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キングカイザーをたべちゃうの

 アスカくんのお父さんとお母さんが到着されたと聞き、俺は急いで出迎えに向かった。しかし、お父さんは既に猫庭の楽園に当てられたようで気絶してしまった……おうふ……

 これはロジャーさんと今後の課題として対策しなければ……。お客様をもてなすのが猫庭の楽園なんだから。当初の雨風を(しの)ぐための精神、それは今も変わっていない。ここは誰かを守り癒すための場所なんだから。


 さて、一段落着いたので俺は今夜の夕飯を作りに行く。そのためにパーシャちゃんとはここで別れた。凄く残念な顔をされたが、またデートする約束をし、お別れのキスをして彼女を見送ってあげる。そして俺はスタッフに連絡をする。キングカイザーの解体をするために人を集めてほしいと伝えて。


 もちろんライネスさんにも応援に来てもらうのだが、セイギフトの御一行の招待の連絡をお願いする。ライネスさんにお願いするのが一番早い。何せ前国王だから要人のパイプはあらゆるところにある。

 それに本人が気軽に城へ出入りもできるし、マリアちゃんの所へもアポなしOKだ。と言うわけでサクッとお願いして気合いを入れる。今回は俺自身がそもそも食べたいと思っていたご馳走である。

 キングカイザーとは言ってしまえば鮭やサーモンである。そのサイズは元の世界のそれとは比較にならない。クジラサイズから1mサイズと幅は広いが、今回扱うのはクジラサイズの変異種。ミロのことがなければもっと早く調理していた筈なのに……


 ……何を作ろうかな♡ 室温をわざと下げて鍋? アツアツのグラタン? 寿司もいいよな。いや! ステーキなんてのも良さそう。それとも揚げちゃう? ライネスさんに頼めばサーモンサンドなんてのも……うー、堪らないよ~。


 ぼーっと考えながら漂う俺を見て、スタッフのみんなは解体作業を任せてくれと言う。遅れてやって来た父やドッペルクウまで同じことを言う。

 気づけばみんな相当楽しみにしているご様子。なので父にリュックを預けた俺と料理長とライネスさんは仕方なく厨房へと戻るのであった。


 しかし、父の元気な姿が見れて良かった。テーママの件で俺の罪悪感はMAXだからね……。親孝行だけでは足りない想いも乗せて張り切るよ。そうして三者であれこれと意見を出しあっていると可愛らしい応援が駆けつけて来てくれた。


(エーコ)「クウちゃ~~ん! これからアレを料理するってほんと!?」


(シエナ)「その、なんか落ち着かなくて……忙しい中、ごめんね……」


(リア)「今日食べるのってキングカイザーだよね?……」


「なの。みんなががんばってとってきてくれたキングカイザーなの。だから、きたいにこたえるひとしなにしちゃうの!」


(ニア)「……クウちゃんを信じてる。またビックリするような料理で吹き飛ばしてくれるよね?」


(レア)「ごめんなさい……アイツの影がどうしてもチラついて……」


(ルカ)「・・・・・・・・ク・・ウ・・」


 各々が暗い影を顔にチラつかせている。その原因は言わずもがな……ミロだ。


 だが!


(セーラ)「……クウちゃんは負けない! だから頑張って!! 私の未来視はみんなの笑顔しか見えないよ!」


(アイシア)「だね! 私とセーラちゃんは先にレストランホールで待っているね。クウちゃん、今夜のためにもビシッと格好良いところを見せてね!」


 二人は俺のところに寄って来て、キスをしていくと、そのまま厨房を出て行ってしまった。参ったな……やる気が腹の底から沸き上がるわ!


「こんやのりょうりはいっしょうわすれられないおもいでになるの! ふふふふなの。ねこぶねにのったつもりでまっててなの」


(リン)「猫舟って何?」


(エーコ)「クウちゃんの舟だと小さくて沈んじゃうよ」


 コラッ! 何みんな爆笑してるの……チクショウ……クウ娘になっても俺はちっこいイメージのままか?


「ぷんすこなの! クウちゃんのこうどうりょくをあまくみちゃめっ!なの」


 ……セーラちゃんの未来視は当たりだね。


(ライネス)「今夜のメニューはやりがいがあるね、クウちゃん」


(料理長)「腕が鳴りますね」


「みんながいのちがけでとってきてくれたキングカイザー。たのしみにまっててなの」


 返事の代わりに極上の笑顔を頂いてみんなは出ていった。何だかんだ言って俺の方が気を遣われている。俺にはもったいないすぎる娘達。俺は調理場のスタッフさんやライネスさんと話し合う。最高の一品を作るために。そこにまた、最高の人達が駆けつけてくれた……


(エリオット)「申し訳ありません。盗み聞きするつもりはなかったのですが、クウ様がこちらにいらっしゃるとお聞きして」


(ミカ)「お招きいただきありがとうございます。何やら事情がおありのようですか、我等夫婦もよろしければ、是非お手伝いを!」


 ライネスさんとスタッフを紹介して驚かれるアスカくんのお父さんとお母さん。ライネスさんの名を知っていたのはやはりエルフのエリオットパパさんだった。そして、振る舞われるお土産のパン。


(ライネス)「これを貴殿と奥方が? 素晴らしい……水の硬度を分けて……それと焼くプレートが違う?……」


(スタッフ)「それだけじゃありませんね……翌日に採れたハーブですかな? これが隠し味に……素晴らしいです」


 サラッと言い当てる二人。俺は更に言うなら酵母が違うと睨んでいる。


(ミカ)「凄いです……たった一口で……貴方……」


(エリオット)「流石でございます。こうも我が屋のパンの秘訣を見抜かれるとは……これは私達出る幕はないかと……」


 二人は謙虚だ。だが俺達がここで引き下がるような玉じゃない。むしろ見てみたかった。この夫婦の作る料理を。


(ライネス)「逆ですよ。おみそれしました。クウちゃんの言っていた通りですな」


「なの。アスカくんのおとうさんとおかあさんのぱんはおいしいの。ライネスさんにすたっふのみんなもぜったいきにいってくれるとおもったの」


(スタッフ)「では今夜のメニューはパンのスペシャリストが三名もいらっしゃるのです。それを活かしたメニューがよろしいのでは?」


「それもいいけど……このさいだからみんなのとくいじゃんるでいこうですなの」


(ライネス)「いいのかい? 彼女達の想いに応える一品に専念しなくて……」


(エリオット)「それはどう言ったことで?」


 簡単にだが、キングカイザーを捕獲しに行った経緯、つまりミロの一件とエーコちゃん達六名の過去を説明した。彼女達を苦しめる傷に夫妻は顔を歪める。


「たしかにみんなでいっぴんをつくるのもいいけど、クウちゃんはちかったの。このてでまもるって……だからクウちゃんのとくいのどん(丼)でいくの。わすれちゃうところだったの……あじもたいせつだけど、だれのために、なんのために、なにをこめたいのか、いまひつようなのは……」


 …………ああ。俺が作る料理は……


「あいをこめますの。それがおっとのつとめですの」


(ミカ)「素敵だわ! うん! うん!」


(ライネス)「ミイの時にも頼むよ、クウちゃん」


(料理長)「……その通りですね。何のために作るか。まさに原点ですね」


(エリオット)「では各々の愛を込めてやりますか!」


(ライネス)「ほほほほほほ! エリオット殿の腕前を拝見いたしますぞ。御子息の為に振るって差し上げなさい。ここにはそのための人員と素材と……愛が詰まってますからな」


「ペロをつくっていれときますの!」


 キングカイザー祭りはこうして開かれた。俺はエーコちゃん達の想いに応えるため。ライネスさんは愛する家族のため。スタッフは初心に帰り、料理の意味を考えるため。アスカくん夫妻は愛する息子のために……


 誰の為。何の為。何を込めて。今この時に作る料理はオンリーワンであり、ナンバーワンであると後々わかるのであった。



 ………………

 …………

 ……

 …



 キングカイザーの解体作業は順調に進んでいた。そして、作業の工程で驚くべきことが発見された。


(アトラス)「子を宿していたか。これは美味になるであろうな」


(ネイ)「マジっすか!? これ食えるんですか?」


(テーママ)「あら? クウちゃんのいた世界じゃこれを寿司ネタにしたのもあるくらいポピュラーなネタだし、ちゃんとイクラにすれば美味しいのよ」


(リディア)「……1つ……いかん! これはクウ様がこれから使うもの……が、我慢を……ジュルリ……」


(アイナ)「気持ちはわかるけどリディア。我慢した方が御夕飯いっぱい食べれるから我慢なさい」


(ミーナ)「アスカくんのお父さんとお母さんも参戦だもんね~」


 車椅子を押すミーナちゃん。その車椅子にはアスカくんが乗っていた。


(アスカ)「うちは街のしがないパン屋さんですが、味はクウちゃんの折紙付きですよ。だから、つまみ食いすると勿体ないですよ」


(スタッフ)「リディア様、申し訳ありませんが運ばせていただきます」


 解体された物を次々と運ぶスタッフ達。キングカイザーの筋子(すじこ)を食いしん坊の二人は、我慢して耐えるのであった。


(アトラス)「君、この小さな一匹は貰っても構わないかな?」


 エーコちゃん達と釣ったキングカイザーの通常種の1mサイズを指差し、スタッフへと尋ねるアトラス。今夜のメインはあくまで変異種の大型なのでスタッフは問題ないと判断をする。


(スタッフ)「一匹程度なら構わないと思います。クウ様がここにおられたならそれこそ、そのように命じられますので」


(アトラス)「済まないね、仕事中に。では一匹失敬するよ……ふふふ~ん~♪」


(テーママ)「二人が我慢しているのに……アース……」


 宝具庫から串を数本取りだし、手刀でキングカイザーを輪切りにし、そこに大きなフライパンを亜空間より取り出し中に入れる。更に愛息子より貰ったクウ蜜と醤油を混ぜた物を入れて……


(アトラス)「少々危険だから皆下がりなさい」


 ゴウッという音が鳴り火を吹くアトラス。その灼熱のブレスは意思をもったかのようにキングカイザーの身を最適に焦がし、タレを適度に加熱する。

 (ほのお)と熱を自在に操る彼だからこそできる料理。そう、みんなは忘れていた。そもそもクウちゃんに料理を教えたのは誰か? 生前のクウちゃんもある程度は料理をやっていた。


 だが、クウちゃんの主食がプルルとコルルの実だけではないことを。彼を12年間世話し続けて、その感性や美意識を高めたのはこの龍である。彼はハッキリ言えばそこらの調理人では太刀打ちできない技を持っていた。


(アイナ)「御義父様……料理をなされたのですね……」


(ネイ)「うまそ~……あぁ……」


(ミーナ)「クウちゃんの御義父様ですものね……何で今まで気づかなかったんだろう」


(リディア)「ゴクリ……」


(アスカ)「いい匂い~♪ うわっ!? み、みんな? 人形だけど食べたいの?」


 ドッペルナンバーズはヨダレを垂らして控えていた。アスカくんはもちろん慰めてあげる。


(テーママ)「あー・・そう言えばアースって私の手料理を食べてから猛勉強したよね……フンッ!」


(アトラス)「いじけないでくださいよ。そのかいもあって余生の最後まで美味しい食事をご用意できたではありませんか」


 喋りながらも皿とフォークとナイフを用意し、みんなに渡していく。ネイちゃんとリディアちゃんは瞳を輝かせて受けとるのであった。


(テーママ)「ぐ…………ごめんなさい。あむ。……美味しいわ」


(アスカ)「おいっしぃ~~~~~♪ 残りはみんなで仲良くお食べ」


 ドッペルナンバーズの口に運んであげる彼をみんなは微笑ましく見ながら会話を続ける。


(アイナ)「御義父様まで料理が上手では私達娘は困ってしまいますわ……」


(ミーナ)「師匠……同意見です……」


(アトラス)「ふふふ。そんなことは気にしないでいいんだよ。ただこの程度の腕ではクウヤには敵わんからな……」


 苦笑いするアトラス。それを見て聞いて驚く者が約一名いた。


(アスカ)「えっ!? クウちゃんのウナドンを食べましたが、それと同じくらい美味しいですよ!?」


(ネイ)「ん~~~・・・・ウナドンはなアスカくん……クウがまだ初めの頃に作った……はむはむ……飯なんだ……」


 それは彼も知っている。何せ本人からその事を聞いていたから。だからネイが何を言いたいのかわからなかった。


(リディア)「んがふふっ……つまり、それ以降の料理はもっと美味しくて……アイナ済まん。説明頼む」


 もっと美味しい? いくら美味しいと言っても限度があるだろう……彼は声に出さずそう心の中で呟いていた。


(アイナ)「ハッキリ言うとね……美味しすぎて声が出せないの。冗談でも比喩でなく……だから妻の私達は嬉しい反面、日々戦々恐々で……」


 ガックリと項垂(うなだ)れたアイナさんは涙目でキングカイザーのソテーをパクついている。その様子は冗談に思えない顔である。


(ミーナ)「将来ね……子供にお父さんのご飯じゃヤダって言われる夢を……」


 こちらも同じく……いや、クウちゃんの妻である彼女達は皆同じくテンションがダダ下がりだ。


(アスカ)「罪作りなクウちゃんですね……でも、ふふふふ。クウちゃんらしいな」


 困らせるんだけど憎めない。それがクウちゃんだなと彼は笑い声を押し殺す。


(テーママ)「だから今夜はアスカくんもいっぱい食べようね」


(アスカ)「良かった……残り僅かなこの時に、ボクは幸せです」


 曇りなき顔で笑顔を作る少年に、各々は心に宿す物があった。だからか、アトラスは本来なら有り得ない事を口にする。


(アトラス)「少年よ……」


(アスカ)「はい」


(アトラス)「君のことはだいたい聞かせてもらった。息子が大変世話になっている。ありがとう」


(アスカ)「そんな!? それはボクの方で」


(アトラス)「君の決意を我は別の場所から聞いていた。その覚悟は称賛に値する。誰もができることではない」


(テーママ)「止めなさい、アース」


 この件についてはあまり掘り下げてほしくないテーママである。彼はそのことについて今日は幾度触れられて来た。それに心が傷つかない訳がないとテーママは考えいる。だから今日はそっとしといてあげたかった。


 本音を言えば、何もできない自分が許せないでいた。だから少しきつめな口調で言ってしまう。


(アトラス)「いえ、止めませぬ。何故なら、その勇気が奇跡を呼ぶかもしれぬからです」


(ミーナ)「テーママさん。落ち着いて……」


 少し不穏な空気が流れる。ミーナちゃんはテーママさんに抱きつく。こうすると彼女は喜ぶからだ。


(テーママ)「随分変わったわね……昔の貴方なら」


(アトラス)「ええ。このように覚悟を決めた彼の想いを揺るがすような不粋なこと……ですが、あれから一万年も経てば、我も変わります。あの子を息子にもって見えてくるものもわかってきたということでしょうか……」


 彼の両親の気持ちを考えると……龍としての価値観とは違う視点、人の親として愛をアトラスは察していた。決して失いたくないもの。それは種の壁を越えて共通の想いであると。


(アイナ)「御義父様……」


(アスカ)「ボクに……次の歳を越すことができると言うことでしょうか?」


(アトラス)「この地と言っていいかわからぬが……我が死の森の主と呼ばれる様になる前に住んでいたのが、ここ北の大地。王都より更に北の地にある山脈の(いただき)に我の住んでいた神殿がある。その他にも棲みかがあるのだが、今回はそこが重要でね」


(アイナ)「そう言えば私達はそこを目指していましたわね……」


(ミーナ)「あの国境の一件がなければ確かに……」


(アスカ)「そこに何が……」


(アトラス)「……率直に問おう。君は人を辞める覚悟があるか?」


(テーママ)「!? アース……アンタ、まさか!」


(アトラス)「魂の容量……神共はリソースと呼んでいたが、ようは器を変え、魂を昇華させれば増やせるわけだ。クウヤは一時(いっとき)、魂を神々によって砕かれ、神によって修復、補強された例がある。なら、それと似たように人為的に起こせばよい。そのためにはどうすればよいか……生まれ変われば良い。我の血を分けた龍人として」


(ネイ)「マジですか……アスカくん! この機会は……いや、あたいが口出すことじゃねぇか……」


(テーママ)「龍人化なんてできるのアース?」


(アトラス)「できないとは言えません。我の血は強すぎて、彼の器を壊すかもしれぬ猛毒になるやもしれません。ですが……確率は低すぎますが、もし、その壁を乗り越えれば魂に変化が起きます。それにあの場所にはかつての我が古の勇者様達を甦らせようと用意した数々の設備が……」


(テーママ)「あんたね……まーいいわ。創造神はふざけて首を縦に振らないし……」


(アスカ)「ごめんなさい。そのお話は結構です。ボクはお父さんとお母さんとの約束を守ります。その……ごめんなさい……でも嬉しいです。やっぱり良かった……うん。ボク、今、幸せです」


 無垢。その言葉がみんなの心に見えない形となって響く。綺麗だった。彼が。それと彼はみんなが問い掛けることによって徐々に心の整理が……覚悟? 悟り? 余人(よじん)には到達できない境地に達しているのかもしれない。

 アトラスにその想いは届く。自分が守りたいと思っていた者がみなこうであればと願わずにはいられない。


 いや……あの古の戦いと大地を守護してきたことに誇りを持てる。彼のような者が生まれて来てくれたことに。


(アトラス)「君のご両親は立派な方だな。それ故に我もね……ふふ……ふはははは……」


(アイナ)「お、御義父様?」


(ミーナ)「(嫌ーな予感……)」


(ネイ)「テーママさん……頼みますよ……」


 その意味するところは、『暴走したら止めて下さいね』である。凄く尊敬をしているが、愛するとも共々、何か予想の斜め上をしでかす空気を持つので、テーママの存在は有りがたかった。テーママもクウちゃんの妻として彼女達の心情を把握していた。


(テーママ)「おっけー。ネイちゃん任せて……」


(アスカ)「クウちゃんのお父さん?」


(アトラス)「いやね……創造神には大きな貸しがあるのだよ。それに我はクウの父……結婚の反対を盾に恐喝しようかな……なんてね……いや~~切り札はここぞと言うときに使うべきであろう。あの力は正直我でも対抗出来ぬからな……」


(アイナ)「クウちゃんを人質に……お、恐ろしい策ですわ!」


(ネイ)「ミー様もクウを盾にされては頷くしかないだろうな……」


(ミーナ)「……ん……そうかな……それでも首を縦に振らないと思う……」


(テーママ)「勘?」


(ミーナ)「あ、はい……もしですよ……クウちゃんを盾に動かせるなら……エーコちゃん達の一件で動いてくれたと思うんですよ……それと……」


(アイナ)「それと?」


(ミーナ)「本当にここに降りてきたのはクウちゃんと結ばれるためだけかなって?……。なんと言うか引っ掛かるんです……ミー様は焦っているようにも見えて……」


(テーママ)「正解かわからないけど。クウちゃんのペロは最高神である二人を押し上げた供物だし、それを生み出す存在だからね。パワーバランスの要とも言っていいわ。それだけに焦るわよ……(奴の悲願を叶えた……オリジナルですら無理だと思ったことを成し遂げた者だから……でも、未知なのよね……クウちゃんは……)」


(アトラス)「それだけですか? テイレイア様……」


 じーーーーっと集中する視線。そこらの真相を知っていそうなのは破壊神のアーちゃんと、その分身である彼女くらいな者である。


(テーママ)「みんなそんな目でみないでよ……私だって詳しいことは知らないんだから! アスカくん慰めて~!」


(アスカ)「きゃ~~~~~~~~~! どこ触っているんですか!!!」


 どさくさに紛れてセクハラをするテーママ。ドッペルナンバーズがテーママを剥がそうとするが、……そこはやはりと言うか、破壊神の分身様々であった。


(アイナ)「い、いけないわ……私はクウちゃん一筋……」


(ネイ)「テーママさん……そういうことをしてるからセーラとアイシアが……」


(ミーナ)「お噂と変わらずぶれませんね……」


(アスカ)「クウちゃん助けてー!」


 もちろん食物連鎖の頂点の彼女に手を出せる者はいないと思いきや、セーラちゃんとアイシアちゃんが駆けつけに来て、アスカくんは無事? 保護されました。


(セーラ)「シャーーーーー!」


(アイシア)「ガルルルルルル!」


(ネイ)「はぁ……野生化してるし……」


 ………………

 …………

 ……

 …



 丼。それは1つの碗に構成された、米と無数の食材がおりなす楽園。それは作る人次第でいかようにも姿を変える魅惑の料理。それに真剣に挑むのは、魅惑の容姿をした赤子であった。


「はむ……おいしいの~♡ こんなにおいしいものをクウちゃんはたべたことがないの……これをいかすちょうりはむずかしいの……」


 食材が良すぎる。簡単に言ってしまえば、何もしていない状態で調理が完成されてしまっている。生のままでかぶりついた方が旨いんでは? そう思えてしまうほどに極上の油は……サラッと舌の上でとろけ、その身肉の旨さはいつまでも喉と脳を痺れさせる。

 これに熱を入れる?……確かに新たな別の旨味が引き出され、それはそれで旨いのだろうが……フライ……天ぷら……酒蒸し……岩塩焼き……炭火焼き……


 これらはこの変異種じゃないキングカイザーでやるなら、昇華するだろう……だが、この食材に限っては生を選択する。それ以外の良い調理方法が浮かばない。


 ……海鮮丼。握り寿司も考えたが丼にしたい。それは握り寿司だけでは伝えたいことができそうになかったから。それに丼で出すなら器だ。キングカイザーばかりに目が行ってはダメだ。

 器を作る。この(さい)、魔術はふんだんに使う。時間もないし、お願いしたいことがたくさんある。あそこには俺はいけないし……


「ヒナちゃんシスターズにしきゅうとりにいってほしいものがあるの! すたっふさんのだれか! しきゅうツクヨママさんにかくにんをとって――をとってきてくれるかきいてほしいの!」


 ヒナちゃん一家は何かあればお手伝いをしてくれる。特に俺と猫庭の楽園スタッフは、それぞれの事情があるので、東の大陸での連絡役や簡単な配達等を積極的にしてくれて助かっていた。

 マリアちゃんから渡された連絡用のマジックアイテムもあるが、それはあくまでもセイギフトと言う国と連絡するための物であり、私用で使っていいものではなかった。

 まあ、使ってもマリアちゃんのことだから、あっけらかんとしてそうだが。


 ヒナちゃん一家を待っている間に俺は仕込みを開始する。今厨房にはキングカイザーの解体されたブロックが綺麗に分けられ置かれている。これれを薄く斬るためにサクにする。

 そして、一枚ずつ綺麗に斬っているところに長女のマキさんと次女のヒミコさんが来てくれた……ヒナちゃんは……やはり来てくれなかったか……


(マキ)「ごめんなさいねクウちゃん……ったくヒナったら、あの子は……」


(ヒミコ)「代わりに私とお姉でバッチリやるよ! お使いよね? スタッフさんから聞いたけど――をバケツ10杯分持ってくればいいのよね?」


「きゅうにおよびだてしてごめんなさいなの。エーコちゃんたちのためにどうしてもひつようなの」


(マキ)「クウちゃん貴方……それでアレを作るのね。なんとなく事情がわかったわ。うちの妹達の相手をしてもらっているし、お安い御用だわ!」


 ん? ヒミコお姉さん? 視線が俺の方を向いてないけど……


 視線を辿るとキングカイザーに目が集中していた。よく見る尻尾もフリフリと。ふふふ。


(ヒミコ)「・・・・ゴクリ・・・・」


「すこしだけですの……あーんなの」


(ヒミコ)「クウちゃん大好きよ! あーん……!!!!…………」


(マキ)「ヒミコったら!! ……チラッ」


「ふふふ。マキおねえちゃんにもあーんなの」


(マキ)「ごめんねクウちゃん……もう恥ずかしいったらありゃしない……あーーん…………!!!!!!!!!……」


 俺の胸に顔をスリスリする狐娘の出来上がり。おーよしよし。


「こんやのおゆうはんでだすからよろしくおねがいしますなの。【にゃんこ】げーと! さてなの。クウちゃんはしこみをやるの。すたっふさん、たけすみを――」


 蕩けた顔の二人は尻尾をフリフリさせながら向かってくれた。お肉が主食のヒナちゃん一家でも、キングカイザーには一撃だよね。あまり時間はないけれど、みんなできる限りのことをして動いてくれた。


 しかし、他の三チームは何を作るんだろう。料理長の知識は俺より上だから何を出して来ても不思議じゃない。ライネスさんはまた完璧な組み立てで来るだろう。そして、アスカくんのパパさんとママさん。得意のパンだよね? キングカイザーを使ってどんなパンを出すんだろう?


 今回は勝負は無しにさせてもらったけど……みんな料理人だからな……かくいう俺もエーコちゃん達の為に今回は頑張っているけど。やっぱり勝ちたい。

 それにセーラちゃんやアイシアちゃんも頑張って捕獲しに行ってくれたんだ。励ましてくれたぶんも頑張るよ俺。


 …………ついでだ……ミロ。完成したらお前のところにも持って行かせるよ……ちゃんと食えよ。


 大好物の魚があると言うのに……俺は本能の誘惑に駆られることなく調理に没頭していた。そして、やっとここで俺は気づくのであった。俺自身に起きていた変化の兆しを――

ふつおたコーナー(MC:たまご丼)


ペンネーム「大人になった将軍」さんより頂きました


Q:たくさんのメイドさんに食べられてしまいました。とてもパーティーに出る気分じゃありません……俺はどうすればいいでしょうか。


A:クヨクヨしちゃダメダメ! 据え膳喰わぬは男の恥! ドンドンはっちゃけちゃえ! 大人になった将軍さんならいけるいける! というわけでシーユー♪


ア:『きゃ~~~』って俺……ん? ここって、クウちゃんの厨房か!? 今晩の準備か……


ク:こんやはみんなとらぶらぶなの! あいはこころをいやすの! だからあいをこめて、うんしょ! うんしょ! まけないの! 


ア:……よくよく考えればクウちゃん……陛下やアイナさん達と今夜……あの人数を相手に一人で?……しっ! 師匠ーーーー!! 弟子にしてください!


ク:アラルさんどうしたの!? なにやらきすまーくがあちこちにあってすごいことになっているの!?


ア:実はですね……


 ………………

 …………

 ……

 …



ク:……おうふなの……スタッフがたいへんごめいわくをおかけしましたなの……その……おやくにたつかわかりませんが、パーシャちゃんとのたいけつDVDがあるのでごらんくださいなの。


ア:ぐすっ……クウちゃんのように喰う側になれるよう頑張るよ……ぐすっ……それじゃあ……俺、そのDVDを見に行って来るよ! パーティー頑張ってね!


ク:……………………フーコいるの?


フ:ここに……


ク:アラルさんをりっぱなしょうぐんにしてなの。あすもでうすをつかっていいの……それがせめせものおわびなの……しくしくしく……


フ:御意でございます……しくしくしく……


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