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第六話「駆け出し弱者の再挑戦」

平日は毎日投稿できるか分かりませんが、頑張って書いていこうと思います。

ちなみに、「蓮」の表記は異世界人だと「レン」になります。イーリアは蓮のままですが。

 

 さて、俺が装備やらアイテムやらを悩みに悩んで購入し、約束の時間に宿へと戻ると。

 何やらご機嫌の様子のイーリアが、膨らんだ袋を抱えながらニコニコしていた。

 隣には、呆れた様な顔をしてイーリアを見るレイの姿。

 …………。


「あっ! 蓮さん蓮さん、見てください! 蓮さんがくれたお金ありましたよね? アレ、結構な額で装備云々を買ってもお金が余ったので、大量のお菓子を購入しましt」


「バカ野郎!」

 

 ―――俺はイーリアの後頭部を引っ叩いた。


「誰が全部使えって言ったよ!? お前も女の子の端くれだから装備には気を遣うと思って、わざと多めに渡しといたのに……色気の欠片もねえな!?」


「だ、だってだって! これ見てください! 『魔人サタンに匹敵する暗黒級の不味さ……汝はこの食感を欲するか?』とか書いてあるんですよ!? 気になるに決まってるじゃないですか!」


「美味いならまだしも不味いのかよ!? ……てか、ホントにお前菓子ばっかじゃねえか……何やってんだよもう……」


 俺はガクリと地に膝から崩れ落ちた。

 折角の俺の粋な計らいも、コイツにその意図は通じてなかった様だ。

 隣ではレイが、苦笑しながらもイーリアの買ったスナック菓子をぽりぽりと噛っている。


「……ん、こっちのは意外とおいしいな。レンも食べるか? サラダ味だぞ」


「…………」


 脱力しながら俺はそれを受け取って口に入れた。

 ……地味に美味いのが腹立つ。

 というか異世界にもお菓子があるのか。


「はぁ……まあ、もういいや。こっちはこっちで魔法もスキルも装備もアイテムも、バッチリ準備は整えてきたから」


「あ、ホントですか? 私も通りすがりのおじさんにですけど、光魔法の習得の仕方を教えてもらったんですよ」


「……そのおじさんにはなんて言われたんだ?」


「『へへっ、お嬢ちゃん。ちょいとこっちに来てみなよ。おじさんのエクスカリバーを見せてあげるぜ!』って……」


「それ駄目なやつじゃねえかああああああっ!?」


 盛大に俺がツッコむと、イーリアは「?」と小動物の様に小首を傾げた。

 様子を見るとなにもされてないみたいだし、別にいいけどさ……。

 俺は気を取り直すと、二人に向き直って言う。


「ふっふっふ……俺はとある姉ちゃんに役立つスキルを教えてもらってな? 魔法は水属性だけだが、スキルは火、水、木、光、闇、無属性……全てを教えてもらった」


「芸者スキルは覚えなかったんですか?」


「そっちは気が向いたら習得する様にするよ。……じゃあ、ちょっとお前らには俺の練習台になってもらうとするか。いくぜっ、『アース・バインドッ』!」


「うああっ!?」


 俺は周りの人達の視線を全く気にせずに、木属性スキルを使ってツタで二人を拘束した。


「まだまだいくぜっ、『フリーズ・ブラスト』ッ! 『アース・ホールド』! 『リーフ・ガード』!」


 足下を氷結させてからの、落とし穴創造。

 落とし穴の底にはツタのクッションを創造しといてやったので、怪我はないと思う。


「ひゃっはあああ! 成功だあああああっ!!」


 全て自分の思い通りにいった事に喜びを感じはしゃぐ俺に、やがて落とし穴から脱出した二人が呟いた。


「「最低だ……」」


 自覚はある。


            ■


「―――さて、再チャレンジだ。イーリア、お前も魔法は女神的なパワーでちゃちゃっと習得できたんだろ? だったらサポート役は俺とイーリアに任せて、レイが果敢に突っ込んでいってくれ」


 再びブラックファングが現れるというダンジョンに潜り込んだ俺達は、作戦の内容をまとめていた。

 イーリアはファラから貸してもらった魔法の詠唱書を読んで、さらに通りすがりのおじさんに教えてもらった通りに試してみたら、魔法はあっさり放てるようになったとの事である。

 やはりそこら辺は女神の才能というやつなのだろうか。


 となればあとは、レイが本番にビビらず剣技をかましてくれればいいという事になる。

 レイは自由行動の時間で、武器の購入や街の冒険者達に「本番にビビらない方法」を聞いて回ったんだとか。

 実を言うと俺も武器屋に向かう途中冒険者に話しかけるレイを見かけたのだが、どの冒険者達も皆親切に答えてくれていた。


 男冒険者達はニマニマしながらレイにアドバイスしてくれていたから、多分この街の男冒険者達はロリコンの資質がある者が多いのだろう。


 そして女冒険者達は優しい人達が多い。

 何とも平和な街である。というか、まず小さな可愛い子を馬鹿にするという奴の気が知れない。レイが前にいた街は、よほど治安の悪い街だったのだろうか。


「来たぞーっ!」


 そんな事を考えていると、体長二メートル程もある黒熊が遠目に見えた。

 

「レイ、いけるか? 大丈夫、これは練習だと思え。あの黒熊を、お前の大好きなものだとしてみろ」


「大好きなもの……?」


 俺の言葉を聞いた瞬間、レイの顔がふにゃあと幸せそうな笑顔になっていくのが窺えた。

 ……何を想像したのだろう。


 


 

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