しており、脱衣所で麻の下着をカゴにしまって胸を手で抑えながらお風呂に近づく。脱衣所と言ってもお風呂場との仕切りはない。お湯を手で少し触ってからゆっくりと体をつけていく。



「ふぁぁーっ、貴族の人は毎日こんなのに入っているのね、羨ましすぎる……」



 余程気持ちがいいのか、リーシャは目をトロンとさせている。お風呂場には石鹸も置いてある。平民では体験する事ができない贅沢を味わい、とろけるような表情になっているのかもしれない。



 その頃、佐藤さんは家の中を見て回っていた。廊下の壁には等間隔に火が灯してあり、暗さはあまり感じない。




 平屋だからか、窓のようなものはないが、廊下の天井近くにはレンガ一個分の隙間が等間隔にあり月の明かりや日が廊下に挿すように作られている。



「おーっ……」


 佐藤さんは、ただ長い廊下をぼーっと突っ立って眺めている。佐藤さんの感覚で言えばお洒落な家とゆう感じだろう。赤レンガで作られた家は、元の世界と比べればレトロとも言える。ゆっくりと散歩をする様に歩いた。



 気付けば、台所のあるリビングに戻ってきていた。そこにはとても三人では食べきれないであろう、様々な料理が並んでいた。

 匂いを嗅いだだけでヨダレが溢れそうだ。


 湯気が立ち昇るシチュー。



 鉄板の上で弾けるような音を立てる分厚いステーキ。



 新鮮で彩りの綺麗な野菜。



 焼きたてのパンの香ばしい匂い。



 我慢するのが苦しいほど魅力的な料理が、テーブル一杯に並べられている。




「リーシャ殿が戻ってきたら、食事にするのですよー!」


 佐藤さんは、きっとリーシャもだらしなくヨダレを垂らすに違いないと想像してニヤニヤしながら、お風呂から出てくるのを待った。



 しばらくすると、いつもの部屋着でリビングに現れた。


「ペトラ!お風呂最高に気持ちよかったよ!それに、この料理すぎょ……すごいわねっ。」


 リーシャは、喋ってる途中でヨダレが溢れそうになった。佐藤さんは何故か勝ち誇った顔でリーシャを見ている。




「それでは、御二方今日は命を救って頂き、本当に感謝感謝なのです!今日のこのもてなしは、私のほんの気持ちなのです!何か困ったことがあったらペトラが出来る限りお助けするのですよー!」



 いい事をすると返ってくるとは言うが、返ってきすぎて怖い。

「ペトラありがとう、俺たちもペトラが困ったら出来る限り助けるから何でも言ってくれ!」




 二人は、幸せを噛みしめるように料理をお腹一杯に食べた。当然三人で食べれる量ではないので、かなり余ったのだが、手をつけなかった料理はメイドさん達に食べてもらうようだ。


 なるほど、ペトラの専属メイドになれないものかと佐藤さんは、少し悪い顔をした。



 リーシャとペトラは、何やら熱心に料理を作っていたメイドと話し込んでいる。




 佐藤さんは、ゆっくりとお風呂に浸かり、この数日の疲れを落とすことにした。

 ここまで読んで頂きありがとうございます!読者を惹きつけられる作品に出来るよう努力していきます!次もよろしくお願いします!


 作法、誤字などアドバイスがあれば是非教えてください。参考に致します!

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