表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/98

ケンカはほどほどに!

 

 パチパチ……何か……そんな乾いた音と頭を優しく撫でる感覚に、俺は徐々に重い瞼を開いた。目の前には犬耳を生やしたお姉さんが俺を見下ろしてる。


 はて、一体……寝惚けた頭で周りを見ると、既に夜へとなっていた。ムクリと上半身を起こすと、犬耳のお姉さんの膝の上で寝ていた事が分かり、慌ててしまう。


「あぁ~、大丈夫だぞ。姐さんは襲って来ないから安心しな」


 正座したダークエルフのお姉さんが、やや離れた位置にいる……お、思い出した!! 俺、あのエルフのお姉さんの胸にむにゅむにゅされて、…

あぅ~堕とされたんだった。


 凄かった……いかんいかん。父よ、不甲斐ない息子ですみません。


 俺負けないよ! 心の中で父がサムズアップして微笑んでくれているような気がした。


「大丈夫よ~。師匠の魔の手から守ってあげるからね~」


 ツインテールのお姉さんが俺の頭を優しくナデナデしてくれる。ん? お姉さんなんか凄い顔がツヤツヤしてない?


「異議あり!!! ネイ、私は優しくハグしただけよ!」


 ハッ!? エルフのお姉さんの顔を見たら、あの感触がまた頭の中で再生されそうになる。俺はネイお姉さんの背中へと急いで隠れた。この人が一番大きいし、近くにいたのでつい……


「姐さん……それで堕としたらダメじゃん。ほら、怯えちゃってあたいの背中に隠れちゃてるし……」


 怯えてじゃないんですよ。俺があまりにもお子ちゃまなせいで真っ赤になっているところを、見られたくないからですよ。


「大事な話を聞くまで師匠はもふもふ禁止です!」


 ステータスのもふもふと究極の抱き心地がたぶんコラボって、お姉さんを暴走させたんだろうな。まさか、こんなにも凄い反応があるとは思いもしなかった。


 今後は自覚せねば、今回は不意討ちみたいなものだったから、次からはきっと大丈夫な筈……


「いや! お前もだからなミーナ。この子が寝ている間の事をよ~~~く思い出そうな?」


 なっ!? 寝てる間に何したの? はっ!? まさかツヤツヤしてたのはそのせいか!? この体だし、変な事はされてないと思うが、この子もひょっとして俺にとって危険な人物なのか?


「ネイちゃん怖い……ちょ……目が怖いって……うっ……ごめんなさい……」


 異世界にも土下座ってあるんだね。まさか、こんな形で前の世界の風習を見る事になるとは……なんか複雑だよ。


「とりあえずわかったわ。嫌われたくないし、ごめんね~~、お願いだから顔を見せて~」


 このままじゃ埒があかないし、異世界でこれから多くの人と出会いやっていくんだ。父も俺の為に断腸な思いをして旅立たせてくれたんだ。


 挨拶くらいちゃんとやらねば! 俺はネイさんの背中からゆっくり顔を出して話し出す。


「もう、だきつかない? ほんと?」


 じっと見つめる。綺麗だな~頑張れ俺! 視線を反らしちゃ駄目だ。


「なるべく我慢するわ!」


 おいっ!? なるべくかよ! でも、普通に考えたらこんな美女に抱きつかれて凄く嬉しい事な筈なのに、俺ってばなんて残念な奴なんだ。


「わたしも!」


 ちょ! この子もかい! 二度目の人生はこの女性コンプレックスを何とか克服しよう! よし! 今決めた。こんなフラグ建てると折れるって? でも俺はやるよ!


 なんかあわあわしてるのが情けなくて、かっこ悪く思えてきた。俺はあの偉大な父の息子! だからやれるしやるよ! 決意したからにはまずは初めの一歩だ。


「そんな訳だからさ、少しお話をしよ? よし、いい子だ」


 俺をあやし、ちゃんと見守ってくれる犬人族のお姉さんの側を離れず、プルプルと少し震えながら前に出る。


「あたいの名前はネイ。冒険者をやっていて、二人の護衛……怪我をしないように守ってるってことだな。まあそんなわけだ! 獣人同士仲良くしような!」


 俺にちゃんと理解出来るよう言い直してくれたんだな。見た目よりずっと繊細な人なのかも知れない。それに寝ている間も俺を魔の手? からずっと守ってくれたみたいだし……


「わたしの名前はアイナよ。アイナお姉ちゃんかママでもいいわよ? 沢山の魔法を使う魔法使いよ。ふふふ、さっきはごめんね、君が可愛すぎるのがいけないんだぞ。よろしくね」


 ちょ!? ママって……決定……この人は俺にとってまさに女性コンプレックスの試練の壁。うぅ~、手強すぎるよ……小悪魔どころか俺にとっては大魔王クラスだよ。


「アイナ先生の愛弟子で魔術……魔法の勉強をしてるミーナちゃんだよ。仲良くしようね」


 寝てる間に何したの? ミーナはアイナさんとは違い、まさに小悪魔的な感じだ。この世界って容姿レベル高くないか……それともこの三人が例外なのか?


「さて、ボクのお名前をお姉さんに教えてくれるかな?」


 さて……どうしよう。中身は大人だし、ちゃんと受け答えは出来るが……説明したところで俺の正体を理解してもらえないだろうし、

 何よりこの容姿で素の大人な俺を出すと言うのは、遊園地のマスコットキャラが頭の部分だけ取って、ヤニ吸ってるようなものだろう。


 やっぱり綺麗な物は綺麗なままで、裏の部分は見せる必要がないと思う。ニッコリと微笑み、今度は慌てずに落ち着いて自己紹介をする。


「クウちゃんいっさいなの。おとうさんとやくそくでもりからでて、ぼうけんにでたの」


 語尾に「なの」をなるべく付けて話そう。こうすれば見た目の年齢と話し方に違和感がなくなるかもしれない。


「お父さんのお家はどこにあるの?」


 まずは住所を聞かれるよね。勿論、番地とかないから……


「あっちなの」


俺は森のある西の方角を指し、事実を伝えた。


「いくらなんでも、まだこんなに幼いのに……」


 アイナお姉さんは不憫だと思ったのか涙ぐむ……うっ、罪悪感が……


「あっちと言うと死の森を越えてレンガルの方か……ひょっとしたら隠れ里か何かかもな。

 あっちは肉体を武器化するような過酷な修行する奴がいるからな。クウがひょっとしたらそうなのかもな」


 勝手に勘違いしてくれたので俺は黙っていた。嘘は言ってない。しかし、西の大陸はぶっとんだ連中が多そうだな……東の方角を選んで良かった。


「こんな幼くて可愛い子を……大変だったでしょ……グスッ……」


 優しく、ホントに優しく撫でてくれる。更に罪悪感がハンパなく心にのしかかる。まだ旅立って一日目です!


 とは、この空気で言えるほど俺に勇気はない……空気を変えねば……


「だいじょうぶなの。おとうさんすっごくつよくて、いっぱいすごいアイテムをクウちゃんにくれたから、ぜんせんへいきなの。

 それにクウちゃんはおとうさんのようになりたいの……だから……だから……その、あきらめないの!」


 うん、俺は父のように誇れる人になるんだ。それは俺の変わらぬ想いと決意。


「ひがしのおっきなまちにいって、ぼうけんしゃになるの! やくそくなの。だから、やぶったらわるいこなの」


 そう言うとアイナお姉さんと愛弟子のミーナの二人が俺に抱き付こうとした。ビクっと俺が身構えると、ネイさんが俺の前に立ちはだかり、二人を左右片手で顔アイアンクロウをかまし、顔面を捉えた。


「だから、我慢しろっての! 姐さんにミーナ!」


 俺が寝ている間もこうだったのかな……ネイお姉さんのフラストレーションが(いささ)か貯まっている気がする……


「ここは抱き付いてあげるシーンでしょ! ネイちゃん、空気読んで!」


「そうよネイ! クウちゃんを(いたわ)る気持ちが分からないの? 空気読まないとダメよ、ネイ!」


 油断も隙もないな……


「空気を読まんのは己らじゃ! ボケッッ!!!」


 この人が味方で良かったよ……しくしくしく……


「あっ!? ネイちゃん痛い!! ミシミシ言ってる! これ、洒落にならないって!」


「ネイ、あなたまた腕上げたわね。フッ、また依頼する時はネイで安心ねっていたた・・・ミシミシって……」


 パンプアップした腕がパナイ……リンゴぐしゃ~な絵が浮かぶ……いやいやいや!? このままじゃあかん!


「マジで少しは自重せい! 分かったか? あぁ~?」


「「ワンッ」」


「犬人族なめてんのかぁぁぁ!!」


「ネイおねえちゃん、けんかはめっ!なの。みんななかよくなの~~~!」


 こうして賑やかな自己紹介が無事? に済んだ。


ふつおたコーナー(MC:たまご丼)


ペンネーム「東の森のエルフ」さんより頂きました


Q:249歳も年下の彼にメロメロです。ちなみに彼は一歳児です。どうすればいいでしょうか?


A:近くの病院に行って医師と相談しましょう! 不治の病と診断されるでしょうけど気にしちゃダメダメ! 法律に触れない範囲で彼にアタックだ!警備隊の人に迷惑をかけちゃだめだぞ! シーユー♪


ネ:にぎにぎ(ウォームアップ中)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ