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十六話 佐藤さんの今日の運勢 続

 昨日の出来事を都合よく忘れる事に成功した佐藤さんは、平和?...な一日を過ごす事になるだろう。

 今日は帝都に向かう旅の三日目である。


 ペトラと、リーシャ、そして俺、佐藤はだらけていた。

 ロザリーと替わってやれよっ!!――と言われそうだが、三人とも馬を御せない。



 道中は、ストラウスの騎兵が優秀なのでモンスターが出てもする事がないのだ。ストラウス達に対する警戒も抜け切っている。




 なので、三人は荷馬車の中でトランプに興じていた。


 申し訳ないので、ロザリーには後日何か喜びそうな物をプレゼントするとしよう。




 三人はババ抜きをしていた。負けた者には罰ゲームが待っている。内容はその時に決める様だ。

 現在、ジョーカーを持っているのはペトラである。


「サトー殿どうぞーなのですよー!」

 並べているカードの内一枚だけが少し飛び出ている。




 くくく、ペトラは本当に可愛いのぉー!ププッ。だが、そんな手にこの俺が引っかかる訳なかろう!



 佐藤さんは、飛び出ているカードを無視して、右端のカードを選んだ。



「え。」



「あれー?どうしたのですかー?サトー殿ー?」

 ペトラはニンマリと悪そうな顔を浮かべている。



「どうしたの?サトー?カードを抜く時すんごいドヤ顔だったけど、どうしたの?うん?どうしたのかな?大丈夫?」

 リーシャは……言わなくても分かるだろう。



「え?あ、いや、別にどうもしてないけど?あ、こっちかー!みたいな!?こっちがきちゃったかー!みたいな!?」

 佐藤さんは、おでこの汗を拭った。無論、ペトラからカードを取ったので、ペトラにはバレているが、なんとかリーシャを騙そうとしている様だ。



 カードは全部で五枚、内一枚のジョーカーをどうやってリーシャに掴ませるか……他のカードに意識を向けさせて、ジョーカーを選ぶ可能性を上げるか。


 佐藤さんは、手元のカードを等間隔に広げ、左端のカードをほんの少しだけ感覚を広くして目立つようにしてその隣を少し上に引き出した。勿論ほんの少しである。


 こうする事によって、このカードに警戒心を持たせるのだ。そして残りの三枚の中から選ばせる。三分の一の確率でジョーカーを引く事になるのだ!!



 ふはは!さぁっ!!


 こいっ!!リーシャよ!!


 お前が私に生意気な口をきけるのも今日までである!!



「これかなー。あ、揃ったーラッキー。」

 リーシャは、一番目立たせたカードを躊躇なく抜いていった。



 なんて女だ、やはり只者ではない。私の策を見抜くとは。



 だがしかし!!まだチャンスはある!!



 自分のとる順番が回ってきた。適当に抜き取る。一組揃い残り三枚になった。



 ふふふ、まだ神は私を見捨ててはいないっ!!いや、私は神に力を与えられた男っ!!見捨てられる訳がないのだ!



 先程はリーシャにしてやられたが、今度こそリーシャに目に物見せてくれるわっ!!


「さあ、どうぞ、リーシャ殿?」

 佐藤さんは、爽やかな笑顔でカードを持ち上げた。


 今度は、一枚だけをあからさまに目立たせる!とってくれと言わんばかりにな!

 誰もがそれに気づくが、果たしてこんなに目立たせる馬鹿がいるだろうか。


 否!



 いな!いな!いなっーー!!



 その目立たせたカードはブラフで他のカードにジョーカーがいると考えるだろう。当然リーシャも気づく。


 だが、ここで考える――

 そう思わせて本当に目立つとこにジョーカーがいるのではないかと!


 だがそれは、相手の力量を知らなければ判断できない。そして、リーシャは間違いなく俺を侮っている!



 故に!リーシャは迷わずあからさまに目立つカードを抜き取るであろう!それがジョーカーであるとも知らずになっ!!



「――ほんとに馬鹿ね、そんなカード取るわけないじゃない。」

 リーシャは、ジョーカー以外のカードを抜き取り上がってしまった。



 裏の裏の裏を読んだ事が、裏目に出てしまった。ブラフをかける知恵はないと思われる程、馬鹿にされていた様だ……残りは二枚……


 これでペトラが、ジョーカーを引かなければ負ける……


 ペトラ様ー!!助けて!ペトラ様ー!


 心の中で佐藤は念じた。





 願いも虚しく、ペトラは数字のカードを抜き、上がった。

「やったー!なのですよー!サトー殿罰ゲームなのですよー!」


 勝ち組二人がこそこそと話をしている。



 ふっ、罰ゲームとは言ってもできる事は知れている。構わんさ。




「まぁ、最初だし軽いのからにしましょ。しっぺでいいわよっ。」


 佐藤さんは、大丈夫だとは思いつつも、どこか不安げな表情だ。


 リーシャは荷の中から、ねずみ取りを出してきた。



 いや、待て。


 しっぺだよな?


 それは違うぞ?


 全然軽くないぞ?


 重い方だぞ?


 佐藤さんの不安は的中していた。

「おい、それはしっぺではないぞ?ねずみ取りじゃないか?」


「何?私とペトラが決めた事に文句を言う気?まぁ、私はさておき、ペトラにそんな事言える訳ないかっ!」


 間違いない、この表情には狂気が満ちている。だが、ペトラだって分かってる筈だ!これはしっぺではないと!


 ペトラ様!頼む!なんとか言ってくれ!ペトラ様!



 ――なんだその悲しそうな顔は……「これはダメなのです?」


 佐藤さんは、ペトラがあまりに悲しそうな顔しているのでつい、首を横に振ってしまった。


「じゃあ、決まりねっ!サトーはここにしっぺしてねっ!」

 二人ともワクワクしているのが、表情から分かる。



 しっぺってそう言うことかよ!ねずみ取りに自分から指差し出すのか……めちゃくちゃ罰ゲームじゃねーか!若手の芸人でもなかなかやらねーよ!



 心の中で文句を言いまくりながら、覚悟を決める。


 きっと大丈夫だ。俺には神の力がある。


 きっと防御力とか、ちょっとは上がってる筈だ!ねずみ取り?神から力を与えられた俺様が、そんな物に負けるはずがないじゃないかっ!!


「いくぞっ!!」

 佐藤さんは、人差し指と中指に力を入れて勢いよく振り下ろした。


「おわっ!あっ!あっーー!あっーーーーー!!」

 あっ!あかん!これ、あかんやつや!


 絶対!


 絶対!指折れたでこれ!


 あかんて!これ!


 佐藤さんは、余りの痛みに言葉を喋る余裕が無くなっていた。



 ペトラは、佐藤の苦しみ方に少し心配そうな表情だが、リーシャは床をバシバシ叩きながら笑いを堪えているように見える。




 ロザリーは、馬車の中から聞こえる楽しそうな声を聞いて、羨ましいのか体をソワソワさせていた。



「次は何をするですかー?」

 ペトラは続行する気満々である。


「そうねー、スイカ割りとか?」

 リーシャは、実現できそうにない適当な事を言った。


「どこでやるんだよ。てか、スイカないだろ。」

 佐藤さんは首を傾げる。



「うーん、これとか?」

 リーシャはある物を指差した。




「俺の頭じゃねぇかっ!何で罰ゲーム決めるために、罰ゲームしにゃならんのだ!」

 佐藤さんの切実さがひしひしと伝わってくる。隣ではペトラさんが楽しそうに笑っておられる。





「じゃあ、サッカーとか?たまにはスポーツもいいんじゃない?」

 佐藤さんは、絶対に同じ展開になると確信したが、一応聞く事にした。



「ああ?……ボールは?」

 佐藤さんは、聞く前から露骨に嫌そうな顔だ。



「サトー!今日、お前ボールなー!!」

 リーシャはノリノリで、まるで小学生の霊が乗り移った様だ。



「罰ゲームIN罰ゲームはやめろっ!俺になんか恨みでもあんのかっ!」

 佐藤さんは、余りにもノリがいじめに近いので文句を言った。だが、その瞬間その場が凍りついた様に感じた。


「え??恨み?サトーは昨日の事覚えてないのかな?かなー?」

 リーシャは、何か聞き覚えのある語尾でサトーを煽った。



「な、なんの事だ?昨日なんかあったか?」

 佐藤さんは、一部の記憶をシャットアウトしたためそれがなんだか思い出せない。


「忘れちゃったのかな?かなー?」

 リーシャがじりじりと近づいてくる。気がつくと天幕の入り口がびっしりと閉められ、ペトラがいなくなっていた。


 ペトラは殺気を感じ、即座にその場から脱出した様だ。



「え、え?リーシャさん?いや、すまん!本当に分からん、何かしたなら謝るっ!落ち着いてくれ!」



「本当に覚えてないの?」

 リーシャはサトーが嘘が死ぬほど下手なのを知っている。

 が、その声は嘘をついている感じではなかった為もう一度聞いてみた。


「ああ、昨日の朝から、起きた時までの記憶が思い出せなくて、何かしたなら謝るよ。」

 佐藤さんは、自分の失礼極まりない言動をすっかり忘れ、困った顔をしている。


「じゃあ、罰として私のお願い一つだけ聞いてくれる?聞いてくれるなら許してあげる。」

 リーシャは、人が変わったように可愛らしい笑顔になった。




「な、何だよ?」

 佐藤さんは、少しおどおどしながら問う。



「帝都で時間が空いたらデートしよっ!」

 佐藤さんは、リーシャの唐突な発言に顔が赤くなった。



「え、え?デート?……ま、まぁ、別にいいけど。」

 あからさまに照れ隠しをしている様に見える。


 男子中学生が好きな女子に誘われて、めちゃくちゃ嬉しいけど「は?別にどうでもいいし?別に嬉しくないし?は?」みたいな。傍目からみたら分かり易すぎる態度を取っているが、本人は気付かない。



「じゃあ、決まりねっ!」

 リーシャは、すごく嬉しそうに天幕を開けた。日の光がリーシャの表情に注がれて、佐藤さんはそれに見惚れた。




 こんな感じで、無事平和に一日を乗り切り、明日を迎える一行であった。

 ここまで読んで頂きありがとうございます。


 面白い作品にできる様努力していきますので、もしアドバイスや感想ありましたら是非お聞かせください!


 次もよろしくお願いします!

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