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旅立ち

 

「おとうさんいってきます! おみやげいっぱいもってまたかえってくるね。すこしだけ、ばいばいなの」


 父の顔にスリスリしながら俺は旅立ちの別れを伝える。父は既に半泣き状態である。そんなに心配しないで、無事に帰って来るからね。


「帰りたくなったら何時でも戻っておいで、父は待っておるぞ」


 父も俺に顔を寄せて、スリスリとスキンシップをする。


「クウヤよ、旅に必要な物をリュックの中に入れておいたからな。プルルの実とコルルの実はお腹減ったらお食べ。あと、お金が必要になったら袋に少し入れてあるから使いなさい。

 昔の硬貨だが、使えなかったら他に換金出来そうな物も入れてあるから、ちゃんとした商人と取引するんだぞ。

 あと、もしクウヤを苛めるような奴がいたら直ぐに帰って来なさい! 父が滅ぼしてくれる!!」


「おとうさんだいじょうだよ。もう、なんかいもきいて、クウちゃんおぼえてるよ」


 めちゃくちゃ心配なんだろうな。世の父親とはすべからずこうなんだろうな。あと、最後のはダメだよ父! やろうとすればホントに出来ちゃうから気を付けねば……



「それじゃ~、クウちゃんおでかけしてきます!  いってきま~す」


 父に手を振り、俺は東の大空に向けて舞い上がる。


「気を付けるんだぞ! 父はいつまでも待っているぞ! 元気で帰ってくるんだぞ~~~~!」


「はぁ~~~~い。おとうさんもげんきでね~」


 父よ。12年もの(あいだ)、本当にありがとうこざいました。俺……元気な姿見せに、また帰って来るから、安心してね。


 さて、目指すは東の大陸! 一体何があるんだろ? 楽しみだな。俺は空高く舞い上がり、大地を見下ろしながら移動する。


 移動速度は大人が自転車で普通に走る程度かな? もっと早く飛ぶ事も出来るのだが、ゆっくり飛んで行きたいのだ……


 正直に言うと、俺も父と別れるのが辛い……だからこそ思うのだ、人はいくつになっても子供なのかもしれないと言う事を……


 中身の年齢は前世も含めれば60を越えるのにな……親離れ出来ない俺の方こそ、親バカならぬ子バカだよ。


 ただひたすら東に向かって二時間ほど移動すると、遠目に大きな砦が見えたきた。あれが父の言っていた東の要塞か。


 たぶん騎士とか兵士とかが、沢山いるんだろうな。


 ちょっと見学をしに行ってみたいけど、近づいた途端に「怪しい奴め!」とか言われて見つかって、弓をビュンビュン()られるバトルになりそうだから、見つからないようにこっそり通り抜けねば。


 この高さだし、まず見つかる事はないだろう。それに砦から先を越えるまでは、地上に降りては絶対ダメだと父に注意されていたので、砦から離れた先で降りてみよう。


 なんでも、砦を越える前まではモンスターのレベルが非常に高いらしい。なので俺は素直に父の注意に従う事にした。


 なんせ俺のHPはたったの2だし……一撃食らえば確実に死んでしまう。だから、周りには十分に警戒して飛んでいるのだ。


 あと、自分のステータスは意識すれば見える事も父に教えてもらった。因みにアイテムや他人やモンスター等の、自分以外のステータスは鑑定スキルがないと見れないらしい。


 また、その鑑定スキルとは非常にレアスキルであり、保有してる能力者は極僅かな者しか保有していないと父が教えてくれた。


 そうそう……スキルと言えば、俺も色々と覚えようと父にあれこれ習い、自分なりに努力をしたのだが、結局覚えれたのが魔力操作だけだった。


 あまりの不甲斐なさに泣きそうになり、凹んでいると、父があたふたして励ましてくれたのは、今となっては良い思い出だな。


 「急いで大人にならなくていいんたぞ!」とか、「クウヤは大器晩成型だから、ゆっくりとがんばれば良い」と、父は俺をよく慰めてくれては、ナデナデやスリスリをしてくれたっけ。


 話を戻すが、砦を過ぎてもやはり危険な事には違いないが、いざと言う時の為に、俺は奥の手を持っていない訳じゃない。


 そう言った保険も一応持ち合わせているので、砦から先はゆっくりと地上へ降り、気を付けながら進んでみようと思う。


 ゆっくりと高度を下げ、平野の中にある街道へとぽよぽよと降りる。


 おお~、森以外の場所ってこの世界に来て初めてだな。そよぐ風、ぽかぽかのお日様……そろそろお日様も真上に来る頃なので、お昼ご飯にしよう。


 リュックからプルルの実とコルル実を取りだし、適当な場所でちょこんと座りながら食べる。プルルの実は、桃とさくらんぼを組み合わせたような形で、とても美味しい。


 歯は一応生えてるが、あまり固いものは食べれない。だから小さい頃からこの実が俺にとっての主食なのである。……今の小さいけど……うん、気にしたら負けだ。


 この実はとても栄養価が高く素晴らしい。味も勿論うまうまだ。


 そしてコルルの実は、大きなパプリカみたいな形をしている。頭にあるヘタを取り、その中身に入っている果実水を飲む。こちらもその透き通っているのにコクがあり、爽やかな喉越しに喉が潤う。味もさることながら、栄養価も非常に素晴らしい実なのだ。


「はふ~♪ おとうさん、ごちそうさまでした」


 父のいる森の方角へ向かって手を合わせ、深々と腰を曲げてお辞儀をする。父にちゃんと感謝しないとね。愛情のこもったお昼ご飯を食べ終えて、移動開始だ。


 ……てくてくてく、よちよちよち、そんな擬音が聞こえてきそうな俺のあんよだが、俺だって一応歩けるのだ。


 ゆっくりとこの二本足で てくてく と歩きながら、あまり縮まらぬ移動距離にやっぱり飛んじゃおうかな?


 そう思った時だった。砦があった街道の方角から、三頭の馬に乗った何者かが近づいて来るのだった。


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