そんなおしろでだいじょぶか?なの
みんなはゲームでお城を見たことがあるだろうか。ほとんどの人が見たことがあるはずだ。大きな門に鎧を纏った守衛。ゴツゴツした石材で出来た城壁。城の中は綺麗な大理石に高い天井。そして、素晴らしい壁画やシャンデリア等……だが実際は……
「ふれるなきけん? なの。」
「クウちゃん字も読めるの!? 凄いわね!!」
「あっ! そこ触らないで、予算が出るまで直せないから。」
城を囲う門のすぐそばの壁にありありと書かれていたのがそれだった。気にしちゃいけない、これだけ大きな城なんだ。それくらいの補修箇所はあって当たり前だろう。
「その門は壊れて開かないのでこっちの門からお通り下さい。」
王都に入る時と同じように、大きな門の横に備えつけられた小さな門から俺たちは進む。中は綺麗な庭園を待ち構えているだろうと期待に胸を膨らませ門を潜ると、そこに広がっていたのは、雑草が生えまくり、放置されているグウンドだった。
しかも、馬を放牧して草を食わせていた。……違うぞ、俺の中のお城への期待値がガリガリと減っていく。
「…………………………クスンなの。」
自然と涙目になる俺。現実とは残酷だ。
「クウちゃんが何を考えているか、ミーナちゃん分かるかも。」
「クウ、これはしょうがないんだ。でもな、その分セイギフトは全然マシなんだぞ。余所の国なんか面子だけ拘って、録でもないのがいやがるし。」
それを聞き少し見方が変わるも、初異世界城は立派なのを見たかった。
「お祖父様もモンスター被害のせいで、街の補償にいつも苦しんでいましたわ。」
「我らは自然と生きるからな、人間もそうすればいいのだ。」
リディアちゃんはこのお城を見て、逆に気に入っているように思える。自然のままを受け入れる彼女らしい考えだ。
「ドリアード殿、人は脆弱な力しか持たぬが故に、集団で集まり、住処を作らねば自然の中で生きていけぬのですよ。」
分かってはいるが、文明とは一度入れてしまえば捨てられない物であるとも言える。弱いと言うだけじゃないのだ。
「難儀なものだな。」
「ええ、ホントにそう何度も痛感させられました。さて、ここで立ち止まっていては何ですから奥へと参りましょう。」
ゼルさんの案内で城の入り口の大きな両開きの扉まで向かう。古くて歴史を感じる古い重厚な扉、その前へと足を運ぶと、ゼルさんは両開きの右側の扉だけを手に取り、開いて中へと入る。
「……左側は錆び付いて開かないんです。」
ここもか……ガリガリ削られる希望の城と言う名の幻想が。そして、外の気温と比べると異常に差を感じる城内だ。
これだけ広い空間に高い天井だから、そうなってしまう物だとおもったら……よくよく見ると、穴の空いた城の壁から隙間風が入って来たり、日差しを入れる窓が壊れていて、板で覆うように補修をされているので、日光が入らなく薄暗い。
さらにお城は石材で出来ているせいか寒い。王都の城に来るまでは、活気に満ち溢れて華やかだったのに、この城はまるで正反対である。
この国の王は城に充てる金があるなら民草に使っていると言う事だろうか?
あの被害のあったクライムさんの町が、補償をあまり受けられないのは、他に被害の多い所があるとも、アイナママも確かに言っていた。
みすぼらしいが民草の為に飾らない立派な城。何とも皮肉な城だ。そして、どんどん奥へと進み、玉座の間を目指す間に見るものは、そんな現実的なものばかりだった。
そして、玉座の間と書かれたプレートが、入り口の扉に張り付けてある…………何だこのガッカリ感、ゼルさんがノックをして扉を開けて中へと促される。
「コンコン♪第一騎士団ゼル以下20名とアイナ様、御一行をお連れいたしました。」
教室位の広さの室内で、この玉座の間には、豪華な椅子に座り、ひげを生やし威厳に満ち溢れた初老の王が現れると思ったのだが……やはり現れなかった。
そこにいたのは俺の想像とは全く違う王で……まさか女王様だった。黒髪にボブヘアーで肩より少し上まで伸ばし、小顔で幼く見える。
身長は160cm位で胸は大き過ぎず小さ過ぎない普通サイズで細身である。会社にいた受付の子にちょっと似てるなと思った。
歳は30前後だろうか? 全体から感じるのはおっとりした大和撫子と言うイメージだった。そんな王女様の後ろに佇むのは初老風のダンディーな、如何にも執事な人だ。
大量に積み上げられた書類を簡素な机の上で処理してた女王を、執事さんが補佐し、あれこれとお世話をしていた。
「ご苦労様…………で、肝心の先生は?」
「ハッ! アイナ様は只今、医務室で休まわれておられます。」
その報に目を丸くする女王陛下は椅子から立ち上がる。
「あの先生が倒られるなんて何があったの? 仮にもオールラウンダーの称号を持ってる先生よ!? ……まあ、詳しい報告は後にして、その前にお茶を頂きますか。貴……んっんん。セバス、皆さんにお茶を出して頂戴。」
ん? 何か妙な間があったけど……はて?
「畏まりました。」
先生? アイナママの事だよな。女王様が幼いときにアイナママが家庭教師みたいな事をしてたのかな? というかここ、ホントに玉座の間なのか?
どこか下町の工場の事務所のような、そんな所をイメージする室内だ。とても大陸に四つある内の大国のそれも、その一つの王の部屋とは思えない。
つい、キョロキョロと辺りを見回していると女王様と目が合ってしまった。
「ま~~~~♪ ミーティアが抱っこしている赤ちゃん一体どうしたの? 可愛いわね~、ほ~ら、おいでおいで~。」
と言いつつミーティアさんから有無言わさず俺を奪う。女王様の両腕に包まれた俺は、余りの早業に目を丸くした。
ミーティアさんはやっとその頃になって、俺を奪われた事に気付いて涙目になっていた。
「じょおうさま、はじめましてなの。クウちゃんいっさいです。よろしくなの。」
挨拶は大事! 特に女王陛下にご挨拶となれば尚の事である。
「まあまあまあ~♪ もう喋れるなんて賢いわね。ふふふ、初めまして。この国の女王をしてるマリアよ。クウちゃん宜しくね。いや~ん、可愛い。それと信じられない位にもふもふだわ~、あぁ~癒される。」
母性本能全開で俺をあやす女王陛下は、普通の主婦にしか見えなかった。
「クウちゃんはてっきり、おひげはやしたおじいちゃんがでてくるとおもったの。」
それを聞いて微笑む女王陛下。子供らしいコメントが聞けて満足げな顔をして俺の頭を撫でる。
「お爺ちゃんでなくてごめんなさいね。ふふふ、クウちゃんはアイナ先生とはどんな関係なのかな?」
女王様は俺を抱き抱えたままソワァーに座り、他の皆にも座るよう勧める。丁度ティーポットらしき物を持って来たセバスさんとタイミングが重なった。
「坊やのお茶はどうしましょう?」
飲めるか飲めないかではなく、飲ませたいかの確認をする執事さん。
「セバス、ここに置いて頂戴。私が冷まして飲ませてあげるわ。」
当然! といった表情で早く早くと催促する様は、抱かれている視点から見ても可笑しかった。
「畏まりました。」
セバスさんは一際小さなカップまで用意してくれていた。俺の為にわざわざ……
「セバスさんおかまいなくなの。」
申し訳なく思い、一言謝罪と感謝の意を込めて言う。
「!?。これは驚きましたな。ありがとう坊や。」
今の驚きは少しオーバーに思えた。……あっ!一歳児が気を使った事を言えば誰でもそうなるか……
「いえいえですの。」
じーーーっと、アイナママと俺の関係の答えを待っていた女王陛下は、ニコニコと俺を見つめながら答えを待っている。
「あっ、しつもんにこたえてなかったの。クウちゃんはおとうさんとのやくそくでせかいをたびしてたの。その……たくさんみたこともないものをさがして、おべんきょうをしてたの。それで、おうとにむかっているとちゅうでアイナママたちにあったの。」
俺は正直にありのままを言った。
「その歳で旅に出すなんて!!! 一体何を考えいるの、クウちゃんのご両親は!!!!!!!」
激怒である。普通に考えればそうだよな。まあまあ、そんなに怒らんといてと、内心で王女を宥める。
「女王様、宜しければ発言をする許可をお許しいただけないでしょうか。」
ネイさんが敬語で改まってお聞きする。なんか新鮮だ。
「崩してもらっていいわ。その方が私も楽だから。それで続けて。」
「畏まりました。どうやらクウは西のレンガルの方からやって来たみたいであたい達もそれ以上の事は分かりません。ただ、クウの力と装備品はどれもこれも規格外でして。実際に目にしたあたい達以外に言葉だけで言っても信じていただけるか正直不安です。なので、出会ってからのお話を聞いてもらってから判断していただきたいかと。」
女王陛下に報告する以上、不敬と見られること自体が罪となる。その為の前置きだね、これは。
「なるほど……分かったわ、まずは報告を聞いてから次の話をしましょ。しかし、君はなかなか面白い逸材みたいだね。西のじゃじゃ馬が悔しがるとこが目に浮かぶわ。さて、ではお願いするわ、話して。」
アイナママ達三人に会って、レクドナルドの街に行き、そこで瀕死のガイアを回復させ情報を聞き出した事。この時点で既にざわめきが凄かった。
「あの筋肉バカがそれほどの瀕死で、その日の内に復活ですって!?」
おうふ……おっさんのことを陛下も知っておられたのか……
「その…………女王様。失礼ですがこの程度の話で驚かれてはこの先、身が持たないかと……」
「まあ、確かに改めて考えると、ネイちゃんの言う通りね。」
「ミーナお姉さま、私も同じ事を。」
二人の視線が俺に突き刺さる。そんな目を向けられてもね。
「我が主クウ様は我を開花させ聖魔樹にした御方、別に不思議ではあるまい?」
レギュラーメンバーを除いて、みんな一斉にリディアちゃんを見てネイさんに無言で問う。
「そこのドリアードのリディアの言う通りですが、とりあえずは話の続きを聞いてからにしてください。」
その後の着ぐるみの事、ウルフ討伐千匹と変異種の戦いの詳細、セーラちゃんの不治の目の治療、クライムの町で起きた災害と、リディアちゃんとその眷属、全ての聖魔化について。
そして、最後に門で起こった一件、何故か俺を一度見てから女王様に耳打ちをし、顔を真っ赤にさせて座り直していた。
ネイさんの報告が終わってからも騎士団の人達はざわついていたが、女王様はずっと満面の笑みだ。
「ねね! クウちゃん。マリアにそのペロって奴を食べさせてくれないかしら? あと、話に出て来た、例のソースも出来れば試食をお願いするわ。」
ウインクされて今は頬擦りされている。勿論、抵抗出来る訳もなく。女王陛下はとても可愛いので赤面してしまう。
「か~わ~い~い~な~♪ お願い。でないともっと凄い事しちゃうぞ~~。」
この世界の女性は子供をイジルのが好きな人が多すぎるのである。
「ごらんしんはめっ!なの。それじゃあ、そーすからまずはごしょうみあれなの。」
「ホントに賢いわね!? ホントはアイナの……」
「マリア様、それは俺が既に言いました。」
ごそこぞとリュックから取り出す際も王女様は俺の尻尾を触ってた。尻尾は敏感だからピクピクするのだが、それが逆にお気召したらしい。
若干、レギュラーメンバーとミーティアさんがやりたそうな顔をしていた。醤油ビンを取り出し王女様の前に置き、蓋を開ける。すると甘い香りが部屋を満たすのであった。
「これが例のソースね!? ふふふ、なんかドキドキするわね……では一口…………!!!!!」
ティースプーンで一口味見をした女王様は、見ただけで分かるくらい蕩けてる。
「ネイちゃん!? ヨダレヨダレ!!! 女王様の前でしょ!!」
食いしん坊のネイさんはミーナちゃんに脇腹をつつかれていた。
「す…………すみません!!!!!」
「あっはははは♪ この味を知ったのなら仕方ないわ。気にしないでいいわ。犬人族のあなたなら尚の事、辛いでしょうし。」
セバスさんや騎士団の人達にも大好評だ。ふふふ、美味しい物を作り、食べた人の笑顔が見れる。大変だけど苦労した事に対して嬉しい反応があれば人はそれだけで報われ頑張れるって事だね。
「あ~~~! ママとパパだけおいしいもの食べてずる~い!!」
あらま!? 突然、おしゃまな五歳位の女の子が部屋に入って来て、ホッペをプリプリさせて怒っている。
「ミイを仲間ハズレにして! ゼルもミーティアもみんなも!! も~~~!!」
ここは助け船を出しましょ。子供の泣き顔なんておじさんはみたくないから。あれ!? マリア女王様とセバスさんって夫婦だったのか・・・・。
しかし、ミイちゃんはお母さんそっくりだな。黒髪に同じボブヘアー、顔は真ん丸おめめにやっぱり母親似。
身長は100cm位かな? お母さんとそっくりで将来が楽しみだ。この位の歳の子って何でも真似したくなるよな。だから、髪型も同じなんだろう。
「ミイちゃん、おくちあ~~んなの。」
女王様の両腕から宙へと浮いた俺を見て目を丸くさせ、パッと輝く表情をしている。子供は素直な反応だからこちらもつい、微笑ましくて笑顔になってしまう。
「わっ!? そらとぶネコちゃん!! えっと、あ~~ん、あま~~~い! ネコちゃん、あ~~~ん♪パクッ、あむあむあむ。んふふ、ほへほいひい~♪ あむあむあむ。」
幼女が俺の樹液が出ている指先を、夢中で口にくわえて甘噛みしなから、口の中で舌をペロペロと舐め回している…………俺は紳士だ!
目の前にはご両親もいるんだぞ! スキルストップ!!! これ以上はマズイ! 俺の脳内の隠しフォルダーがウォーミングアップを始めている。
「これいじょうはごはんたべれなくなっちゃうからめっなの。あらためまして、ミイちゃん。クウちゃんいっさいなの。アイナママのおともだちで、ミイちゃんのままとぱぱとだいじなおはなししてたの。だから、なかまはずれじゃないののののの!?」
最後まで言い終わる前にミイちゃんに捕獲され腕の中に抱き締められてしまった。子供特有の甘い香りがしてなんか新鮮だ。
視線もあまり高くないし、あらま? 凄い喜んでる。俺も子供だけど、子供って無邪気でいいよね。
「かわいい♪ ネコちゃんおそらもとべるまじゅつしなのね!!それに凄いふわふわしてきもちい~~~♪」
「コラッ! ミイ、ちゃんとご挨拶なさい。あなたは王族なんだからしっかりと挨拶しないとママ怒るわよ。」
親として躾をしっかりとする女王陛下。この人は人の上に立つ器だな。こういう事をしっかり言えるか、そうでないかだけでも見えて来るものが分かる。
「まあまあ、マリアよ。まだ小さいんだからその辺で。」
逆に父親は娘には甘いタイプか。分かりやすい。
「ネコちゃん。わたし第一王女のミイちゃんよ。一緒に遊びましょ。」
俺を宙に離した後に、スカートの両端を持って挨拶をするミイちゃん。リトルプリンセスだね。
「ごめんなさいなの。クウちゃん、おうとについたばかりでいろいろしないといけないの。」
「ミイちゃんとじゃ嫌なの? ネコちゃんとお友だちになりたいのに・・・・!! うぅ~~~やーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
ぬぉ!? 子供って何処にこんだけパワーあるんだって位、声が大きいよね。
「ミイ! 我が儘を言っちゃっ駄目でしょ! クウちゃんに嫌われても知らないわよ?」
「ミイちゃん!クウちゃんと一緒に遊びたい!やーーーーーーーーーーーーー!」
あらら、地団駄を踏んでる。どないしまひょ……みんな困った顔してるな。リディアちゃんも空気を読んで傍観してくれてるし、俺はほっとしてるがさて…………
「マリアさま。ミイちゃんとすこしあそんでくるの。アイナママがおきるまでクウちゃんここにいるから、ミイちゃんあんしんしてなの。それにミイちゃんはだいじなおうじょさまだから! ゆうしゃクウちゃんがおあいてするの。セーラちゃんにリディアちゃんもいっしょにくるの。よにんぱーてぃはゆうしゃのていばんなの。」
目でウインクをしてお願いをする。
「うふふ、わかりましたわ勇者様。ミイ様よしなに。」
「畏まりました。クウ様、ミイ様も宜しくお願い致します。」
セーラちゃんありがとう。それと、ちゃんと空気を読んでくれたリディアちゃん。あとでご褒美をあげよう。俺達はミイちゃんと手を繋ぎ、中庭へと四人で向かった。
「あっ!? ペロ………………また、こんどでいいの♪」
「どんな教育をすればあの歳であんなにしっかりとするのか、クウちゃんのお父様にお聞きしたいわ。まったく、ミイとクウちゃんじゃどっちが上か分からないわ。」
「ホントにしっかりとした子だ。マリア…………その笑い方は止めるんだ。悪い癖だぞ。」
「アラッ!? うふふふふ。先生の話を聞いたからつい、気をつけますわ貴方。ねぇ、ネイさん、ミーナさん。・・・・・」
少しだけ空気が変わる室内。そこそこ広い部屋のはずなのに、狭く息苦しく感じる。目の前の女王が抑えこんでいる何かが漏れている。そんなイメージをネイとミーナは肌で感じるのであった。
「・・・はい、何で御座いましょう。」
「私に答えられる事はほとんどないかと・・・・・・」
ニタァァァァ♪ と三日月に裂ける笑顔。それを目の前の女王は垣間見せた。ネイとミーナにはそれが一人の女性と重なり、今、二人は目の前の女王様を直視出来なかった。だが、そんな些細な事を無視して女王様の質問は続く。
「先生はあの子を・・・・その、どこまで考えているのか分かるかしら?」
過程を飛ばした意味深な質問に迂闊な事を言えないと、言葉を慎重に選ぼうとする二人。
「すみません。あたいには女王様のおっしゃっる意味がわかりません。」
「私も女王様の質問の真意を計りかねます。」
「あら? ごめんなさい。う~ん、先生の近くにいたあなた達なら何か感じたり聞いてるかもと思ってね。そんなに固くならないで、対した意味はないのよ。そうだ! 今日は城に泊まっていきなさい。私も先生と久しぶりにお話したいし、直接報告も聞きたいから。」
二人は目の前の女王に圧倒され、畏縮してしまっている。女王は先程垣間見せた失態に内心舌打ちして悔やんでいた。
あのクウちゃんはあらゆる可能性を秘めている。正直、まだ何かありそうだと直感だが感じた取っていた。そう、あくまで勘なのだが、この国を治める女王として積み重ねて来た直感は馬鹿に出来ない。
そして、西のレンガルから来たと報告ではあったが、もし、その可能性を考えると位置が何とも言えない所にある。
西から死の森の真上を通る事など自殺行為に等しい。では北の地を通って来たのなら? あの子の装備で北の気候の寒さの中、旅に耐えられるか? 可能性はあるが確率は低いだろうし非現実的なので却下。
なら、南の地を通って来た場合は? あの子の肌は日に焼けたような跡も、皮膚や毛が生え変わった形跡もスキンシップの時に調べたが、特に何もなかった。
仮に北か南を本当に通って来たとしても、あれだけの子を両国の人間がそのままにする訳がないし、何かしらの噂になって、私の情報網に引っ掛からない事は有り得ない。
そうなるとやはり死の森を通ったという事になる。それこそあり得ない話だが、この事にあの先生が気付かない訳がない。だからこそ、クウちゃんの背後にいる謎の父親の影が重要になる。
もしもだが、有り得無さ過ぎる位の僅かな可能性だが、森の主と言われる龍の息子としたら? いや、あの子は猫人族だ。
だが、また無視できない直感が働いていた。情報のピースが足りなさ過ぎる今はここらが推測の限界だ。
そして、先生の立ち位置しだいでは、国の要である先生と同じか、それ以上のカードになるかもしれないクウちゃんに何処まで踏み込んでいいかが重要となる。
ただ、国の為に保護したのであれば丁重にもてなし組み込めばいいだけの事。もし、そうでないのなら危険なのだ。
あの先生が過去からの傷を引きずり、クウちゃんに癒され依存しているとしたら、二度もの失神も頷ける。
先生は子を残せぬダークエルフの変異種、その癒えぬ傷から逃れ忘れるが為に、ありとあらゆる苦行や苦痛を嬉々として受け入れ、その果てに唯一手に残ったのがオールラウンダーとして完成されたあの人であった。
それ故に先生は本来修羅の化身なのだ。その拠り所となるあの子に害意がおよべば最悪、要の先生と共にあの子も失い敵対する可能性だってあるやもしれぬ。
だからこそ、この二人から今のうちに情報の片鱗を少しでも入れたかったのだが、……迂闊だった。こうなるともはや静観するしかない。先生の報告が今から待ち遠しい女王マリアであった。
「あっ!? ペロ………………くすん……」
ふつおたコーナー(MC:たまご丼)
ペンネーム「紳士な夫」さんより頂きました
Q:妻と娘がある賢い子の事ばかり話すので寂しいです。私はどうすればいいでしょうか?
A:自分に構ってくれないからっていじけちゃダメダメ!その子の話題ばかりあがるのなら!その子の真似をしちゃえ!紳士な夫さんならいけるいける!というわけでシーユー♪
セ:坊やが蜜を指先からなら儂は全身を蜜でヌリヌリ♪さぁミイちゃんよ!儂の元に!
ミ:イヤーーーーーーーー!!ゼル~助けて~!
ゼ:善処します・・・




