第十三話「萌え休息」
―――俺がボコボコになるも無事勝利した翌日。
「―――というワケで、シャーラがウチのパーティーに入る事になった。二人共、改めて仲良くしてやってくれ」
俺は冒険者ギルドで、目を丸くする二人にそう言い放った。
まあその反応も無理はない。
邪神団とやらの幹部が、自分達のパーティーに入るのだから。
「……レン、どういう事だ? 私は反対だぞ。邪神団は、一般的に人間の敵とされている。そんな物騒な団の幹部を、私達のパーティーに入れるなんて……」
「―――あれ、そういえば」
俺はふと思い出した様にレイに言った。
「お前ってまだ俺達のパーティーに正式に入ってないんじゃないのか? シャーラはお願いしますって、キチンと礼儀正しく頭下げてきたぞ。なんか流れで俺達のパーティーにいない、お前?」
「うっ……それは、そうだが……」
戸惑うレイに、俺はニヤリと不敵な笑みを見せると。
「ほら、俺達のパーティーにいたくばお願いしますご主人様とでも言ってみろよ! 奉仕してくれるのか!? 労ってくれるのか!?」
「う、うう……」
「まずはお風呂で背中でも流してもらおうか! あの時は不覚を取ったが、今回でその無念を晴らしてもらおう! そしてその後は、『ご主人様、身体が火照ってきました……!』と頬を赤らめながら俺に」
「うにゃあああああああああ!!」
レイが掴み掛かってくるが、身長差がありすぎるのでそのパンチは俺の腹辺りに当たるだけだ。ちっとも痛くない。いやはや、可愛いね。
「レ、レン……。もう、その辺にしてあげて……?」
シャーラがそう言ってくるので、俺は取りあえずレイに説明する。
「いいかレイ、コイツはもう幹部の仕事は辞めたんだとよ。だから『元』幹部だ。邪神は未だ怒ったままらしいが。それにコイツは、街に出たはいいが特に行く当てもないらしいんだから」
「む、むぅ……」
「それにいいじゃん、俺だって女の子三人に囲まれてハーレム生活送りたいんだよ。なあ、分かるだろ? 折角二次元世界に来たのに俺、まだそれらしいイチャイチャイベントがないんだよ。この際中身はもういいから」
「…………」
……クズを見るかの様な視線だな。
■
「レン、ちょっといいか?」
扉越しに聞こえてくるその声に、俺は寝そべっていた体を起こす。
夜の帳もとっくに降り、もうすぐ十二時を過ぎる時間帯。どうしたこんな時間に。まさか夜這いか?
ちょっとだけ期待を込めつつ扉を開けると、ぶかぶかのパジャマに身を包んだレイの姿。
「……レ、レン……。そ、その……今日はなんだか、眠れなくて、その……」
「ああ、そういう事なら一緒に寝てやるぞ。よし、布団に入ろうか」
「い、いやっ、そうじゃなくって!」
準備を始めようとする俺の裾をレイは掴み、上目遣いでこちらを見てくる。
「そ、その……しばらく寝付けそうにもないし……一緒にいてくれるだけでいいんだ。そ、それにほら、レンもここ最近色々あって疲れているのだろう? 女の子と一緒にいたら疲れもとれるだろう? 私に感謝するのだぞ」
「分かった、お前夜に一人でいるのが怖いんだろ!」
「……う、うぅぅ……」
あっさり弱点を見破られた事が恥ずかしかったのか、レイは顔を真っ赤にして俯いた。
挙動もおかしいし目線は泳ぐし体を震わせてるからもう何もかもバレバレである。
「やっぱしお前は子供だな。何なら毎日来たっていいんだぞ? というか、今までよく我慢出来てたな、偉い偉い」
「うにゃあああああ!? こ、子供言うなー! この、このぉっ!」
いや実際子供だろ。少なくとも俺から見ればそうだ。
「う、うぅ……。そ、そうじゃなくって! えっと……レンはさっき言ったよな? 俺達のパーティーに正式に入ってない、って」
「え? あ、ああ……」
いや、ほんの冗談で言ったつもりだったのだが。ひょっとしてコイツそんな事気にしてたのか?
「いや別にアレはお前をからかおうとしただけで、特に深い意味は……」
「―――私が明日一日、レンの言う事に従ってやる」
「へ?」
コイツ今、さらっと物凄い事言わなかったか?
だったら、そんな事やあんな事も、勿論していいという事に……!
「―――レン、先に言っておくがその……えっちな事は無しでだぞ?」
ですよねぇ。
いや、だったら別に特にして欲しい事もないんだけど。
「えっちじゃない私に出来る事なら、何でも言ってくれ。最近だと本番恐怖症も克服できる様になってきたし、私は役に立つハズだぞ? そうしたら、ちゃんとパーティーの一員って認めてくれるよな」
そう言ってふふんと胸を張るレイ。
まあ、コイツは少なくともイーリアよりはまともな奴だと思う。
だが、俺に女の子にこき使わせる事に快楽を覚えるような趣味はない。どうしたものだろうか。
「じゃあもういいや、明日一日俺の事を『ご主人様』と呼べ。あと敬語。……ってか、もう十二時過ぎたから今からスタートな。俺の望みはそれだけ」
「……え、それだけか?」
「それだけ」
真顔で答える俺に、少しだけレイは戸惑いつつも、頬を赤らめ―――
「ごっ、ごしゅじん様!」
……惜しい。




