それでも、君が好き。
アネモネが枯れた時。
それでも、君が好きだ。
「好きだ。」 男が言う。
「・・・私も・・・好き。」女が答えた。
君と初めて出会ったのはいつだろう。
なぜこんなにも君との出会いが曖昧なのか、それは君との出会いが小学校の入学式だからだろう。
桜が舞っていて、見るもの全てが大きく感じる、そんな新一年生を迎える頃。君と初めて出会った。正直、小一の初めのクラスなんて、誰の第一印象も覚えてない人が多いに違いない。
君の第一印象も覚えてない。多分君も覚えてない。定期的に行われる席替えで君と隣になって、そして普通に喋り始めて、一緒にグラウンドや廊下も走り回って。
君といると楽しかった、それは覚えてる。
君と話したかった、一緒に話せる話題が欲しかった。今、思い返すとその頃から君が好きだったのかもしれない、その時の感情はなぜか曖昧だ。
君と席が隣の時、図鑑を広げて宇宙の話をした、パンフレットをみながら映画の話をした、教科書の挿絵をみながら絵の話をした、やんちゃなクラスメイトの話をした、互いの家族の話をした、君とたくさんの話を共有し一緒に笑った。
その頃の影響だろうか、今でも君と楽しく話した宇宙が好きだ。
もう一度その頃に戻れるなら、君の姿を眺めながら君と話したい。
「何?考え事?」
男が女の顔を覗き込んで尋ねた。
「あ、ちょっとね。でも、何でもないよ。」何か隠すような、でも何処か気遣うように答えた。
「ふーん、何かあるなら言えよ。あ、そーいえば前にプラネタリウム見たいって言ってたよな。あれ今週の土日で行かねぇ?」
「いいね、それじゃ・・・土曜日にでも行こうか。」
プラネタリウムなんていつぶりだろう、そう思いながら女は男の誘いにのった。
「美術館行くよ。」
「今から・・・?分かった、行こっか。」少しの間を置いていやな顔せずに、男は答えた。
女は絵が好きだ。高校、大学では芸術分野を専攻していた。男は大して絵を習っていたわけでもないが、それなりに絵が描けた。女ほど上手くはないが、絵を描いては女にみせていた。
男は優しい。特に用事が無い限りは女の事を優先する。好き過ぎで女にベタ惚れ・・・というよりは、小さい幼女の世話をしている気分に近いのかもしれない、何処となくテンポを合わせるに近い。それを女も察しているのか、出会った当初こそは、男の予定が空いているのか確認していたが、ここ最近はまったくしない。女が行くと言ったらその場所へ二人で行くのだ。
男と女はプラネタリウムを見る前に喫茶店に寄り、楽しげに会話している。
「お待たせいたしました。ホットコーヒーでお待ちのお客様。」
「あ、はい。」
「レモンティでお待ちのお客様。・・・ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい。ありがとうございます。」女が店員に答えた後に少し顔をふくらませ男に怒った。
「レモンティは誰ですか?って聞かれてるんだから返事くらいしなさいよね?」
「なんでだよ、二人なんだからどっちかが分かればもう片方もわかるだろ。店員もそれくらい分かってるって。」
「そういう問題じゃなくて、人としてちょっと心狭いんじゃない?」
「それを気にしてる絢の方が心が狭いぞ。」ケタケタと冷たいレモンティーを飲みながら男が笑う。
「ちょっ、失礼ね!ほんと嫌になっちゃう。今すぐ帰ってやりたいくらい。」熱いホットコーヒーの湯気が絢の顔を曇らせどんな表情なのか、はっきりと分からない。
「ごめん、ごめん。この後楽しみにしてたプラネタリウムだろ?笑ってこ?」男の眉はハの字だが口角が少し上がる
「ふふっ。なーに笑ってんのよっ。ふふふ。」絢も男の顔を見ながら微笑む。
初めまして。宇野 佑と申します。
この度は「アネモネが枯れた時。」をご覧下さりありがとうございます。
男女の恋愛、どう展開していくのか楽しみにして頂ければ…と思います。
小説を書くのは初めてになります。大変読みにくい点が多々あるかと思いますが、これから書いていく上で少しずつ修正等していければと思っています。
感想等頂けますと大変励みにまります。お時間があれば是非お願いします!
(週一、または隔週での投稿予定)