よいこはおうちに……ひろわれるの?
ブクマ1078件。感謝いたします。そして、 閲覧して下さる皆様にも感謝を! 更に、評価をくださった方々にも感謝いたします。
ギルドの裏庭で一人(ギャラリー付き)、黙々と試行錯誤を繰り返してみた結果、もふもふ魔法はリアルとほぼ同じく再現できる事がわかった。
モンスターの全身に巻き付かせて捻る。樹や岩などを利用して、ゴムの性質を利用してぶつけるなどの利用方法が使えたのは強みだ。
更に、トリモチのような粘着性や、ふわふわな綿毛のような柔らかさから、鉄くらいの硬度まで、俺の意思であらゆるコントロールが再現できた。
その他にも、周りにいたプレイヤーさん達が己の体も提供してくれたおかげで、対人でも色々と使える事が分かった。
でも、快く協力はしてくれたんだが、俺を見つめる目が血走り、鼻息が荒くて少々怖い。やんわりと言葉を濁すことでフレ登録を逃げていた。まあ、ある一人を除いてはだけど……
あと、ほとんどのプレイヤーさん達からもふもふ魔法がまるで、クモの糸のようだと言われた。なので、ここにいるプレイヤーさん達の考えをまとめると、
俺はこの魔法でトラップを仕掛けて相手をはめるような、罠師と呼ばれる職業と同じような狩り方が今のところ、無難なんじゃないかとアドバイスされる。
特に俺の場合、身体能力の面であまりにも低すぎるため、モンスターを完全に無力化でもさせないと、単独での狩りすら難しいと、次々口を揃えて言うのであった。それには俺も同意見である。
と言うわけで、俺は罠師の師匠を作ることにした。マジシャンの俺が罠師に教わるのも少しおかしいかもしれないが、細かい事を気にしたら敗けである。できることをコツコツとやる。あれこれ考えるのなんて後からすればいいこと。
今はこの人に教わればいい……けど、1つだけどうしても気になる。
「ハムたろうししょう……おおかみさんなのになんでおなまえがはむすたーなの?」
狼人族なのに何故ハム太郎……鼠人族だって選択肢にあるのに何故……
(ハム太郎)「俺のハムは肉のハムだ。いいかクウ……いや、今から漢字の方の空と呼ぼう! 俺のネームはただのハムじゃ寂しいから太郎を付けただけなんだが、
決してジャンガリアン的なネズミのハムじゃないぞ! それにこんなに美しくて張りのある素敵な筋肉がハムスターの訳ないだろう?」
リアル体型を反映するヴァルハラのシステムだけあって、ハム太郎師匠の肉体はガイアのおっさんと同類だった。
身長195cmのマッチョなおっさん。リアルで狩猟経験があり、そのリアルスキルをも活かしてヴァルハラで遊んでいるそうだ。
完全な戦闘職かと思いきや、狩ったモンスターのドロップアイテム(素材)で料理から罠具までと幅広く作製するそうだ。
罠士は直接モンスターと戦かわなくても熟練度を上げることが出来るので、戦闘職と生産職の両面で遊べるそうだ。
多芸なマッチョなおじさん……リアルで何をしている人かちょっと気になる人である。
こんなハム太郎師匠は俺を普通の子供として扱ってくれる。俺に声を掛けてくれたのも、見た目の容姿ではなく、もふもふ魔法と言う珍しい異能力に興味があったのと、
何だかんだと言って誰彼構わず面倒見のいい人らしい。この裏庭で新規さんを見つけてはレクチャーをしてると周りの人が教えてくれた。
そんなこんなで俺と師匠は早速森へと狩りに出掛けることになった。ヒョイと俺をその肩に乗せてのそのそと移動するハム太郎師匠。突き刺すような視線が彼に集中するが、当の本人は全く気づいてはいなかった。
(?)「(ブサゴリラとラブぬこ……そこはゴリのポジションじゃないでしょ!)」
(?)「(着いて行きたいけど……ゴリさんといると疲れるしな……空気読まないしな……)」
(?)「(ゴリさん帰って……いい人なだけに言えない……)」
ハム師匠は違った意味で俺にとっては有難い人であった。
………………
…………
……
…
ぽっかぽかの子春陽気の下、俺は師匠と一緒に森の茂みで腰を降ろして罠を仕掛けている。
(ハム師匠)「いいか空。まずお前のスキルは工夫次第でいくらでも罠を作れる。粘着性があって硬度も変えられる。しかも形状はいくらでも変えられるんだから、特に言うこと無しだ。
発動後の継続時間や耐久値も神クラスだしな。多分、空のハンデなステータスの影響なんだろう。出なければ空はゴブリンの一撃でも即死だしな……まさかあれほど紙とは……」
実際に街を出てすぐに遭遇したゴブリンと一戦をやらせてもらったのだが、あっさりとゴブリンの一撃を喰らって俺は街の教会に出戻りした。
それもその筈……プレイヤーの頭上には、緑のHPバーとオレンジのMPバーがPTを組んだ時、または各種フィールド戦闘時に目視できる様、表示されているのだが、俺のHPバーは携帯のアンテナの如く一本だけピョコっと表示されていた。
通常肩幅ぐらいか、それ以上の長さがあるらしいのだが、俺のHPバーはあまりにも短く、最初、師匠はコレがなんだか分からなかったそうだ。だけどすぐに気がついて、あまりのHPの少なさに驚愕していたくらいであった。
そして、MPバーは天使の輪の様に一周して繋がっていた。いくら使っても変化がない。つまりほぼ無限に近いMP量にチートだと言われたが、
天使の輪のように浮かぶその中心にぴょこっり生えるHPバーを見ては、顔を逸らして涙ぐんでくれた……素直にありがとうって言いたい。
(ハム太郎)「だから魔法で罠でも剣でもなんでも作っちまえばいいんだ。それこそ、「コレだ!」と思ったら何でも作っちまえ。空の戦いはこの作成の時点で始まっていると思え。いいか? まず基本となる罠を見せるから【……】」
師匠は罠でもメジャーなトラバサミを見本として置いてくれる。コレを早速模倣しろと細かく教えてくれる。ちなみに罠師が設置したトラバサミは、24時間経つと消滅する使い捨てアイテムだ。
「かたちはこうで……ばねがこうなの?」
(ハム太郎)「あ~違う。そこはそうじゃなくてな、そう、そこを伸縮させるんだ」
あーだこーだー言いながら原理を理解し、組み立てていく。師匠の教えは実に丁寧で怒鳴ったりはしない。
俺が理解しないのなら、理解できるように教えていない自分が悪いんだと、師匠の教え方はそんな熱意を感じさせる教えであった。
そのかいもあって完成したトラバサミを師匠が教えてくれたポイントに移動して設置していく。その際にまた教えてくれる。獣が通った場所には必ず痕跡が残る事を。
ゲームではモンスターの足跡だったり、臭いに糞の痕跡。それらはそのエリアで一番高ランクで獰猛なボスモンスターやレアモンスターになると、縄張りの痕跡も所々にあるそうだ。
それらを見落とさずに仕掛ければ、レアモンスターでも必然と掛かると教えてくれた。なんだか、父が教えてくれた事とかなり被っている点は多かったが、
そんなことを口に出すのは野暮なので、復習を兼ねて俺は真面目に師匠の教えを一から受ける。全く同じって訳ではないし、弟子は師匠の教えを真摯に受けることが、師匠に対する礼儀だからね。
師匠のお勧めポイントの五ヶ所にトラバサミを仕掛け終わり、更に俺も好きな所にトラバサミを仕掛けていいか尋ねた。
(ハム太郎)「そうだな。俺の教えを空は真面目に聞いていたし、まあゲームなんだ。好きな場所にやってみろ。ただし、プレイヤーを狙うようなトラップにしてはダメだぞ?」
これも当然のことながら、罠はモンスター用であると同時に、対人のプレイヤー用としても扱える。なので、プレイヤーは罠師の仕掛けた罠にも気を付けなければならなかった。
なら罠師はPKプレイヤーが多いかと言うと、これまた違う。仕掛けられた罠を目視すると、その罠の作成者が表示されるようになっている。また、罠によってデスペナルティーを喰らっても、ログに討伐者としてしっかりとネームが残る。
なので、悪質な罠師だとあっと言う間に他のプレイヤーに晒されてしまう。純粋な戦闘職プレイヤーに目をつけられれば、火力に差が出るの罠師では対抗できないので、おいそれと対人向けの罠を仕掛けられないのである。
「りょうかいですの。も~ふ、も~ふ、も~ふもふなの」
手からもふもふな雲を生み出し、ニョキニョキと形作る……どんどん作る……それこそ有り得ないサイズで作る。
(ハム師匠)「お、おい空……お前、何を仕止めるつもりだ……」
なんかデッカイのが掛かればいいなと思い、つい調子に乗って5メートルサイズのトラバサミを作成した。ちょうど森の樹々がない、開けた空間だったので、その中心に設置した。
ここなら侵入した時点で一目瞭然であり、プレイヤーが掛かることはまずあり得ない。いや、その前に挟まることが有り得ない。
「ししょうのおしえをうけてのはつとらっぷなの! だから、えものはびっぐさいずねらいですの! だいまおうかむひあなの!」
実際、こんな自己主張の強いトラバサミも何もあったもんじゃないが、夢は大きく、やるならとことんやっちゃえである。
(ハム太郎)「ふはははははは。あぁ、そうだな空。大物を仕止めるなら、これくらい大きくないとな。ただ、大魔王はよくばり過ぎだぞ」
こんな初心者が来るような森で大魔王が来る訳もないが、師匠は見た目の小さな俺が、デッカイ罠を仕掛けてワクワクしてるのが堪らなく可笑しく、微笑ましかったようだ。ポンポンと俺の頭を撫でる彼の手は優しかった。
ガキの頃は俺もこうだったなと、輝いて見える愛弟子の頭を軽く撫でると肩に乗せて、始まりの街へ帰るのであった。
………………
…………
……
…
街に着く頃にはすっかり日が落ち、夜の戸張が空を覆っていた。街は夜の顔に変え、NPCの商店は軒並み店仕舞いをしていたが、
その逆に、飲食店や良い子は決して行ってはならないお店が灯りを灯し、そこかしこで賑わいをかもし出していた。
そんな景観を師匠の肩から見下ろしていたが、ここでお別れする為に街道に下ろされる。別の弟子と約束がある師匠にお礼と握手をして街の入り口でバイバイをする。
困った事があったらいつでも連絡してこいと、別れた後でメールを寄越してくれる面倒見の良い人だった。
さて、とりあえず今日泊まる宿でも探すとしますか。ハイハイをしながら街の中央を目指して進む。その途中に宿でもあれば入って聞いてみなければ。
すると、ヨチヨチとハイハイする俺と並走するように例の方々が、相も変わらず付きまとう。
(?)「ほ~らクウちゃん♪ たい焼きでしゅよ~」
(?)「こっちのたい焼きの方が甘くて美味しいよ~♪ おいで~」
(?)「お前ら甘いな……俺の持ってるたい焼きはクリームたい焼きだ! 同じもんばっかじゃ飽きるだろ。もふもふかもん!」
また現れた……モフラーの皆さん。ぬーちゃんのたい焼きに釣られたのが広まったせいか、みんなたい焼きをエサに俺を釣ろうとしていた。
「これからおゆうはんなの。ごはんのまえにおかしをたべたらめっ!なの」
一般常識をとりあえず言ってみた。それにたい焼きが大好物な訳ではない。1日に2~3個食べれれば十分なのだ。
(?)「はっ!? おっぱい?」
……エルフプレイヤーのお姉さん。いつか絶対誰か言うとは思ってたけど……やっぱりエルフだったか……アイナママのせいじゃないけど、やっぱりそういう運命なのね……
と、そこでとある男性のプレイヤーが唸る。
(?)「……中身が成人ならおっぱいを飲む行為はアウトになるのか? ん~、でもこのクウちゃんの場合、純粋に赤ちゃんの食事になるわけだから、決して卑猥な行為にならない訳だし、赤ちゃんが授乳する行為がR指定になるのはおかしいよな?……ん~」
赤ちゃんの授乳は確かに卑猥な要素と言えないけど、中身が成人した人だとするとグレーと考えるのもわからなくはないよね。ちょっと目の前のプレイヤーが訴える問題に共感してしまう。
(?)「なら私のおっぱいあげようか? 別にエロでもクウちゃんならいいし」
妙齢の女性が俺に迫る。あ、この人本気だ。ワクワクしてる節があるし、俺を見つめる瞳は慈愛7、期待3と言った顔であった。今の話を聞いていたのに、中々チャレンヂジャーな人であった。
(?)「勇者がいたよ」
(?)「二児の母を舐めるんじゃないの。それにクウちゃん可愛いし、全然構わないさね。それに仮想世界でおっぱいをあげるなんて、中々できることじゃないよ? あの子達も大きくなってね、もう甘える歳じゃないし、寂しいのよ? 大きくなった子供なんて」
「そういうものなの? あーでも、クウちゃんよりもふたりのおこさんにおいしいごはんをつくってくださいなの」
母性本能が強い人みたいだ。それに恥じらいも赤ちゃんの授乳となると、また別のようだ。
(?)「ふふふ、インする日はカレーって決めているの。だから明日もカレーで楽ができるのよ」
コロコロと笑うお姉さんに、ああ~、俺も良くやったと共感する。カレーは2日……いや3日目まで楽しめる(楽できる)よな。
「うわぁ~、かれーばんのうせつなの。……あ、でもクウちゃんはおっぱいいらないの。もうきょうはごはんをてきとうにたべたら、やどをとってねるの」
やっぱり俺に興味をもって近づいて来るプレイヤーさん達は、相変わらず苦手と言うか、どう接したらいいか迷ってしまう。中にはこうして親身になって接してくれる人もいるからだ。
彼等は一応進路の邪魔をせずに着いて来る。なので、どこかお勧めのお店や宿がないか尋てみた。するとやたら遠くの店や、
下手すると別の街の宿を紹介してくるので、抱っこをしなくてはいけない状況を作り出そうとする下心が見えてしまったので諦めた。
ところで今所持金っていくらもっているんだろ? 師匠と森に出掛けた時は魔除けの香でモンスターと遭遇しなかったが、すぐ街を出てゴブリンのワンパンで殺されてしまったからな……
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【 職 業 】:マジシャン
【 H P 】:和紙
【 M P 】:神
【 力 】:赤ちゃん
【 体 力 】:赤ちゃん
【 耐 久 】:赤ちゃん
【 素早さ 】:赤ちゃん
【 魔 力 】:神
【 もふもふ 】:神
武器:無し
防具:パジャマ(クリーム色)・靴下(白)
アクセサリー:無し
所持金:50ロン
異能力:もふもふ魔法(☆1) 究極の抱き心地(☆1)
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ありゃりゃ……やっぱりデスペナルティーのせいで、所持金の半分が消えてるし。これはお夕飯にお金を使ったら、今夜宿に泊まるお金が足りなくなるんでは?
「このまちのやどやにとまるのに、いくらひつようかおしえてほしいの」
困ったら聞く。そのためのプレイヤーさんは周りにたくさんいた。
(?)「最初の街だからここらは格別に安いけど、それでも確か……素泊まりのボロ宿でも最低100ロンはしなかったっけ?」
おうふ……ハイハイをしていた俺はペタンと地面に伏す。オワタ……
(?)「まさか足りないとか? だったら100ロンくらい貸す……いや、全然余裕だからあげるよ」
ムクリと起き上がって俺は首を横に振る。気持ちだけ頂く。ありがたいが、無理なら無理で別の手段がある。
(?)「ひょっとしてクウちゃんデスちゃったの? あー、たまに生産キャラでそういう人いるけど……ねぇクウちゃん、うちのクランにおいで。本拠地でならいくらでも泊まれるしタダだから。遠慮はいらないからおいで」
心配してくれた鷹人族のお姉さんがクランの本拠地であるホームへと誘ってくれる。クランとは猫ちゃまふぁみりーのような集団パーティーの呼称である。
このヴァルハラにおいて、クランを創設し、クランメンバーになれば専用本拠地に入れる資格ができる。また、来客人として招くことも可能であった。
それと、本拠地は様々な設備を追加することで、街中にある宿泊施設よりも充実した施設になると麗子ちゃんが教えてくれた情報には載っていたっけ。
「みなさんありがとうなの。おきもちだけいただいておくの。クウちゃん、こうみえても12ねんのきゃりあをもつやせいじなの! だからやどにとまれなくても、ちゃんとあてがあるの」
今現在の気候は春に近い。日が落ちてもやや寒い言える程度の気候。俺からすればこの程度、全く気にする必要のレベルじゃない。俺と父は雨の日も、風の日も、嵐の日にだってあの森で過ごしていたんだ。
確かに父の力でそれでも快適に過ごしてきた方だが、大自然の中で過ごした12年の年月は俺の心の持ち様を変えていた。
(?)「どこかの山奥に住んでたってこと?」
「やまそだちなの。おっきなもりなの」
(?)「田舎なの? 群馬?」
……何故に群馬……?
(?)「オイッ! そこの羊人族のお前。たった今、お前群馬県民全員を敵にしたからな!」
あ、群馬の人なんだろうか……激怒だ。しかし何故大森林のワードで群馬が出てくるのか? この百年の間に何があった、群馬よ……
「えーと、ぐんまじゃないの……ばしょはいえないけど、もうじゅうさんがでてくるようなとこでくらしてたの」
洒落にならないクラスの猛獣がうようよ徘徊していましたとも。少なくとも俺の知る群馬は平和であったよ……
(?)「海外なのか……それに比べたら確かにゲームの世界なんて、野宿したって余裕かもしれないけど……」
(?)「『やっぱり群馬じゃん……』」
(?)「聴こえたからな羊人族の女! PVP受けろや! 群馬県民怒らせたらどうなるか思い知らせてやるから、覚悟しろや!」
あー、とうとうあのお兄さん、郷土愛がヒートしてPVPを開始しちゃったよ。
(?)「うーん……せめてご飯だけでも一緒に食べない? それくらいならいいでしょ?」
鷹人族のお姉さんが本気で心配してることが分かったので、俺は大人しく言うことを聞いた。人の好意をあまり断り続けるのも失礼だからね。
決まったことで近くのお店にに入り、そこで何故かあーんして順番に食べさせてもらうことに。何だかゲームでもリアルでも凄く得してる俺であった。
………………
…………
……
…
このヴァルハラでは、NPCにも高度なAIシステムが組み込まれており、彼等も仮想世界とは言え、各個とした自己を持った住人である。
そして、そんなNPCの中の一人である『トーマス』は、今日も始まりの街を巡回し見回る為、喧騒の絶えぬ眠らぬ街へ詰所から出発し、決められた巡回ルートを辿るべく移動を開始した。
彼はこの街の警備隊員の一人である。この街で生まれ、この街を守ることを誓い、愛する妻と愛娘の二人を持つパパさんであった。
今年で26歳になる彼の身長は175cm。無駄のない均整の取れた体格。見た目はやや細く見えるが、脱げば驚くほど鍛え上げられた肉体に大半の者が驚くであろう。
彼の父が同じくこの街の警備隊のトップであり、上司な上に現役としてまだ在籍している。そして、そんな父に幼い頃から鍛えられてきた有能でもあった。
今日も天より降り立った異世界人が夜の街に繰り出している。異世界人は世界に蔓延るモンスターを駆逐し、その脅威から人々を守る守護者でもある。
それもその筈……彼等は不死者であった。その身が幾度引き裂かれ砕け散ろうとも、ミラ教会が定める教会を作り、ミラの御本像を建て奉れば幾度となくその場に戻され蘇る。
故に、この世界の住人は彼等を受け入れた。だが、そんな人類の守護者である彼等の中にも一定数、悲しいことに悪事を行う者達がいる。
その度合いも過ぎれば創造神ミラの御使いによって裁かれるが、軽度の悪事なら見過ごことばかりであった。
だからこの世界の住人である彼等は、今日も平和税とも言えるデメリットを納めるために、街へ繰り出し勤しむ。
まずは犯罪率が一番高いスラム地区へ向かう。日も暮れ、夜になると強盗や殺傷事件がよく起こる危険な地区である。そのほとんどが困ったことに、異世界人の懐を狙った事件ばかりだ。
彼等は死なないから、スラムのワル共も一切の手加減なしで派手にやる。その為、常に無関係な者が巻き込まれ大ケガを起こす。だから今日も目を光らせ練り歩く。
時折、街角に立つ娼婦が冗談で誘って来るが、こちらも冗談で返して通り過ぎる。警備隊の人間だとしても、いちいち彼等を取り締まったりはしない。ここではそんなモラルは意味を為さない。ここにはここの法がある。
スラムとは言わば必要悪とトーマスは理解している。他所の土地から来る悪党を追い出すのも、裏を生きる彼等の役割だ。
今日も何処かで何かが起きているんだろう。俺の目に入るなよと彼は呟きながら、無事貴族達が集まり住む住宅地区へと足を踏み入れた。
ここも犯罪率がスラムの次に高い場所だ。そのほとんどが窃盗による犯罪。怪しい身分の者がこの地区を歩いていたら、とりあえず捕縛しろとガキの頃から言われ続けてきた場所だ。
それはこの街の常識……そして法。夜に貴族の住まわれるこの区画を平民がさ迷歩けば、悪いのはその者だと言うのがまかり通る場所なのだ。
但し、異世界人は除く。彼等に世界の常識は通じない。もしこの場を歩いていたとしても、何かしら不振なことをしない限り、見ないことにする。
また、貴族達も異世界人にはどう足掻いたところで敵わないことを理解しているので、横柄な態度はあまりとらない。
たまにそそれでも勘違いしたバカが異世界人にケンカを売って殺される事もあるが、それは言わば風物詩のようなものとして扱われる。いくら言っても聞きやしない貴族がいるのだ。
この地区も今日は無事平穏で何も起きない。ホッとする。たまにはこんな夜があってもいいものだと、次の繁華街に入ると、相変わらず酒に酔った異世界達、あらくれの冒険者が派手に賑わっていた。
が……とうとう起こってしまう。激しく物がぶつかり、壊れる物々しい音を捉える。急いで現場に駆けつけてみると、やはり異世界人達による仕業であった。
とある酒場でいきまく異世界人の男。その男に対するように、こちらもいきまく異世界人の男。男達が座っていた席の周辺は散らかった料理に割れた皿と、
女将さんがそれらを一瞥して、わからぬようにため息を吐いている。どちらも酔いが回り、冷静な判断ができる状態でないのが一目瞭然だ。
(?)「女将さんはてめえには不釣り合いだって言ってんだろ! この猿人族が!」
(?)「キャンキャンうっせんだよ! この牛人野郎が! 女将さんが無理して笑顔作ってんのに気付けや! あーブッサイクな牛にはわかんねぇんだろうな~♪」
実際には両者に営業スマイルで対応してる狐人族の女将さんなのだが、憤っている両者は全く気づいていなかった。互いにヘイト値を振りきり……とうとう店の中で武器を抜き暴れ始める。
(トーマス)「チィッッ!! 異世界人共やめんか!」
異世界人同士は神の御技のおかげで斬りあっても死に貧しない限り、ある程度経てば治る……いや、生死に関わるような怪我を負っても、その場で秘薬を使えば塞がりピンピンしている。だから辺り構わず平気で暴れる。
そんな奴等もこの世界の住人である我らを傷つけたり、殺したりすると天より裁きをうける。だから俺は命懸けで今日も仲裁に入った。
流石の彼等も俺を目にすると、その刃を振りきる事を躊躇する。異世界人同士は切りあっても良いが、俺達住人を傷つけるのはマズイからな。
間に入って場を仕切る。
全く……両者に店の修繕費と慰謝料、さらに罰金を取って、その場を後にする。女将も毎度のことだから慣れてはいるが、内心辟易しているに違いない。
散らかった店内を片付けるのは彼女なんだから。他でも似たような事件はあったが、とりあえず無駄な血を流すことなく今夜も治めることが出来た。
ずっと文句ばかり言ってはいるが、この世界の住人は異世界人に感謝をしている。それに異世界人はモンスターを倒してロンを持ってくるお得意さんでもある。
でなければこの繁華街は一月と持たずに廃れるだろう。さて、詰所に戻る前に噴水前へと通って帰るか。あそこは異世界人が降臨する唯一の場所。こんな辺境でありながら、この世界で一番の不思議で神聖な場所。
彼等が現れる時の光は昼間でも美しいが、夜になるとその輝きはより一層際立ち、見る者の心を揺り動かす。
繁華街で疲れた心を癒すべく足を向けると、いつもは静かに屯っている噴水前の様子がどうもおかしい。
遠目からだが人垣が出来ていた。事件か? 雰囲気から特に重大な事件が起きているようには見えなかったが、急ぎ駆け足で現場に向かい……予想外のものを目にした。
……あ、赤ちゃん……? 噴水前の併設されている木製のベンチに、赤ん坊が異世界人に囲まれるように……雲?に包まれ寝ていた。
「すぅ~すぅ~……ふにゅ~……」
(?)「『くはははは、か~わぁ~うぃ~ぃ~♪』」
(?)「『ふにゅ~って何。やだこの子、めっちゃっ天然だ……ヤバイ……』ぶふっ!!」
(?)「『バカ! おっきい音立てんなよ。起きちゃうだろが!』」
(?)「『やぁ~♪ うちのクランにいれたいんですけど。天使のような笑顔でヤバっ!』」
……騒いでいる原因は一目瞭然だった……ビックリだ。恐らく前例がない。そしてこれは何かの前触れなのか……
異世界人はある程度成長してから降臨してくる。その年齢、見た目もそうだが、どんなに若くとも10歳前後の容姿を纏って降りて来る。
だがどう見たってこの赤ちゃんは生後数ヶ月か一歳……それがまさかこのような年端もいかぬ赤子が降臨し、しかも噴水前のベンチの上に……羊毛かこれは?
雲のようなふわふわとした綿毛を布団のようにして包み、スヤスヤと寝息を立てて野宿しているとは……
俺が心の中に芽生えた感情と一言はたった1つであった。
……不憫過ぎて泣けてくる。
仮にも天より使わされし御使いだろ。オイオイ、創造神ミラさんよ。せめて宿代くらいは持たせてやれよ! 不敬とは思いつつもそう憤らずにはいられなかった。
(トーマス)「『ちょっと通して……この子は皆さんと同じ異世界人ですよね?』」
起こさないように小声で確認を取る。つうかお前ら同郷の赤子をこんなとこで放置してないで連れて帰れよ! 保護もせずに観賞している異世界人に苛つきを覚える。
だから顔に不機嫌さを隠さず、険のある声を思わず出してしまった。それを察した異世界人も困った顔で弁明するのであった。
(?)「『怒んなよNPCの兄ちゃん。俺らだってなんとかしたいけどよ。この子が接触禁止にしてるから触れられないんだよ』」
(?)「『触れるのならとっくにお持ち帰り……保護してるわ!』」
(?)「『だからこうして愛でるしかないのよ……しくしくしく……』」
あー、確かに聞いたことがある。異世界人同士は特別な制約があって、互いの身に触れる為には、お互いの同意がないと触れることすら出来ないと。なら赤ちゃんはどうやって育てているんだと疑問に思う。
それはさておき、彼等は彼等で本当に困っているように窺えた。手が出せないと言うのは本当の事なのだろう。
(トーマス)「『何だかそちらにも事情がおありのようですが、異世界人の赤ちゃんとは言え……夜の街に……しかもこんな広場でいくらなんでも野宿は不味いですよ……この街の警備隊の人間として、これは見過ごすことができかねます』」
(?)「「「「「「「「「「『デスヨネー』」」」」」」」」」」
彼等に非がないのはわかったが、あらゆる意味で常識がホントに通用しない奴等だな。仕方がない。俺が保護して家で寝かせよう。
こんな所に置いとくよりはマシだ。異世界人の未知の誓約は俺達には関係無い。
謎の赤ちゃんを布団から出して抱き上げる。……可愛いし!? うわぁ~♪ なんだこれ!? えも言えない抱き心地に、思わず目眩に似た快感を襲われる。
すっごいな……異世界人の赤ちゃんとは、こんなにも……もふもふ! そう、そうとしか言えない感触。
多くの人の目が向いていると言うのに、思わず顔がほっこりと緩んでしまう。それを悔しそうに視線を向ける異世界人達は、傍目でもわかるくらいに凹んでいた。
(?)「『あーズルい! NPCの癖に!』」
(?)「『なんか泣きたくなってきた……NPCの癖に!』」
(?)「『NPCに敗けた……セクハラブロックのバカやろー!』」
(?)「『その顔やめれ! あぁ~、超納得いかねー!』」
異世界人の赤ちゃんとはこんなに心地良いものなのか。見た目もさることながら、この至高の感触を味わいたくて異世界人は殺到してた訳か。なるほど、下界に降りてくれば味わえないから、より欲してやまないんだろう。
スヤスヤと眠る赤子を腕に抱いて、俺は詰所に立ち寄って事情を説明し、家で帰りを待つ妻と愛娘にそっと抱いている赤ちゃんを見せてあげると……
(アンナ)「『きゃ~~~~~♪ 赤ちゃんだ』」
(ユナ)「『かわいいね♪ おとうさん、おかあさん!』」
二人の娘は目をキラキラに輝かせて、赤ちゃんの顔を覗いている。弟が欲しいとずっと言っていたもんな。
(レーヌ)「『異世界人の赤ちゃん!? いやぁ~~~♪ 男の子も欲しかったけど、ひょっとして、天からの送り物?』」
コラコラ……「弟が出来た~♪」とか、「家の子にしましょ♪」とか盛り上がるのを耳に入れるたびに……この子とお別れをするときに、三人を宥めて苦労するの絵が、今から目に浮かんでしまう彼であった。
………………
…………
……
…
えーと……俺はどこぞの酒の勢いで見知らぬ女と朝チュンした男なのか? 目覚めると俺は、両サイドから挟まれるような形で幼女二人に寄り添われ、ベッドで横になって寝ていた。おうふ……噴水前のベンチで寝ていた筈なのに、何故こんなことに?
フレンド受信拒否とPT受信拒否は解除してないよな? ……あ。NPCか、ひょっとして! それなら俺を抱っこすることができる。あー……どっかの優しいNPCさんが、野宿してた俺を保護したと言う訳か。
この状況から察するに、そう考えることしかできない。超納得。ギルドの裏庭で今日は寝ないとまた保護されるな……問題点が若干違うことに気づかぬまま、俺はムクリと起き上がる。
この二人は姉妹だよね。窓から差し込む木漏れ日に写る同じ色の髪の毛。エメラルドブルーのツヤツヤした髪。そっと触れるとサラサラしている。
肩くらいまで伸びている髪は、お母さんと同じくらいまで伸ばしているのかな? ふと手に固い……おお、小さな角らしきものが2つ髪の中から覗いて見える。なんとなく竹の子をイメージしてしまう。魔族……?
俺の右隣がお姉ちゃんかな? で、左隣の少し小さい子が妹ちゃんか。観察してると、真ん中にいた俺が起き上がった事で掛け布団が少しめくる上がり、暖が逃げたせいか、温もりを求めて二人にムギュッと挟まれてしまった。
一宿一飯の恩、ご飯は食べてないけど、どうぞ満足するまでもふって下さい。幼女ちゃんのお母さんが起こしに来るまで、俺は二人の姉妹を起こさぬよう、じっとしていた。
………………
…………
……
…
あれからしばらく待っていると、この二人のお母さんがやって来て、俺達を起こしてくれた。そして、そのままリビングへと俺は抱っこをされて自己紹介をされた。次は俺の番だ。
「おせわになりましたの。ねこひとぞくのいっさいじのクウちゃんですの。くらすまじしゃんのぼうけんしゃで……きのうこのまちにきたばかりなの。ほんとうにかんしゃしていますなの」
この一家の主にして、俺を保護してくれたトーマスさんにお礼の言葉を述べる。誠実そうな人だ。いかにも好青年っていう感じがする。彼はこの街の警備隊員として働いていた。
(トーマス)「いやぁ~本当にビックリしたよ。今まで前例がなかったからね。ひょっとしてこれからもクウちゃんくらいの御使い様は降臨してくるのかな?」
この街の警備隊として働く彼にしてみれば、俺のような赤ちゃんが増えるのなら、今から対策しときたいと考えるのは、至極当然だ。
「うーん……しょうじきわからないの。クウちゃんはそのためのしけんだとおもってもらうといいとおもうの」
(トーマス)「そうか……まぁ、街中で暴れる連中より、クウちゃんみたいな御使いが増える方が助かるよ」
そう言って苦笑いする彼を俺は笑えなかった。現実のストレスを発散させに来ているプレイヤーのことを察すると、彼の気苦労を知れると言うものだ。
「どうきょうのものがごめいわくをおかけして、ごめんなさいなの」
彼はいやいやと手で返してくれる。うん、この人は数少ない常識人だ。
と、俺とトーマスさんの会話を邪魔しちゃダメよと、待てをされていた二人がとうとう我慢できずに参戦してくる。
(アンナ)「おとうさんとクウちゃん、難しい話ばっかりしてて、アンナつまんない!」
(ユナ)「つまんない!」
続けて姉妹がお母さんの方に顔を向けてジッと待つ。何……この流れは……?
(レーヌ)「……つ、つまんない!」
乗るんですかい!? めっちゃ照れながらも続いてるし。可愛い奥さんに娘さん達だな。
(トーマス)「こらこら、お父さんは今大事なお話をしてるんだよ。クウちゃんごめんね。うちの娘達はいつもこうで――」
姉妹がむかし使っていた赤ちゃん用の足の長い椅子に腰掛けて、俺は一家団欒の空気を味わっている。
エリオットベーカリーでも体験したことのあるこの空気……どこの家庭でもいつまでも続いてほしいなと願わずにはいられない心地良さと温もりであった。
レーヌさんが俺に茹で卵にクリームシチューっぽいのを混ぜた物をスプーンで一口ごと運んで食べさせてくれる。
一人で食べれたけど、アンナちゃんもユナちゃんもお姉さんをしたくて、俺は三人が喜ぶように大人しく食べさせてもらった。
素朴な幸せ。俺が望む幸せの形がここにある。
ヴァルハラに来て良かったと思える瞬間だ。そして、朝食を食べ終わるとトーマスさんとまた話しをすることになった。事情聴取だな。無理もない。このままバイバイとはそりゃいかんだろ。
(トーマス)「冒険者ギルドは……はぁ、異世界人の赤ちゃんとは言え、断る訳にはいかないんだろうな。だけどねクウちゃん。
冒険者はモンスターと常に戦うような危険な仕事だから、決して無茶をしちゃダメだよ。異世界人だからと言っても、君を大切に思う人はいるんだからね」
大人として大事な事を子供に伝える。当たり前だけど、それができない大人は世の中たくさんいる。そして、この人の目はまっすぐキラキラしている。うん、この人……本気で俺の事を心配してくれている。
こっちはゲームとしてこの世界に降りて来たと言うのに……申し訳ない。
「きょうしゅくですの……そしてごめんなさいなの」
素直に心の内を言葉に出して吐き出す。
(トーマス)「別に怒ってるわけじゃないんだよ。とにかくまだ子供なんだから、困ったことがあったら大人に頼りなさい。そして、私はその大人の一人なんだから、いつでもここに泊まり来なさい。
少なくとも、また何処かで野宿しているのを見かけたら、問答無用で保護するからね」
世の中こういう人達ばかりなら、世界から悲しい思いをする人は減るんだろうな。そんなことを思いつつ、俺は感謝の握手をしておいとまさせてもらうことにした
――の筈だったのだが……
(アンナ)「うぇ~~~~~~ん!!! クウちゃん出て行っちゃヤダぁぁぁぁぁ」
ムギューと抱き締めたまま離してくれない。おうふ……この手の無垢な抱きしめ(拘束)に俺は弱い。
(ユナ)「クウちゃんはユナの弟になるの!!! やぁ!!! うぇ~~~~~~~ん」
泣かないで……あぁ……子供の泣き声ってどうして豆腐メンタルを直撃で削るの……? アンナちゃんに抱えられるように脱力した俺は、最後の頼りの綱のトーマスさんに手を伸ばす……
が、その手をママさんが包み込むように両手で覆う。
(レーヌ)「クウちゃん……もうしばらくうちに泊まっていかない? 私もクウちゃんと一緒にもふもふして寝たいわ。ね、あ・な・た♪」
クルッと向けられる笑顔の脅迫。奥さんは常にニコニコだ。穏やかな口調に優しい雰囲気……だけど、対夫への特化型プレッシャーは密かに彼の精神を蝕んでいた。
(トーマス)「……ぐうっ……チラッ……」
トーマスさんの目は俺以上に助けを求めている。まさか、一宿一飯の恩をこんな形で返すとは……
「……こんやもまたおせわになりますの」
(アンナ・ユナ・レーヌ)「「「ヤッタ~~~♪」」」
アンナちゃんの腕からそっと俺を受け取り、抱っこをすると彼は耳に口を近づけて言った。
(トーマス)「『……ありがとう。そして、すまない……しくしくしく……』」
「『おとこひとりだと(立場は弱いですよね)……なんでもないですの』」
一家の大黒柱とは言え、男一人だとヒエラルキー的には最下層になるなんて、とてもじゃないけど言えなかった。
また今夜泊まりに来ることを約束して、今度こそホントにおいとましてギルドへ向かった。そして罪滅ぼしなのか、
途中まで送ると引かないトーマスさんを足にしてギルドまで運んでくれたので大助かりだった。途中、道行く知り合いの人に三人目?と言われてたのは、まあお約束だったりした。
ふつおたコーナー(MC:たまご丼)
ペンネーム「ご近所のママ友」さんより頂きました
Q:どうやらお隣の奥様の旦那様に隠し子がいるようです。何か抱いている赤ちゃんにペコペコしている様子から怪しいです。このことを奥様に伝えるべきでしょうか?
A:自分の心に嘘をついちゃダメダメ! イケメンなんて付けるぐらいだからもうバレバレ(旦那狙い)! 今ならもれなく連れ子の赤ちゃんがプラス! この機会を利用してゲットしちゃえ! 「ご近所のママ友さん」ならいけるいける! というわけでシーユー♪
ママ友:奥さん奥さん! お宅の旦那さんが赤ちゃんを抱いてコソコソ?と散歩していましたけど、まさか隠し子とかじゃありませんの?(……チラッ……)
レーヌ:(あぁ~、クウちゃんのことね。って言うか。あの人を狙う悪い虫がこうやってまた湧くし、ここは1つ……)……まぁ!? そうですの……ありがとう奥様。そしてさようなら……うふふ……あの世で仲良く……あの人も娘もきっとわかってくれるわ……ごきげんよう……ブツブツ……
ママ友:ちょ!? 奥様待って!!! そっちに行っちゃらめぇええええ!!!




