犬 対 猫
きゅるるるる~。夜の平野に俺の可愛らしい腹の音が鳴り響く。
「おなかぺこぺこなの。ネイおねえちゃんもごはんいっしょにたべましょうなの」
ケンカの仲裁でお腹が減ったのか、我ながらいい音だ。目の前で伸びてる二人を無視して、ネイさんとご飯にしよう。
この人は俺にとって大事な保護者であり、この先の旅に必要不可欠な人物だ。
「全くあの二人と来たら……はぁ~、そうだな! あの二人は放っておいて飯にするか」
ニコッと明るい笑顔を俺に向けてくれ、頭を優しく撫でてくれる。
「クウは干し肉食べれるか? 結構固いから無理だよな……こんなことなら小さい鍋でもいいから持ってくるんだったな」
この人って一見ぶっきらぼうに見えるけど、実際は全然違うよな。俺を撫でる時だってワシャワシャと乱暴に撫でそうな雰囲気を持っているのに、
実際は三人の中で一番手慣れた撫で方だったりする。う~ん、お姉さん肌って奴を感じる。母性本能が強いと言ってもいいかもしれない。
「ネイおねえちゃん。おとうさんからクウちゃん、ごはんいっぱいもらってるからだいじょうぶなの」
ここはお裾分けをして、仲良くご飯としよう。しかし、この世界の食事レベルはやはり余り高くなさそうだ。
ネイお姉さんが持っている干し肉はお世辞にも美味しくなさそうである。カチカチで色も黒ずんでいて、見た目からして食欲が湧かない。
多分防腐効果も兼ねて薫煙をタップリと付けているのかもしれない。あれは味は別としても、俺の歯じゃそのまま頂くのは無理だな。
ゴソゴソとリュックの中を俺をネイさんは微笑ましく見下ろしている。ちょっとクスクス笑っている声が聞こえる。
「そんな小さなリュックじゃ街まで持たないぞ」
ふふふ、このリュックなら例え一国の食糧を全部詰め込んでも全然余裕だったりする。流石は父が血肉を削って作り出したリュックである。
結局、何の皮を使ったか俺は聞き出せなかったが……予想はそう外れてはいまい……
「だいじょうぶなの………うんしょなの。はい、これネイおねえちゃんのぶんなの。おいしいの~いっぱいたべてなの」
リュックからネイさんの分コルルとプルルの実を六個ずつ取り出した。いっぱい食べそうだし五個ずつあげれはいいかな?
「なっ!?……これマジックバッグか? おいおい……初めて見たよ……クウ! 絶対無くしちゃダメだぞ! あと、他の大人には絶対内緒な!
これはマジックアイテムって言う物でな、と~~~っても貴重なアイテムだから!! 悪い大人だと、クウを騙して奪い取ったりしようとするから秘密だぞ!
だけど、仲良くなった人には教えても大丈夫だからな。最初は絶対に秘密な?」
弟の面倒を見てくれる姉みたいだ。その綺麗な瞳で俺を心配して見守ってくれる真剣さが、何よりも嬉しくて心地良かった。
「はぁ~い。ひみつにするの。おとうさんがつくってくれたから、とってもだいじなの」
ナデナデしてくれる……ウズウズしてるのが分かる。抱きたいのをきっと我慢してくれているんだな。……ネイお姉さんには我慢してさせてあげていいかもしれない。
だけど、今はごめんなさい。……うぅ……俺のヘタレ……
「いい子だ。クウのお父さんは凄い魔術師なのかもしれないな。マジックアイテムを作るなんて王国の賢者様クラスかも知れないぞ。
あたいの父ちゃんなんてモンスター狩るしか能のない普通の冒険者だったから、正直羨ましいよ」
そう言いながらも、どこか誇らしげな顔をするネイお姉さん。多分ネイさんはお父さんの事を誇りに思っているんだね。
「そんなことないの。おねえちゃんのおとうさんなら、とってもつよそうなの」
あれ? そんなに驚くこと? 目が点になってるポカンとしてる……コミニケーションって難しい……
「アハハッ! ありがとよ。ホンットに可愛いな、ウリウリ~よしっ! 飯食うか」
良かった。呆れられたとかじゃなかったようだ。抱きつきはしないけど、両手をほっぺに優しく当てて、ムニムニと揉まれた。恥ずかしいけどこれくらいならなんとか耐えれる。
「はぁい」
「はむ! ボリボリ! サクッ! ゴクゴク! ぷはぁ~。ごっそさん! クウのくれた実旨すぎるな! 初めて食ったけど、こりゃ~物凄い高いんじゃないか? あっ! でも、あんがとな! うまかったぜ」
ポカーン……余りの早さにちょっと呆けてしまった。フードファイターがいる! もっと味わえばいいのに! あれか? カレーは飲み物的なあれっすか?
「食べないのか? ちゃんと食わないと大きくなれないぞ。猫人族は只でさえ小柄な種族だからな」
なんですと!? 他の猫人族を見たことないから知らなかったが、俺がより幼く見えるのはそう言うことだったのか?
肉体はまだ一歳とは言え、鏡に映る俺の容姿はヘタしたら、生後数ヵ月位にも見えたくらいだし……うぅ~早く大人になりたい……
「ちゃんとたべるの……でも……う~~~~~ん…………」
物足りなさそうにしてるネイさんにあれを試してみようかな? 色々お世話になってるし、この人なら抱きつかないから安心出来る。
「どうした? どこか痛いのか?」
「おねえちゃん、もうおなかいっぱいなの?」
「ん? まだまだいけるけど、クウの分まで無くなっちゃうぞ。あたいのお腹を心配してくれるのか? 優しいなクウは」
俺の実をネイお姉さんにあげようとしてると、彼女は勘違いをしている。優しいのはネイお姉さんの方だよ。
「おねえちゃん、おくちをあ~んしてなの。おねがいなの」
もふもふ魔法発動! マナは消費MP100位でいいかな? 大きさはアメ玉サイズ。ネイさんのお口にポイッと入れてあげる。
「クウの分がなくなっちまうぞ。一口だけな……ん? 綺麗なお菓子だな。なんだ食後のデザートだったのか。甘いのも好きたぞ。
あ~~~~ん!?………………ワォォォォォォォン!!!!!」
おお~! 凄い、口の中に入れた途端に雄叫びをあげるとは! 尻尾を振り回してお座りしてる。なんか、昔飼っていた犬のジョンみたいだな。
「もう一口だワン!!」
うわっ!! ネイさんの目付きが据わって、さっきと違いすぎる。ヤバイ……地雷踏んだか?
「あ~~~んなの。おねえちゃんいいこ~いいこ~なの~」
ネイさん、我に帰って!! 父は消費MP10000でも大丈夫だったのに……ナデナデして、状態異常の回復はしないか?
「美味しすぎるワン! もっと! もっと!! おくれだワン!!! ペロペロペロペロペロペロペロ」
ダメだ! 食欲は異常に入らないようだ。あっ! ダメだよネイさん! そんなにペロペロしないで! アイナさんの時以上にムリゲーっす!
何も考えられない程パニックな俺は、必死の抵抗を試みるが、ネイさんが俺の上に覆い被さってペロペロする為、完全に身動きがとれなかった。
もちろん俺は真っ赤で、頭から湯気マックス状態である。
「う~~ん、なんなのよ~……うるさいわね~って……ネイ!!!」
「痛た……ネイちゃんのせいであの世に行きかけたじゃないのって、ネイちゃん!!!」
二人が騒音から目を覚まし、こちらに顔を向け真っ青になっている。絵面からしてお巡りさんこっちです! 状態だよな……
「ネイおねえちゃんだめなの! ぺろぺろだめなの! そんなところをぺろぺろしたら……クウちゃん……もう……もう……げんかいなの……がくっ………………」
はい、俺にどうしろと…………察してください。
「「何やってるの!!!」」
物凄いスピードでネイお姉さんの頭を叩く二人。息の合った素晴らしいコンビネーション攻撃であった。
「はっ!? あたいは一体…………え? キャーーーーーーーーーークウ! ごめんよ~~~!」
我に帰ったネイお姉さんは、自分が押し倒している俺を見て青ざめる。
「ネ~~~~イ! お・す・わ・り!!!!!!」
「ネイちゃん! 詳しく聞かせてもらうからね!!!!!!」
鬼がそこに2人いた! こうして俺はまた闇に堕ちてしまうのであった。
ふつおたコーナー(MC:たまご丼)
ペンネーム「紅の牙」さんより頂きました
Q:一歳位の子供を押し倒して夢中でペロペロしちゃいました。どうすればいいでしょうか?
A:最寄りの警備隊の詰め所に行ってゲロっちゃえ!カツ丼食ってお勤め済ませばオーライだ!紅の牙さん!差し入れに月刊公園デビューの妖精達を持っていくよ!シーユー♪
ア・ミ:アイアンクロウの刑を執行する!
ネ:ミシミシいってるから!ミシミ・・・ガクッ