12話:屋台と提案
アイテムボックスの中身は明かされるのか?!
今僕は地面に座り込んだまま、文字通りに真っ白に燃え尽きていた。
近くではゴルおじちゃんが大儲けだと豪快に笑い、セレさんも燃え尽きた僕を心配してか、僕の身体を抱きしめんばかりの勢いでマッサージしてくれている。
若干セレさんの息が荒い様な気もするが、途中からとは言え、本当に2000本捌ききるまで天ぷら粉の作りを手伝ってくれていたので疲れもあるのだろう。
それなのにマッサージしてくれるなんて、なんて優しいのだろう。感謝と共に申し訳なさがあるけど、もう少しだけ休ませてもらおう。でも耳は疲れてないので大丈夫ですよ?
さて、少し休んで頭は働いてきたのでここまでに何があったかを思い出す。
まず、僕のお金貸して発言に、ぽかんと口を開けてしまったセレさんに事情を話し、それくらいならむしろ貸すのではなく払っても良いというのを、そこまでは流石に男としてのプライドが許さないと断り(何故かその時にセレさんは顔を赤らめつつ微笑ましいもの見るような目をしていたが)
借りたお金で、雑貨屋に向かい、小麦粉と片栗粉と卵と油に、フライパンを1つにボウルを3つ追加と串を2000本分、そして途中での水の確保は難しいと判断して、桶を多めに買っておいた。
かかった代金は2万と少しだけ超えたが、大量購入ということで細かいのはいいと言ってもらえた。今後も売り上げに貢献しようと誓った。
そして井戸から苦労して全ての桶に水を汲み入れてから商業ギルドに向かい、個室の生産部屋を2時間借りた。スキルを調理用に変えておくのも忘れなかった。
初めて借りたので知らなくても仕方なかったのだがそこに流し台に水道があってわざわざ井戸から汲んだのは無駄だったのかと愕然とした。
ユキを召喚し事情を説明すると、それなら手伝う!とひと鳴きし、下処理した後に先に大きいもののカットを済ませることにした山菜を運んで、調理がしやすいようにしてくれた。
前回もやっており慣れてはいるものの、量が量なだけに腕も疲れてきてスピードが落ちてくると、ユキがきゅっきゅと鳴きながら踊って応援してくれるのを見て癒され、やる気を復活させてそこからは止まることなくカットと、そして串に刺す作業を終わらせた。
山菜と、今回はキノコも使ったのだが、それらがほぼ無くなるくらいでようやく2000本全てを使い切れたので割と危なかった。
次に天ぷら粉の用意をした。全てのボウルに天ぷら粉を作り終え、アイテムボックスに入れたところで2時間の5分前の合図がなったので、応援してくれたユキに感謝のもふもふをしてから送還し、部屋を出た。
ギルドから出て、一度ログアウトしてお昼ご飯を食べることにした。
ゲーム内でずっと調理していたせいか、ちゃんとした料理を作るのも面倒だったので軽くお茶漬けとおかずにお漬け物を出して軽く済ませた。
洗い物を済ませてから再度ログインして、昨日と同じゴルおじちゃんの所に向かう。
気のせいではなくおじちゃんの店の周りには人が多く思わず帰りたくなったが、ここで帰ったらダメだよなぁと自分に気合を入れつつゴルおじちゃんに話しかけた。
「こんにちは、おじちゃん。今日は自分の屋台を買ってきたんだけど、お隣でやってもいい?」
「おぅベルか、昨日飲みながらお前の天ぷらの話で盛り上がっちまってな。5倍じゃ聞かなそうなんだが大丈夫か?」
「商業ギルドのセレさんにも同じこと言われて、2000本用意してきたからなんとか…」
少しだけ気にしたように確認してくるゴルおじちゃんに返すと、やるじゃねぇかと頭を撫でくり回され褒められる。
屋台を出し、火をつけてからフライパンに油を注ぎ、最初にあげる分に天ぷら粉をつけて、最後に何度か深呼吸を繰り返す。
さぁ、終わらない天ぷら地獄の幕開けだ。
そこからのことは詳細に思い出す事を頭が拒んでいるので、軽くだけ言うと
襲いかかる敵(客)に、装填(揚げ)が完了した弾(天ぷら)を次々と撃って(売って)いった。
リロード(次の天ぷらの用意と油に投下)を焦りすぎて思わぬミスを(油の温度が下がったり)しないように気をつけてあくまでも丁寧に作業を続けていった。
天ぷら粉が無くなってからは、揚げてる間の僅かな時間で次の分を用意してとさらに忙しくなった。
流石に1人で慌ただしく動く僕に遅いと文句を言う人はおらず、お腹が空いた人はおっちゃんの串焼きや周りの屋台で別のものを買って食べたりしていた。
半分を過ぎたくらいで、今日の仕事の終わったセレさんが応援に駆けつけてくれて、そこからは少しだけ楽になった。
そして、現在に至る。
2000本は全て売り終え、今日来てくれた人はみんな食べられたようなので結果的には良かったのだが…正直ここまで大変なのはもう勘弁だと思ってしまった。
さて、いつまでも燃え尽きている訳にもいかないので、やることを済ませよう。まずは返済しないと!
「セレさん、お金ありがとうございました!お陰でこの通り無事に皆さんに食べてもらえました」
「ふふっ、いいのよ?元はと言えば私にも責任があったのだし(マッサージと称してもふもふも出来たしね!ハァー、お持ち帰りしたい)」
セレさんの優しさに感動してしまう。…一瞬背筋に冷たいものが走った気がするけど、まだ疲れが取れ切ってないのかな?
ちゃんと全額返金したところで所持金を確認する。
材料等にかかったお金が2万Gで、串天は一本100Gを2000本だから…約18万Gの黒字である。
こ、こんなに大金を持って大丈夫だろうか、誰かにカツアゲとかされそうで怖いのだけど。
商業ギルドだったらお金を預けられるシステムとかないのかな?聞いてみよう。
「セレさん、思わぬ大金が入ってしまって怖いんですが、商業ギルドでお金を預けたりってしますか?」
「ええ、出来るわよ。ただそうね、多分今回の稼ぎでランクもかなり上がるだろうし、お金に余裕があるうちに畑を買ったりなんてオススメよ?農業スキルを持ってるなら薬草以外の野菜とか果物なんかも育てられるし、料理にも使えるんじゃないかしら」
確かに今まで料理しかまともにやってない気もするけど一応料理人ではないんだけどなぁ。でも畑か、ユキと一緒に農作業をして、取れたての野菜を食べたらなんか中々楽しそうだし正直興味はあるなぁ。
「あとはそうね、ある程度の範囲を買っちゃえばそこをベル君の土地ってことにして、家とかお店を建てたりも出来ちゃうわよ」
おおっ!お金とか材料は結構かかりそうだけど、男なら誰しも憧れる夢のマイホームか…いつ他の人に買われちゃうか分からないしセレさんも勧めているしここは買っておこう!
「セレさん!買おうと思うので、どこの畑が買えるのかとか教えて下さい!」
「ハイハイ、まずは後片付けを済ませてからギルドに向かいましょ?」
「あっ、そうですね。楽しみ過ぎてつい、えへへ」
「ぐっ、な、なんなのこの可愛い生き物は」
セレさんが何か言っていた気がするけど、なんだろう?まぁ何かあればまた言うだろう。
基本的にアイテムボックスに入れるだけなのでさっさと済ませて、ゴルおじちゃんが今度儲けさせてもらった礼をするというのに曖昧に返しつつ別れを告げ、ギルドに向かう。
ギルドに到着し、談話室で待っているように言われたので今のうちにとスキルを確認しておく。
分かっている、きっといつも通りとんでもないことになっているのだろう。さて、覚悟を決めて確認だ。
《メインスキル》
隠密Lv28
《サブスキル》
絆Lv12 採取Lv22 料理Lv18 暗視Lv11 隠蔽Lv18 気配察知Lv11 素早さ上昇Lv14 農業Lv3 調合Lv9
《控え》
錬金Lv1 裁縫Lv1 伐採Lv1 木登りLv1 採掘Lv3
SP:2
うん、うん?思ったよりかはマシ…かな?いや、料理スキルが11も上がっていたら普通に考えたらおかしいのだけど、思ったほどではなかった。
なんかもう異常な上がり方に慣れたみたいで嫌なんだけど、みんなこれくらいなのかもしれない。うん、そう思っておこう。
なんて考えていたらセレさんが資料らしきものを持って帰ってきた。
さて、夢のマイホームへの第一歩だ。慎重に考えて良い場所取るぞ!
ベル
所持金
180240G
絆:ユキ 残り契約可能数:1
《メインスキル》
隠密Lv28
《サブスキル》
絆Lv12 採取Lv22 料理Lv18 暗視Lv11 隠蔽Lv18 気配察知Lv11 素早さ上昇Lv14 農業Lv3 調合Lv9
《控え》
錬金Lv1 裁縫Lv1 伐採Lv1 木登りLv1 採掘Lv3
SP:2
またしてもアイテムボックスの中身は明かされませんでした。そんなに引っぱるほど良いものはないです。タイミングが無いだけなんです…