5話:登録と森
話が全然進まんです!
感動の再会?を終え、そういえばこんなことしてたら目立ってるんじゃ?と恐る恐る周りを見てみたが、思ったよりも僕達の方を見てる人は少なかった。
というよりも、冒険者ギルドに比べてプレイヤーの数が明らかに少ない?と疑問に思っていると、セレさんが僕の顔を見て何を考えてるのか分かったのか理由を教えてくれた。
「多分あなた達の多くはギルド登録せずにモンスター討伐に行ったり、行くとしても冒険者ギルドだけなんじゃないかしら?実際戦闘職だったらこっちは登録する必要もないもの」
「あぁ、なるほどです。そういえば、冒険者ギルドと商業ギルドの違いってなんなんです?」
「向こうの受付嬢は教えてくれなかったのね?じゃあ登録の前にそこら辺のことも説明しましょうか」
ふむ…ある程度はイメージ通りだったのかな?
まず、両ギルドに共通することだけど、小さいところは個人から、大きくなると国からの依頼も受けられるみたいだ。
もちろん、重要な依頼を受注するためにはギルドや依頼者からの信頼も必要で、それはランクと呼ばれるもので判断しているらしい、定番だね!
最初はランク1で、ランクアップの条件を満たすと、ランク2に、また条件でランク3にって感じでどんどん上がっていくらしい。
ランクが上がるにつれて、条件は厳しくなるし、依頼を黙って放棄したり、失敗を繰り返したりするとランクは下げられて、再度上げるための条件は厳しめになっているようだ。失った信頼はすぐには戻せないということだろう。
どちらのギルドのランクも、上げていくことで利用できるお店が増えたり、生産に使う設備なんかもより良いものを買えるようになるらしくて、基本的には上げておくと良いとのことだ。
そしてギルドごとの違いが出てくるのが、依頼の内容だ。
冒険者ギルドではこれまた想像通りで、基本は討伐と納品、捕獲の依頼なんかもあるらしい。
いつでも何回でも受けられる薬草やウルフの討伐なんかはそのままギルドに売るよりかは少しだけ高いかなってくらいだけど、初心者冒険者はそこから始めるようだ。
ランクを上げればより強いモンスターの討伐であったり、入手難度の高いものの納品が受けられ、もちろん難しい方が報酬は高いし信頼もより稼ぐ事が出来るみたい。
そして商業ギルドには討伐の依頼は来ない代わりに、作成したポーションなどの商品になるアイテムの納品、お店の臨時アルバイトや街の人たちからの雑用なんかも色々あって、セレさんは基本的には冒険者向きじゃないのが全部回されてる感じねとぶっちゃけていた。
安全なだけに報酬は安いが、中には農家を手伝って野菜をもらえたり、飲食店にいけば軽い指導なんかも受けられることもあるという話だ。
加えて、商業ギルドに関してはランクアップの方法は依頼をこなすだけではない。まぁ、商業のギルドなのだから当たり前かも知れないが。
自分の露店や店でアイテムを売ることもでき、売り上げが一定額を越えるとランクアップ出来るのだ。
なので始めは依頼と露店でお金を貯めつつ、自分の腕を上げてからお店を開くっていうのが多いようで、セレさんも推奨していた。
「分かりました。じゃあ早速登録お願いします!」
「ふふっ、分かりました。…これがギルドカードで、無くしちゃったりすると再発行にはお金がかかるから注意下さいね?」
セレさんから渡されたのは1枚の小さなカードで、僕の名前とランクの欄には1と書かれていた。
「ランクアップ条件を満たしたら数字の横に星が付くから、そしたらここに持ってきてランクアップの申請をしてね?では、商業ギルドはあなたのご活躍を願っております。…早速依頼を受けていく?」
むっ、悩むなぁ。でも初日だしユキもそろそろ呼んであげたいし…
「んー、今日は色々見て回ったりしたいから明日でお願いします」
「分かったわ、街の外にも出るならほんとに気を付けてね?絶対戦っちゃダメよ?」
「分かってますって、ラビットにも勝てないんだから隠れてこそこそアイテム回収してきます」
セレさんは心配そうな目で見てきているが、街の外のフィールドについての注意を聞いてからその場を後にする。
商業ギルドを出た僕は行き先で少し迷う。
セレさんから聞いた話では、街には西門と東門の二ヶ所の出入り口があって、西門側は平原、東門側は森になってるみたい。
平原は見通しが良く、街の近くにはラビットくらいしかいなくて、少しいくとウルフ達が出るのでスキル上げにはいいらしい。
森の方は昼間でも暗い上に見通しが悪くて不意打ちを受けやすい上に木が邪魔で剣が振りにくく、ラビットとウルフに加えてビーという蜂型のモンスターが出るのだが、針に刺されると毒状態になるため初心者には向いてないらしい。
多分今ごろ平原の方は狩りをするプレイヤーで混雑しているだろうし、暗視がある上最初から戦う気がない僕には森の方がかえって安全かもしれない。
モンスターからは木に隠れながら逃げてれば隠密のレベルも上がりそうだし、これで行こう。
移動しながら、すれ違うプレイヤー達を見ると、もうみんな武器を手にしていたり、防具を装備していて僕みたいな手ぶらの初期装備の人はむしろ少数派だった。
それが珍しくてか妙に視線を感じるので、隠密を意識してこそこそと早足でかけて行った。
門を抜け少し歩くとすぐに森が見えてきた。
すれ違ったプレイヤーの何人かに、何も持ってない僕を心配して声をかけられたが、逃げながらアイテムを拾う予定だと告げると、モンスターは結構鋭いから気をつけるんだよと言って僕の頭を撫でてから通してくれた。
子供扱いに若干凹みつつ森に入ると、言われていた通り結構暗くて、暗視が絶対必要ってほどでは無いものの、無いのなら音なども頼りにする必要はありそうなくらいだ。
周りに人も居なさそうだったのでユキを召喚する。
「えっと、《召喚》「きゅっきゅー!」ぐふっ?!」
召喚するや否や僕のお腹にタックルして頭を擦りつけてきた。呼ばれて嬉しいのは分かるけど、もう少し加減してもらえるとありがたかったなぁ…
「こんにちはユキ、呼び出すのが遅れてごめんね?」
「きゅっきゅ!」
今度は全くだと言いたげなユキの白くて柔らかい毛をわしゃわしゃと撫でながらもふっていると満足したのか今更ながらに周りをキョロキョロと見始めた。
「ユキ、ここは森の中だよ。これからアイテムを拾ったりするからユキも手伝ってくれる?」
「きゅっ!」
任せろと言わんばかりに胸を張ったユキが落ちてた枝を持ってきたので受け取って見てみると
〈枝〉Fランク
森によく落ちている木の枝。
と表示された。
あれ?そういえば鑑定のスキルを取り忘れてたんだけど…なんで情報が?と改めて自分のスキルを確認する。
《メインスキル》
隠密Lv5
《サブスキル》
絆Lv2 採取Lv2 調合Lv1 錬金Lv1 木登りLv1 裁縫Lv1 料理Lv1 暗視Lv2 隠蔽Lv4
んむむ、隠密のレベルが高いのは隠れるように歩いたり目立たないようにしてたのと、メインスキルで成長が早いからかな?隠蔽もそれにつられてって感じなのかな、それにしてもサブスキルなのに成長が早いなぁ。
っと、木の枝に関係しそうなのは採取くらいだよね、もしかして採取したものについては情報が分かる効果とかがついてるのかな?だったら当たりスキルだ!鑑定要らずだね、やったぁ!
よしっ、疑問も解決したし目に付くものは片っ端からアイテムボックスに放り込んじゃえ。
周りからの視線のなかには鑑定によるものも含まれています。そのため本来は鑑定を防ぐための隠蔽のスキルレベルが上昇しています。隠密の補助的な役割もありますが、本来は鑑定対策なのです。