2話:キャラクター設定
書きあがった時に投稿するのでほんとに不定期です。ついにゲーム始めます?
「ふぅ、緊張してきた…」
昨日よりも詳しかった案内やら説明やらを終え、クラスメイトからチラチラと見られているような気がする中、挨拶だけはかろうじて成功させた僕は自分を褒めつつも逃げるように帰宅し、軽くお昼ご飯を済ませてからVRギアのやり残していた設定を完了させた。
現時刻は12時50分、開始が13時からなので僅かな待機時間に、もう一度軽く調べて見た内容を思い出す。
RINGING ONLINE
それは脳波を検出することで直接体を動かすことなくプレイするゲームで、専用のVRギアでのみプレイする事が出来るそうだ。
詳しくはなんちゃらかんちゃらと書いてあったが、結構複雑でよく分からなかったので、ふーんそういうものなんだ、くらいの認識である。
βテストでの評判は、自由度がとても高く、基本的にはやろうと思ったことは何でも出来る…らしい?
もっと詳しいことも書いてあったのだが、あまり知り過ぎても楽しみがなくなるし、きっとゲーム内でもチュートリアルとかで教えてくれるのだろうと見ないでおいた。
攻略組と呼ばれる人達のように、早く効率良くってのは求めてないので、自分のペースでまったりとやっていこうと思う。
なんて方針を決めつつ、時間になったのでベッドに横になった状態でギアを被る。スイッチを押すとぼんやりと意識が薄れていった。
ぼんやりしていた意識が冴えてきて辺りを見回すと、そこは真っ白な何もない空間だった。
「ここでキャラ設定をするのかな?」
「その通りです。ここでは、ゲーム内でのプレイヤーの名前、種族、見た目、スキルなどを設定出来ます。」
「わっ!びっくりしたっ!」
背後からかけられた声に驚き振り向くと、受付嬢のような格好で、優しげな笑みを浮かべた女性がこちらを見つめていた。
「えっ、えーと?」
「驚かせてしまい申し訳ありません。私はプレイヤーの皆様のキャラクター設定を手伝うAIです。セレとお呼びください。」
てっきり運営の人だと思っていた僕は、確かに全員の設定を手伝うのにわざわざ人を雇っていたら大変だもんなと納得しつつ、目の前の女性がAIであることに驚いていた。そんな僕を見て女性、セレさんは楽しそうに笑っていた。
「それではまずお名前をお決めください」
「ベルでお願いします」
これは始まる前から決めていた、僕のゲームで名前を付ける時の定番みたいなものだ。本名のすずを英語にしただけだが気に入っている。
「はい、ベル様で登録させて頂きます。次に種族と見た目を決めて頂きます」
とセレさんが言うと同時に大きな鏡とウインドウが出現した。
事前に写真を撮って取り込んでおいたので、今鏡に映っているのは現実での自分そのままだ。
ウインドウには複数の種族の名前が書かれており、どうやらこの中から選ぶみたいだ。
選択肢として普人族、獣人族、竜人族、エルフ、ドワーフから選べ、その中からさらに細かく設定できるみたいだ。
ふむ…
「セレさん、種族によって何か違いはあるんですか?エルフは魔法が得意だったり、ドワーフは生産に補正とか?」
「いえ、このゲームではプレイヤーの皆様には種族による補正はございません。完全に見た目だけのものですね。」
「へぇー、プレイヤーの皆様はってことはゲームの中の住人さん達には補正があるんだ」
「はい、その通りでございます。プレイヤーの皆様に補正が無い理由としては、運営として、好きな見た目で好きなことをして欲しいという思いから、種族による縛りを無くした結果でございます。」
ふむふむ、何をするにしても好きな見た目でやれるってのは嬉しいかな。じゃあ色々試しながら見てみるかな。
やっぱり折角のファンタジーなんだから普人族だとつまらないかな。
竜人族は所々に鱗っぽいのがついてるけど好みとは違うなぁ。
エルフは元々肌が白いからあんまり変わらないけど、耳がとんがったりしてて結構いい感じかも知れない。
ドワーフは肌が褐色になってて体がちょっとだけ丸い感じになるのかな?色以外はあんまり変化無いや
種類が多くて最後に回したけど獣人族は、それぞれの動物の特徴が反映されて、耳が動物の耳みたいになったり尻尾が生えたりしてる。それにしても種類多いなぁ、牛人種なんかもある。
うーん、種類が多過ぎて迷っちゃうな。自分では誰が似合うかとかも分からないし…セレさんにおススメとか聞いてみようかな?折角のお手伝いさんだし。
「セレさんセレさん、エルフかドワーフか獣人族のどれかが良いかなって思ってるんですけど、僕に似合いそう…っていうか、おススメとかありますか?」
「そうですね…ベル様自身で選ばれた方がよろしいかと思いますが、参考程度であれば」
「ぜひお願いします!セレさんしか頼れないので…」
「うっ、そっ、そうですねっ!ではこちらなんてどうでしょう?きっと似合います!配色も変更して…」
上目遣いで頼み込むとやや顔を赤らめたセレさんがオススメを選んで、合うように設定までしてくれるようだ。
ワクワクしながら鏡を見ると、そこには白い肌に白い髪、ピンと立つ猫耳とこれまた真っ白な尻尾がゆらゆらしている、全身真っ白な猫人種となった僕がいた。
ふむぅ…悪くはない、悪くは無いんだけどこれは…
「あのぅ、セレさん?ちなみになんですけど、これはどういったコンセプトで?」
「ふふん、よくぞ聞いてくれました!」
やや興奮したままドヤ顔のセレさんが説明してもらう。
「コンセプトはずばり、無垢な子猫ちゃんです!私色に染めて上げたくなる!そんな可愛らしい子猫をイメージしました!どうですか!力作です!ちょっとギュッとしてもいいですかねっ?!」
あれぇ、セレさんってAIだよね?それにもっと落ち着いた感じだった気がするんだけど?
「つかぬ事をお聞きしたいのですが、セレさんキャラ変わってませんか?」
「こっちが素です、何かありますでしょうか?」
「あっいえ何でもないです」
「そうですか、では見た目に関してはこれで決定でよろしいでしょうか?」
「アッハイ、ダイジョウブです」
謎の迫力に負けて決めてしまったけど、早まったかな…でも実際我ながら僕に合ってはいたと思うからまぁいいか。折角セレさんが選んでくれたんだしね。
「最後にスキル設定となります、スキルについての説明は必要ございますか?」
「すみません、お願いします。事前情報はほとんど入れてないので…」
「ふふっ、大丈夫ですよ。これが私の仕事みたいなものですから。では説明させて頂きますね……」
申し訳なさそうにお願いする僕に、セレさんは優しく笑って丁寧に教えてくれた。
スキルはスキルポイントを使って得ることが出来て、メインスキルが1つにサブスキルが9個の合計10個のスキルを一度にセットでき、セットしていないスキルは控えに回されるらしい。
メインスキルとサブスキルの違いは、メインスキルはサブスキルの1.5倍の効果を持って、成長するのも早いらしい。多くのプレイヤーはこのメインスキルに武器スキルをセットして、サブに魔法や身体技能、能力強化系のスキルを入れてるとの話だ。
セットしているスキルによって、能力値に補正がかかり、例えば近接戦闘系スキルをセットしていれば力や素早さなんかが上がったり、魔法系スキルなら魔力や知力、精神力、生産系スキルなら器用さなどに補正がかかって、基本的にはそのスキルのために必要な能力に補正がかかる感じで間違ってないらしい。
このゲームにはジョブや種族のレベルと言ったものは無く、スキルのレベルを上げることで、補正値も上がったら、技の威力や耐久なんかも上がっていくからどんどんスキルを使ってレベルを上げると良いとのことだ、ただし、控えに回しているスキルに関しては能力値には何も関係しないのでむやみやたらとスキルを取ったりしてると、全体的にレベルが低いままになっちゃうそうだ。
また最初は得ることが出来るスキルの種類が少ないのだが、そのスキルに関連する行動を一定量行うなどで解放出来るらしい。
また、スキルを一定のレベルまで上げることでその進化先のスキルが解放されるが、その時進化先のスキルを取っても元のスキルは残ったままらしい、あくまでも条件を達成することで、新しいスキルが解放されていくというイメージだ。
さて、問題のメインスキルだ、どうやらお試しで剣を振ったり魔法を放ったり出来るらしい。いよいよファンタジーの冒険っぽいことが出来る!僕には何の武器があってるのかなっ。
ゲームの世界の住人達には種族の補正がある、というのは血筋的な問題と、育ってきた環境などにより得意不得意があるためです。プレイヤー達は別の世界から来る存在なので、補正は存在しません。