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17話:純白の時間

 艶々とした芝生の上に置かれた白い小さな円卓。その対面に置かれた白い椅子の1つに・・・白いブラウスと白いスカートに身を包んだエイダが座っていた。

ナスカやエルに見せたような邪気、魔気、瘴気は、身にまとっていなかった。そこに存在するのは、一人の少女エイダの姿だった。そして、そのエイダと対面するように椅子に腰を掛けている一人の青年。似合わない皮製の帽子を耳元までふかぶかと被っている。帽子のせいでその表情まで読み取れないが、隠れた瞳は、鋭く輝いている。


「お久しぶりですね」


先に口を開いたのは、エイダの方だった。


「ああ、2年ぶりぐらいか?」


「ええ、確か・・・そのぐらいです・・・」


「世界を・・・廻ってきた。奴を倒す手段を探しにな」


「それで・・・見つかったのですか?」


エイダがそう聞くと、青年は、自分の足元に置いてあった古びた剣を円卓の上に載せた。



「幻国ダリアンに・・・この剣は、封印されていた。見つけた文献には、こうあったよ。『古の種、それは、人にあらず。竜の魂と人との間に生まれし種なり。竜の魂を封ずる力を持つは、この剣なり』とな」


「それでは・・・この剣は、やはり」


エイダがそう言うと青年は、コクリと頷いて見せた。






 エイダは、白いカップに注がれた紅茶を口に含んだ。青年の居る前でエイダは、ゆったりとした時間を過ごし、会話を楽しんだ。普段ならありえない特別な時間。エイダは、この時間が何時までも続けばよいとそう思った。この時間が過ぎてしまえば、また元の自分に戻らなければならない。



レジスタンスを率いる頭目としての自分。


ナスカの姉である自分。


一国の姫であった時の自分。





 それらを使い分けてエイダは、今この世界に存在している。そして、今存在しているこの青年との時間は、エイダにとって存在してはならない幻の時間だった。


「1つお願いがあります。その剣をもって、レジスタンス・エルフの軍が頭目・・・仮面の将、アグニス・レゾンに会いに行ってくれませんか?」


エイダが唐突にきりだす様にいうと、青年は、神妙な顔つきになった。


「・・・始めるつもりなんだな?」


「時が満ち、準備も整いました。駒も揃いつつあります。あとは、誰かが引き金を引くだけ・・・・ならば、私が引いてしまえ・・・と」


「まったく・・・。ホントに食えない奴だよ。お前は」


「その言葉は、お褒めの言葉だと・・・受け取って置きます。話は、変わりますが・・・貴方は、やはり彼を許せないのですか?」


エイダのその言葉に青年の表情は、また変容して今度は、辛そうにエイダから顔を逸らした。


「その事は、今更だ。許せるものかよ」


「ですが・・・貴方が憎悪と復讐に染まるのでは、死んで逝った貴方の同胞と・・・エリスも浮かばれは、しませんでしょうに」


「だからと言って・・・」


青年は、そう言葉を詰まらせた。


「解っています。私が何かを言った所で・・・貴方の行動を止める事ができない事など。これからの戦いは、より激しくなっていく事でしょう。今度は、直接古代人達と戦う事になります。命の保障も出来ません。多くの同胞がその命を失う事になるでしょう。貴方も例外では無いのですよ?」


「・・・命を大切にしろと?」


「ええ、貴方は・・・いつも無茶をしますから」


「・・・・」


青年は、無言で席から立ち上がった。

そして、円卓に置かれた古びた剣を手にとる。


「もう、往くことにするよ」


「どうか、お気をつけて。ラファエル」


「ああ、ずいぶん世話になったな。クリス」


クリスっと、ミドルネームで呼ばれて、エイダは、少し悲しげ表情を浮かべて青年の去り行く背中を永く見つめるのだった。





 どうしたら、良いのだろう。エルは、悩んで居た。ルクス・フォン・ランドールから、託された密書は、贋物だった。あの男は、最初からエルを信用してしなかった。試されただけなんだと、思い知らされた。




 これから、どうしたら良いのだろう。きっと、エイダも私の事を信用などしていない。と、エルは、深く悩んでいた。エルは、どうしても皇帝ラーの元へ行かなければならない。

そう、彼を倒す為に。



 その為には、レジスタンスの助けが不可欠だのだ。

直接、皇帝ラーの住むと言われるバルド帝国城へ向かったとしても、彼の身辺を護る古代人達に阻まれるのは、目に見えている。

一対一であるなら、エルは、古代人に勝てるだけの力がある。

二対一以上の戦力差になれば、いくらエルが強いからとっても勝てる保障は、何処にもないのだ。



 より確実に皇帝ラーの元へ近づく為には、レジスタンスに協力を取り付け、彼らの陽動で古代人達を皇帝ラーの元から引き離す。その隙にエルは、皇帝ラーの居城へ乗り込む。

それがエルが考えていたシナリオだった。



 だが、現実は事の他厳しく、古代人であるエルを信用するレジスタンスは、居なかったっと言うわけである。しかし、エイダは、エルに条件さえ飲めは、協力はすると言っていた。

だが、どこまで本気で、どこまで協力してくれるのかは、エイダの言動から読み取れないでいた。


「はぁ・・・」


エルには、似合わないため息を吐く。


「どうしたの? エル?」


珍しいエルのため息を見て、サラは、驚いた様に聞いてみた。



 エイダに用意されてた部屋には、ニブル、サラ、エルと負傷して動けないガスタルディーが居た。

それぞれ、くつろいだ格好で暇を持て余している。目的は、決まって居るし、明日になれば、この街を発たねばならない。それは、皆で話し合って決めた事だ。

そう、あの町の調査に向かわなければならない。もう、そこまで決めてしまっていたので明日までの時間が暇なのだ。

何をするものでもなく、お互い会話のネタにも尽きていた所だった。




 エルは、ソファーに腰掛けて、その隣にあたりまえの様に居るサラを見た。


「ちょっと、考え事を」


「心配してるの? ここの頭目は、条件さけ飲めば協力してくれるって約束してくれたんだよね?」


「ええ、ですが・・・」


大丈夫だよっと自分に笑顔を向けて言うサラを見て、エルは少し気持ちが楽になった。


サラの笑顔を見ていれば、本当に大丈夫な気さえしてくる。

・・・・不思議だな。


とエルは、心の中で呟いた。


少しサラの事を考えてみようとエルは、思った。

この少年は、とても純真だとエルは、思う。

素直に自分の気持ちを私にぶつけて来る。

サラの思いもサラの告白もエルにとって、とても嬉しい事だった。

そのサラの気持ちは、私の心をきっと支えてくれるだろうと、エルは、思っている。


エルは、サラに感謝の気持ちでいっぱいだった。

素性の知れない作られた古代人である自分をサラは、何も言わず信じてくれた。


それだけでもとても嬉しいのだ。

と、エルは、サラの顔を見て微笑んだ。


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