36話:イベント2日目〜正羊の部〜
正午じゃないです正羊です!
もふもふ!羊だらけの毛刈り大会!〜ご飯もあるよっ〜
が、開催される少し前、僕たちは森の中を採取をしながら歩いていた。
「いやぁ、木漏れ日が気持ちいいねぇ」
「きゅ〜」
「そうねぇ、まだ朝だけどお昼寝したいくらいね」
「どっちかっていうと二度寝みたいになっちゃうね、でもこれだけ気持ち良いと仕方ないねー」
自然の香りとぽかぽかと暖かい木漏れ日に風にそよぐ葉っぱ達が擦れる音と、目を瞑ればそのまま眠ってしまいそうな心地よさだった。
寝ると言えば、昨日は草を乾燥させてベッドもどきを作ったけど、ちゃんとしたお布団を作るためにもやはり羊さんを居るなら見つけたい!
これだけ家畜っぽいタイプのモンスターがいるなら、羊も居てもおかしくないだろうし、森にいないってことは草原の方にだけいるのかな?
予定もダンジョンを見つけたら入ってみるくらいしか無かったし、採取を続けながら草原に向かうのも良いかもしれない。
やる事も決めたので方角を気にしながら草原があるだろう方向へと歩いていく。
もちろんその間も採取は続けたままだ、そろそろスキルレベルの確認をして上がってたら次のスキルが無いかの確認もしたいところだよね。
まぁ適当に区切りがいい所で確認すれば良いかなーと移動を続けているとようやく草原との境目まで辿り着いた。
前と同じように、木の上に登って上から気になる所が無いか見渡そうかな?
スキルを入れ替えて登り始めると、2回目でスキルも成長しているからか割とあっさりと登る事が出来た。
まだ時間はかかっているものの、1度もずり落ちる事なく登れたのでかなりの成長だろう。
とまぁ自分を褒めつつ辺りを見回すと、緑色の草原の中に所々モンスターらしき物体が見え、その中には白い何かも見えた。草が邪魔でよく見えないけど、もしかしたら待望の羊さんかもしれない!
興奮し過ぎて落ちそうになったりを挟みつつ一旦落ち着いて無事に降りてから、白い何かがあった方に進み始めた。
草を刈りつつ歩いていき、どんどん目標地点まで近づいていく。
テンションが上がりすぎて鼻歌なんか歌っちゃうくらいだった。…ツキからの問いを聞くまでは…
「ふんふふ〜ん」
「すこぶるご機嫌ねぇ」
「だって羊さんだよ羊さん!羊毛が取れるかもしれないんだよ!」
「それはもう聞いたけど、そもそも倒せるの?っていうかベルもついに戦う気になったの?」
ん?
「んーと?どういうこと?」
「えっ?羊さんってモンスターなんでしょ?襲ってくるんじゃないの?」
「えっ、あっ…?」
「…今気付いたのね、どうする?今ならまだ気付かれてなさそうだけど、逃げる?」
ぐぬぬぬぬ、羊さんもモンスターだってことを忘れてたよ!っていうよりモンスターが襲ってくるってイメージが無かったというか…
最近は見つかる前に避けてばっかりだったから、モンスターとは戦うものだってイメージが無くなってたみたいだ…でもこのまま帰るのも面白くないし…
「んー、もうちょっと近付いてみよう!手にカットしたアップルとか持ってたら、襲われないかもしれないしっ!ユキだって食べ物持ってなくても襲ってこなかったもんね」「きゅきゅ!」
楽観的な予想を立ててユキに確認をしてたら、ツキは少し呆れたような目でこちらを見てきていた。
「だ、大丈夫だって!本当にヤバそうだったらちゃんと逃げるから!」
「それなら良いけど…ほぼ戦闘力無しってのは覚えておかないとなんだからねっ!」
ツキの注意を聞きながら、羊さん達にお互いに目視で認識出来る距離まで接近する。
僕の手にはカットしたアップルが握られているが、羊さん達は警戒してる様で立ち止まってこちらをジッと見たまま動かない。
アップルを振ったりしてみたけど、近付いてきそうもなかったので地面に分かりやすく置いてから数歩下がる。
群れの1匹がゆっくりとアップルに近付いていき、匂いを嗅いでから口に入れた。
咀嚼をして飲み込んだのが分かったので、今度はまた手にアップルを持って腕を前に伸ばす。
いくらか警戒は緩まったが、解け切ってはいないので慎重に近付いて再度匂いを確認してから口にした。
何度か繰り返しアップルを食べさせてから、今度は食べてる途中に頭を撫でてみた。
最初はビクッと反応されたが、出来るだけ優しく撫でると害は無いと判断したのか大人しく撫でられてくれた。
最初の1匹が落ち着いているのを見てか、他の羊たち達も近付いてきたのでカットアップルを差し出していく。
ぐるぐると輪になって何回も貰いに来る様子が可愛くてついつい多目に上げてしまった。もちろんその間も撫でたりもふもふしたりはしたよ!当たり前だよ!
そんなこんなで羊さん達はお腹いっぱいになったみたいで横になって寝始めた。ちなみにユキ達は少し離れた場所で待っていたけど、羊さん達が輪になり始めたころに戻ってきていた。
さて、毛刈りをしたいところだけど、勝手にやって良いのかな?一応確認するべきなのかな。
「羊さん羊さん、毛を刈らせて貰ってもいいですか?」
「メェ〜メェ〜」
どうぞどうぞと言っている気がしたので、採取ナイフは刺しちゃいそうで怖かったから裁縫セットから裁ちばさみを取り出して刈っていく。
リアルだともっと大変なんだろうけど、そこはゲームということで裁ちばさみでも楽に刈ることが出来た。
1匹目が終わると、刈られて気持ちよかったみたいで擦り寄ってきたのでもふもふさが少し減った身体を撫で回す。
それを見た他の羊さん達も、眠っていたはずの羊さん達も自分も自分もと群がってきて身動きが取りづらい。
もふもふを楽しみながらも順番に刈って行き、全員のカットが終わるころには相当な量の羊毛がアイテムボックスに入っていた。
それからもしばらくもふもふしたりしていたが、彼らは群れだったからか絆契約を結べそうな子はいなかったので、別れを惜しみつつも手を振って森に帰った。
まだ今日は長いので、やれることは沢山ありそうだ。
ベル《新月の加護》
所持金:190000G
絆:ユキ ツキ
羊さんいいですよね、もふもふ。
次回午後の部です。