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18話:終りの町

ムーン・ロストの町。(後にラスト・シティーと呼ばれる)


町の外観は、まるでクレータの様に大きな円状になっていた。

そのあがたれたクレータの中に町が存在する。

町の中央には、大きく天まで伸びるプロットと呼ばれるビルが建っていた。


町の出入り口は、二箇所。

北と南にあるゲートと呼ばれる門を潜る事で町の中へ入る事ができる。

今は、戦乱中もあって、人の出入には、厳しい規制がされていた。


北ゲートの入り口辺りでようやく厳しい検査を潜り抜けた旅人が4人・・・・お互いの別れを惜しむように向き合っていた。


「ずいぶん、世話になったな。色々あったが、なんとか目的地に着く事ができた」


1mぐらいの背丈しかない男、しかし手足は太く顔つきは、老人のそのもの。

ドワーフ族のファサ・バムが先にそう口をひらいた。


「ああ、長いようで短かったな。別れ惜しいがここでお別れだ」


ファサ・バムの隣に佇むニブルが次にそういった。


「ねぇ、ファサ、ニブル・・・二人は、これからどうするつもりなの?」


二人の正面に立つナスカがそう聞いた。


「ワシは、旅で稼いだ金をもとに商売を始めるつもりだよ。もう直ぐ戦乱が終わるじゃろ・・・。

生きていくには、稼がなければな」


ファサがそう言うとナスカは、ニコリと微笑んだ。


「そう、頑張ってね。ファサ」


ナスカは、そう言ってファサの右手を掴みお別れの握手をした。


「ニブルは、どうするの?」


「俺は・・・その前に言っただろ? ここに来たのは・・・・」


「あっ・・・そっか、そうだったよね。それが終わったら、どうするの?」


「わかんねぇ。まだ決めてないしな。もうしばらくは、この町に居るかもしれねぇ」


ニブルが少し寂しそうに言うとナスカは、彼の前に右手を差し出した。

ニブルは、ナスカと握手を交わすと口元の両端を微妙に吊り上げた。


「たっしゃでね」


「ああ、ナスカこそ。それより、デュアルとお前は、どうするんだ?」


「私達は、父に会いにいくわ」


ナスカは、微笑んで直ぐ隣にいる青年の顔を見た。

精悍な顔つき、意思強い瞳。力強い腕と体つきは、誰が見ても只者じゃないと感じてしまう。

彼の名は、デュアルとそう呼ばれた。


「ああ、解っている。お前との約束は、護るよ」


デュアルは、そう言って自分を見つめるナスカから目を逸らした。


「それじゃ、またね」


「ああ、たっしゃでな」


「さらばじゃ」


「またな」


4人それぞれ声を掛け合って、3方向に違う道を目指して街中へ消えていくのだった。



 一方その頃。


南ゲートの入り口辺りで怪しげな集団が町の中心へと入ろうとしていた。先頭を歩くのは、似合わない大きな皮の帽子を深く被った青年。背には、大きな剣を背負って疲れた表情でとぼとぼと歩いていく。

その直ぐ後ろを一人の少年が落ち着きのない様子でものめずらしそうに左右にキョロキョロと首を動かしながらついていく。


少し離れて、身長170cmぐらいある美女がユックリとした足取りで歩いてくる。腰まである金髪と抜群のプロポーション。その抜群のプロポーションを誇示するかのような身体にラインに沿った服装は、この世界において珍しい。


そして、その後ろを歩くのが16歳ぐらいの少女。

その顔は、深いフードで隠されていてその表情は、読み取れない。


「ねぇ!! ラファエル? まだ怒ってるわけ?」


長身の美女がそう大きな皮の帽子を深く被った青年に声を掛けた。


ラファエルと呼ばれた青年は、振り向き


「あたりまえだろ? たくっ、何度同じ事言ったら・・・言う事聞いてくれるんだ?」


と言った。


「だって、しかたがないでしょ!? あの場合、ああするしか・・・」


「ヒルダ、何時も言っているが・・・お前は、やる事がいつも大げさなんだ!」


そう言われて、ヒルダと呼ばれた長身の美女は、不満そうに頬を膨らませた。


この町に入る途中。彼らの怪しすぎる格好や雰囲気にこの町の警備兵に捕まって厳しく詰問された。

その時の警備兵の横暴な態度にヒルダは、プッツンと頭の線が切れてしまった。そして、ヒルダは力を使って、警備兵達を数人気絶させてしまったのだ。


それで割り食ったのは、ラファエルである。



ヒルダの変わりにラファエルは、警備兵に頭を下げて廻り、町の中に入る為に賄賂を握らせて、何とか難を逃れたのである。


「なんとか町の中に入れたんだし。結果よければ、すべて良しってね? エリス、貴方もそう思うでしょ?」


ヒルダは、後ろついてくるフードの少女に声を掛けた。


「・・・・・」


しかし、エリスと言う名前のフードの少女は、ただ無言で頷くだけ。


ラファエルは、これも何時もの事かっと、諦めに似た感情でヒルダとエリスの姿をじっと眺めるのだった。


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