8話:購入
お話が全然すすまんのです!
ゴルおじちゃんと話しながら後片付けを済ませ、時間を確認するとまだ17時だ。予想よりも早く売り切れたので晩御飯までにはまだ時間がある。
急げば森で採取も出来そうだけど、その場合はかなり焦りながらになりそうだ。
まったりやっていくと決めたので、後の時間はさっき雑貨屋に行った時のスコップとか、必要になりそうなものを買う時間にしようと決める。
念のためギルドカードを確認すると、ランク1☆に変わっていた。どうやら今の屋台で何かしらの条件を達成していたらしい。自分のお店で一定額稼ぐとかかな?
ゴルおじちゃんに別れを告げ、視線も気にせずにルンルンと尻尾も大きく左右に振りながら軽い足取りで商業ギルドへ向かう。
相変わらず列も出来ていない受付に向かって、セレさんにランクアップの申請を行う。
「セレさんセレさん!星マーク出てきたよ!」
「あら、早いね!そう言えばさっきギルドの利用者たちが天ぷらの話で盛り上がってたけど、もしかしてベル君のお店だったり?」
「えっ?うん、串天にして売ってたんだけど、そんなに話題になってたの?」
自分の作ったものに興味を持ってもらえるなんて、なんだか嬉し…
「買えなかった人とか、そもそも知らなかった人達がすごく悔しそうにしてたから、次回があるなら相当用意しておいた方がいいわよ?」
…う、嬉しいんだけど、これ相当頑張って取ってこないとダメなやつだよね?
ご飯の後にログインした時にはずっと採取だね、暗視のレベル上げにもなるし、お金稼ぎにもなりはするけど。
「で、出来る範囲で頑張ります。明日のお昼にお店を開こうかな」
「そう、なら話してる人がいたらそう伝えておくわね?」
「えっ、そこまではしなくていいですよ!」
「ふふふっ、でも他の人もいつ開くのか気になるだろうし、そうね、じゃあ知り合いにだけ教えるわね?」
「まぁ、それくらいなら…」
あんまり大事になったら怖いなぁ…まぁみんな話題のものだから食べてみたいだけで、一度食べたら落ち着くだろう。
「そうそう、ランクアップ申請だったわね。はい、ギルドカードお貸しください」
「あ、はい、お願いします」
「お預かりします…はい、これでランクアップ完了です。ますますのご活躍期待しております。」
「ありがとうございます!これからも出来る範囲で頑張ります!」
返されたギルドカードを確認するとランクの欄が2になっていた。まだ1つだけど自然と笑顔になってしまう。
「ふふっ、ランクが上がったことで、ギルドで買えるものが増えましたよ。特にベル君が必要としてるものもあると思うよ」
ん?なんだろう、スコップは買いたいけど、その話をした覚えは無いし…
「沢山揚げ物をするならちゃんとした自分用の屋台があった方がいいと思うわよ?」
「あっ!」
そうだよね、明日もゴルおじちゃんの屋台を借りるって訳にもいかないし、ただお金がなぁ…天串で少しは稼げたけど、どれくらいするんだろう?
セレさんはそんな僕の不安を読み取ったように笑って言う。
「大丈夫よ、そんな顔しなくても。1番安いやつでいいなら5000Gで買えるわ!ただ、それだとフライパンを2個くらいは置ける代わりにまな板を置くスペースは無くてせいぜいボウル1つくらいね。貴方達ならアイテムボックスがあるからそこに屋台もそのまま収納も出来るし本当に便利よ」
「切ったりできないと串も作れないんですよね…」
「そうねぇ、ならランクアップで解放されたギルドの生産部屋を使って粉をつけて揚げる直前まで準備しておけばいいんじゃないかしら。大部屋は1時間50Gで個室は1時間100Gよ」
微妙に高い気もするけど、僕の串天1本と考えれば安い…のかな?
「ならそこを使えば粉の方も準備は出来そうかな、ちなみに追加のボウルやフライパンは買えますか?」
「雑貨屋に売ってるわ。今回は急を凌ぐためってことで、屋台は後から自分好みの形に改造して大きくしたりも出来るから、取り敢えず買っちゃって気になるところはどんどん直していけばいいわ」
所持金の半分以上が無くなるのは痛いけど、聞く限りずっと使っていけそうだし初期投資と思えばこれくらいは…
「分かりました!じゃあその屋台買います!」
「毎度ありがとうございます!これからもご贔屓にね!」
最後の方は乗せられたかもするけど実際必要だしいいだろう。料金を支払うと、ギルドの倉庫から直接アイテムボックスに送られたらしいので雑貨屋に行って残りの必要なものを買い込むことにする。
残金は4640Gもある、それなりに買えるだろう。
ボウルを一応2つ追加しておいて、フライパンも1つ追加する。
小麦粉と卵と串は大目に前回の5倍は買っておいた。余ったら自分で使えばいい。あと桶ももう一つ。
ここまで買うと残金は440G、大量に買ったので仕方ないけど、またしてもスコップを買いそびれた。
今回は時間がかかる自然薯は取らずに見つけやすいものだけ取るつもりだったのでまぁ問題無いだろう。
悩みながら選んでいたのでかなり良い時間になっていた。買うものは買ったので夜は気合を入れて採取だなと考えながら、しばし夕陽で赤く染まる街並みを楽しんでからログアウトした。
VRギアを外して、晩御飯の用意を始める。いつもはそろそろお母さん達が帰ってくる時間だろうけど、VRギアを貰った経緯にもあるように会社が忙しくて夜遅くならないと帰ってこれないらしい。
現実でもユキが召喚出来たらいいのに、なんてくだらないことを考えつつ、沸かしたお湯に麺を投下する。
茹でている間にバターとたらこを用意して、海苔を小さく刻んでおいた。
麺が茹で上がったらお湯をわざと切りきらないようにボウルに移していく。
そこにバターとたらこを加えると、麺の熱でバターが溶け出し、食欲が刺さる匂いがしてくきた。
たらこをほぐしながら混ぜ合わせ、お皿に綺麗に盛り付けてからこしょうを少しかけて、上に刻んだ海苔を乗せる。
食事が1人の時によくやる簡単たらこスパゲッティだ!
お手軽だけどとても美味しくて、ポイントはボウルに取る時にお湯を切りきらないことで、そうすることで麺が軽く水分を纏ってつるつるとした食感になる。
これはもしかしたら個人によって好き嫌いがあるかもだけど、僕が作るときはいつもこうしてる。
フォークで巻きながら食べていくけど、スパゲッティのつるつるとした食感とたらこのぷちぷちとした食感が口の中で楽しい。
鼻に抜けるバターの香りと時たまピリリと舌を刺激するこしょうが食欲を刺激する。
刻んだ海苔もいいアクセントになっていて、磯の香りが口の中に広がっていく。
簡単に作れてこの美味しさ…たらこスパゲッティは正義です!
お腹も膨れたところで後片付けをしてから、浴槽にお湯を貯めていく。
お湯が溜まったら音で知らせてくれるはずなので、リビングのソファでぼーっとテレビを見ながら食休みを取る。
実はご飯の準備の前にお湯を貯めておくのを忘れていただけなのだが、ご飯を食べてすぐお湯に浸かるのは体に良くないと聞いたので結果的にこれで良かったかなと考える。
時間もあるので一度軽くだけ見たスマートフォンでRINGING ONLINEについて検索すると、どうやら初回でプレイしているのは1万人もいたらしい。
あの街のどこにそんなに、と思ったがきっと街の外のフィールドでみんな狩をしてたのかなと思う。
掲示板と書いてある所も見ようとしたが沢山あってどれを見ようか迷っているうちにお湯が貯まったことを知らせる音楽が鳴った。
せっかく美味しかったものを報告しあってる掲示板見つけて見ようと思ったのに、とタイミングに文句を言いつつ、まぁ自分で探していけばいいかとスマホを置いてお風呂に向かった。
ベル
所持金440G
絆:ユキ
《メインスキル》
隠密Lv11
《サブスキル》
絆Lv6 採取Lv10 調合Lv2 錬金Lv1 木登りLv1 裁縫Lv1 料理Lv7 暗視Lv4 隠蔽Lv10
《控え》
なし
SP:3
たらこスパゲッティほんと美味しいですよね。大好きなんです。