四話 スタム村
読んで頂けたら泣いて喜び、感想か評価をいただけたら、もう、はねてトランポリンにのっちゃいます。
ふと夜中に目が覚めた。
静寂の中、パチパチと音をたてながら炎が震えている。今は何時くらいなんだろう。リーシャは……
佐藤さんは、周りを見渡した。リーシャは、木にもたれながら月を眺めていた。
「寝なくていいのか?いや、てゆうか寝ろよ。交代する。」俺が寝なかった時は文句を言ったくせに、とんだお人好しなのか、気を使われているのか――
「もう少し――月。綺麗だから。」
銀髪に月の光がかかって、天使のようだ。年甲斐もなく、こんな事を考える自分が少し恥ずかしくなった。
そう、この世界の見た目は十代かもしれないが、心は三十代。おっさんである。
日中に見るリーシャは、天真爛漫とまではいかずとも明るくこっちまで元気になれそうな、例えるならひまわりのようなイメージだが、今の姿は全く……形容し難い美しさだ。
焚き火の暖かさに包まれながら、佐藤さんは考えていた。
家族はどうしてるだろうか。今頃葬式の準備してんのかな。
アニメとかで、異世界転生とか、俺つぇぇー!とか、楽しそうなイメージしかなかったけど、実際なってみるとなんか変な感じだ。
ここが現実だってことは、理解してるけど、死んだ実感がない。
まさか、ゲームの中でショック死とはあまりにも情けない死に方で、笑える。1人でニヤニヤしながら焚き火を見つめていると、リーシャがそれを眺めて楽しげに笑った。
「何考えてんのよっ、黄昏ちゃってーっ」
「いや、死んだ実感なくて、なんか変なかんじだなーって。」
佐藤さんは、笑いながら話す。
「あ、転生したんだもんね、一度死んでるんだっ、どんな死に方だったの?」リーシャは、焚き火を枝でつっついて遊んでいる。
「なんてゆうか、物語の中に入って、登場人物になりきれるんだけど。その最中に死んじゃったんだ。自分としてじゃない感覚だったから……」
「んー、なんだか難しいわっ。よく分からないけど、この世界ではヘマしないように祈っておくわ。」リーシャは、そろそろ寝ると言って横になった。
それから特に何事もなく時間が経ち、日が上り始めた。くすぶっている焚き火を消して、2人は出発する。
リーシャは村がすぐ近くにあるからか、珍しく気の抜けた顔をしている。少し歩くとすぐに、村らしきものが見えてきた。
リーシャと違って俺は、ワクワクしている。
超ワクワクしている。おら!ワクワクすっ……危ない――これはダメなやつだ。
異世界の村だなんてっ!まだまともに人に会ってないし、どんな服着てるかとか、どんな店があるかとか、宿屋はどのくらいちゃっちいのかとか!想像するだけで興奮してくるっ!
「サトー、何でそんな目キラキラさせてるの?かなりあの村小さそうだから、あんまり期待しない方がいいと思うけどなー?」
リーシャはまだ眠そうだ。大丈夫なのか、まだ外だぞ……
正直、戦闘には、全く自信がない。自分の能力もハッキリしない上、ウルフは大して気にする必要のない獣。魔物ですらない、そんなのに深傷を負わされたのだ。
リーシャには、村に着くまではシャキッとしていて欲しいものだ。
人は甘えるなとゆうかもしれない。
だが!しかし!
命は1つしかないのだ!!甘えて何が悪い!!
あえて言おう!!村に着いたと!!
三メートルあるかないかくらいの門があり、村を壁で囲っている。意外とちゃんとしてるようだ。これなら安心して泊まれるか。
「これどうしたらいいの?リーシャ。なんか入り方とか。」
「んー、いらないんじゃないかな?おっきい都市は別だけど、門番の人に挨拶するくらい。」
2人は門の目の前まで来た。
「そっか、分かった。お邪魔しまーす!!!」
佐藤さんは、元気よく声を張り上げた。
「ちょっと!何!?おじゃ?は!?村の門番さん警戒してるじゃない!バカっ!――門番さんごめんなさい!!こいつバカなんです!!怪しいものじゃないので!!すいません!すいません!」
なんとか通してもらう事に成功したようだ。しかし、お邪魔しますが通じないとは、言う通りに挨拶したのに、こいつバカなんですって……世間の風はここでも俺に冷たく当たるのか……
村の中は、確かに小さいが、パッと見ただけでも十人以上は人がいる。佐藤さんは瞳を輝かせたが、リーシャは特に表情を変えずに、ウルフの毛皮を売りに行った。
宿をとっておいてと言われたが、どれだ……通りにはそれっぽい平屋が三軒、二階建てが二軒。ふむ、さすがに平屋ではないだろう。二階建ての建物に行ってみるか。近くまで行くと、小さな看板がぶら下がっていた。
全く分からん文字なのに、読める。変な感じだ。などと思いながら宿屋に入る。
「いらっしゃい、にいちゃん1人かい?」
にいちゃん……なんか複雑だな……
「二人で、一部屋ずつ借りたいんだけど――」
「にいちゃん、それは困るな!うちは小さくてな三部屋しかないんや!別々で泊まられたら残り一部屋になってしまうんだわ!ベッドは2つあるけぇー!一部屋で頼むわ!」
店主は早口でまくしたてた。
「え?」
「え!?」
マジか……どうする俺、でもこれ勝手に決めたら後が怖いが――いや!でも待て!
リーシャは部屋をとっておいてと言ったのに、ここで部屋を取らずに、一部屋も取れないなんて事になったら目も当てられないじゃないか!!他に客はいなさそうだが……
うむ!これは正しい判断だ!
別に良からぬことなんて全く!
これっぽっちも!
考えてはいない!!
「しゃあっ!おんさん!一部屋借りるでぇ!!!」
宿屋の主人とガッチリ握手をした佐藤であった。
二人で銅貨六枚、高いのか安いのか全く分からん……
さて、今の手持ちは元々懐に入ってた銀貨三枚に銅貨六枚を差し引いて、銀貨二枚銅貨四枚。
武器か防具を見たいが、一人で行くとぼられそうで怖いな……リーシャを待つか。
リーシャ様々である。最初はちょっとバカにしてたのに、段々頭が上がらなくなっていきそうで、怖い――
宿屋の前で村の風景を眺めてたら、リーシャ様がお戻りになられた。
「ははぁ!リーシャ様!ご報告があります!」
初めて佐藤は、跪いた。
「え?何?気持ち悪い。」
佐藤は、今うつむいているが、絶対睨まれているに違いないと思い、顔を上げずに言う。
「一部屋しか取れないと店主に言われまして、ツイン……一部屋にベッドが2つあるそうなので、そこでもよろしいでしょうか!」
「なんでそんなハキハキしてるのか分かんないけど、小さい村だし、そうだろうとは思ってたよ?」
なるほど、この世界ではよくある事なのか……
佐藤は、何もなかったような顔でスクッと立ち、武器か防具を買いたいから付き合ってくれと言った。
なんとなく、今は佐藤にさん付けしちゃいけない気がしたので、呼び捨てにしておく。
装備屋さんに来たが、品揃えが悪い。とゆうか、一部位ずつしかないんじゃないかこれ。うーん、あまり必要そうに見えない。
「んー、やっぱり、ここじゃ装備を新調するのは無理ね。」
リーシャは、すぐに踵を返し、歩きだした。
まー、少し残念だが仕方ないか。宿はとったが、日が落ちるまでにはまだまだ時間がありそうだ。まだ昼前ってところか。佐藤は、リーシャに一つ提案をした。
「まだまだ時間があるし、昼食を食べたら獣を狩りにいかないか?少しでも慣れておきたいんだ。分からない事が多すぎる。」
特に自分の能力をもう少しハッキリさせたい。今のままでは、まともに戦える気がしない――
「勿論いいわ!お金も稼げるしっ!昨日休んだ森の付近にしよっ!」
リーシャは、胸の前で拳を握り、今にも飛び出して行きそうな勢いだ。
腹ごしらえを済ませ、次こそは――と、佐藤さんは気合いを入れて、リーシャと森に向かった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。作法、誤字等、気になるところがあれば、是非教えてください!
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