表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

12話:陰の町

ドン


と言う何かが破裂した音がエルとサラの居る部屋に響き渡った。四方に囲まれたうちの北側の壁が崩れ落ちていく。崩れ落ちた時の出た粉塵がサラ達の周りを取り囲むように膨れ上がり、暫くは周りが見えない状態が続いた。撒きあがった粉塵が落ち着き始めた頃にその崩れ落ちた壁の向こう側から一人の老人が姿を現した。老人と言ってもその姿は、タキシードとシルクハットに身をつつんだ紳士そのものだった。エルもサラも驚いて何も言えずに居ると、その老人は、ふかぶかと頭を下げた。


「お待たせしてしまいました。さあ、ご主人様がお待ちしております」


老人は、そう言ったが余りにも突然で意外な台詞にエルとサラは、お互いの顔を見合わせた。


サラ達が老人に連れられて崩れ落ちた壁の向こう側へ出ると、一本の長い通路が続いていた。サラ達の居た場所は、落とし穴だと老人は告げた。帝国軍を陥れる為の罠にサラ達は、捕まってしまったのだと老人は、言った。老人は、通路を奥へ進みながら、度重なるサラ達の質問に答えていた。


「貴方のご主人とは、いったいどんな人なのですか?」


「それは、お会いになればお解りになられます」


「どうして、僕達の事が解ったの?」


「ご主人様は、特殊な能力をお持ちですから」


最後の質問をエルは、老人に投げかけた。


「いったい、ここは、何処なのですか?」


「この通路を出ればお解りになられます。あすこに出口の扉があるのです」


老人は、通路の奥に見える鉄の扉をを指差した。微かに漏れる外の光りがその扉が出口である事を示していた。サラは、その扉へ走りだすと力いっぱいに鉄の扉を押した。


サラの目に飛び込んで来る外の光り。その光りの順応するに時間が掛かったがそのサラ達に飛び込んできた景色は、予想だにしなかったものだった。


「えっ? これは、・・・・町? こんな所に町が・・・・」


サラは、とても信じられなかった。サラ達の目の前には、大きな町が広がっていたのである。船の中から見た景色では、こんな大きな町が近くに存在してなかった。エルとサラが気づかないはずがないのだ。町は、乾燥した石で作られていた。家も道も石を積み上げて、轢きつめて作られていた。そんな街中を人々が行きかい生活しているようだった。


砂埃の多いこの辺りでは、頭にフードを被り、布で口元を覆い隠している者が多かった。



「どうして? 上空から見たけど・・・何もなかったわ・・岩と砂ばかりだった」


「この町・・シェイドは、外からは、見えないのです。外へ出れば解ると思いますが、外からは、何も無い砂漠に見えるでしょう」


エルが不思議そうに町を眺めながら、首をかしげた。


「どうなっているのですか?」


「ご主人様が結界を張られておられるのです」


この時代で言う魔法の力なのかとエルは、不思議に思った。サラもしばらく信じられない様子で町を眺めていると老人はその横に進み出て来た。


「さあ、まいりましょう。こちらでございます」


老人が町の奥にある大きな建物を指差してサラ達の前を歩きだした。石だけで作られた町中を老人の案内で進み始めた。サラ達の心は、不安と好奇心ではちきれそうだった。


まるで異世界に迷い込んでしまったような不思議な感覚がそこには、あったのだ。町の奥にある大きく、そして広い建物の中へサラ達は、連れてこられた。なにやら、物々しい雰囲気で屈強な男達が入り口の手前で見張りに立っていた。侵入したら、容赦しないといった態度でサラ達を睨みつけている。それほどまでに護るべき者がこの建物の中に居るのかと、エルは、それを感じて身を引き締めた。

老人がその警備兵に挨拶をすると恐ろしい形相の男達がそそくさと頭を下げた。

それを見てサラが叫んだ。


「お爺さん? この町で、偉い人なんだ!?」


「いやいや、私など・・・これからお会いになる人物は、とても偉大なかたです。この町を作り、全ての人に尊敬されております」


老人は、エルの方に顔を向けて笑みを浮かべた。その大きな建物の中には、幾つも部屋があり、中を廻る廊下の側面には、幾つもの扉が並んでいた。あまりの大きさ、広さ。砂漠の真中にこんな町を作り、こんな建物を作るその実力者とは、いったいどんな人物であろうか。エルは、早くその人の会ってみたいと心を躍らせた。一つの扉の前で老人は、歩みを止めてサラ一人を引き止めた。


「あなたは、この部屋でお待ちください」


「えっ? 僕だけ!? エルは?」


突然の老人の言葉にサラは、戸惑い「どうして、自分だけが・・・」っと不思議でならなかった。


「ご主人様は、エル様だけにお会いすると申しておりました。ですから、しばらくのご辛抱のほど・・・」


老人は、本当に申し訳なさそうにサラに言って、軽く頭を下げるのだった。

サラは、何か不愉快な顔を老人に向けた。それを見たエルが


「サラ。・・・わかって!・・・私・・・会ってきます。ここは、この町は、もうわかっているでしょ? ここは、私に任せて」


っと、サラを諭すように言った。


エルにそう言われては、サラには、引き下がるしかなかった。それにこの町は、自分達が探し求めていた場所だと、サラもエルも気づいていたのだ。この町の主は、まさにエルが会わなければならない人物である。そこまでわかっているサラであったが、何か釈然としなかった。自分が、エルと同じ歳ぐらいの自分がエルと区別されるような扱いがサラには、嫌でならなかった。サラは、思うのだ。また、エルは、一人で誰の助けも借りず事もなく物事を推し進めようとする。それが彼女の強さなのだろうと思うのだが、自分が何の役にもたたない役立たずだと思い知らされるのは、サラにとってとても苦痛であった。


サラは、エルに向かってコクリと頷くと横にある扉のノブを握った。


それを見届けると老人は、


「さあ! まいりましょう! こちらです」


っと言った。


 サラが入った部屋の中は、美しい花や絵、大きなソファーといったとても華やかな場所だった。この貧困に喘ぐ今の世界にして、こんな所があろうとは、よほどの金が余っているのか、でなければこんな部屋を幾つも持つ所など、こことラーの居城ぐらいである。


何か部屋の奥のの方で人の気配にサラは、気づいた。部屋は、区画されおり、壁で仕切られた中心あたりに奥の部屋につづく扉が開かれたままになって居た。


その奥の方でサラは、気配を感じたのである。静かにゆっくりとサラは、音を立てずに気配を感じた奥の部屋へ向かった。何かが居る。いや、何者かが部屋の奥に居る事は、確かなのだ。サラは、気持ちを落ち着かせながら部屋の中を覗き見た。


「・・・・・・!?」


サラは、声が出なかった。驚きと安心が同時に襲ってきた感じだった。サラが見たのモノは、ニブルの後ろ姿だった。ニブルは、ソファーの深く腰掛けて腕を後ろに回していた。


「ニブル!!」


サラが声をかけるとニブルは、ゆっくりと振り返った。


「サっ・・・サラじゃねぇか!」


ニブルは、驚いてそう叫ぶとソファーの上を飛び越えてサラの側に寄ってきた。


「ニブル・・どうしてここに?」


「てめぇこそ! よく、ここが分ったな」


「ブラスターの残骸を見たよ! 何があったの?」


サラがそう聞くとニブルは、少しかげりのある表情で口を開いた。


「すまない!! サラ、お前の親父さんが・・・・・ケガをした! 俺を庇ったんだ!」



「えっ? そんな・・・・」


唐突なニブルのその言葉にサラは、信じられない思いだった。

そして、すぐにサラの脳裏に浮かんだものは、あのブラスターの残骸の中で、真赤にそまったシートの映像だった。


「どうして、そんな事に!?」


「この町の奴等さ! 攻撃してきたんだ! この町のレジスタンスがよ!」


「父さんは、何処に!?」


サラが父の事を心配してそう叫んだ。


するとニブルが「こっちだ!!」っと言わんばかりにクイっと顎だけを動かして隣の部屋に歩きだした。サラがニブルの後について隣の部屋に入るとその角にあるベッドの上で包帯だらけでグルグル巻きになった父、ガスタルディーの姿があった。まるでミイラの様な姿で横になっている父の横にサラが来て、ニブルは、その後ろで申し訳なさそうに立っている。


そして、サラが側に来たのが解ったのか、ガスタルディーは、閉じていた両目を開いた。



「・・・サラか・・・よく来た・・な・・」


「父さん! 大丈夫なの?」


「いや、あまり良くなくてな・・・サラ! よく聞くんだ! 俺は、ヘマをしてこのありさまだ。とても、お前達と一緒に旅を続けられそうにない。俺は、この町で回復するまで居るつもりだ」


父、ガスタルディーのその言葉にサラは、愕然とした。唯一頼りしていた父がこれからの旅について行けないと言う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ