寂しげな部屋
眩しい朝日が、窓から差し込む。
少し硬めのシングルベッドで寝ている少女、朝丘玲花はその光に目をうっすらとあけた。
「・・・・・・。」
まだ頭は起きていないようで、半開きの目を天井に向けた。
そこには、思わず目を瞑ってしまいそうになるくらいの光が差し込む天窓があった。
これは、玲花が小学生の頃、無理言ってつけてもらったものだ。
「・・・・朝・・。」
真っ白なシーツの羽毛布団をめくり、玲花は小さくあくびをした。
(今日は何曜日だろう・・。)
ベッドからフラフラと立ち上がり、玲花はカレンダーを見た。
10月9日、火曜日だ。
それを確認すると、両開きのクローゼットから学生服と靴下を取り出した。
玲花はのろのろと着替え、リビングに向かった。
ドアを開けると、焼き立てのトーストエッグサンドイッチとホットミルクが並んでいる・・・。なんてことはなく、寂しげな誰もいない殺風景な部屋が広がるだけだった。
「・・・・・。」
玲花は、裸足でキッチンに行くと冷凍ミートボールを電子レンジに放り込んだ。
時刻は7時、少し焦りながら白飯とミートボールを口に含み、カバン取り家を出た。
「電車間に合うかな・・。」
走り出してすぐに振り返り、家を見た。
だが、玲花はその家がまるで他人の家のように見えた。
(いつみても慣れない)
玲花は、小学生の頃までの記憶がなかった。
高校に入るまでは、あまり知らない児童施設で暮らしながら学校に行っていたのだが、高校に入ると私が今でも通う病院の先生が別荘を成人するまでに使っていいと貸してくれたのだ。
それに加えて、高校までのお金の援助をしてくれるのだという。勿論、お小遣いなどはバイトをして稼いでいるが、食費、光熱費、学費等はすべて担当の先生が代わりに払ってくれるのだという。杉原先生という方で、いつも優しくて相談も親身になって聞いてくれるのだ。
玲花は、将来働くようになれば、少しずつにでもお金を返すつもりでいた。
4分走って、ようやく明生駅に着いた。どうやらまだ電車は来ていないようだった。
「・・・何だ、後10分もある・・・。」
玲花は、安堵と共に横に並んだベンチに座った。カバンから音楽プレイヤーを出し、曲を聴いているうちに、玲花は目を閉じて寝てしまった。