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しゅくてきなの

それはいつの頃から感じたんだろう……自分は周りの人とは違う。そう…父が…母が…兄が…私を邪険にした………妹だけが私のかけがえのない理解者だった……私はこの家では入らない子みたいだ……食べる物もろくに与えられず日の当たらぬ地下へと閉じ込められた……だが……そんな日々もある日突然終わった。私を虐げてきた全てを怪物が壊してくれた……嬉しかった!ただひたすらに声を上げ笑った!だが……愛しい妹が怪物に蹂躙された事だけは我慢が出来なかった……私は怪物を食らった……そこで私は知ったのだ……何故…父が…母が…兄が…私を邪険にし遠ざけたかを……私は人ではなかった……では怪物?………怪物でもない……では一体何なのだ……怪物の手足を生やし……愛する妹の顔をする私はだ~れ~?








中央の建物に入ると一人の女が佇んでいた……俺が索敵で捉えた奴だ!間違いない。歳は20台半ば位で紫色の髪を右側だけテールをし左側はそのままストレートで腰までおろしている。


「あの子が例の奴かしら……」(アイナ)


リリヤさんに尋ねるように聞くアイナママ。


「ええ、間違いありません……見た目に騙されないで下さい!何をしてくるか分かりませんので………」(リリヤ)


魔法陣の中央にいる女は俺達を完全に無視してなにやらぶつぶつ呟いてる。ふと、女がこちらを向き俺と視線が合わさる。


「……………………あら?あなた変ね………あたしと同じ?」(女)


いきなり訳の分からない事を問われたが無視してこちらが質問する。


「おねえさん!わるいことはやめるの!りゆうがあるならきくからちゃんとわかるようにいうの!」


独特の空気を纏っている女に対して正直、俺は戸惑っていた。もっと狂気にはらんでいて問答無用に襲い掛かって来ると予想してたのだが…


「う~~ん……同じ感じがするんだけど、ちょっとでいいから触らせて……」(女)


女がゆっくりと一歩を踏み出すが全身が固まったように急に歩みを止める。


「そこから動かないでもらおうかしら………まあ、動けないでしょうけど…」(アイナ)


影縫い、それは武技の1つで相手の影を固定させ動きを封じる技であった。女の表情が変わる。だがそれは嫌悪感を表すのではなく、驚きと……そう、不思議なものを体験した喜びを表に出した表情だった。


「へえ~♪不思議な事をするのね♪こうすれば……いや?こうかな?」(女)


隙だらけになった女は慌てる様子もなく何かを試し影縫いから脱しようとしている。その間に俺達は目の前の女をどうするか相談するのだった。


「アイナ様このままやってしまいましょう……この女壊れています……」(リリヤ)


「待って……私達を襲った理由を一応聞いておきましょう!それにこの魔法陣の事も聞かないと…」(ユリアナ)


「あの者の目……あれはまともに受け答え出来る者でしょうか…」(クリアーナ)


三人の冒険者は目に宿る光や色で瞬時に女から様々な事を探り出す。その結果が壊れていると言う共通の認識だった。つまり、問い掛けた処で余りの情報は引き出せない上に奥の手を幾つも隠している。その為に相手は余裕の態度を示している。そんな答えに自然と辿り着く三人は内心焦っていた。


「おねえさんしつもんにこたえるの!なんでひとをおそったの?りゆうをいうの!」


出鼻を挫かれた気がしてたせいもあり、少々詰問気味な強い口調で俺は女に問い正す。


「動かないなら捨てちゃえ♪」(女)


影縫いしてある両足をまるで合体ロボットのパーツ分離のように切り離し股から上の上半身が床へと前倒れする。そして、女は体の脇や横腹から蜘蛛のような足を数本生やしのこちらにゆっくりと向かってくる。


「うげっ!…なの……おねえさんがくもさんになっちゃったの……」


もちろん俺を含めみんな嫌悪感丸出しである。置き去りにされた足と女を結ぶ間にあった出血はこちらに向かうほどに少なくなり、今ではほぼ止まっていて痛がっているようにも見えない……いくら異世界とは言えこんな摩訶不思議な生き物がいるものなんだろうか……脇から生やした足も偽物ではないだろうし……一体…


「キメラ!?……人の形をベースにしてるけど……アースリストレイント!……」(アイナ)


床から土が盛り上がり女の首以外の全てを包み込み拘束する。だが、俺達は警戒を解かない。


「錬金術で生み出した子って訳ですか……」(クリアーナ)


「何にせよ人で無いのなら話を聞くのは無用ですね。首をはねちゃいましょう。」(ユリアナ)


リリヤさんが剣を構え近づく。そして…


「覚悟!!せいっ!…………ん!?」(リリヤ)


その刃が届く前にポロッと首が床に落ちて空振る。


「ペッ♪ハッズレ~~♪ね~そこの子♪ちょっとでいいから触らせて♪お願い♪」(女)


ひぃぃ!?怖いよ!!首からピンク色のニュルニュルした触手を生やし、どこの火星人ですか?と言わんばかりにこちらに近づく女。俺は爪先から耳の先まで悪寒が走り震えた。あかん!!逃げなくては!!本能が警告を出す!?あれ?なんだこれ………命の危険の警告じゃない………これは……


「クウちゃん!!……なっ!?影縫い!?」(アイナ)


「動けない!?……」(リリヤ)


「いつの間に!?……」(ユリアナ)


「一度見ただけで覚えたの!?……」(クリアーナ)


四人の影に針状の物が突き刺さっている。あれは髪の毛?そんな事に気を取られてる隙に女のニュルニュルが俺を捉える!油断してしまった!?咄嗟に引きちぎろうとしたが……


「きゃはははは♪だめなの!!くすぐっ♪いゃん♪あっ!あっ!だめなの~~~!!!」


着ぐるみの隙間からニュルニュルな触手を潜り込ませて俺の体をまさぐりまくる。その未知の愛撫に俺は悶える……って何なのこれ!!


「あっ!?やっぱりメイなのね!!!やっと見つけたよメイ♪うっ………もうどこにも行かないでメイ♪うぅ……グスン♪」(女)


女は俺を引き寄せると俺に触手を更に絡ませてニュルニュルをする。


「らめぇ~なの!おねえさんまつの!!あっ♪しっぽはクウちゃんんんん♪♪♪はぁ~はぁ~♪」


もう殺伐としてた空気は完全に失せていたがアイナママ達は別の意味で怒り必死だった。


「ちょっと!!!クウちゃんに何セクハラしてるのよ!!!!後…少しで!!!クウちゃんそれまで耐えて!!!」(アイナ)


激怒で影縫いから脱出しようとするアイナママ。


「うわぁ~♪………はっ!?クウちゃん待ってね今すぐにっ!」(リリヤ)


「なんなんのよ!!このエッチなキメラは!!!」(ユリアナ)


「クウちゃんいい♪ジュルリ♪……あっ!?いけない……反省……でも…いい♪」(クリアーナ)


全員身動きを封じられて絶対絶命のピンチの筈が今や何時もの常時運転な空気である……


「今はクウちゃんって言うのね♪忘れているみたいだから自己紹介するね♪私はクリス♪クウちゃんの元お姉ちゃんよ♪ん~♪ふわふわでヌクヌクだよ~♪メイに……違った。クウちゃんにまた会えて良かった♪………うん♪……うん♪」(クリス)


ポロポロと涙を溢す女に俺は警戒を解いた。何か勘違いしてるみたいだが、対話が出来るかも知れない。それにその妹の再会の為に流せる涙があるなら俺はもうこのクリスと言う女を狩りたくはない………………だから!この攻撃をやめてぇぇぇ!


「おねがいなの!!このニュルニュルはなしてなの!はぁ~はぁ~♪なの!?」


体中をまさぐる未知の刺激が俺を容赦無く攻め立て、俺は虫の息状態である。にも関わらず女の追撃は容赦なかった。


「あれ!?メイって今度は男の子に生まれ変わったんだ♪つんつん♪ぷにぷに♪むにむに♪」(クリス)


「そこはつんつんしちゃめっ!なの!!!あっ♪……ちっちっちがうの!!!みんな!おみみをふさっ!あうっ♪ん~~~♪」


変な喘ぎ声と桃色な吐息をみんなに聞かれて俺は羞恥心全開で急いで口を塞ぐが声は駄々漏れである。今みんながどんな顔してるか見れない。


「こっ!こっ!このピー♪キメラがぁぁぁ!!!!!!」(アイナ)


やっと影縫いから脱出した怒り狂ったアイナママが手刀をクルスに向け放つが俺の背中に隠れてかわす。


「はっ!!!!!!ママ!!ママ!すとっぷ!アイナママすとっぷなの!!!!じたいがかわったの!すとっぷなの!!!!」


俺の背中に隠れるこのクリスと言うキメラは何か事情がありそうだ。イリーナさんを怪我させた経緯はあるが俺の直感は戦いを否定していた。


「クウちゃんがセクハラ受けてるのをママに耐えろと!?卑怯な手でクウちゃんを!!!この痴女がぁぁぁぁ!!!」(アイナ)


怒髪天の如く怒りに狂った鬼が目の前に…怖いよアイナママ。俺が仲裁に入らないと血の雨が降るのは確実だ…だから…


「クリスちゃん♪おねがいだからにゅるにゅるとみんなをじゆうにさせてあげてなの♪いいこ~いいこ~なの♪」


頭を優しく撫でてあげてると更にポロポロと涙が溢れるので優しく拭ってあげる。


「もうどこにも行かない?近くにいていい?」(クリス)


正体不明だが野に放つより俺の目の届く所に置いて置く方がいいだろう。


「クウちゃんのちかくにいたいのならいっしょにくるの♪ただし!クウちゃんがおにいちゃんなの!クリスちゃんはクウちゃんのいもうとになるの♪それでいいならクウちゃんはかまわないの♪」


ぼっちだったから分かるんだ。この子はずっと一人だったんだと思う。同類だったからこそ分かるものがある。ひょっとしたらクリスちゃんが俺を見た時に感じたのはそれかな?なんにせよ、俺はこの子を保護する事に決めた。


「ちょ!?クウちゃん!!」(アイナ)


「そいつは危険よ!!!」(リリヤ)


「止めた方がいいわクウちゃん!!!」(ユリアナ)


「いつ寝返るか分からないわよ!!!」(クリアーナ)


みんな全否定でこの決定に異を唱える。だが、俺の決意は変わらない。あっ…リリヤさん…違った意味合いでなら認めます…いい加減ニュルニュル外してくれないかな…


「クリスはクウちゃんの妹になる♪お兄ちゃん~♪ゴロゴロ~♪」(クリス)


「いいこ~いいこ~なの♪というわけなの。クウちゃんがせきにんもってめんどうみるの!」


凄く納得いかない顔をする面々だが承知してくれた。処で俺に巻き付いているニュルニュルは本当に離してくれないのね……仕方がないからとりあえずこのまま帰るか……その後やって来た父が魔法陣を食べて体内で爆発させて処理も完了し、オークの素材回収作業と囚われていた人達の解放を行った。












オーク達の亡骸は全てリュックに仕舞い込み、ロジャーさんにお願いして解体してもらうことにした。囚われていたお姉さん達はこの空間を見て呆けているが説明は後回しにして今はお風呂に行ってもらつている。これで万事オッケーとはいかないのが人生である………


「クウ……なんだそれ?……あたいは聞くまで動かないぞ!」(ネイ)


「………説明してくれるよねクウちゃん!」(ミーナ)


「………私も聞きたいかなクウちゃん!」(セーラ)


「また妙ちくりんなものを……クウ様………」(リディア)


「うげ………首から触手が……あっ!?どこに突っ込んでるのよ!!!!!!」(アイシア)


他にも白い狼と凍れる刃の面々も憤然としている。仕方ないよね、イリーナさんの一件があったし…


「お兄ちゃん怖いよ……みんな睨む……」(クリス)


「みんなそんなかおしないでほしいの……クリスちゃんはきょうからクウちゃんのいもうとになったの。もう、きけんなことはさせないからゆるしてほしいの。」


背中に隠れる妹を守るが如く俺はみんなの前で土下座をして許しを乞う。危険と思われイリーナさんに重傷を一度は負わせた子を迎え入れたいと言うのだからこれ位して当然だ。


「クウちゃんがそこまでする事ないよ!そいつは人を襲うモンスターだぞ!」(イリーナ)


イリーナさんはバトルアックスを両手に構えたまま俺に警告する。彼女がこの中では一番危険性を承知してるからだ。


「違うもん!!いきなり襲い掛かって来たのはそっちじゃない!!」(クリス)


ぷんぷん怒りながら触手を回して抗議するクリスちゃん。嘘を言ってる風にはとても見えない。話が食い違っている?確認せねば………


「どういうことなの?」


「オークに襲われているから助けてあげようと怖がらせないように笑顔で近づいたんだよ!そしたら!この人がいきなり斬り掛かって来たの!それから私も戦いに巻き込まれて傷ついたんだから!それにこの人が凄い形相で私に一撃を入れたから正当防衛よ!その後にオークさんに連れられて逃げたから無事だったけど痛かったんだからね!」(クリス)


「ふざけんな!!あのオーク共と戦ってる最中に不気味な笑い声をあげて近づいてくれば応戦するに決まってるだろ!!」(イリーナ)


絵が浮かぶな~………クリスちゃんがこの場合やっぱり悪いと思うが話を纏める為に上手く話を持っていかねば…


「じゃあ、オークの砦の魔法陣は何?」(アイナ)


「知らない。私がオークに神だとか言われてあそこに案内された時には既にあったよ。」


淡々と語るクリスちゃんは俺に刷りよってもふもふを堪能している。嘘とかつきそうには見えない。


「このキメラにあれを描ける知識が有るとは思えないわ……何か別の物があった所をオークが砦にしてしまったのかも…」(クリアーナ)


「何にせよ物騒なこった…国境に着き次第すぐに報告だけはしとくか。」(ネイ)


「そうね、その時は私が出て説明するわ……………………処でいい加減離れなさいよ!!!」(アイナ)


「ん~♪嫌♪お兄ちゃんもふもふなんだもん♪」(クリス)


「クリスちゃん!にゅるにゅるだけはおようふくからだしてなの!」


これだけは本当に勘弁なのだ。ずっと我慢しているが変な声が漏れそうになる時があり、結構必死だったりする。


「え~~……」(クリス)


「え~じゃないの!クウちゃんぷんすこなの!」


「じゃあ♪服の上ならいい?」(クリス)


「それならいいの♪」


ほっ♪やっと俺の服の中で動いていたニュルニュルに解放されたがみんなを宥めるのに苦労しそうだ……


「あなたも今日から猫ちゃまふぁみりーの一員なんだからクウちゃんの言う事にはちゃんと聞くのよ!」(アイナ)


目が笑ってないけどとりあえずまとめてくれた。一応俺からもクリスちゃんにはみんなとケンカしないようにする事と仲良くするようにとちゃんと伝えた。それに対して素直な態度でイリーナさんに謝罪し、アイナママ達にも触手を差し出してしっかりと挨拶をしていた。子供っぽい処があるがどうやら一般常識や知性は大人のそれと代わりないようだ。何はともあれ無事に解決出来て良かった。さて、俺も汗をかいたしお風呂に入るか!


「ロジャーさん♪おふろにはいりたいからあんないしてほしいの♪」


「あれ!?クウ様は皆様と入られるのではないのですか?」(ロジャー)


・・・・・・・・・・・ん?


「それはじたくにいるばあいなの。ほてるのおふろはだんじょいっしょなの?」


「いえ、別で御座いますが……そのクウ様はあまり関係ないかと♪」(ロジャー)


関係大ありだよ!!ダメでしょ!仮にもここの統括責任者のロジャーさんがそんな事言ったら!


「ちょ!!クウちゃんしんしなの!!」


「クウちゃんにお礼してあげたいんだけど手持ちが今ね余りないからお風呂でサービスしてあげようってみんなで決めたのよ♪ねっ♪アイナ様♪」(リリヤ)


「ええ♪クウちゃんには色々と耐性をつけてもらわないと先に進めないので猫ちゃま同盟で決定しました!」(アイナ)


総勢23人と混浴!!!!!逃げなくては!いくらなんでも耐えられるわけがない!そう思い逃げようとするがクリスちゃんが触手で俺をぐるぐる巻きにして逃がさない……無理に逃げようとしたら襟元で待機してる触手がまた服の中に…


「クリスも一緒に入りた~~い♪」(クリス)


「裸の付き合いでクリスとも親睦を深めましょ♪処で体は元に戻らないの?」(アイナ)


それは俺も思ってた。ずっとこのまま火星人?状態なのかと。


「ご飯食べればその分戻せるよ♪」(クリス)


「じゃあ、お風呂に入った後にご飯にしましょ♪」(アイナ)


「はぁ~い♪」(クリス)


いかん!クリスちゃんはアイナママに取り込まれている!アイナママも手段を変えてコントロールするつもりだ……


「クリスちゃんおねがいなの!クウちゃんこのままじゃはずかしいめにあうの!」


「やだな~お兄ちゃんは元女の子じゃない♪いくら男の子に生まれ変わったからって恥ずかしがる事ないのに♪」(クリス)


そういう設定なの!?いやいや!そんなことはどうでもいい!


「いまはおとこのこなの!クリスちゃんあっ!?どこにいどうしてるの!?」


上手く四本の触手を使い足にするとみんなとお風呂場に移動するのである。


「おとうさん!ロジャーさん!アーロンさん!アーキムさん!しつじのみんなへるぷみ~なの!」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「いってらっしゃ~い♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


「はくじょうもの~!!」


ドナドナを心に流しながら売られて行く俺だった………












にゃんこの石像からお湯がドバドバと流れ床は透明なクリスタルで出来ているのかまるで雲の上にいるかの様な……天空露天風呂と言えばいいのか、神秘的で美しい大浴場だった。お風呂もたくさん種類があり、打たせ湯、ジェットバス、花風呂、薬湯、ごえもん風呂等々たくさん種類があった。


「クウちゃん可愛い~♪ちっちゃいおててにあんよ♪いや~♪」(リリヤ)


俺は順番で抱っこされている。みんなもちろん裸だ。俺は羞恥心で丸まり震えていた。そう……予想外だったのが解放されたお姉さん達もお風呂に入っていて俺にお礼がしたいと涙ながらに言われ俺は逃げ道を完全に塞がれた。その上にメイドさん達もお風呂場の使い方や身の回りのお世話をする為に一緒にいた。総勢83名の女性のいる中に俺がちょこんといる。以前の俺なら即死レベルの環境だが、悲しい事に耐性が付きつつある俺のブレーカーさんは落ちる事を許してはくれなかった。


「まあ!?貴女達はあの村の………あなた達の村には私達も何度か足を運んだ事があるのよ………………そう…あの優しい村長さんや村のみんなが………グスッ♪…………大変だったわね…………」(お姉さんA)


「ありがとうございます………家族も殺されて帰る家も無くなってしまいましたが、クウ様のおかげで温かくて美味しすぎる食事にこのような夢の空間で過ごさせてもらって今は幸せです♪」(エーコ)


こちらに笑顔を向けたので俺も微笑み返す。ここ最近は徐々にだがエーコちゃんにも笑顔を多く見られるようになった。この子にもいつか家庭が出来るその時までずっと笑顔でいて欲しいと願う。


「クウちゃんはできることしかしてないの。はぅ!リリヤおねえさんおむねあたっちゃうの!!」


「当ててるの~♪この反応が堪らん♪」(リリヤ)


「はわわわ!はしたないからめっ!なの!!むぅ~!!」


全くもう!ここにも俺の反応を弄ぶ悪い大人がいる!


「クウ様は何でも生き神様だとか、我ら一堂この通り感謝しております♪」(お姉さんA)


総勢30名のお姉さん達は湯船から立ち上がりお辞儀する。その立ち位置は俺から凄いアングルで見える!


「すわってなの!!!!クウちゃんしんしなの!!!」


「クウはあいかわらずだな♪そろそろなれてもいいんじゃないか♪」(ネイ)


「そうよクウちゃん♪男の夢じゃない!まさにハーレム♪」(ミーナ)


「クウちゃんはそういうのにあこがれてはないの!」


正直言うと嘘ですが堂々と言えるほど俺の神経は図太くない。それに俺は女性の持つ温もりが何より好きでそっちの方にあまり持っていきたくないのだ。人によってはそれは異常と感じるかも知れないが俺はそうなのだから仕方がない。


「でも、クウちゃんは慣れてくれないと困りますわ♪」(セーラ)


「クウ様!大きくなられましょう!」(リディア)


「私の分を分けて上げられたらいいのに……」(アイシア)


「はふぅ~~お風呂っ最高~♪」(クリス)


クラゲのように浮かび湯悦の表情で湯を楽しんでるクリスちゃん。見事にクラゲだ!


「あたしはこんなのに…………」(イリーナ)


「気にしちゃダメよイリーナ……」(ユリアナ)


「そろそろ私にも抱っこさせてくれリリヤ♪」(リズ)


「ああ~ごめんリズ♪」(リリヤ)


「あはっ♪いらっしゃいクウちゃん♪ふわふわだ♪」(リズ)


湯船の中、ゆっくりと俺を受けとるリズさんは胸の谷間に俺の顔を優しく包み込む。もうメロメロなのが良く分かる。俺も耐性が付いたから堕ちないが正直とても柔らかくて温くて心地よい。もちろん恥ずかしいけどね。


「しっぽはにぎにぎしないでねなの。」


良く尻尾を注意する俺だが、軽くでも握られると背中に人差し指を軽くあてられ、スーっとなぞられるような感覚の10倍位のものが全身に駆け巡るのだ。だから、毎回注意をする。


「分かったわ♪そんなに真っ赤にならないで♪あ~んもう可愛い♪」(リズ)


「むりなの。このじょうきょうでれいせいでいられたらクウちゃんはへんたいさんなの!」


「あははは♪確かにもし逆の立場ならみんなそうかもね♪」(マリエ)


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「あはははは♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


「ねぇ~~~~~クウちゃ~~~~~~~~~ん♪」(アルビナ)


かなり芝居掛かった艶めかしい声を出し、みんなに笑われるアルビナさん。


「あははは♪気持ち悪いわよアルビナ♪なんなのその声♪」(ダリア)


「やっぱダメ?いやね♪クウちゃんにまた大人バージョンになってほしくて♪」(アルビナ)


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ゴクリ♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


おい!………解放されたお姉さん達以外の連中固唾を飲んだろ!!!


「めっ!なの!!!きのうはみんなたおれてかいほうがたいへんだったの!それにおふろばでえっちなことはめっ!なの。」


「あれれ~♪クウちゃんってそういうこともう知ってるんだ♪」(カティア)


ニヤリ♪と意地悪な笑顔をこちらに向けてからかうなんて!もう!!!


「ぐはっ!しっしらないの!!ブクブクブク♪」


お湯に顔を半分埋めて誤魔化す。


「お礼にそっちのアレでもいいんだよ♪クウちゃんなら私はいいかも♪」(ディナラ)


「ストップよ!!予約があるから先にうちの子達の後よ!それはお義父様公認だから♪」(アイナ)


父ーーーーーーーー!何のマネージメントしてるんですか!!孫の顔が見たいの分かりますがプレシャーを余り掛けないで下さい!


「おとうさんなにみつやくしてるの!!!もう!!!」


「クウ様大人になって♪」(ニア)


キラキラな瞳で祈るようにお願いをする。だが断る!


「そんなじゅんすいなめをしてもめっ!なの。」


「はっ!?別にパーティーに入らなくてもクウちゃんと子供作ればいいんだ!私ってば天才♪がるるるる~♪クウちゃ~~ん♪」(イリーナ)


あの食欲を目の当たりにしてる俺には冗談に聞こえない…俺を見る目が食欲のそれとは違う目で俺を見つめる。


「ちょ!?イリーナおねえさんはしたないこといっちゃめっ!なの!」


「なら私達でどうか練習なさって下さい♪このようなオークに汚された身ですが御恩に報いるのなら構いません。ねっみんな♪」(お姉さんB)


「ええ!クウ様って可愛いですし、大人になれるのなら構いませんわ♪」(お姉さんC)


「私はあまり胸がないけど構わないですか?」(お姉さんQ)


「あたしなんて幼児体型ですけど猫人様だから大丈夫かな?」(お姉さんK)


会話を聞いて俺が大人になれると理解したお姉さん達は自身の体を差し出そうとする。だが、俺は制止をかける!


「みなさんはとてもみりょくあるじょせいですの!!でもクウちゃんはそういうことをきたいしてたすけたわけじゃないの。だから、きもちだけうけとっておくの。」


この後も似たようなやり取りを幾度と繰り返し必死に抵抗する俺の反応をみんなは楽しんでいたように思えた。神様といっても本当の願いを叶え出来る事など出来ないのだ……ならせめて!今この時はこの笑顔を守ろうと思うのであった。














昨日の回転寿司は好評だった。今日はどうしよう………そういえば用意してもらったお夕飯がてづかずだったよな?………なら今日は止めとくか?…………いや!クリスちゃんを妹として迎え入れたし……お姉さん達を解放したんだし何かしてあげたい………料理………俺が作ってないもの………デザート?……!!そうじゃん!料理の〆にデザートが俺の料理には無いな………だけど、俺はゼリーやプリンやケーキですら作った事がない。前世で一度はやっておくんだった……今ならスキルのおかげで作れるだろうがぶっつけ本番でそれらのデザートは危険過ぎるし俺の納得いくものが出来るとは思えない……ならフルーツをカットしたものなら俺でもいけるのでは?……確かロジャーさんが言うにはここ猫庭の楽園で植物と菌に関してはリディアちゃんのスキルで畑等を作る事が出来ると言ってたな………良し!決まりだ!〆に出すデザートに何かフルーツを出そう!………とりあえずロジャーさんを呼ぼう。部屋に置いてある呼鈴を鳴らしロジャーさんを呼ぶ。


「お待たせしました…………♪そのお顔は何か思い付かれましたね♪」(ロジャー)


「ふふふなの♪」


俺はロジャーさんの耳元に口をもっていき内緒話をする。その光景が可笑しいのかみんなはクスクスと笑い場が和む。


「『おゆうはんのしめにだすでざーとのくだものをつくりたいの♪だから、どこかにはたけをつくりたいからあんないしてほしいの♪』」


ニッコリと微笑み返すロジャーさんは俺を優しく抱っこすると部屋から連れ出した。


「いつもこんな感じなんですか?」(お姉さんF)


解放されたお姉さんの一人がクスクスと笑いながらアイナママ達に尋ねる。


「そうなのよ♪みんなを驚かせたいからああやって張り切っちゃうのよね♪クウちゃんらしいと言えばらしいんだけど♪」(アイナ)


「本当に愛らしくてそばにいるだけで安らぎますわ♪」(お姉さんM)


「まあ♪うちのパーティーリーダーだからな♪」(ネイ)


「まあ!?そうなんですの?」(お姉さんE)


他のお姉さん達もビックリする。それを聞いて苦笑いするリリヤとリズ……初めて会った時の事を思い浮かべているのだろうか。


「ああ♪実際にうちのパーティーでは姐さんよりスペック面ではクウの方が上だからな。」(ネイ)


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「嘘!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


お姉さん達総出でビックリしている。


「その反応クウちゃんの前ではしないでね。見た目にコンプレックス感じてるから。」(ミーナ)


「可愛いからいいのにクウちゃん気にしてますよね。」(セーラ)


「分かりましたわ♪処でそのクウちゃんは何をしに?……」(お姉さんG)


「恐らくまた我々が驚くような事を……」(リディア)


「みんな期待しててね♪多分だけど、お夕飯に新作のし凄いご馳走が出るわよ♪」(アイナ)


お夕飯前に軽く出された軽食のレベルに驚いていたお姉さん達はご馳走と聞いて喉を鳴らすのであった。











ここは700階にある食料エリアの一室の中の筈だが…………俺は広大に広がる平野のど真ん中に来ていた。


「われながらなんでもありなの………」


「クウ様ならこれ位ありです♪はい♪」(ロジャー)


いや、同意してくれるのは有難いけどこれはどうなのよ……そう、部屋の一室の中に散々と輝く太陽に爽やかにそよぐ風が吹く豊穣豊かな大地が広がり………自重と言う単語は一切ないな……


「それでクウ様♪ここでどのような果物を栽培なさるのですか?」(ロジャー)


「それなの!クリスちゃんとおねえさんたちのくろうをねぎらってでざーとをつくりたいけど、クウちゃんつくったことがないからきょうはふるーつかっとでだすの♪」


「ここのコックならデザートをお作りする事も可能ですがクウ様自らお出ししたいのですね♪」(ロジャー)


心中を察してくれるロジャーさんとは本当にやり易い。お風呂では裏切られたけど…


「なの♪つぎはれんしゅうしていろいろだせるようにするの♪う~~~~~~ん♪なににしようかなの…………」


「クウ様ごゆるりと♪」(ロジャー)


俺を抱っこしながら頭を優しく撫でるロジャーさん。男の俺が言うのもなんだが実にいい男である。アイドルやスターと言った世界でのしあがる人ってこういう人種の人じゃないかと思う。そんな俺の気持ちからこの人は生まれたのかも知れない。


「おんなのこがすきなふるーつ………めろん?……すいか?………いやなんかちがうの。どっちかというとクウちゃんがたべたいものになっちゃっうの………れもん………もも……さくらんぼ……きゅうい……ぱいなっぷる……みかん……ぶどう……いち………!?いちごなの!!!」


「お決まりになられたみたいですね♪」(ロジャー)


そう!苺だ!あらゆるデザートでメインを張る果物だよな♪ケーキにゼリーに大福だってある位だ!ヤバイ……思い出してきたらめっちゃっ食べたくなってきた………


「キュルルルルル~~~~~~♪」(俺の腹)


俺の腹の虫が盛大に自己主張する。ロジャーさんと目が合わさり………


「「あはははははは♪」」


「クウ様♪これは急いで作らないといけませんね♪」(ロジャー)


「あ~~~おかしいの♪いそいでやりますかなの♪」


あ~~~~なんて素直なお腹だこと♪もうこれは絶対に苺に決定!それではここら一帯を苺畑にしますか♪植物スキルシリーズを発動し俺はマナちゃんに語りかける。


「いちごというあかくて~ほんのちょっぴりすっぱくて~キュルルルルル~♪あはははは♪こうなるくだものをつくりたいからマナちゃんもちからをかしてなの♪」


平野の至る所に野苺畑が次々と生まれ所狭しと生える。足下に見えるその赤い身は玉子ほどの大きさでツヤツヤと輝き、甘く上品な香りが一面に広がる。文字通りここのお部屋もとい!平野を苺平野にした!


「お見事でこざいます!!パチパチパチパチ♪」(ロジャー)


自分の事のようにいつも助け喜んでくれるこの人に感謝だ♪だから、足下に見える苺を一つもぎ取り…


「ロジャーさん♪あ~~~んなの♪」


「そんな!!!クウ様恐れ多く御座います!!」(ロジャー)


「えいなの♪」


食べんしゃい♪おりゃ♪俺はロジャーさんのお口に苺を押し込む。


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!………………ポロポロポロ♪」(ロジャー)


「ちょ!!!!!ロジャーさんどうしたの!?」


本気(マジ)泣きである!ポロポロと泣いているのである!予想外の反応に俺は狼狽えてしまう。


「……………………………はっ!?美味しゅう御座います!クウ様自らがこのわたくしに♪しかもこの苺!言葉では言い表せない位に美味で一瞬意識が遠のきました。素晴らしい出来で御座います♪」


マジか!?そんなに美味しいの?どれどれ………


「………………………かはっ!?ほんとうにいしきがいっしゅんとんじゃったの!!!なんなのこのいちごたん!!!」


口の中で酸味と甘味が爆発するとでも言えばいいのだろうか?優しい味とは真逆の味になってしまった!あれか?創る時に笑いながらハイテンションでやってしまったのが原因か?


「これはまた凄い物を創られましたねクウ様!これならば皆様も十分……いや!歓喜にうち震える事間違いなしで御座いましょう♪」(ロジャー)


「なの♪でも………いんぱくとがつよすぎるからくうみつでこーてぃんぐもしてみるの!さっそくてすとしてみたいからちょうりばにご~なの♪あと!めいどのおねえさんをすうにんよんでほしいの!じょせいのいけんをさんこうにつくるの♪」


「了解しました♪では参りましょう♪」(ロジャー)


ロジャーさんが用意してくれた籠に苺を摘み入れると早速向かうのであった。











その日のお夕飯は猫庭の楽園のコックさんが用意してくれたご馳走が出され、みんなの舌を唸らせていた。


「流石にクウちゃんの料理までとはいかないけど、これはこれで美味しいわ~♪」(アイナ)


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「(え~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?)」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


お姉さん達全員絶句である。一瞬アイナママの頭がおかしくなったと考えた位だが…


「そう思うのも無理ないわよね………これだって初めてなら言葉を失う位の料理だもん…」(リリヤ)


「うちのパーティーも含めて昨日は喋る事すら出来なかったよね……」(リズ)


「私も長年商売で4つの大陸を駆け巡り、高級食材や珍味と言われるたくさんの物を食べて来ましたが……いやはや……神様の作られる料理と言うものは我々の想像を越えますな……」(アーキム)


ここにいる全ての者が事実として言うのだから間違いないんだろうが、それでも釈然としないお姉さん達である。そして、クリスちゃんは………


「おいすぃ~~~♪もぐもぐもぐ♪ぱくぱくぱく♪おかわり~♪」


満面の笑みでどんどん料理を平らげおかわりをしている。そして、食べた分だけどんどん再生していった。つまり………


「少々お待ちを!!!今羽織る物を御用意致します!!!!」(メイドU)


火星人から全裸のお姉さんへと戻っていた。そんな事があったとは俺は露知らず、厨房でデザートの準備していた。それは多分俺以外ではとても手間暇の掛かる作業だろう。おかげでこんなスキルをゲットした♪


*細工LV3を取得しました。


一つ作ればおぼんで増やせるとはいえよく頑張った俺♪みんな喜んでくれるといいな♪そんな想いを乗せて運んでもらう。


「そろそろね♪…」(アイナ)


「奥で何か作るからっていってたもんな…」(ネイ)


「後はデザートだけだけど……初めてじゃない?クウちゃんがデザート作るのって♪」(ミーナ)


「クウちゃんのデザート♪ドキドキして来ますわ♪」(セーラ)


「落ち着くんだ我よ……あぁ~~一秒が長い♪」(リディア)


「セーラちゃん♪あたしもドキドキが止まらないよ!どうしよう♪」(アイシア)


「今度は如何なる奇跡を見せてくれるか楽しみだ♪」(アストラ)


そわそわするみんなでざわつくレストランホール。そこへデザートを乗せたカートが到着した。そう、カートの上には黄金色に輝く細かな細工が施してあるアラモード皿に、それを乗せた(ふち)の高い皿がもう一枚と不思議な皿の使い方をしていた。アラモード皿をよく見るとアイナママやネイちゃん達をはじめ、ここで食事を楽しんでいる全ての人をデホォルメしたキャラクターが皿のあちこちに散りばめられた可愛くも華やかなアラモード皿であった。そして、その皿の上には三つの輝きの違う苺が寄り添うように佇んでいた。


「きれ~~~~♪わっ!?これ私だ!!こっちにはニアにセーラちゃんまで!!」(エーコ)


「美しいわい♪おお~儂がおる!おお~リリヤまで!」(アーロン)


「食べるのが惜しくなる輝きに細工だな!?この皿の台を支える龍は我か!!見事な♪ますます食すのが惜しいな♪」(アストラ)


思い思いの感想があちこちから聞こえる。そんな中、俺はみんなの見える処に出ると一言添えてお願いをする。


「だいのうえにのっているいちごはみぎからたべてほしいの♪すきなじゅんばんからでもいいけどできればそうしてほしいの♪その…いっしょうけんめいつくりましたの♪クリスちゃん♪おねえさん♪これをたべてあしたもわらってほしいの♪」


クリスちゃんは微笑み、お姉さん達は涙ぐむ。大粒の汗をかく俺を見てみんなは頷いてくれた。そして、メイドさんがカートを動かしみんなのテーブルに置くとみんなは右端の苺から手を伸ばし始める。一つ目!それはそのままの苺。敢えて一つだけそのままの味を知って欲しかったのだ。この後に続く組み立ての為にそのままの苺は大事な布石なのだ。……………静かだ。旨い!とか美味しい!!とかそういった声が上がらないがみんなの顔を見れば分かる。あの弾けるほどの甘味と酸味のハーモニーに声を失っているのだ♪だが、まだまだ始まったばかり!ここから二つ目の苺がそのベールを脱ぐ!


「(旨い!!!この爆発するかの如く押し寄せる甘味と酸味のハーモニー♪クウヤはなんというものを作りあげたのだ!ふふふ!次が楽しみでないか♪ぬ!?我の鼓動が速まっているだと?流石だクウヤ♪どれ?これはいかなる仕掛けが待っておるのだ………)…カリッ♪パリン♪サクッ♪(なんと!?これは一体!?)」(アストラ)


二個目は適温に冷やした苺にクウ蜜にローズオットーの香りを(いぶ)した塩を少量混ぜこんだもので包みコーティングしていた。そのコーティングの層も一層ではなく二層である。最初の層はやや厚くしてカリッ♪とした歯応えを出し、その次の層は極薄の層で更に心地良い噛み応えを与えてくれる。その後は適度に冷えた苺がクウ蜜と合わさり口の中で弾ける両者を優しく押さえ、クウ蜜の中に混じっていたローズオットーの香りが適度に苺の香りと交わり得も言えぬハーモニーを奏でる。


「(堪らん!!!我ですら声を発する事が出来ん!最初の実以上の物はないかと思ったが化けよる♪クウヤよ♪まだ残り一つあるではないか♪どこまで楽しませてくれるのだ♪いざ参らん!この最後の実は………!!!ほんのりと温かい!酒か………いや!?只の酒ではないな……アルコールを飛ばして煮詰めた!?いや、それだけではない………だがこれはなんとも甘い!!!極上の甘味とこの後から押し寄せる清々しい香り!!なんだこれは!!!!!!!!)」(アストラ)


最後の苺はアラモード台を溶かさぬ程度に温めた苺。それは神酒15升を炒り一升まで飛ばした炒り酒である。その中に苺の葉と苺を優しく煮た【炒り酒苺】とでも呼べばいいのだろうか。酸味を取り除きとことん甘さを引き出した苺である。さて、最後の仕掛けをそろそろ出すか………


「すたっふさん…あれをおねがいなの♪」


「畏まりました♪」(メイドS)


赤い液体の入ったビンとアイスボックスとストローを持ちスタッフの皆さんが苺を食べ終わった人の所へと移動する。


「(なんだ?クウヤよ………まさか!!!!まだ続きがあるのか!!!!)」(アストラ)


これにはみんな予想外だったらしく俺と控えていたスタッフのみんなは軽く拳を握りガッツポーズをする。


「失礼致します♪この器は蜜で出来ておりまして最後の仕上げをさせて頂きます♪」(メイドS)


「(馬鹿な!?………これは!!!!我が見逃すとは!!!ふふふふ♪クウヤめ!!!その液体は一体…………)」(アストラ)


そう、アラモード台はクウ蜜で細工し固めたものであった。これを作るのにそれは苦労をした。俺の大量の汗の六割はこの台によるものだ。そして、赤い液体は苺と甘露水とクウ菌で作った苺酒なるものだ。それはあまり度数が高くないものでそう、軽く火を通せば子供で飲める物に……スタッフさんがアラモード台に苺酒を適量注ぎ火をつける。すると部屋中に広がるクウ蜜と苺酒の華やかな香り。そして、鮮やかな炎を纏いキラキラと星屑の光が落ちるが如くゆっくりと溶けていくアラモード台。そして、その下にある縁の高めの皿がそれを受け止める。中には赤く香り発泡する苺ジュースが完成していた。そこへスタッフの人達が氷を適量入れてストローを添える。そして、全てを終えると静かに下がった。


「(手が震えておる………いつ以来だこのような経験は……いや!食でここまでの経験はない……クウヤよ頂くぞ!!!!!!!…♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪)」(アストラ)


口の中で甘味が!香りが!炭酸の心地よい刺激が!喉ごしが!そこに至るまでの演出が!全てが一つ物語を作り出していた。


「(あの台に皆を入れたのはクウヤの想いを伝える為か………感無量だクウヤ♪♪♪)」(アストラ)


みんなご満悦のようだ♪俺の苦労が吹き飛ぶ瞬間だ♪料理は愛情と言うが俺の形の愛情………あの台にみんなを入れた意味分かってくれたかな?嫌な事が人生多々あるけど……もし想いが伝われば俺も報われる。俺はスタッフのみんなとお片付けをしてからみんなに内緒でお風呂に入るのだった♪

ふつおたコーナー(MC:たまご丼)


ペンネーム「いちごのうかさん」さんより頂きました


Q:みんなに喜んで貰いたくてあれこれ試してますが何かいいアイデアはないでしょうか?


A:常識にとらわれちゃダメダメ!苺大福や揚げアイス等もそうして出来たもの!失敗を恐れずに焼いたり!揚げたり!蒸したり!炒めちゃえ!いちごのうかさんならいけるいける!というわけでシーユー♪


ク:いちごたんのてんぷらにやきいちごたんのくしやきにむしいちごたんにいためいちごたんなの…………………あれ?いがいと………


ロ:悪くないですね?焼くと意外と香ばしいですし…揚げ苺も甘くて衣とも合います…蒸すと食感は駄目になりますが甘味が強くなりますね…炒めものはあれ?美味しいですね……どれもこれも不思議ですが………


ク:だけどしっぱいなの………しょうがないからこれらははいきするの………いや!もったいないからクウきんにあげるの♪うりゃ♪さっ!つぎにかかるの♪


メL:(綺麗な赤ワインのような………ペロリ……これは!!!!)私にアイデアが御座います!!!!


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