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ぱーせんとのおばかぁー! なの

 みんなとのらぶらぶな一夜を過ごし、めでたしキャッキャッウフフが、ネコネコサツサツ(猫猫殺殺)へと変わってしまった。その原因は今朝のセーラちゃんのお見舞いの時に発する……


 

 ………………

 …………

 ……

 …



 ここは俺達レギュラーメンバーが寝泊まりしているお部屋。そして、昨夜、共にしたみんなでセーラちゃんの寝ているベットを囲み、様子を見に来ていた。

 静かに寝てるセーラちゃんに俺は、夜中に作ったにゃん鉱のネックレスを10個ばかし掛けさせてもらう。


「ふぅ、コレだけあればこうかてきめんなの……でも、もしこうかがなかったらクウちゃんは!! あぅ~~~」


(アイナ)「いや、クウちゃん。やり過ぎだから……」


(ネイ)「凄かったもんな。セーラが耐えられなくても当然だ。あたいだって何度壊れると思ったか……」


(ミーナ)「セーラには可哀想だけど、ちゃんと伝えないとね。でも、もう少し成長すればきっと耐えられるようになるわ。だから今はゆっくりと寝なさい。」


 そう呟きながら優しくセーラちゃんの頭を撫でるミーナちゃん。お姉さんだな~。


(アイシア)「クウちゃんの20%は私でもやっと耐えれたレベルだったもん……セーラちゃんごめんね。」


 アイシアちゃん的には一緒に子を授かりたかったんだろう。親友をさしおいて子を授かったという罪悪感があるのかもしれない。


(リディア)「やはり、一番心配していたセーラがこうなったか。だが、それは年齢が関係しているからだ。なに、いずれそれも時が解決してくれよう。」


(クリス)「初めてでお兄ちゃんを相手にするのは、いきなりラストダンジョンに踏み込むようなものだからね。」


(エヴァ)「確かに……クウは怖いわ。あれで手加減してたなんて。女の敵よ!」


(パーシャ)「確かに。他の男なんてもう要らないですわね陛下。そして、責任取ってくれてありがとう、ダーリン。チュ。」


(ヴェラ)「パーシャも完全にクウちゃんの虜になったわね。」


(ルカ)「パ・・・ー・・・シ・・・ャ・・・も・・・わ・・・か・・・が・・・え・・・る・・・?」


(パーシャ)「まだ20代だから、そうね。ヴェラ姐と同じように30代に突入したらダーリンに頼むわ。」


 みんなに誉められて嬉しいが、セーラちゃんのこの姿は一歩間違えればこの内の誰かがそうなっていたかもしれない姿なのだ。やはり俺は、あっちでもセーブする力を身に付けねばならない。


(フーコ)「『クウ様……少々内密にお話したいことが……』」


 俺の耳元に話し掛けてくるフーコ。そして、俺の着ぐるみを軽く引っ張り連れて行こうとするが、俺は今、セーラちゃんのそばについていてあげたい。だから、つい、後先考えずに言ってしまったのだ……


「ここにいるみんなはクウちゃんのおくさんなの。だから、かくしごとはなしなの。フーコ、ほうこくしてなの。」


(フーコ)「……よろしいのですね、クウ様……」


 俺の気持ちに偽りはない。みんなの事を愛している。なので返事はせずに頷いた。


(フーコ)「畏まりました。皆様はクウ様とらぶらぶをして20%と仰っていましたが、少々違います。」


(アイナ)「どういうこと? まさかクウちゃんが更にパワーアップしたとか言わないでしょうね!?」


(ネイ)「無理だ! これ以上はあたい達までセーラと」


 話に被せ、遮るようにフーコが話を切り出した。


(フーコ)「違います。ネイ様は20%です。ただし、セーラ様は50%でされております。もちろん、他にも様々な要因が御座いますが……明らかにセーラ様との差があるので、こうなったのはクウ様のせいかと……」


 なっ!? 俺、あの時セーラちゃんに対してそんなに飛ばしてたのか!? 目を丸くしている俺に向かってフーコは飛んでもないことを言い出した。


(フーコ)「ぶっちゃっけて言いますと! クウ様とセーラ様は相性が良すぎます! それプラス! 幼く、清楚なセーラ様としていると言う背徳感! 更に体型が近いのでそれも引き金になって、無意識にはっちゃっけてしまったのが、性相談役のフーコがクウ様より回収したデーターから導き出して得た結論で御座います。」


 あわわわ……なんて事を言い出すのフーコ! それじゃあ、まるでセーラちゃん以外は物足りなかったとでも……あっ!!!!!


「なかないでなの! ネイちゃん! ミーナちゃん! アイシアちゃん! ひぃぃぃ! エヴァちゃんさっきがばーすとしててこわいの!」


 三人が泣く一歩出前の涙目になって、俺を睨んでいる。こんな話を聞けば無理もない。


(フーコ)「皆様に誤解のないように言っておきますが、クウ様が満足してない訳じゃ御座いません。むしろ、精神的な面で言えば、今回初参加された方々は前回参加された方々より上ですし、%に関して言えば……ミーナ様に至っては30%でしておりました。死ななくて良かったですね。」


(ミーナ)「嬉しくないわよ!!! あーーー、妹弟子に初夜で負けるなんて! クウちゃん! 女の子の大事な純潔に差をつけるなんて覚悟は出来ているんでしょうね!!!」


(アイシア)「ネイちゃん、よそうよ。不毛だよ! 私達はクウちゃんと愛し合ったと言う事実だけでいいじゃない。%なんて、そう、ただの数値よ。」


(フーコ)「あっ、流石はアイシア様。それなら遠慮なくご報告出来ますわ。アイシア様はセーラ様の後でしたのでクウ様は凄い手加減されたのでしょうね。10%でした。」


(アイシア)「クウちゃん!!! 今すぐその着ぐるみ脱げや……」


 目が紅く光って見えるよ……ガクガクブルブル……拳を鳴らして俺にゆっくり近づいて来る。あわわ……


「クウちゃんのあいをしんじてなの! けっしてさべつなんてしてませんの!」


(パーシャ)「ちなみに私は何%かな?」


(フーコ)「パーシャ様は経験済みで耐性があったおかげもあって高かったですね。39%……ほぼ同じでヴェラ様が40%と前回より上がっていますね。コレはクウ様が慣れたと言う事と、相性が上がったせいもあります。」


(ヴェラ)「道理で凄過ぎたと思った……前回より凄くなってて私、かなりおかしくなったか不安だったのって……セーラちゃんは初めてな上に更に10%上!? クウちゃんの鬼! セーラちゃんが可哀想じゃないの……」


「クウちゃんはむざいなの……どうしろっていうのなの……」


(エヴァ)「さしずめ我は聖人でクウとの愛の営みもアイナと最後まで残っていた位だ! ヴェラやパーシャより上であろう。…………ねぇ、なんで顔を背けるのフーコさん……」


 素のエヴァちゃんに戻った……フーコ、お前何を言い出すつもりだ……


(フーコ)「知らない方がその……」


「フーコ! ちょっともがっ!?」


 ヤバイと感じた俺はフーコの口を封じようとするがエヴァちゃんに口を押さえつけられる。


(エヴァ)「言わないと私泣くよ……」


「むーーーーー!」


(フーコ)「………………………………3%……です。」


 場がシーンと静まり返る。みんなエヴァちゃんから顔を反らす。特にヴェラちゃんとパーシャちゃんは武技の暗歩まで使い、この場かり音を立てずに逃げようとするが、俺を解放したエヴァちゃんは超スピードで二人の元へと移動し、そっと肩に手を置く。


(ヴェラ・パーシャ)「「ヒィッ!!」」


(エヴァ)「・・・・39%と40%。どこに行くつもりなの?」


(ヴェラ)「陛下、聖光気を纏うのはお止め下さい……本気で洒落になりません……」


(パーシャ)「へへへ陛下! 私達はもう同じ妻です! それにクウちゃんがそれだけ陛下を大切に愛した(あかし)では御座いませんか! それに我等はもう男を経験済みです! 陛下のッ!?」


(エヴァ)「しゃんぱーしぇんと……グスッ……わたしにょ……はじめてがゃ……グシュ……」


(ヴェラ)「クウちゃん、今すぐ陛下を抱いて!! 手加減なしで思いっきりよ!」


(パーシャ)「聖光気が暴走仕掛けてる! クウちゃん本当に不味いの!! セーラちゃんがいるのに!」


(アイナ・ネイ・ミーナ・アイシア・クリス・ヴェラ・パーシャ)「「「「「「「やりなさい、クウちゃん!!」」」」」」」


「クウ娘ちゃん登場! エヴァちゃん! ごめんなさいのらぶらぶアタックなの!」


 スパッと変身し、某三世な泥棒かの如くエヴァちゃんに向かって飛び込みと問答無用で押し倒してらぶらぶに入った。


(エヴァ)「まだ、はにゃしがゃ☆△♀◆□°▲○●々□♀♀♀◎〒」


 この後……ベットの上で余韻の快感もやっと抜け、昨夜との快感の違いに3%と言う数値を実感したエヴァちゃんの心は、じわじわと真綿の如くしめつけられ……深く傷ついたエヴァちゃんは鬼気迫るオーラで俺を探し始め徘徊する。

 頭では俺の言うことは理解出来ていたとしても乙女心としては絶対に許せないらしい。そんな彼女は宝剣を片手に俺としばし猫庭でガチの鬼ごっこをすることとあいなった。



 ………………

 …………

 ……

 …



 私はアクアパレスに逃げるようにエーコちゃん達を連れ出して逃げた。だけど、猫庭内は広いようで狭い……後日、このことがマリアちゃんの耳に入り、私とにゃんにゃんするためにあれこれと画策するに違いない……そう考えると更に気が重くなってしまう……あっ……エヴァちゃんとのらぶらぶ……あの世に全部筒抜けだ……もう、考えるのはやめよう……


(エーコ)「クウちゃん……その、あまりエッチなことばかりするのは良くないよ。」


 流石にここ数日の私の行動はエーコちゃんから注意を受けるほど外聞がよろしくない。その言葉に素直に耳を傾けるしかなかった。


「その通りなの……クウ娘は人生の反動って奴を噛みしめているの……」


(シエナ)「人生の反動って何……」


「それはねシエナちゃん……幸せでいるとその分、苦労もするってことなの……」


(リア)「クウちゃんの目が死んでる……見た目は絶世の美女なのに……」


 だって、戻れば結局、現実が待っているし……


「ありがとうなの……今はクウ娘になることで現実逃避中なの……」


(ニア)「ねぇ、クウちゃん。今って女の子なの? それとも男の子なの?」


「どっちでもあるの。不思議な感覚だけど、でも、この姿でいるときは女の子であることを優先させることにしたの。」


 ウインクしてニアちゃんに返事を返す私。


(レア)「胸が大きいし……ふふふ、えい。」


 レアちゃんの指が私の胸に埋まっていく。なんだかレアちゃんが凄く無邪気に見える。なんだろね、この感覚。


「好きなだけ触ってなの。なんか、この姿だとお姉ちゃんになった気分なの。」


(エーコ)「じゃあ、クウお姉ちゃんって呼んであげる。」


 男がお兄ちゃんって呼ばれてぞくぞくするのと同じで、エーコちゃんにそう呼ばれた瞬間、私の中のスイッチがガチャリと入ってしまう。


「まあ! なんて嬉しいを事を言ってくれるのエーコは。ハグして差し上げてよ。」


 いつも私がやられているように、エーコちゃんを私の胸に挟むように抱きしめる。


(シエナ)「お嬢キャラに変わった!?」


「テイレイア様バージョンよ! ホホホホホ~。」


(リア)「出た……アイシアちゃんの御先祖様にして目の上のタンコブ。」


(ニア)「こないだ寝言でうなされていたって聞いたけど、完全に追い詰められているよね……」


「初耳なの……なるべく触れないでそっとしてあげようなの……」


(レア)「死後なお、向こうからやって来そうだけどね……」


「もう化け物扱いなの……」


(シエナ)「アトラス様のトラウマの素って言うだけで充分に化け物だよ……」


(リア)「クウ姉は色々お話聞いているんだよね?」


「なの。お父さんから冗談としか思えない秘話の数々をそれはもう……」


(ニア)「それじゃあ、アイシアちゃんがいない今、聞かせて、クウ姉。」


「いいですわよ。それとクウ娘ちゃんの呼び方はクウ姉なのね。」


(レア)「嫌かなクウちゃん?」


「そんなことないの。それに実はテイレイア様もお父さん以外からはテイ姉って呼ばれていたの。それでなんかおかしかったの。」


(ニア)「クウ姉、お話!」


「はいはいですの。んっんん。それはそれは遠い遥か昔のお話ですの……」


 紙芝居のように語り出した秘話物語に、五人は耳を傾けるのであった。



 ………………

 …………

 ……

 …



 今より1万と200年前のお話。世界を我が物としようとしていた大魔王をうち滅ぼし、この世に平和と言う安寧(あんねい)をもたらした英雄達は、それぞれの地へと帰り、別れを告げた。だが、一匹の龍はある女性へとついて行った。その名は……


(テイレイア)「アース。貴方の淹れるお茶って本当に美味しいわね。」


 今日は天気が良いのでベランダにテーブルと長椅子を出してランチにする。そして、その長椅子にゆったりと身を任せ、(くつろ)いでいる大きな老婆がいた。


(アトラス)「そのアースと言う呼び方……我の名前はアドアトラスですぞ。ずっと言っていますのに(いま)だ直してくださらないのですな。」


 後の世界を永久に見守り続ける存在へと変わりつつあった聖なる龍アドアトラスは、自分を完膚無きまでに叩きのめした人の身の回りの世話までしていた。


(テイレイア)「いいじゃないアース。何度も言うけど、貴方の名前は長いし呼びずらいのよ。それに出会った頃はよく呼んであげてたじゃないの。ふふふふ。」


 龍は目の前の老婆を(いたわ)り愛していた。それはかつての姿と遠く離れた老婆となっても、内から輝く魅力は老いる前と変わらなく、その瞳には写っていた。


(アトラス)「一体いつの話ですか……」


(テイレイア)「80年位前の話かしら? 全く龍って奴は羨ましいわね。私はお婆ちゃんになったと言うのに、アースったらあの頃と全く変わらないんだから。」


(アトラス)「そんなことはありませんよ。少なくとも己の浅はかさは知って利口になったじゃないですか。」


(テイレイア)「利口ですって? 全くアンタは……こんなお婆ちゃんなんて放っておいて、平和な世を見て回ればいいのに。」


 龍は思うのであった。こういう所が好きでもあり、嫌いでもある、この御方の魅力だと。


(アトラス)「…………カロン様、マリック様、バーン様、エドガー様、アイズ様、ゼス様……皆様逝かれてしまいました。……あの御方達がいない地に、一体なんの興味が湧きましょうか……」


 最後に生き残ったのがこの巨人族の老婆のテイレイア。龍は己が長寿である事を呪った。そう、たった一人、取り残される事を……


(テイレイア)「アンタは本当にダメね。アース良く聞きなさい。生き物なんてね、いずれは必ず死ぬのよ。永遠に思えても一瞬なの。だったら長い方が得じゃないの。」


(アトラス)「じゃあ、入れ替わりますか?」


 人の気も知らんでと、龍はため息をつきたくなるのを我慢して軽口を叩く。


(テイレイア)「そんなことができるのアンタ!? なら入れ替わりなさいよ。一度でいいから男の体で女を抱いてみたかったのよ。」


(アトラス)「1日だけなら出来ますがって! そんな事をしようって人と入れ替われますか!」


(テイレイア)「ぶーぶー! けちんぼ!……ふふふ、あはははは。アンタをいつか支えて変えてくれる人が現れるのを……私はあの世からずっと見守っていてあげるわよ。何、絶対さ……カロン様達だって転生しないでいつまでも待ってくれてるさ。だからアース。そんな顔をしないの……みんなは側にいるわ……ずっと視線を……感じる……もの……」


 すっと、彼女の体から抜けていくようなものを龍は感じとり、慌ててテイレイアの元へと近寄る。


(アトラス)「テイレイア様!! 待って下さい!!」


…………が


(テイレイア)「な~~~んてね! ぷふふふ、焦ったでしょ? アース。」


 真に迫った演技に龍の心は掻き乱される。


(アトラス)「なっ!? クッ……ホント、最悪です……いい加減にしないと邪龍になりますぞ!」


(テイレイア)「あははははは……ありがとうアドアトラス……楽しかったわ……バイバイ……」


 ゆっくりと目を閉じ、朗らかな笑顔を称えて彼女は別れの場を作る。辛気臭い顔を見たくなかった彼女は最後まで、その長所と短所を合わせたやり方で龍を騙すのであった。


(アトラス)「またですか……そう何度も龍をからかうものではありませんぞ……全……く……嘘ですよね?……テイレイア様!?……嘘だと……また我をからかって……貴女と言う方は……うつ……うう……」


 散々の輝く太陽の下。一人の老婆は安らかな笑顔で最後を迎え逝った。取り残された龍は天に向かってその真の姿を隠すこともなく、号泣するのであった。



 ………………

 …………

 ……

 …




「……と言うわけで、お父さんは最後までテイレイア様に振り回されたって、今だにぷんすこなの。」


 五人とも少し泣いている。そして、思い思いに感想を話し合う。


(エーコ)「グスッ……涙が出てきちゃった。」


(シエナ)「お義父様、どんな気持ちで今もいるんだろうね……」


(レア)「私だったら耐えられないかも……」


(リア)「でも素敵よね。仲間があの世でいつまでも待っている事を信じてるって。」


(ニア)「ねぇ、クウ姉。ひょっとしてお義父様の好きな人ってテイレイア様じゃないの?」


 この話をした時の父はいつになく寂しい顔をしていた。それは他の勇者様の中でも顕著に表れていた。


「やっぱりニアちゃんもそう思うの? クウ姉もそう思った事があるけど、うーーん……お父さんのされて来たイタズラの数々を聞くと……とても恋心が生まれるとは思えないの。」


(エーコ)「じゃあ、アイシアちゃんに実は惚れていたり! ホラッ、二人で鍛冶をしてる時にさ、きゃ~~~!」


 エーコちゃんはなんと言う設定をぶち込んでくるの! 父にNTRされるなんて一番最悪なパターンよ……邪神になっちゃうよ……


「ぶはっ!? アイシアちゃんはお父さんでも渡さないの! その妄想はめっ!なの。」


(シエナ)「あぁ~お父様! 止めて下さい! 私にはクウちゃんと言う愛している人が!」


(リア)「済まん! アイシアちゃん……我はもう、我慢が出来んのだよ! あの御方の代わりに永年の思いを! ガバー!」


 私を苦しめる寸劇の威力は効果抜群である。


「止めてなの~~~!」


(ニア)「あぁ~~! お父様そこは!」


(レア)「らめぇぇ~~~~~!」


「だ~~~~! もし、そんな事になったらクウ姉は女性不振になるの!」


(エーコ)「あはははははは。クウ姉の弱点見つけたり。」


 その後も他のメンバーの妄想バージョンで私に精神攻撃を続ける5人であった。そんな風にまったりと進む中、私達の向かった先は、あの氷の張った湖ではなく。

 もう1つのポイントとなる小さな貯め池に来ていた。こちらの池は直径30m位の小さな池で、キングカイザーがいることにはいる。


 その代わり、そのサイズは1m以下という小型サイズとなってしまい、ここに来るための距離も大物が取れる湖より遠いため、人気のない捕獲ポイントであった。そのため、ここにいるのは私達だけで他に冒険者達の姿は見えなかった。


 「それじゃあ、釣りを始めますの。クウ姉特性の釣り竿ですの。それと餌は絶品のトウモロコシを持って来ましたの。」


(ニア)「もったいないけど仕方ないよね……」


(レア)「焼きモロコシ美味しかった……ジュルリ……」


 寒いから向かう途中に私が差し入れをしたのを思い出し、ヨダレが溢れてしまう五人であった。


(エーコ)「だからこその最高の餌よ!」


(リア)「だね! それに忘れてはいけない……これはルカちゃんとの戦争だと言うことを!」


(シエナ)「クウ姉! しっかり見ててね! あれから私達は生まれ変わった姿を見せてあげるから! 水魔の槍よ! 氷を穿て!」


(エーコ)「ファイヤーブリット! シュート!」


(リア)「重力結界!」


(ニア)「作動!」


(レア)「えっと……よ!」


 みんなが池の氷を割っている間、私は竹炭を使い近くに焚き火を用意しておく。そして、釣り竿にトウモロコシの粒を付けて完成。

 さて、大物を釣りあげるのは誰かな?……ミロの事を忘れている訳じゃないが、私がこのクエストを切っ掛けにみんなを愛で包む込むんだから!


 私の計画は今のところ上手くいっている。このままキングカイザーを釣って、みんなとらぶらぶする。そして、フーコの奴を何とかせねば……エーコちゃん達にまで怒りを買ったら居場所がなくなるよ……


 「では、これから3時間の間に一匹でもキングカイザーを釣りましょうなの!」


(エーコ・シエナ・リア・ニア・レア)「「「「「おーー!」」」」」


 そこからは面白いように釣れた。餌が良すぎるので入れ食いなのである。しかもみんなはたくましい……


(エーコ)「えいっ!」


 イーティングリボルバーでキングカイザーのこめかみに弾を撃ち込んで〆ている。パスッという音が鳴る度になんとなく私は音に反応してビクッとしてしまう。


(エーコ)「どうしたのクウ姉? あははは、音に反応しすぎだよ。」


「銃って言う武器はそもそも向けられたら対処のしようのない物だから、どうもびっくりしちゃうの。」


(エーコ)「またまた、暴走してた時なんて指で簡単に摘まんでいた癖に……」


 むぅっと頬を膨らませてぷんすこなエーコちゃん。そんな彼女ホッペをツンツンして私は誤魔化す。


「あれはあれなの。クウ姉は嫌な過去は捨てる女ですの。」


(シエナ)「あははは、一歳の女の子が言うセリフじゃないよクウ姉。」


 ぐ、……痛いところをついてくるシエナちゃんを私は襲った。


「あぅ、もうシエナちゃん! クウ姉がそんな意地悪を言う子には包んで温めてあげるの刑にしちゃいます。」


 ポフッと包んだシエナちゃんはニコニコの笑顔でいる。軽くキャッキャッウフフ状態である。


(シエナ)「きゃ~~~! クウ姉のもふもふで蕩けてちゃう~~♪」


 多少悦に入ったシエナちゃんを見て私は少し欲情してしまう。……今はダメよ私……シエナちゃん可愛い過ぎる。


(リア)「ここにも居たわよ。裏切り者二号が……」


(ニア)「うちら三つ子は裏切りよそうね……」


(レア)「・・・・」


 ヒュウ~と微妙な間に風の音が鳴り、裏切り者三号さんが誕生していた。


(エーコ)「あははは、レアちゃんが早速裏切った。」


(リア・ニア)「「ちょっとレア!」」


(レア)「三つ子だからこそクウ姉を虜にするのは私よ!」


 三つ子だからこそ順位があるのか。差別化を計るレアちゃんであった。


 「お願いだから仲良くしてなの……クウ姉の胃はこれ以上もちません……」


(シエナ)「ね~クウ姉。」


 「ね~なの、シエナちゃん。」


 良かった。みんな笑顔を見せてくれる。


 彼女達の村でもし願いを叶えていたら、エーコちゃん達の笑顔を取り戻せただろうか? 私が無茶をして家族を取り戻したとしても、決してエーコちゃん達は真の意味では幸せにはならなかっただろう。


 ミロ、見てるか? 相手を守りたい、幸せにしてあげたいと思うのなら、自分を見てくれる人のためにも己を犠牲にしちゃいけないんだよ。それとお前は結論を急ぎ過ぎた。彼女達の成長を待つべきだった。


 その先にひょっとしたら、私もお前も予想出来ないような奇跡が訪れたのかもしれなかったんだから。


 そんな事を心の中で呟いている時だった。俺の中の第6感が警鐘を鳴らし、激しく鳥肌が立った。


「……!?……みんな!!! こっちに急いで来るの!!!! パーティーリーダー特令!!!」


 パーティーリーダー特令。これは絶対に言った瞬間に何があろうとも絶対に守れと言ってある言葉。緊急時に、特に説明してる暇が無いときに言う台詞である。


 五人が俺の元に集まった瞬間、俺は緊急措置を取った。


 「【にゃんこ】ワープ! 逃げてなの!」


 五人を無理矢理掴み【にゃんこ】ワープの口に放り込み飛ばした。行き先は猫庭の楽園ロビー。五人は飛ばす寸前に哀しそうな目をしていたが、絶対守ると決めた! だから、ごめん!



 ………………

 …………

 ……

 …



 上空に裂け目が走り、そこから7人の男女が現れ、俺の元に落ちて……いや、降りて来る。一目で分かる強者特有の雰囲気を纏い、笑っている者、微笑んでいる者、無表情な者、憤怒の者、哀しげにしている者、怪訝な顔をしている者、悦にいってる者。一人一人が特徴的な姿をしており、発する空気……この独特な感じ……忘れたくても忘れられない……


「邪神!!!……なんのようですかなの?……………………まさかキングカイザーを釣りに来ましたの? ふふふ。」


 俺を中心に雪原に降り立ち、円を描くようにして取り囲む。一人一人がとんでもなく危険なのが間近で見ることでより分かった。


(?)「これはこれは初めまして。(にえ)を逃れし供物(くもつ)の子よ。今は10級神となり、あの原初の神、ミラ・ミケオロンの犬……いや、貴方の場合猫ですかね。」


 黒の仮面に全身を覆い、雪原に尾を引くほどの長いローブを着た大魔導師風の男が軽い口調で俺に語りかける。


(?)「ぐははははは! ねぇ? 喰っていい?」


 巨人族にひけを取らぬ巨体に筋肉。そして、手足につけられた鎖と鉄球。上半身が裸で粗末なパンツを履いている野性的な男。


(?)「待ちなさい。ブラムート。」


 アイナママと同じダークエルフの女。ただし、彼女は金髪である。黒のパーティードレスに両手にはめているシルクの手袋には幾何学模様が入っている。恐らく神具の類いだろう。


(?)「話の途中に失礼しました。そうそう、あのような女の元に貴方を置いておくのは忍びない。」


 こうして話しかけてくる間も必死に隙を探すがは全くない……特に私の正面で語りかけてくるこの男が一番ヤバそうだ……


「それはお誘いしてると受け取ってよろしいですの?」


 断ればこの場で殺すか……不自由な交渉って奴か。殺すと言う条件から恐らくレートを下げてから条件を飲ませる手。殺す気ならとっくにやってる筈だからね。何を提示してくることやら……


(?)「綺麗な子……そんなに澄んだ創魂をしているのに、なんでミラ・ミケオロンに従うの?……助けてあげる。悪いようにはしないからお姉さんのところにおいで……ねっ?」


 漆黒の黒髪に喪服を着た女。黒のヴェールの奥から見せる顔は俺を哀れに思い、哀しげな表情をしていた。そして、俺にスッと手を差し伸べる。それが何かの演技や冗談でないのが分かる。


(?)「シアさん、少し黙っていてくれませんかね? おっと、またスミマセンね。はい、単刀直入に言います。我らは破壊神様の使徒。貴方をあのミラ・ミケオロンより救うために参りました。我らと共にミラミケオロンを倒して、真の鎮魂を行いませんか……」


 まるでミーちゃんから被害ん受けているかのような言い方だな。知らない真実があるってこと? そして、真の鎮魂ね。慰めると言う割りには俺なんか、邪神サイドに酷いことをされたんだが……


「そこで、ええ、分かりましたの……なんて言う奴を……貴方はえっと……」


(エンビィ)「失礼しました。我が名はエンビィ。清闇のエンビィでございます。九条殿。」


「それで、エンビィさんは信用するのですの?」


(エンビィ)「それは一時的になら、その後の様子を見て問題がなければ危害は加えません。それは信用とか以前の問題です。さすれば自然とその後は信頼関係は生まれますので……」


 他の面子は黙っているがさて、この面子……俺一人じゃ敵いそうにないな……どうする……


「拒否すればこの場で殺すと?」


(エンビィ)「いえ、貴方の大事にしてる者から救済させていただきます。恐らく私達の半分は九条殿に倒されるでしょう。いやはや……恐ろしい方だ。あのお父上も既に神クラス、それも神王クラスの実力者。末恐ろしい親子ですよ。」


 戦力を分かった上で仕掛けると言うわけか……しかも人質を取るようなやり方で行動を封じるか。ならここで逃げても、この世界の住人を皆殺しにするだろうし逃げ道がない。

 戦っても同じ。恐らくエンビィと言う男の狙いは俺を誘導することだろう。なら乗るしかないか……


「破壊神に会わせてなの。何故、人を不幸に陥れるのか。クウちゃんは一方だけの意見を丸のみにはしないの。だから、エンビィさん達が対話と言う段階をまず踏んでいるのなら、クウちゃんも話をさせてなの。断るのなら……みんなこの場で道ずれにしてお父さんに託すの……」


 これが狙いでしょ……答え次第では初手から【虹球】を全員に喰らわしてやる! 少なくともこのエンビィだけは必ず殺る。


(エンビィ)「………………破壊神様がお会いになられるそうだ……」


(?)「良かったわね。本当に戦いにならなくて良かった。」


(?)「後味悪すぎるな、確かに……」


(エンビィ)「本当に幸運の方で九条殿は。」


 よく言うよ。シナリオ通りでしょ……それと……


「クウちゃんなの! 九条じゃないのエンビィさん。人の名前を間違えるだなんて失礼しちゃうの。」


(エンビィ)「これは失敬。では、申し訳ないのですが、その着ぐるみはリュックにしまって下さい。あ~心配しなくてもリュックは取り上げないので。」


「分かったの。ついでに変身も解くの…………これでいいですかなの?」


 無用な誤解を与えて面倒なことにしたくないから、完全に武装解除する意味で元に戻り。バンパイアニードルもリュックに閉まった。


(?)「私抱く」


 ゴスロリな漆黒のドレスを着たセーラちゃんと同じ歳くらいの背格好も良く似た少女にヒョイと抱っこをされる。そして、無表情の顔が崩れて微笑んでいる。


(シア)「エルメダ、ずるいわ!」


(エルメダ)「・・・・・・」


(?)「俺はエルメダがしゃっべったことにびっくりだよ……何千年ぶりだよ。声出したの……って無視かよ……」


(?)「無駄だよリオン。エルメダはクウちゃんを溺愛してるからね。シアも諦めな。」


(シア)「イレーヌは他人事だと思って! 私はね。」


(イレーヌ)「はいはい、あたいだって我慢してんだ。それに破壊神様を待たせておいちゃマズイだろ? 行くぞ。」


 ここにいても仕方がないし行こうよって、エンビィさん、わざわざキングカイザーを集めてくれたのね。彼の魔術で集められたキングカイザーをリュックに入れてくれた。細かいところに良く気づく人だ……


「けんかはめっ!なの。」


(エンビィ)「その通りです。参りますよ。」


俺をこの姿にし、父に供物として捧げる事になった元凶の親玉に俺は会うことになる。みんなのためにも無事に帰って来るよ。だから、みんな待っててね。


次元の裂け目に入った俺達はこの世界から消えた。

ふつおたコーナー(MC:たまご丼)


ペンネーム「困ったことになりました」さんより頂きました


Q:嬉しいことがあって顔が常ににやついてしまってみんなの前に出れません。私はどうすれば良いでしょうか。


A:他人の視線なんて気にしちゃダメダメ! それでも気になるのなら家に閉じ籠るのもありあり! だけど、それも無理なら仮面でもつけちゃえ! 困ったことになりましたさんならいけるいける! というわけでシーユー♪


セ:コフー、ふふ。コフー、ふふふ。コフー、うふふふ。


ネ:セーラ……その仮面を取れ!……グスッ……


セ:だ、ダメですわネイお姉さま……コフー、ふふふ。コレを外したら皆さん怒りますもの。コフー。


ミ:せ、セーラのばかぁああああ!


ア:ブラックなセーラちゃんなんて、き、嫌いだぁあああ!


ク:お兄ちゃんの罪は重いわね……


パ:今そこで二人が泣きながら出て行ったけど何が…………セーラちゃん、私も付き合うから謝りに行こうか。


セ:はい……コフー。


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