十五話 佐藤さんの今日の運勢
今日は帝都に向かう旅の二日目。佐藤さんの運勢は...
ようやく、朝になったようだ。
結局一睡もできなかった、兵士達が死体を処理はしたが佐藤さんの脳内には、しっかりとあの光景が刻まれている。
ペトラだけは毛布に包まり、ロザリーに添い寝されながら、ぐっすり就寝中であったが。
「ああ、こいつもう息してませんよ、ストラウス様。」
兵士の一人が、捕らえた盗賊の様子を見にいったが既に息絶えていたようだ。
その男には外傷がない。誰が倒したのだろう……
ここでようやく佐藤さんは、ロザリーだと思い至った。ロザリーの姿は、黒装束に拳には籠手、脚には脛当てを装備している。籠手と言ったが、皮製で防御力より動かし易さを優先させている様な、腕まわりはあっさりとした見た目だ。
「ロザリー?あの盗賊倒したのって……」
佐藤さんは、恐る恐る聞いてみた。
「私ですよ?何かありました?」
ロザリーは首を傾げる。
「あ、ああ、いや!別に何でもないです!」
何故か敬語になった。
打撃で人が死ぬ程の威力。この世界の女子は、素手で人を殴り殺せるのか?それならゴリラ並みの筋肉がなければおかしいじゃないかっ!!
聞きたい。あなたはゴリラなんですか?ってストレートに聞きたい!誰にもこの衝動を抑えることはできぬっ!!
いや、待て、ロザリーは流石に知り合ってから日が浅い、このような失礼極まりない言動は控えるべきだろう。
――となれば後は一人しかいない!いざっ!……
「あ、リーシャ?リーシャって実はゴリ――ぶらぁぁぁっ!!!」
リーシャは、予知能力でもあるのだろうか。「ゴ」の段階で右フックを繰り出していた。
「ちょ、待って!まだゴ――ぶらぁっ!ぶらぁっ!ぶらぁぁぁっ!!!」
左、右の華麗なワンツーの後、テンプルに右フックが決まり、佐藤は体を高速回転させながら地面に倒れた。
やはり、俺の癒しはペトラだけだ……
サトーが死んだフリをしていると、リーシャがしゃがんで何事もなかったかの様に話しかけてきた。
「身体大丈夫なの?昨日普通に力使ってたでしょ?」
リーシャがサトーの腕を、指でツンツンしている。
今ボコボコにした相手に身体大丈夫なの?って、なに?
何が目的なの!?
死なない様に殴り続けますって事!??
いつからカテゴリーホラーになったの!?
――佐藤の身体は、恐怖で震えていた。
「あ、かないやばいれふ、特に顔あたりが特にやばいえふ。」最早、佐藤さんは顔が変形しすぎてまともな発音ができない。
とりあえず、これ以上被害を受けない様に佐藤さんは、大丈夫じゃないアピールをした。
「うふっ、良かった、結構余裕ありそうね?」
リーシャの表情は、天使のような優しさを含んでいるが、佐藤さんには全く別のものに見えていた。
な、何言ってるんだこの人は……は?
これのどこに余裕を感じるんだ……
なんだっ、この悪魔は。いや……違う。
あ、悪魔なんて生優しいものじゃない――死神だ。
こ、この女は死神ゴ……
鈍い音が響く。
佐藤は気付いていなかった。心の声が漏れ出ている事に……
「あれ……?」
馬車の中で佐藤さんは目を覚ます。
あ、あれ、俺何してたんだっけ、何で寝てんだ?……朝起きたら捕らえた盗賊が死んでて…………だめだ思い出せない。二度寝でもしたんだろうか。
どうやら、恐怖のあまり脳が記憶を封印したようだ。
天幕の外を覗くと、だだっ広い草原を走っていた。
「いつの間に山岳地帯を抜けたんだ?」
「あら、おはようサトー。ぐっすり眠れた?」
リーシャは、可愛らしい笑顔だ。勿論、他意はない。
「サトー殿寝過ぎなのですよー?夜寝れなくなっちゃうですー!」ペトラは言うまでもなく、いつも笑顔だ。
ペトラが心配してくれている……か、可愛い。
「そんなに寝てたのか俺、昨日の戦闘の影響かな?」
それも否定はしないが、おそらくそのせいではないだろう。
「きっとそうよ、疲れてるの、きっと。」
リーシャがサトーの肩に手をおいた。
なんだ、やけに優しいな今日は。ん?何で俺震えてんだ?これも力の使いすぎの影響か。もっとコントロールできるようにしないといけないな。
くどい様だが、もう一度言おう。
それも否定はしないが、おそらくそのせいではない。
帝都に向かう旅の二日目である今日は、特に何事もなく、一日を終えた。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
読者を惹きつけられる作品にできる様頑張りますので、感想や、アドバイスを頂けると嬉しいです!
次回は、佐藤さんの今日の運勢 続 を投稿します。