19話:妖精さん
妖精さんです。
「ねぇ、聞いてるの!とっととルナ様との関係を教えなさいよ!」
「んー、関係って言われても、昨日ここで出会って一緒にご飯食べてから加護をもらった関係?」
「そんなこと見てたんだから知ってるわよ!もっと他にないの?本当にそれだけの関係なんでしょうねっ」
とりあえず2回も呆けて返事しないのも悪いと思って言ってみたけど、この子誰なんだろう?見てたとか言ってるし、ルナ様のストーカーだったりするのかな…それならあんまり勝手に情報を与えるようなことは出来ないし…
「その前に君は誰なの?それと、他にあるとしてそれを聞いてどうするの?」
「おっと、言ってなかったわね!私は影の妖精よ!あなたと同じで、影を扱えるわ!ルナ様は私にとっての憧れなの!何も出来なかった私に影の扱い方を教えてくれて…だからルナ様に変な虫が付かないよう見張っているのよ!」
んー、ルナ様がそこまでしてあげたっていうならそんなに悪い子ではないのかな?ストーカーに近い気もするけど憧れが強すぎるだけなのかもしれない。一応後でルナ様には報告しておこう。
「そういうことだったんだね、じゃあ言うけど、ルナ様とはさっき言ったくらいで、後は僕と色々あった人を叱ってくれたり、今度家を建てる時に祭壇を建てろって言われたくらい?だよ」
「ふむふむ、叱ったりのところは少し気になるけど、加護を授けたのだし、それくらいは…敬うための祭壇も必要だろうし…ブツブツ」
えーと、なんかぶつぶつ言いながら考え込んでるけど、伐採始めていいのかな、時間に余裕があるわけでもないしな、どうしよう?とユキを見るけどきゅー?と首を傾げられるだけだし…
まぁ、また何かあったら話しかけてくるだろうと採掘スキルを伐採スキルに変えてから作業を始める。
適当に1番近くにあった木に斧を入れていくが、これが何とも大変である。
スキルによって補正がかかっているはずなのだが、まだスキルレベルが低いからかあんまり恩恵は感じられない。
しかしこれもマイホームのためであると作業を進めていると、妖精さんが話しかけてきた。
「ちょっと、勝手に話を終わらせて何しているのよ」
「そっちが何かを考え込んでたから邪魔しちゃダメかなって思ったんだけど…これはさっきも言ったけど、今度家を建てようと思って、そのための木材集めだよ」
「あっそうだったの、ごめんね?それで、話は変わるんだけど、前にルナ様も食べていた料理ってもう無いの?」
失礼かもしれないけど、意外に素直に謝るんだなぁと少し驚いた。やっぱり根はいい子みたいだ。
「材料はあるから、作ろうと思えば作れるけど…」
「た、食べてみたいなぁ〜、作って欲しいなぁ〜(チラッチラッ」「きゅきゅ〜?」
「ブフッ、分かった、分かったよ。でも先にある程度伐採してからね?」
「分かったわ!」「きゅきゅっきゅ!」
素直なのか素直じゃないのかおかしな反応に、ユキがそれをマネするので余計に面白くて吹き出してしまった。
その後は、作業を見ながら木の実なんかを集めてくれてる妖精さんと話し、時たまユキとも戯れながら伐採作業を進める。
「へー、それじゃあ妖精さん達は最初から属性を扱えたりするわけじゃないんだ」
「そうね、大抵は育つ内に自分の得意な属性を見つけて、その属性を極めていくの。でも、中には本当に稀だけど得意な属性が見つけられない妖精も居て…つまりは私もそうなんだけど、それでどうしようどうしようって悩んでいる時に、月の女神様であるルナ様が来てくれたの。そして、あなたには影を扱う才能があるわって言ってくれて、敵から隠れられるくらいになるまではずっと教えてくれてたの」
あの女神様も暇だなんて言ってたけど、やっぱり女神様らしいこともしているんだなぁ。
「だからルナ様に憧れているんだ。影の妖精ってやっぱり珍しいの?」
「珍しいなんてものじゃないわ、そもそも、さっきも言った通り得意な属性を見つけられない子は稀なのよ。ほとんどの子はいわゆる魔法が存在する属性を扱えるようになって、魔法で戦うの。でも中には魔法が存在しない属性にしか適性がない妖精も居て、そういう子は私みたいに、属性を扱うことだけで隠れられたり戦えるようになったりするのよ」
思っていたより妖精も大変なんだなぁ。もっとのほほんとしてるというか、森の奥にある妖精の国で果物食べてますみたいなのを想像してた。
「まぁ大変そうに言ったけど、実際はほとんどの妖精は普通に魔法も使えるようになるし、一部の私みたいな妖精も、自分たちの国で果物を食べたり遊んだりしてる分には関係無いし特に気にするってこともないわね。」
あっ、妖精の国で果物ってのはあってたんだ。
それにまぁ、そりゃあ運営もわざわざ過酷な環境にはしないよね。
「だったらなんで妖精さんは自分の属性で悩んでいたの?」
「それは勿論美味しい料理が食べたかったからよ!」
「へ?」
りょ、料理のためにそんなに悩んでいたの?
「そんなことでって顔ね、あのね、妖精ってそもそも魔力を食べるだけでも生きていけるから、食べ物にこだわる人は少ないのよ。娯楽として果物を食べて、食事を楽しむくらいなの、そんな時にとある妖精が人間の料理を持って来たことがあってね、それを一口食べた時に電気が走ったの。こんな美味しいものがあるなら自分の羽で食べに行かなきゃ!ってね!それからはさっき言った通りよ」
なるほど、確かに完成された料理の味を知ってしまったなら、ただの果物をそのまま食べるってのは味気なく感じちゃうよなぁ。
「じゃあ国から出て来てからは結構食べ歩き?食べ飛行?をしてたの?」
「そ、それがそのぅ、まだ1度も食べたことがないの…」
「えっ?そのために出て来たんじゃ?」
「だっ、だってしょうがないじゃない!よく考えたらお金なんて持ってなかったし、頼れる人も居ないしどうすればいいかも分からなかったのよ!」
詳しく聞くと、精々が物々交換くらいだった所から出てきて、お金は無しで知り合いもおらず、仕方なく森を隠れて彷徨ってる時にルナ様と、ルナ様と話す僕とユキを発見した。
その時に声をかけなかったことを後悔していると、今日になってもう一度、今度は僕とユキだけがやってきたので、思い切って話しかけてみた、という話らしい。
最初の方少し勝ち気というか偉そうな感じがしたのは緊張からかな?
「じゃあ、原木もある程度は取れたし、そろそろ妖精さん待望の料理を食べながら休憩にしようか」
「そっ、そんなに待ち望んでなんかないけど、せっかくだから期待はしちゃうんだからねっ!」
「きゅきゅっきゅ!」
昨日と同じく簡単に準備をして…
まずは軽ーくキノコから
「さくさくふわふわで、キノコの香りがふんわり広がって何これ美味しい!」
次に山菜四種セットを
「どれも違った香りや味わい、歯ごたえなんかも特徴が違ってとっても美味しい!」
ここで天然ネバッコイモ、自然薯の天ぷらを
「何これ!少し粘りがあって、ほかほかもっくもくしててこれも美味しい!」
もっくもく?ま、まぁいいか次は松キノコの醤油焼き
「ふわぁ…この匂いは反則よ、嗅いでるだけでも美味しいって分かるのに、こんなの口に入れたら…もう他に言葉は要らないわね、おいしー!!」
その小さい身体にどれだけ入るのかと疑問に思いながらも、妖精さんが満足するまで食事は続いた。
ベル《新月の加護》
所持金:122440G
絆:ユキ 残り契約可能数:1
気付いた人がいるかもですが、影以外にも魔法じゃない魔法があったりします。それについては後々出てくる…かも?




