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まよなかのとれーにんぐなの

ここは800階にあるトレーニングエリア。その中の一室に板張りの道場がある。俺の記憶にある修行場とはこれである。

既にここでどれ位の時間、正座をしているのだろう………俺の中に眠る可能性を模索し瞑想をしている………集中する為にローズオットーのビンを開け……明鏡止水を最大まで発動し体の中に巡るマナちゃんと共に静かに探る俺の力……

……にゃん鉱………それは純魔素の結晶から生み出された存在………俺の力を宿すもう一つの俺………つまり……マナちゃんとは俺の構成している物でもあり……あのミーちゃんですら進化させる究極の存在……

……この温かく……優しく……綺麗で………いとおしい存在を俺は全然理解していないのかも……目を開け俺の周りに無数に漂うマナちゃんを手のひらに集めて目を閉じる………俺は…………


「『もう…かれこれ二時間もあのままです………汗もあんなに……』」(メイドL)


「『我らの主様は今、何かを掴み取られようとしている………信じるんだ……』」(ロジャー)


「「「「「『はっ!………』」」」」」


道場の死角から俺の様子を窺うロジャーさん達は見守ってくれていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


トーちゃんが俺の為に用意してくれた設定を想像し思い浮かべる………


「(手に集まったマナがクウ様の胸の中に入って行く…………何が起きてる………)」(執事L)


俺の胸に温もりが一つ………また一つと拡がる………


「(もし、危険と判断したらロジャーが止められても私は………)」(メイドL)


トーちゃんはあらゆる選択肢を用意してくれたに違いない…………


「(なんと不思議な光景だ………クウ様はマナに愛されている………そして……語らっておられる?…………)」(執事X)


ありがとう………この言葉をこれからも何度も言うだろう…………もし……俺が無事に転生の設定を選んでいたら………そこにあったものは………


「(頑張ってください!きっと貴方なら!!………………!!!!!!)」(ロジャー)


……………………☆……………………………………………………▽…………………………………◇………………………………………□………………………………☆


「!?………………………………………………」


今のは!?…………声?…………いや……………………そんな気がした………だけど……


「(急に目を開かれた!?………マナが全て一気にクウ様の中に………止められるべきか!?………)」(メイドL)


………この温もりを信じよう………あの声がマナちゃんの………違ったとしても構わない………この温もりをこの手に………祈るように手を合わせお辞儀をする………感謝の所作をこの全て込めて!!!!!!


*鉱物創造LV1を取得しました。


「できたの………ありがとうマナちゃん♪ありがとうトーちゃん♪ありがとうみんな♪」


最後にみんなに向けて俺は微笑んだ♪













「うんしょ♪……………けんじょうかんりょうなの♪」


「お疲れ様ですクウ様♪」(ロジャー)


みんなのおかげで俺は10個のネックレスを作る事が出来た。アレキサンドライトと言う宝石を俺はMPの限界まで絞って創造した。

この宝石はとても不思議で太陽の光により色が変わり、朝は赤系の色を放ち夜は青系の色になる。その涙型にカットした500円玉位のサイズのをプラチナチェーンにつけて完成させた。

恐らく価値は高そうだが、みんなへ送るのに俺の気持ちが乗った一品になったに違いない。俺はまずロジャーさんから首に掛けて残りの五人にも掛けてあげた。

すると、ロジャーさんをはじめ、みんなは感極まって…もう♪いい大人が泣きすぎなのである。残りの4つは勿論ミーちゃんにカリウスさん。そして、トーちゃんとサーちゃんに送った。

この瞬間を見ているのか分からないので手紙を添えて送った。多分これで三人にも届くと思う。この後、汗だくになった俺はみんなとお風呂に入り汗を流した。

お姉さんもどうしても一緒がいいと言うので恥ずかしかったが今じゃ前ほど抵抗なく混浴とあいなった。しかし、物を贈ると言うのは料理とは違った感動があり、みんながネックレスを肌身離さず付けてくれるのを見るとそんな事にも癒され心身ともに安らいでいく。

ロジャーさんに抱っこされ湯船の中で船を漕ぐ俺はそのまま眠りに堕ち、そっとお部屋の元の場所に戻されクリアーナさんとクリスちゃんの温もりを感じるのであった。










翌朝の朝食後に会議が開かれた。オークに囚われていたお姉さん逹をどうするか。俺達はこの大陸を急いで出なくてはいけない。


「私達の村はもうありません……かと言ってこのまま街や王都に向かっても娼婦になる位しか生きる道はありません。」(お姉さんA)


なら、ネックレスを売って良いよ♪と言い掛けたがそれをお姉さん達は決して言わない。つまり、恩義を感じているからこれは売らないと言っているのだ………


「思いきって冒険者になって見たらどう?」(リリヤ)


「危険な仕事よ。それこそ娼婦の方が確実に身を守れる分だけいいかも知れないけど……でも、報酬はある程度までいけばでかいわよ♪」(リズ)


「私達……畑仕事しかして来なかったから………」(お姉さんB)


いきなり言われてもすぐに返事は出来ないよな………俺は悩んでいた………エーコちゃん達位にまだ幼ければ自立も厳しいから保護と名目で動けるがお姉さん達はもう大人なのだ。全てを救う事が出来ないと俺は…………いや!違う違う!!それは死者蘇生で衣食住なら提供出来るんだから対価を貰えば…………


「う~~~~~んなの♪ぬぬぬぬぬぬなの♪はぅ~~~~~なの♪」


胡座をかき、両手を組み、目を瞑って考える………


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「クスクスクスクスクスクス♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


あれ!?なんかみんなこっち見て笑ってるし………


「ぷんすこなの!!クウちゃんしんけんにかんがえているの!!!」


「ごめんなさいクウちゃん♪……だってクウちゃん可愛いですもん♪」(アイナ)


答えになってないよ!!!


「それでクウ♪何を考えていたんだよ♪」(ネイ)


「ここでごはんやおふろやおふとんはていきょうできるの。……だけど、クウちゃんもかみさまだからただではいけないとおもうの。それでどうしようかとかんがえていたの………」


「それならクウちゃんいい考えがあるよ!」(アーキム)


おっ!?商人のアーキムさんが生き生きしてる。何かいい案なのかな……


「ここでお店をやればいいんですよ♪だって、ここならクウちゃんの王国な訳ですから税金が掛からないから場所代は掛からないし設備費もクウちゃんの魔術で賄える。しかも、ここには見たこともないような娯楽施設が夢のように詰まっている♪いずれここにお客さんを入れれば従業員5000人でも足りるか問題ですぞ。」(アーキム)


彼の長年培って来た経験から冒険者とは違った選択肢を提案される。ここなら確かにその道も可能だ。


「ここはさむさをしのぐためにつくったの。でも…………う~~~ん、あと300ねんはここはあるし、おねえさんたちをクウちゃんがやとうのもありかもしれないの。あっ!ねこちゃまふぁみりーのみんなでさきにかいぎなの!!!」


大事な事はみんなで決める。それが俺のルール。


「そうですな。重要な事ですから」(アーキム)


「私達も待ちます。」(お姉さんC)


一言断ってからみんなで話し合う。場は動かないが話すのは身内だけだ。


「商売の件だけど…確かにそれもありかも知れないけどママはこの猫庭の楽園があるのなら冒険者になる方を勧めるわ。ここなら300階の闘技エリアで修行も出来るし、アスモデウスの訓練みたいに鍛える事も可能だから。」(アイナ)


ここは修行するには最適な場所だから提供するには問題ない。


「冒険者になるのをあたいも推すな。ここなら武器や防具だってそこらじゃ手に入らない物が入るし……何よりこんな所に住めるなんて貴族でも無理だぞ。」(ネイ)


確かに固定化された武器や防具はみんなが実戦でその威力を試してくれた。それはお姉さん逹の道を開く事に繋がる筈だ。


「う~ん……凄い悩むけど、冒険者は確かに成功報酬は大きいけど命の保証がないからね。それにお姉さん達なら結婚って言う道もあるから、ミーナちゃんはここで商いかな。」(ミーナ)


冒険者は常に死と隣合わせだ。なら、ここで商いをするのが幸せに繋がるか…


「お姉さまと同じで私もここで商いを推しますわ。冒険者の戦闘をオークの集落で経験しましたけど、命のやり取りをする以上は甘くないから……」(セーラ)


凄い活躍だったと聞いてるよ。初戦しか経験してないセーラちゃんだからリスクを分かっている。


「すまんな…辛い事を言うが……この世界は弱肉強食だ!もし貴女達にあらがえる力があれば運命は違っていたかもしれない。それを考えれば力を付けるべきだ。だから、冒険者を推す。」(リディア)


気持ちを察してから言うなんてリディアちゃんも変わったな………モンスターでドリアードの族長の経験もあるから真理の事を誰よりも理解してる。


「どっちかを選んでもいいし、どっちも受けるのもいいんじゃないかな?ようは好きな選択をするって事ね♪どっちも選らばないなら国境で預けてさようならかな…」(アイシア)


俺を見ながら言っている………お姉さん逹にはドライに聞こえるかも知れないが、俺には遠回しに抱え込まなくてもいいんだよ!と言ってる気がする……あくまでも彼女達の自由意識と言うわけか。


「お兄ちゃんと私でパーティーを組んでガンガン経験値稼いでステータスを上げるのはどうかな?それかお兄ちゃんのにゃん鉱がまた出たら私の食の経験を込めてレベル上げてもいいし♪それからならお姉さんも冒険者だっけ?それになるのが楽になるんじゃない?」(クリス)


ぶはっ!!クリスちゃんRPGやった事ないよね?まさか、クリスちゃんの口から寄生上げを聞くとは思わなかった。しかもにゃん鉱の使い方が上手い!ここなら俺の料理で無理せず上げられる。


「クウヤよ!我は…」(アストラ)


「きゃっかなの!!」


皆まで言わなくとも分かります。女性問題はこれ以上困るので俺は問答無用で遮る。


「まだ何も言ってはいないではないか!我はだなクウヤに…」(アストラ)


父を黙らせる呪文を唱える。


「かになの♪」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


トラウマスイッチが入り恐怖におののく父をスルーして会議は続く。


「私達5人からお願いがあります!もし、お姉さん達を鍛えるのなら私達もお願いします!ルカちゃんもいずれ返事が出来るようになったらみんなで冒険者になりたいです!」(エーコ)


「この世の中に安全はないと理解しました!お願いします!」(シエナ)


「もう……奪われるのは嫌なんです!クウ様の元でなら頑張れます!」(リア)


「このネックレスがあれば私も強くなれると思います!」(ニア)


「一人じゃないから頑張れます!」(レア)


「・・・・・・・・・・・・・・・・・!」(ルカ)


五人の決意は固そうだ。奪われ続けて来た彼女逹だからその言葉は重く心を揺り動かされる。そして、俺を抱くルカちゃんも力が若干込もった気がする………意思は同じなわけだね。


「みんないけんありがとうなの。ぱーてぃーりーだーとしてここをしゅぎょうのばとあきないのばのにしゅるいをえらべるかたちにしてかいほうしたいとおもうの。もし、それいがいのせんたくしをきぼうならできるはんいでおうえんするの♪みんなどうかななの?」


返事の代わりにみんなは納得して頷いてくれる。


「あと、クリスちゃんのいけんをクウちゃんはとくにさいようしたいの。おともだちのルゥちゃんがたしかレベル25でかけだしといってたの。だから、そこまでれべりんぐするのもありなの♪」


技術的な事は残念ながら俺は無理だが鉱物創造を覚えた今ならクリスちゃんの案はまさにうってつけだ!


「ありがとうございます♪みんなで早速相談したいとおもいます!」(お姉さんA)


「できればきょうじゅうにへんじがほしいの。あすにはたぶんこっきょうをこえちゃうの。」


「わかりましたクウ様!」(お姉さんA)


この30分後にはエーコちゃん達5人とお姉さん達30人から冒険者として鍛えて欲しいと希望を俺に伝えに来たので早速ロジャーさんにお願いをして修行の開始の手筈となった。そして、国境に着くまでの期間は3パーティーの手の空いてる人達で指導にあたった。俺も少しでも手助けが出来ればと早速にゃん鉱を鉱物創造で生み出し、せっせと作れるだけ作っていた。因みににゃん鉱を一個作るのに俺の全MPを消費するので俺はネックレス作成以外は常に寝ている状態だった……急眠快復がなければ俺はこんなに量産出来なかっただろう。着ぐるみのおかげである。ネックレスは食の経験に究極の抱き心地の二つをメインにして量産した。これで日々過ごすだけでも強くなれるし、アイシアちゃんとセーラちゃんの治療の手助けになるからだ。俺は何度も何度も眠りにつきながらも祈り願いを込めて力を宿していった。











とうとうこの日がやって来た。国境に到着である。国境は石材を交互に重ね横にズラッと高くそびえ立ち、人の行き来を遮っていた。この圧倒的な建物が遥か先まで続いている。

どれだけの月日を掛けて作り上げたのだろうか。魔術のはびこる大陸とは言えこの関所には圧倒される。その関所だが二ヶ所門があり、ここから少し離れた所の右側の門が東の大陸に入国する門であり、俺達の前方に見えるの左側の門が北の大陸へと入国する門である。

ここで入国が許可されなければ俺は南の大陸に向かうしかなくなる。しかし、外に出ると吐く息が白くなるほど寒い。着ぐるみを着ていてこれなのだから、みんなはダウンコートやマント等着込まないと厳しい。そんなみんなを気遣い手早く済まそうと俺、アイナママ、リリヤさん、リズさん、アーキムさんの計五名で門の前に立っている10名の国境警備隊の人の所に進んだ。こちらに気がついた警備隊の面々はタマちゃんを見て驚いていた。そんな国境警備隊の人は俺達が近づくと腰に下げた武器に手を掛けてこちらに制止を掛ける。


「そこで止まれ!………これも仕事なので理解して頂こう……まずあれは何だ………テイムしたモンスターか?」(隊員A)


30歳位の隊員さんがいぶかしげな顔をしてタマちゃんを指差す。アーキムさんにリリヤさんとリズさんが俺達に前に出て任せてくれと手で合図する。


「や~♪ミゲルさん♪わしだよわし♪お疲れ様♪」(アーキム)


「アーキムのおっさん!何だ知り合いか?」(ミゲル)


全員と顔馴染みのアーキムさんは朗らかに挨拶をする。


「あっ!?リリヤさんにリズさんまで…」(隊員D)


他の隊員の中にも二人を知ってる人がいたみたいだ。


「お疲れさん♪安心して、あれはマジックアイテムの鉄の馬車よ♪」(リリヤ)


「すっごいんだから♪流石は魔術大陸のアイテムよ♪北にも欲しい位よ♪」(リズ)


二人は尻尾をふりふり振って感想を述べている。少し興奮しているのかな?


「私はアイナ、セイギフトでギルドマスターをやっていたわ……今は辞めてしがない旅人風情だけどね。それで…故あって馬車の中にいる者逹全員を北の大陸へと入国させて欲しいのだけれど……もう報告は来ているかしら?」(アイナ)


あの審議会で起きた証拠品窃盗事件は他国によるスパイ活動の一貫である。となれば他国が俺達を待ちわびて待っていた可能性がある。


「貴女様があのオールラウンダーのアイナ様ですか!お会い出来て光栄です♪おっしゃっる通りに丁重にもてなすよう、上から言われておりますが一応仕事ですので馬車の中身を拝見させて頂きます。」(隊員E)


警戒は幾分とられたが職務に忠実な隊員さんはまた顔を引き締める。


「分かったわ。あっ!先に言っておくけど………神話級のマジックアイテムだから腰を抜かさないでね………」(アイナ)


「それは無理じゃないかと……」(アーキム)


「信じられないよな……」(リリヤ)


「腰を抜かすに小銀貨一枚かけるわ………」(リズ)


賭けに成らないよ!あと、先に念をおさないとパニックになるもんね……


「わぁ~~この子へびのぬいぐるみを被ってる♪可愛い~~♪」


女性隊員さんもいたみたいで俺はアイナママに抱っこされていて気づかれなかったみたいだ。


「しゅるるる~なの♪ちかづくとたべちゃうぞなの~♪」


お姉さんの目があまりにもキラキラしてるのでついふざけてしまった。


「うわっ♪しゃっべった♪賢いのね♪坊やいくつでちゅか♪」(女性隊員)


「クウちゃんいっさいなの♪おねえさんよろしくなの♪」


手を伸ばすとお姉さんは小指を出すので優しく握って握手をする。もう、お姉さんはメロメロだ。


「めちゃくちゃ可愛い!!!!!!!抱っこさせてくれませんか♪」(女性隊員)


「ええ♪クウちゃんはい♪あっ!とりあえず中に入りましょ♪」(アイナ)


和やかな空気になった処でタマちゃんの中に案内する。


「うわぁ~~~♪ふわふわだぁ~♪」(女性隊員)


「お姉さん♪あたまぶつけないようにきをつけてなの♪」


「ふふふ♪ありがとう♪……………えっ!?」(女性隊員)


頭をぶつけないように屈みながら中に入った隊員10名はタマちゃんの中に拡がる光景を前にして絶句する。分かるよ。でも、現実なんてこんな物だよ♪


「絶句してる処、申し訳ないんだけど、みんな寒さには慣れてないから調べるなら中に入れたいんだけどいいかしら?」(アイナ)


「いや!?ちょっと待って下さい!!!この中を全て調べるとなると我々だけでは無理です。応援を呼んで何日か……いや、下手をすると一月以上はここに滞在してもらわないと!」(隊員J)


慌てふためく隊員は無茶な要求を突きつける。


「上から詳しい報告を聞いていないの貴方達?」(アイナ)


リーダーと思われる男が怪訝な顔をする。それに他の隊員も同様に見えない話に困惑する。


「どういう事でしょうか?………」(リーダー格の隊員)


「簡単な話よ。そのクウちゃんは近日中にこの大陸を出ないといけないのよ。私と仲間はその為に北の大陸へとついて行くんだけど、ここで足止めを喰らうのなら急いで南の大陸に向かわないと間に合わないわ。貴方達も上から言われた命令に仕事だから仕方がないのは分かるけど、こちらも譲れない事情があるから、だから、クウちゃん抜きではそちらに渡る事は絶対にないから今決断して。五分待つわ………その間に決めて…」(アイナ)


「いや!待ってくれ!こちらもだからってはいそうですか♪とはいかないんだ!」(リーダー格の隊員)


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(アイナ)


アイナママは表情を変えずただ黙って時を数える。リーダーの隊員も含め国境警備隊の面々は焦り始める。


「隊長!ここは通すべきです。その後で中をゆっくり調べればいいじゃないですか!」(女性隊員)


このお姉さんは状況を冷静に分析してる。その後で問題があれば出せばいいだけである。形としてはそれで一番丸く収まるのだが………


「馬鹿者が!!それで何か問題があれば俺の責任になるんだぞ!」(リーダー格の隊員)


あ~~~~こりゃダメだ………ノーリスクで仕事をしようとして失敗する奴だ……まあ、アイナママが相手では中に入れてから問題が起きても対処が出来ないとか、このまま追い返しても上から雷が落ちるから自分に都合のいい条件を提示してくるんだろうな………


「ここは国境付近ですぐに南の大陸の者が来るにしても時間が掛かります!それにアイナ様なら軽く力を振るえば腕の2~3本折る程度の手加減が出来ますでしょ?それに貴女は噂じゃ子供を産めないとか……だからその子を大事にしてるんでしょ?だったらここは大人しくこちらの…」(リーダー格の隊員)


なんてこと言いやがるんだ!この野郎が!自分の都合でアイナママに暴力を振れとか!!!!!!!!!!!!しかも!!!挙げ句の果てに言ってはならない禁句を!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!九条空夜が押さえきれずに表に出る。


「おい!!!!!!!それ以上…汚い口開くんじゃねぇよ!!!殺されたいのか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


魔眼を発動させてマナを周囲に撒き散らし手当たり次第に威圧する。おっさんも含めリリヤさんやリズさん、アーキムさんも圧倒されて声を失っている……ロジャーさんや従業員の皆さん腰やスカートの下に隠した武器を手に取り構える………


「ダメよクウちゃん………ママは大丈夫だから落ち着いて………ね♪」(アイナ)


お姉さんから俺を優しく掴み取ると男に向かって一言…


「交渉決裂ね。残念だわ…貴方も悪い人じゃないんでしょうけど相手をもっと見極めて言葉を選ぶべきだったわね………アーキムさん、リリヤさん、リズさん、残念だけどここでお別れだわ。一年後にはまた東の大陸に戻ってくる予定だから、もし機会があれば会いましょう♪道中の無事を祈るわ♪」


俺の震える体はアイナママがしっかりと支えてくれて守ってくれている。心の中で怒り狂う想いを俺は必死にアイナママの胸の中で押さえつけていた。この野郎!!!アイナママになんて事を!!!なんて事を!!!!許せない!!殺してやりたい!!!があああああああああああ!!!!!!!!!


「この馬鹿垂れが!!バッザム……貴様西に逃亡しないと危ないぞ……」(アーキム)


「なんて事をしてくれたのよ!!!生き神様に喧嘩を売るなんて!!この事が将来、北の大陸にとってどれだけの損失となるか分かっているの!!!」(リリヤ)


「それにこのクウちゃんは北の同胞を救い出したせいでこの大陸を追い出されるのよ!!!あんたは何をしたか分かっているの!これを北の人が聞いたらあんた無事にいられないよ!!」(リズ)


激昂する三人だが側で見ていたロジャーさんを初めて猫庭の楽園の面々はこちらに寄って武器を構えて警備隊に向ける。アスモデウスの連中も大小様々な武器を構えて威嚇する。


「我が主がここより退出する事をお望みであります。即刻たちゆかない場合は即!実力行使をさせて頂きます!!!!」(ロジャー)


続々と現れる面々に警備隊は全員出ていく。お姉さんは凄く悲しい顔をしてたが俺はそれすらも目には入らなかった。

こうして……本当に悲しいが俺達と白い牙と凍れる刃にアーキム一家の人達とお別れになった。俺は怒りのせいで目眩がして気絶してしまった。

なので起きた時にはあの優しかった人達がいなくて………ポロポロ泣いてしまった…………ちゃんとお別れが言いたかった……こんな別れはないよ……ここ数日の思い出が甦る……短い時間だったけど凄く濃密だった……また会いたい………思えば思うほど涙が溢れた…………









さて、この大陸に入られるのも数えたら後3日。そして、急いで南の大陸の国境まで着いたとしてもまた同じような騒ぎが起こるかもしれない。ならばと考えた父から提案が出る。


「みんな…ごめんなさいなの………クウちゃんのせいで……」


落ち込む俺……耳や尻尾はへなへなと垂れ下がり、笑顔が作れない。


「気にするなクウヤよ。それについてはみんな納得しただろう…忘れるんだ。これからの事だが我のいた森に行こうではないか!ついでにあの森に国でも作るか♪」(アストラ)


明るく振る舞ってくれる父。俺を抱きしめ温もりを伝えてくれる。


「そうですわね♪クウちゃんのあんな顔は二度と見たくありませんし、あそこは事実上お義父様の土地ですものね♪」(アイナ)


「あんた達はどうする?あの死の森へと行くことになったけどついて来るか?」(ネイ)


「クウ様のお父様があの龍様だったのは驚きましたけど私達は何処までも着いて行きます!」(お姉さんH)


「私も着いていくわ!」(お姉さんX)


「それにアストラさんが居れば安心です!」(お姉さんM)


口々に同意するお姉さん達。問題無さそうである。


「決定ね!まあ、ハードな森での生活もたった一年だけだし貴重な体験だわ♪」(ミーナ)


「瘴気が心配ですけどアストラさんが大丈夫と仰ってくれているからセーラも安心ですわ♪」(セーラ)


「クウ様の故郷です!リディアは楽しみな位です!」(リディア)


「凄いモンスターの宝庫だから素材が楽しみです!アーロンさんに教えて頂いた技と心をしっかりと打ちます!」(アイシア)


「強いモンスターが一杯ならクリスはお兄ちゃんの為に食べまくるよ♪」(クリス)


「冒険者になるんですもの!どこにだっていきますよ!」(エーコ)


「うんうん!クウちゃん元気出して!里帰りするんだから♪」(シエナ)


「あんな失礼なおじさんなんて忘れよう♪クウちゃん♪」(リア)


「「そうよ!そうよ!」」(ニア・レア)


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・♪」(ルカ)


「では進路を南西に向けて出発します♪何かございましたら直ぐにご報告に上がります♪」(ウキョウ)


みんな…俺を励ます為に笑顔でいてくれる。故郷と言えど死の森にこれから向かうんだ。怖くない筈がない。それでも気遣ってくれる…ありがとう…


「おねがいなのウキョウさん。」


「畏まりましたクウ様♪」(ウキョウ)


「では外で冷えられた事でしょう。お部屋にお茶を用意してありますのでどうぞお召し上がりぐださいませ♪」(ロジャー)


ルカちゃんの腕の中でユラユラ揺られる俺。今は何をしても気が落ち込む……アイナママだけじゃないんだな……恐らく他のみんなでも俺はキレたんだろうな…

俺は力の制御をしっかりと身に付けなければ…毎回ああやってキレていたのではやっていけなくなる。

時には我慢だって必要なんだから……ぼっちの俺には分からなかった。こんなにも自分の事よりも大事な人に悪意が向けられる事の方が辛く感じるなんて………俺はそういった意味でも中身と外見の精神年齢は変わらないんではないか。

この人達を守り抜くには俺自身強くなろう………いつまでも凹んでいてはダメだ……元気だせ………美味しいものを………心に栄養がほしい………………………………ポカっ♪…………………?


「ルカちゃん!?」(アイナ)


「何やってるのルカちゃん!!!!!!」(エーコ)


「えーーーーー!ちょ!!一体どうしたの!ルカちゃん!!」(シエナ)


「「「ルカちゃんがクウちゃんにチョップしてる!!!!」」」(リア・ニア・レア)


見事に俺のオデコに指先をピンと伸ばした手刀でチョップを決めるルカちゃん。余りにも突然の事でビックリした。知らないうちに何かしたか?いや、大人しく抱かれていただけだと思うけど………目を白黒させて俺はルカちゃんを見つめる。


「ま……………………………………………………………け……………………………………………………………………………る…………………………………………な…」(ルカ)


意思の感じられぬ光を放たぬ瞳、氷ついたまま時を止めた表情、絶望に壊された感情を表さぬ心、余りにも細く小さな体、だが、心の籠った四文字を振り絞って俺に放つ………


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


ま……け……る……な………負けるな?……そう言ったの!?……初めて聞く声……心を砕かれたその中で俺を励ましてくれたの?………………………………………………………………俺は甘ったれだ!!

この身も心も五体満足じゃないか!!ここに自分より過酷な運命にさらされ壊れた少女が俺を深淵の底から激励してくれる……何やってるんだ俺!!しっかりしろよ!!こんな子に心配されて恥ずかしくないのかよ!!

一度や二度の失敗がなんだ!!父も失敗から学ばない奴はダメだと言ってただろう!!思いっきり殴られたような衝撃が俺の中を駆け巡る。


「今………しゃっべったよね?ルカちゃん!?分かる?エーコだよ!ルカちゃん!!うっ………うぅ……」(エーコ)


エーコちゃんはルカちゃんに近寄り、その肩に手を置いて正面のルカちゃんの顔を見据える。だが、ルカちゃんはなんの反応もしめさない。その事に涙が溢れる。


「確かにしゃっべったよ♪クウ様のネックレスと抱いてるおかげで少しずつ!!」(シエナ)


フラフラになり倒れそうになるエーコをちゃんを支えてあげるシエナちゃん。エーコちゃんと違い彼女は希望の兆しを喜び親友を励ます。


「分かる?ルカちゃん?今は声が届かなくてもいつか!」(リア)


祈るように腕を組みなからルカちゃんに問いかける。いつか届くと信じて…


「クウ様の奇跡がルカちゃんに届いたんだ!」(ニア)


何度も目にする奇跡にニアちゃんは確信してた。近いうちにルカちゃんは戻ってくると…


「エーコちゃん!ほらっ!元気出して!ルカちゃんいつか昔みたいに戻れるよ♪」(レア)


悲しんでいる場合じゃないとここにもシエナちゃんと一緒に支える親友がまた…


「ありがとうなの!!めがさめたの……クウちゃんなさけないの……だけど!!!もうだいじょぶなの♪ルカちゃんのちょっぷでげんき100ばいなの!!こうなったらしのもりでたのしくいちねんをすごしちゃうの!みんなついてきてなの!!」


目の前の少女は何の反応も示さない……だけど俺には届いた!この借りは物凄くでかい!奇跡と言っていい位だ!


「立ち直ったようだなクウヤ♪それでいい♪帰るか!な~に……これだけ多くの友がいるんだ♪二人だけの頃より賑やかで楽しくなるぞ♪」(アストラ)


「なの♪おうちにかえるの!ウキョウさん!!ぜんそくぜんしんなの♪」


「了解しました♪明日までに着いてみせましょう♪」(ウキョウ)


「クウちゃんはこうでないとね♪」(アイナ)


じっと見守っていたアイナママにも安堵の表情が戻る。


「あははは♪ルカ♪あんたも立派なうちらと同じ同士だよ♪」(ネイ)


こんな風に笑いながら言ってはいるが心の底からルカと言う一人の少女を尊敬していた。垣間見せた奇跡はネイちゃんは生涯忘れる事はないだろうと感じていた。


「ナイスよルカちゃん♪もっと元気になったら妹弟子にしてあげるわ♪」(ミーナ)


冗談ではなく本気である。あのガッツはアイナママの修行についてこれると確信してた。


「歓迎いたしますわ♪待ち遠しいですねルカさん♪」(セーラ)


病に苦しむ経験を持つセーラちゃんにとってルカちゃんは過去に写る自分と重なる時があった。だからこそ、快復が待ち遠しく、いつか語り合える友になりたいと願っていた。


「感謝するルカ殿♪この恩を我は忘れぬ!」(リディア)


主が受けたものは形には残らず見えぬものだが、この奇跡は更なる成長へと主を引き上げてくれるとリディアちゃんは確信してた。また、人と言う種の良い一面をまた見れた事に彼女の胸は踊っていた。


「うわぁ~ルカちゃんは元気になったら強力な味方になりそうね♪一緒にクウちゃん落としにがんばろ♪」(アイシア)


セーラちゃんと同じくアイシアちゃんにとってルカちゃんとは特別な存在である。この小さな体のどこにあれだけの事を起こせる力が眠っているか………それはアイシアちゃんには分かっていた。だからこその共闘宣言である。


「奇跡だわ!私達は諦めないわ!貴女も頑張っているのね……共に頑張りましょう♪」(お姉さんA)


お姉さん達もルカちゃんの姿から受けとるものを感じとり力を宿す。そして、奇跡の対価を払う為にも俺は気合いを入れ直し故郷へ帰郷した。

ふつおたコーナー(MC:たまご丼)


ペンネーム「少し快復したルカ」さんより頂きました


Q:……ま……………………け……………………………………る…………………………………な………


A:………………む…………………………り………………………で……………………………す…………………


ル:ポカッ♪………ポカッ♪………ポカッ♪………ポカッ♪………ポカッ♪………


ク:はぅ!もうきあいはいったからだいじょうぶなのルカちゃん!たすけてなの!



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