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続:乙女 転生の加護を受けただけです!  作者: 浦 かすみ
スイート編

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13/29

本格的な手作りです

スイート編始まります。宜しくお願いします

ガンデンタッテから帰国して、数週間後…私達はナジャガル皇宮の離宮のキッチンに集合していた。


メンバーは…


私…恩田 香澄の他に、葵さん、未来さん、カデリーナさん、なっちゃん、実莉さん、そしてガレッシュ殿下が女子の中にたった一人の男子の参加である。


このほぼ女子メンバーで何故集まっているかといえば


「じゃーん!みんな見て~。カカオから作るチョコレートのレシピをプリントアウトしてきたの!」


そう言って高々と数枚の紙を掲げ持つ葵さんの手には確かにチョコレートの作り方のレシピ。異世界にもどって調べてきたみたい。


私の死後18年の間に、異世界ではSNS?やら折り畳み式の携帯電話がスマートフォンに変わったりとか…メールからもっとお手軽な連絡手段が現れたり…時代は進化している。


という訳で今日は異世界で言うところの「バレンタインデー」まで数日という訳だ。皆様それぞれのパートナー(ご主人様)に渡そうということで熱が入る。


「ガンデンタッテのコンデリーの入手の過程でまさかの、カカオマスっぽい実が手に入るなんてね。」


葵さんは麻袋の中から木の実を取り出してきた。


「これの中の実を取り出してからローストにするんですね」


「へえ…」


私がレシピを見ながらカカオマスの実を剥いてみると、ガレッシュ殿下も一緒に剥いて、実を確認している。


「幸いにもガンデンタッテには既にココアパウダーはあったのよ。ココアパウダーまで辿り着いているのなら後一歩よ!カカオマスを潰して混ぜて滑らかにするのに、本来はすごく体力と時間がかかるものだけど、私達には魔法があるわ!」


葵さんの言葉に拍手が起こる。葵さんは私とガレッシュ殿下に手を差しだした。


「体力面に関しては2人に期待しているわ!」


やっぱり?どうも労働力の面でここに来ている気がしていましたが、そうですか。


それから私達は一斉にカカオマスの実の取り出しを始めた。実をロースト…焙炒にし、皮も剥き丁寧に胚芽も取る。


ここまでの過程が思ったより時間がかかる。


途中で無理をしない程度に休憩を挿みつつ、カカオマスを磨り潰す作業に入った。本当に魔法があって良かった。すりこぎでゴリゴリと潰す。そして砂糖やココアパウダー、粉末にしたミルク…皆で分担して篩いにかけて更に湯煎にかけて…どれくらい混ぜればチョコレートになるんだろう。


「カスミン少しは休んでよ?」


未来さんに声をかけて頂いて、すりばちから手を離した。熱中していた。朝から作業をしていたのにもうお昼すぎだ。


一旦休憩ということで、皆でカレーパン(試作品)を頂く。


「この『カリーパン』もシテルンのショップで売るのですか?」


とカデリーナさんが葵さんに聞くと葵さんはニコッと微笑んだ。


「いいえ、来月にまたガンデンタッテに訪問した時に『アンテナショップ』を開きませんか?とガンデンタッテの役人の方に打診するつもりよ」


「いいわね!」


「ココアパウダー入れて欲しい」


皆がきゃあ~と可愛い悲鳴を上げる。ああ、女子会だな~。この空間にガレッシュ殿下が馴染んでいるのがそれはそれで凄いけど。


そうだこのカレーパン…ガレッシュ殿下が作ってくれたのよね?殿下のお料理本作ればいいのに…後で打診してみよう。


さて昼からも体力を使う。回復魔法を自身の手にかけながら、ひたすらカカオをかき混ぜる。湯煎の温度も魔法があれば安心だ。


時々葵さんと実莉さんがカカオを舐めて舌触りを確認している。


「まだちょっとざらついてるかな…」


「後、もうちょっとだね、よし、カスミン交代!」


「はい、お願いします」


葵さんとかき混ぜを交代する。そして湯煎の温度の調節しながら混ぜ込み…。


「やったー!出来た。さあ、型に入れて冷やすわよ」


カデリーナさんと葵さんがハイタッチをしている。急いでハート型や星型の型にチョコレートを入れて、冷却魔法を使う。(注:魔法は私の担当)


「夕方には固まるわね!市販のチョコに負けない味だと思うけど、楽しみね」


なっちゃんが、ラッピングフィルムを準備しながら微笑んだ。このラッピングフィルムも、異世界の日本の某デパ地下のバレンタインデー売り場になっちゃんと未来さんの2人で乗り込んで買って来たそうだ。


「カスミンも一緒に来れば良かったのに!」


未来さんにそう言われたが、めっ滅相も無い!私のような外人のデカイ女があんな可愛らしい売り場に赴いたら邪魔だし、悪目立ちしてしまいます!


そして夕方


ハート型と星型のチョコレートは完成した。皆さんで一粒づつ試食する。


「ああっ!」


高級感のあるチョコレートの味がする!これだコレコレ…。カデリーナさんが小躍りしている。


「美味し~!」


「ナニコレ?すごいっ鼻に抜けるほろ苦さの中で後に残る甘い香り!」


ガレッシュ殿下が美食家のおじさんみたいなコメントをしている。


女子達は早速ラッピング作業に入った。一粒づつ包んで少しでも多くの男子(女子も含む)に配るらしい。


「はーい、では出来た人から、各自渡す分を持って帰ってね~」


皆様はご自分のパートナーやご家族に配る分を手に取っていく。私は食器の後片付けをしておいた。私は渡すとしてもクリオお父さんは甘いものは苦手だし、ミチランデお母さんは悪阻が始まっているのでチョコレートが食べられるかは微妙だ。自分チョコは今、頂いたしもう満足だ。


鍋やすり鉢を片付けていると、トントンと背中を叩かれた。なっちゃんだ。


「香澄ちゃん、はいコレ」


なっちゃんは星型のチョコレートを2つとハート型1つを持っていた。


「ご両親と…ルル君に」


両親は兎も角としても、ルル様ぁ!?


なっちゃんはニコニコしている。ホラぁ~受け取って!と急かされたので受け取ると、なっちゃんは益々微笑まれた。


「ルル君絶対喜ぶから、ね?ルル君にはハート型だよ?いいね?」


「は、はい…」


妙に迫力のあるなっちゃんに押し切られてチョコを頂くと、もう暗くなり始めた離宮の道を急いだ。ルル様のいる所は分かる、第一部隊の詰所内だ。


詰所に入ると、ルル様の他にジャックス兄貴とコロンドさんが居た。ちょうど3人…都合がよい。


「お疲れ様です」


「何だ?どうした?今日お嬢達と菓子作るとか言ってなかったっけ?」


とジャックス兄貴がニヤッと笑った。ジャックス兄貴も格好いいんだけど、何故モテないのかな…弟のジャレット君はもう彼女が出来たと聞いたけど…。


「え~とその作った菓子が出来ましたので、お裾分けを…」


私は恥ずかしいのもあって急いで室内に入って行くと、どうぞ、どうぞと星型のチョコレートの袋をジャックス兄貴とコロンドさんに渡した。2人共が笑顔になった。そして…


ルル様の側に一瞬で近づくとハート型のチョコレートの袋を差し出した。


「ル…ルル様にもチョコレートお渡しします。受け取って下さい!」


恥ずかしい…この世界にバレンタインデーなんてものは無い。だからその存在を知るはずが無いのに…顔に熱が籠るのが分かる。早く受け取って~~~!


「チョコレート…」


「はい…ハッ!甘いものは大丈夫でしたか!?」


「好き嫌いは無い」


左様でございますか…。ルル様は少し考え込んでからチョコレートの包みを受け取ってくれた。


ミッション成功…!


ものすごい達成感を感じている所にルル様から、とんでもない爆弾発言が落とされた。


「バレンタインデー…だよな?これ…」


メイドのお姉様方を悩殺するという噂の、小首をコテンと傾げたルル様が私を見て言った。


ど…どう……どうしてぇ……どうしてそれを知っているんだぁぁ!ルル=クラウティカァァァ!


ルル様は自分のヨジゲンポッケを開けると、いわゆる雑誌を取り出してきて私に差し出した。


「『今年のバレンタインはこのチョコに決まり♥もう迷わないデパ地下有名ショコラティエ特集号』……こ、これ…あっちの雑誌じゃないですかぁ!」


ルル様は頷いた。


「今のニホンゴだな?ヒルデの話している言葉はこっちじゃ全然分からんな。その雑誌は先日、アオイ様のお供で異界に行った時にコンビニで見つけてアオイ様が購入されたものだ。向こうの世界に居る時は雑誌が俺でも読めたので、この時期はバレンタインデーという習慣が異界にあることを知った」


知った…知ったぁ?知っていたのか!?


「へぇ~それどんな習慣なの?」


ジャックス!余計なことを聞くなっ!


「ん…日頃世話になっている方に贈る菓子…ということだ」


良かったぁぁ…義理チョコの話だったぁぁ!と、油断していたら…


「ヒルデ、俺の貰ったこの形…」


と、また爆弾発言をしそうになったので強制的にルル様に透過魔法強化版をかけて動きを封じた。


つまりルル様を障壁の中に閉じ込めたのだ…。ルル様の姿や気配、話し声は外には一切漏れない仕組みになっております。当然逃げられません…。


ジャックス兄貴とコロンドさんは突然張られた障壁にびっくりしている。


「なんだぁ?」


「変な魔法を室内で使っちゃいけないよ?」


「すみませんっすみません!責任をもってルル様を回収して帰りますから、ではお先に失礼致します」


私は強化版の中に閉じ込めたルル様入りの障壁を抱えると詰所から逃げ出した。そして離宮へ行く裏庭の隅で、術を解術した。


ルル様は眉間に皺を寄せて私を睨んでいた。


「俺は魔人か?」


「すみません」


「あの障壁、内側からの魔力も吸収するし物理攻撃にもビクともしない。とんでもない障壁だな」


「お褒めに預かり恐縮です」


「褒めてない」


「すみません」


「…そうだな、詫びとして今度の休みに俺に付き合え」


「え?」


「付き合え」


「はい」


ルル様は無表情のまま「チョコレートありがとう」と言うと、さっさと帰って行った。


バレンタインデーのことがルル様にバレていたなんて、とんでもなく恥ずかしいことだったけれど、チョコを受け取って貰えてホッとした。


次の休日かあ…一応ルル様と出勤のローテーション合わせておいた方がいいよね。


それにしてもどこに行くんだろう…。いや、待てよ?


剣豪ルル様のことだから町の道場とかに頼もうー!て押しかける…道場破りツアーにでも行くつもりかもしれない。


滑り込みバレンタイン話をねじ込みました。

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