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16話:星空の追憶

 静寂が周りを支配していた。


虫や生き物の鳴き声も聞こえてこない。シェイドの町を一歩でも出れば、そこは砂漠である。昼は、太陽に晒された灼熱の世界。夜は、乾いた風と冷え切った空気が支配する静寂と寒冷の世界。


今は、夜。


と言っても日が沈んでまだ少ししか時間が経ってない。とはいえ、辺りは真っ暗闇で夜空に輝く星が美しくくっきりと見える。


「今日も綺麗な星空・・・」


屋敷の中庭に出てきたナスカは、空見上げて呟いた。昔、こんな夜に限って私の傍らには、デュアルが居た。一緒に夜空を眺めながら、朝まで語り明かしたっけ。とナスカは、懐かしむようにその時の光景を思い出していた。早く大人に成りたかった。精一杯背伸びしても、ニブルに何時も「お子様」って馬鹿にされた。

まだ、この世に生を受けて私は、18年しか経っていない。


身体がけが成長が早く、よく20台前半と間違えられる。心だけが成長に取り残されたような感じが嫌で、よく大人ぶっていた。それは、姉も一緒かな。と、双子でありながら、数少ない共通点を発見して、ナスカは、クスリと笑った。


ニブル達と旅をしたのは、2年と半年以上も前。あの時は、私はまだ16歳で精一杯大人ぶっていた。あれから、2年と半年が経って「少しは、大人に成れたのかな?」とナスカは、自問してみる。


「ナスカ!」


突然そんな声が聞こえてきた。この声は、聞き覚えがある。ナスカは、声がした方を向いて笑みを浮かべた。そこに立ってたのは、ニブルだった。ニブルがゆっくりとした足取りでナスカの前に近づいてきた。


「こんな所でなにしてんだよ?」


「ちょっとね。空を眺めてた」


ニブルは、ちょっと不愉快そうな顔をする。


「空? 何もねぇ、空見てどうするんだよ」


「もう! ロマンの欠片も無いんだから。いい? 夜空には、綺麗に輝く星が見えるでしょ? 不思議に思わない? どうして、あんなにキラキラ輝いてるのかって」


ナスカが真剣に夜空の美しさやロマンをニブルに伝えようとするが、とうの本人であるニブルには、何の興味も示さない。それがどうしたんだっと言うような態度で鼻に掛けて笑う。そんなニブルの態度にナスカは、諦めた様子で恨めしそうな顔を浮かべた。


「まあ、そんな事は、どうでも良いんだ」


ニブルは、ナスカの苦労を無視した様子で平然とそう言った。ナスカは、引き攣った顔をニブルに向けて笑顔のようなそうでないような微妙な表情を浮かべていた。


「これからの事なんだがよ。また、以前と同じ様に一緒に旅をしないか?」


ニブルは、突然そんな事を言った。


・・・・同じじゃない。


っとナスカは、心の中で呟いた。


「違うよ! ニブル、あの時とは・・・違う!」


そう、私の隣にはもうあの人は、居ない。


「なんだ・・迷っているのか? 迷う事なんて無いだろ?」


「迷ってなんかない! 姉さんにもニブル達と旅をするように言われたの!」


「なんだよ。それなら、一緒に行くだろ?」


「・・・・」


ナスカが黙っているとニブルは、痺れを切らした様子で前に進みでた。勢いあまってナスカを突き飛ばしそうな感じであったがほんの数ミリで触れ合う距離で足を止めた。


「ああ、クソゥ! ハッキリしない奴だな! どうしたんだ?」


「・・・いく・・」


「ああ?」


「行くっていってんの! 一緒に行くしかないじゃない!」


ナスカは、そう叫んでニブルを睨みつけた。


「たくぅ。何も睨む事ないだろ? 今日のお前・・・いや、昔のお前からしたら、ずいぶん・・・らしくないじゃないか」


ニブルは、そっぽを向いて自分の頭をポリポリとかく。


「ニブル・・・。姉さんが言ってた。協力する代わりの条件ってやつ」


「ああ、それならエルに聞いてる・・・」


ニブルは、少し神妙な顔つきになった。そんなニブルを見て、ナスカは、ため息を吐き出すと次の瞬間には、何時もの冷静さを取り戻していた。


「もう一度・・・あの町に行く事になるなんて・・」


「気持ちは、解るがな。それで、ナーバスになってたのか?」


エルがエイダから言われた条件とは、ある町の調査だった。その町の名前は、一昔前までムーン・ロストと呼ばれていた。今では、ラスト・シティーと言われ誰も人が住む事のない廃墟の町である。それは、皇帝ラーが仕掛けた統一戦争で唯一最後まで帝国軍に抵抗し戦い抜いた町だったからだ。その時の戦いで町は、もう人が住めなくなるまでボロボロにされたのだ。統一戦争の最後日、あの町には、様々な人達が集まってきていた。


エイダもラファエル、エリス、ヒルダ、デュアル、ニブル、ナスカの父が指導者となって、最後まで戦った。


結果、彼らは敗れ・・・世界は、皇帝ラーの手のひらに転げ落ちていった。


「あの町には、真実がある。私が目を逸らしていた現実がある」


「・・・・」


「そう、私は怖いんだ。あの町に行って真実を知る事が・・・怖い」


ナスカは、そう言って悲しそうに俯いた。それを見てニブルは、少し複雑な表情をしたかと思うとナスカの両肩に手をのせた。


「おい! どうしたんだ? やっぱ、らしくねぇ。らしくねぇよ! ナスカ、お前の弱さなんて見たくもねぇ。俺にそんな姿を見せるな!」


「な・・何を言って・・・」


「俺には、お前のその弱さを受け止める事なんてできねぇ。お前のその弱さを見せていいのは、一人だけだろ? 俺じゃない!」


ニブルは、そう言って今までに無い真面目な表情でナスカを見つめた。


「ニブル・・・私は・・・・」


「そんな顔するな! じゃないと・・・・襲いたくなるだろ!?」


「・・・え?」


ナスカは、本当に思いもかけない事を言われて喉をつまらせた。カッ、とナスカは、自分の顔が赤くなるのがわかった。


「なっ・・・・この! ドスケベ!!」


ナスカは、そう叫んで両手を広げて、ワキワキと指を動かしているニブルの懐に飛び込むと全身のバネ様に蓄えた力を右拳にのせて、開放した。放たれたナスカの右アッパー・カットは、ものの見事にニブルの顎を捕らえていた。


「あが・・・」


と奇妙なうめき声を上げてニブルは、崩れ落ちる。

そんなニブルの姿を確認するとナスカは、そそくさと屋敷の中へ走っていった。


「な〜にやってんだ・・・オレ・・・」


ニブルは、地面に大の字に転がったままそんな言葉を呟いた。


「夜空か・・・あの時以来、久しく見てなかったような気がするぜ」


ニブルは、感傷的な表情で夜空を見上げた。



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