けいやくするの
この町に来てから三日目の朝を迎え、平穏が訪れていた…………筈だったが、まだ解決していなかった。
「ごはんこまったの………」
「確かにこのままクウ様の極上なペロを食してると美味しすぎて他の物を口に出来なくなってしまいますね。」
「そっちなの!?ちがうの!!さくもつをつくらないとめっ!なの。」
ここにもペロの魅惑に堕ちた人が………
「とは言ってもよクウ。そう簡単に出来たら苦労しないぞ。」
そりゃそうだよね。言うのは簡単、実現するのが難しいと言うのが相場だもんね。
「ここの町って何を作ってたんですか?」
ミーナちゃんが俺の聞きたかった事を聞いてくれる。
「半分はマジックポーションの材料になるマジックハーブを………今年は出来が良かったのに…………はぁ~…」
話すにつれ、出来の良かった作物を思い浮かべたのだろう。意気消沈していくクライムさん。
「気をしっかり持ってください。クライムおじ様。」
優しい声を掛けてくれる少女を見て我に返ると、しきり直すのであった。
「話の途中にもうしわけない。残りは町の住民の食料にピックルの豆を主にして、他はフラワーリングの根等を少々。ざっと言うとそれ位ですね。」
全部知らない野菜だ。ポテポテの実みたいに分かりやすいのはあれだけなのか?
「またつくりなおすとしたら、どれくらいかかるの?」
「土壌をもう一度ならし直しても…土の状態を把握してないのでいい作物ができればいいですが、下手すると………なんと言うか…正直やってみないと分かりません。…どんなに早くとも半年位は掛かるかも知れません。苗種もどこかから買わねばなりませんし、この近くに林もない今の状況では狩りも遠出になりますし………」
聞けば聞くほど打つ手がないように思える。
「アイナママ、なにかいいまほうないの?」
オールラウンダーなんてチートな存在のアイナママならと俺は期待して聞いてみる。
「いくらでも破壊と言うのなら出来るんだけど、癒し系はママ苦手なのよ。それに、出来ないことはないけど、時間が掛かり過ぎるわ。だから、クウちゃんの魔法のような誰も見た事のない魔術を開発するか、眠っている力に目覚めるとか、それ位しか思いつかないわ。ごめんね…」
破壊専門ですよね………うん、ウルフ戦から薄々は気付いていたけど、やっぱりアイナママだった。
それと、う~ん………目覚めるか………セーラちゃんとの賭けの時に目覚めた双聖神魔法があるのだが、未知の能力過ぎて俺は躊躇していた。
もし、取り返しのつかぬ事が起きても責任がとれない。
それにアビリティの神力もどんな効果があるかわからない。人に迷惑をかける可能性がある内は俺は決心が出来なかった。
これは最終手段にしておこう。
「師匠でも無理となると、私なんかじゃ、もっと無理よ………」
「魔術が使えないあたいなんてもっと無理だ…」
「私なんてさらに何も出来ませんわ。あの樹の魔物のように力を使えたら手助けが出来るのに…」
魔物なら何とかなる?気になる一言が飛び出す。
「ひょっとしてドリアードの事?セーラちゃん?」
思い当たる節があったのか、ミーナちゃんがセーラちゃんに聞き返す。
「なんなの?ドリアードって?」
「ええ、ミーナお姉さま。ドリアードと言うのはねクウちゃん、森に宿る樹木のマナが集まって出来た人型モンスターよ。大地に草花や木々を生やして人や獣を襲う怖いモンスターなのよ。私は聞いた事があるだけですけど、アイナ様なら実際に目にした事があるんじゃないですか?」
植物を生み出して操るだと!?
「あるわよ。蔦や樹の枝とか操ってきたり。草花や木々を生やして襲い掛かって来たわね。だから消し炭にしてやったわ。」
「それなの!!!いそいでつかまえにいくの!」
「どうしたのですかクウ様?」
一堂ポカンとしてる。何でもっと早く言ってくれなかったのかもどかしたがったが、セーラちゃんは知らなかったので仕方がない。
「クウちゃんのおようふくなの!」
「「「あっ!?」」」
灯台下暗しとは良く言ったものだ……俺も含めておでこに手を当てる。
「お姉さま方どうなさりましたの?」
「私ともあろう者が情けない。そうよ!その手があるじゃない!」
「流石クウちゃん!それとセーラちゃんナイス助言!」
「あちゃ~~あたいも気がつかなかったぜ。姐さん気を取り直そう。よし、そうと決まれば行くか!」
アイナママが理解してない残りの人に他言無用で説明した。
それはまさに雲を掴むような話だが、奇跡の数々を見てきた四人は希望の糸口に震える。
「なんと!!クウ様あなたはあなたは!!」
「クウ様!!あぁ~もう!うちの子にになって!」
これ以上ママは勘弁してください。
「クウ様が弟か!可愛い家族なら歓迎だ!」
三人に抱きしめられてしまった。クライムさんなんて少し泣いていないか?でも、町長だから責任のプレッシャーが凄かったんだろうな。
「まだあんしんするのははやいの!ドリアードはちかくにいるの?」
「ここから南に歩いて二時間行った場所に森があります。運よく奴等の住みかがそこに…。私達は近づけませんが、どうかお願いします。」
強力なモンスターみたいだ。でなければクライムさんの性格からして必ずついて来ただろう。
「では準備して向かうわよ。セーラちゃんは残念だけど今はお留守番よ。王都に着いたら私とミーナで特訓してあげるから今の内にゆっくりしておきなさい♪」
ウインクしてセーラちゃんの頭を一撫ですると外に出ていく。
「セーラちゃん、覚悟しておいた方がいいわよ………可愛い妹弟子を何処まで守りきれるかしら………」
脅すわけでもなく、ただ淡々と事実を話してから出ていくミーナちゃん。経験者は語るだね…
「あたいもセーラを一人前に鍛えるから覚悟しとけよ♪」
肩に手を優しく置いてから明るく元気な笑顔を見せて出ていく。お姉さんだねぇ~♪
「おめめよくなってきてるの。だから、セーラちゃんはクウちゃんのかえりをまっててなの♪」
セーラちゃんの首にぎゅっ♪と抱きしめてから俺は出ていく。
「みんなちゃんと帰って来て下さいね………分かりました。大人しく留守番してます。」
みんなの背中を見つめながら呟くセーラちゃんであった。
「私達も協力出来たらいいのですが、足手まといになってしまうので町で出来る事を探して待っています。何から何まで申し訳ありません。御無運を!」
外に出ていく俺達に頭を下げるクライムさん。この人のこういった所に俺は好感を持てる。
「クライムありがとう。じゃあ~30分後に西の入口に集合!」
「「「了解!・りょうかいなの!」」」
こうして、俺達一行は南の森へと向かった。
あれから馬で移動した為に予定より早く着いた俺達は目の前の南の森へと足を踏み入れていた。
森は人や獣等が入り込まなければもちろん道があるわけもなく、まともに進めないのであるが………………
「ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!あ~~~~はっはっはっ!!これだけ撃ってもポーションが必要ないからタダよ!タダ!今までの元を取ってやる!!オシャレな服だって、美味しそうなスイーツだって、高過ぎるポーションや魔術書のせいで、あれやこれや我慢してきたんだから!!!」
貧乏学生は辛いやな………ミーナちゃんの後頭部にくっついている俺は優しくナデナデしてあげる。まるで今までの思いをぶつけるように撃ちまくっていた。
「ミーナ、気持ちは私も分かるけど、ちゃんと集中して撃ちなさい。まだまだ無駄が多いわよ。もっと薄く先端の線部だけを強化するの。そうすれば今の出力のMP量であと四枚のウィンドカッターを出せるわ。あなたは構成速度と座標指定は私の教え子の中でも特に優秀なのだから、もっと一つずつ丁寧に撃ちなさい。」
多少呆れ顔で愛弟子を見るアイナママはヤレヤレと言った感じだ。
「周りはあたいの鼻で確認してんだ。ちゃんと学べよミーナ。」
「師匠にネイちゃん、分かっているけど…目から汗が止まらないのよ!何かにぶつけたいのよ!街のオシャレな娘達がこっちを見て…可哀想な目を私に向けるの……その後ね…背中から聞こえるの…「やだ!?何あれ~~♪」とか言って笑ったりする声が…他にも…オシャレも出来ないから「俺さ、もっとオシャレな娘がタイプなんだ、ごめん♪」とか言われて彼氏も出来ないし、いい男は金持ちに取られて残りは残念すぎるし………ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!」
黒歴史だ……力を付けて有名になったら見返そうね。
「ミーナちゃんいいこ~いいこなの~♪クウちゃん、いまはやさしくしてあげるの………ふびんなの…………」
「「好きに しなさい。& しろ。……はぁ~……」」
こうして、森林伐採をしながら進むと突如、目的のそれがやって来た。
「止めぬか!愚か者どもめ!!!木々の声が聞こえぬか!!この下等生物が!」
向こうから見れば、俺らは住みかを荒らしに来た無法者。俺の良心が何かを訴えてかけていた。
それと気になる事があった。対話が出来る上にいきなり襲い掛かってくるのではなく話しかけてきたと言う事…………これはひょっとすると………
「来たわねドリアード!ウィンどぉぉぉってクウちゃん!!」
俺はミーナちゃんのツインテールを馬の手綱のように引っ張り邪魔をする。
「クウちゃん!?どうしたの…あれがドリアードよ。」
「クウ?どうした…」
前を向いて警戒したまま話しかけてきた二人を無視して俺はドリアードに話し掛ける。
「ドリアードさん。おうちこわしてごめんなさいなの。はじめましてなの。クウちゃんいっさいなの。ドリアードのおねえさんのおなまえはなんていうの?」
警戒を解かぬまま向かい合う両者。緊張する最中、ドリアードはポツリと呟いた。
「リディア…」
答えてくれたと言うことは、少し距離が近くなった証拠だ。良しっ!…
「すこしだけでいいの。クウちゃんとおはなししてほしいの!おねがいしますなの………リディアおねえちゃん。」
ペコリとお辞儀をした後に真っ直ぐに見つめる。言葉も大事だが、目で訴える方が有効だと判断した。
「クウちゃんあれは!モン…」
「ミーナちゃんちょっとしっなの!!」
この世界の人だから当然の反応かも知れないが、今は黙ってほしい…
「くすん♪…………怒られた………なんで?」
ごめんね。だけど、ここは大事な場面だ。なんでもごり押しより話し合いで解決した方が得になる場合だってあるのだ。
「よかろう。我らも貴様らのような強者と争うのは望まぬ………特に赤子………貴様は一体………いえ、貴方様からは他の者とは違い過ぎる何かを感じます。………して、我らに何を尋ねるのでしょうか?」
ドリアードは警戒を解く姿にアイナママ達三人は物凄く驚いた顔でこっちを見る。
魔物のドリアードは俺に何かを感じとったのか?ひょっとしたら神や父の加護を感じとったのか分からないが、なんにせよこれで交渉が出来そうだ。
「ここからきたのにんげんのまちにばったさんがいっぱいでたの。それをクウちゃんがきれいにしたけど き«樹»や くさ«草»がいっぱいしんでしまったの。」
「待………待て待て待て待て!!!瘴気を浄化しただと!!そんな事、我ら森の眷属にだって出来ぬが…………貴方様の瞳を見ると嘘とは思えぬ…………だが、証拠がない以上、森と眷属を預かる身として言葉たけでは信じる訳に参りません。」
上に立つものである以上、事実に基づいて判断するのは当然だ。それ故にこのリディアさんは都合が良かった。
「ちょっと!クウちゃんが嘘ついてると思っているの!?」
ミーナちゃんが喰って掛かるがそれは逆効果だ。
「我は他の者とは話さぬ!それ以上、口を開くのなら我は立ち去る。」
睨みつけるアイナママにミーナちゃんとネイさん。また緊迫した空気が流れ、辺りを支配する。
「ケンカはめっなの!みんな、だいじょうぶだからクウちゃんにまかせてなの♪」
俺は三人に顔を向けて微笑む。信じてと訴える。
「…………………分かったわ。」
俺の顔を見て三人は察してくれたのか、引いてくれた。信頼に感謝だ。
「じゃあ、しょうこにこれをみてほしいの。」
俺はリュックから浄化してないバッタを樹の棒切れを箸のように使い、摘まんで取り出した。
実は浄化作業の時にリュックに大量に入っていた事を忘れていて、まだ大量に残っていたのだ。
「や……やめろ!!!瘴気の毒で森を汚す気か!…………………バッ!?バカな!!…………」
俺がバッタを掴むと黒々(くろぐろ)とした緑から鮮やかな緑へと変化した。
「かくにんしてほしいの。はい♪」
俺は片手を伸ばし手のひらにバッタを乗せ、もう片手はみんなに制止のサインを出した。
ゆっくりと俺からバッタを受け取り確認するとドリアードは俺にひざまづいた。
その光景に三人は驚愕の顔をして無言で佇んでいた。
「瘴気の毒を浄化し、消し去るクウ様は大地の守護者であらせられますか?」
俺への態度を更に一変させるリディアさんは恭しく畏まる。
「クウちゃんすてられたこだからよくわからないの。う~ん………でも、クウちゃんのおとうさんならもっとすごいの♪」
「クウ様を鑑定させてもらっても宜しいでしょうか?」
「おお~れあすきるなの!!リディアおねえさんすごいの!あっ!もちろん、かんていしてもらってかまわないの♪」
いいな~鑑定スキル、正直羨ましいと思った。俺の分からぬスキルとアビリティ教えてくれないかなと思ってしまった。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!。…………………………ダークエルフに人間と犬人よ。これ以上森を荒らさないのなら先程の非礼を詫びよう。そして、クウ様、先程の非礼をお許しください。我が命で償えるなら森と他のドリアードは見逃していただきたくお願い申し上げます。お前らも出てきて土下座するんだ!!!族長命令だ!!!」
膝を折った状態から土下座に移行するリディア。ワラワラと現れる大量のドリアード集団。
よくよく見るとみんな若い女性な上に、美女で格好も大事なとこを葉っぱで覆っているだけで際どかった。
しかも、土下座すると全裸みたいに見えた。そんな集団の長であるリディアは顔面蒼白な上に汗らしき物を大量にかき、仲間を呼ぶ声はもう泣き声に近い。
そんな族長を見て周りのドリアードも同じく震えあがっている。ドリアード達を眺め、俺の方を向いたアイナママ達はやっと口を開いた。
「クウちゃん何をしたの?こんな光景ママ初めてよ……………」
「モンスターが土下座するなんて…学園の誰に言っても信じてもらえないだろうな…………」
「どうするんだこれ………流石に狩れないぞ、こんなんじゃ………寝覚めが悪すぎる………」
俺達の目的はドリアードの魔石。その為には狩らないといけないのだが、この状況で殺るのは確かに目覚めが悪すぎる。
そして、狩ると言う言葉にビクッと反応するリディア。
「どうかどうか!!!この通りです!お願いします………うえぇぇぇぇぇん……………」
とうとう泣き出してしまったリディア。鑑定で色々ヤバいと思ったんだろうな………居たたまれない俺ら一行。
既に数分前の緊張した空気は跡形もなく消えていた。俺は土下座しているリディアの所に近づいて頭を撫でてあげた。
「クウちゃんたちひどいことしないからなきやんでなの。いいこ~いいこ~なの♪クウちゃんがおねがいしたいことはきたのまちに き«樹» や くさ«草» や おはなさんをだしてほしいの。」
「その程度で良ければ!ですが、少し問題が………」
青ざめた顔で語尾が小さくなっていくので、より優しく頭を撫でてあげる。
「なにもしないからえんりょなくいってなの。あと、どげざやめてなの。いたたまれないの。」
「分かりました。お前らも立ち上がれ。失礼しました。それでお答えなのですが………人間共の住みかがどの程度か分かりませんが、我らの力はMPに加え普段から大地の養分を体内に溜め込み、使う際に養分も加える事で新たに植物を急成長させ操る事が出来るのです。なので、成長速度を早めようとすれば、浄化された土地の養分だけでは足りないかと。特に急成長は何倍も養分を使い慎重に行わないと、過剰摂取の調整に失敗して逆に枯れてしまうか、実っても人間が食せる物になるか保証出来ません。」
制限があったが、問題は栄養の一点のみ。ならば…
「なら、ためしたいことがあるの。そのまえにアイナママ!ミーナちゃん!ネイおねえちゃんのこうそくをたのむの!」
パチン♪と指を鳴らすと二人はネイさんの脇に移動する。
「はっ!?クウ!そんなにあたいのことが信じられないのか!酷いぞ!!クウ!」
説得力ゼロである……
「ネイあんた昨夜の事をよく思い出しなさい!そこのドリアード手伝って。樹に蔦で巻き付けて縛っていいから。」
「見境無くなるのが目に浮かぶわ!!!少し黙ってなさい。」
「あ……あたいにも……ひ……一口……ひと………モガ~~~!!」
二人に両腕を捕まれ、連行されたネイさんはそのまま樹に縛られ口に布を被せられもがいていた。
「おさわかせしてごめんなさいなの………それでこれをたべてほしいの。」
ドリアード達に囲まれる中、俺は両手を前に出して発動させた。ぱんぱかぱーん♪愛情100%のペロ・一口葉っぱサイズ食感サクサクと心地よいドリアードの森限定バージョンMP100を作ったのだ。
ここはハートをガッチリと掴みたいのでいつもの百倍にしてみた。暴走しないか心配だが、モンスターだし、人よりマナを多く持つ存在だから大丈夫なはずだ。
「いつも以上にいい匂いね。ママもあれは食べたいかも。」
「クウちゃんガチで作ったわね。これはネイちゃんで無くても食欲を注がれるわ。」
「むはっ!?ほへほわふひてふへ~わぁらいみぬぃ!(はっ!?これを外してくれ~あたいに!)」
「ネイちゃん静かに!!もっと口に被せるか……………………よしっ♪」
いつも以上に気合いを入れたせいかアイナママ達三人も食欲を刺激されている。だが、ドリアード達はそれ以上の反応を示した。
「凄いマナの匂い!?うぅ~堪らない!!!リディア様が羨ましい!」
「この匂い!?森の養分何年分いや…………何十年分の熟成された養分なの!リディア様、我らにも一口!!」
「だ……駄目……体があれを……リディア様!!早く食べて!!でないと私!!」
目がギラついて今にもペロに飛び掛かりそうだ。
「これはなんと美味しそうな匂い♪クウ様から出たマナ?はっ!?これが例のスキルとアビリティなのですね!!!ならば味は………ゴクリ♪………………頂きます………!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
周りのドリアード達の羨ましそうな視線を浴びる中、ペロを食したリディアに変化が起こった。
「いいかおりなの♪クウちゃんこんなにいいかおりはじめてなの♪リディアおねえちゃん、あじとえいようじやなくてようぶんはどうですかなの?」
*モンスターテイムLV5を取得しました。
「クウ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」
「ぬぉ!?よそうのひとつだからたいおうできるの♪クウちゃんはアイナママたちにだてにきたえられてないの♪よしよし♪」
まさかのスキルゲット!しかもレベルがいきなり5だと!?予想外の事が次々起こる。
俺のお腹に飛び込んで来たリディアをなだめながら冷静に対処したが、目のやり場に困った。
感触と温もりが人と変わらないので俺は真っ赤である。
「リディア様が開花してる!?嘘!!一体どれだけの養分とマナが入ってたの!?」
「開花する前に我らドリアードは大抵寿命が尽きるのに………私にもクウ様ぁ~私にもお恵みを!?リディア様だけになんてズルいですわ………ポロポロ♪」
残り全員のドリアードはガチで泣いている。止めて!?そんな目で見ないで……………みんなに相談しよう。
「すとっぷなの!そうだんするからおとなしくまってるの。ママ!ミーナちやん!………ネイおねえちゃんはそこでたいきなの…」
「………………(シクシクシク)」
静かだと思ったらえらいことになってるな……見事な捕虜だ…
「驚いた!?あのドリアード聖魔化しちゃったわ。クウちゃんどれだけMP込めたの!?」
「いつもの100ばいなの。これでもかなりおさえたけど、クウちゃんめっ!されちゃうの?」
やってしまったか!?モンスターを強くするって事は、この世界の人達にとって看過出来ない事態だろうから…
「クウちゃん逆よ!!!!聖魔化した魔獣や魔物のモンスターは邪を払う存在として希少種のさらに上の絶滅種に認定されているの。四つの大国で共通の法として捕獲や討伐を厳罰される位厳しく、破れば大陸全てのギルド又は国からお尋ね者にされる位なのよ。ただし、聖魔化したモンスターと契約を結ぶテイムによる捕獲は罰せられないけど、成功確率は0.0001%以下って言われているのよ。契約者に多大な恩恵を与えるとか、契約者の住む土地に加護を与える存在として、四つの大国で競うように褒賞金を出して聖魔化したモンスターの情報収集や聖魔化したモンスターの契約成功者にスカウトが激しい位なの。モンスターテイマーのLV3の凄腕の人が一生の内に聖魔化したモンスターを二匹テイム出来れば大成功。ほとんどの人が生涯を通して努力をしても、一匹も無理なんてざら。世界に数人しかいないと言われているLV4のモンスターテイマーですら二匹が今の所最高記録なんだけど……………このリディアってドリアード、クウちゃんにテイムされてない?」
「さっきあたまのなかにもんすたーていむLV5をしゅとくってでたの。」
「「はい!?」」
やっぱか……………だと思ったんだ。しかも最大の5だし。
「クウ様♪わたくしと契約してくださいませ♪リディアはクウ様の可愛いペットになりますわ♪ずっと可愛いがってくださいませ♪スリスリ♪」
可愛いい!?ヤバイぞ!?リディアは綺麗と言うか改めて見ると髪はつやつやな緑色で腰まで伸びている。
頭の登頂部にピンクの大輪が咲いていて凄くいい香りかする。顔はアイナママの妖艶で端正な大人な顔とは正反対の可愛いくて小悪魔的なミーナちゃんと同じ属性だ。
アイナママほど胸は大きくないがそれでも充分大きい、そしてスラリとした体型の身長170前後位か。
モンスターというより女性としてレベルが高すぎるし、俺のペットを希望だと!!凄い澄んだ目と笑顔で甘えてくる。
俺の理性がががががが………もちつけ!ぺったん♪そいやっ!!!ってちっがーーーーーーう!!
「色々反対したいけど、クウちゃん契約しなさい!ママは東の国の者としてもそうだしクウちゃんのママとしても勧めるわ。こんなチャンスめったにないわよ。それにこの子と契約すれば確実に町は助かるわ。あと、残りの子はクウちゃんが判断しなさい。現状は悪い事じゃなくいい事をしてるんだから。」
「クウちゃん人生勝ち組か~いいな。ミーナちゃん嫉妬しちゃう。しかもLV5って…伝説誕生しちゃったよ、あははは♪笑うしかないわね……ここまですごいと。」
「じゃあ~~リディアおねえちゃん。」
「クウ様♪リディアとお呼びくださいませ♪」
極上の笑みを向けるリディアちゃん。あぅ~、何故こうなった。
「ぬぅ~。よびすてはクウちゃんはいやだから、リディアちゃんってよぶの。けいやくをじゃあ~するけどいたくないの?」
「ご安心くださいませ。クウ様は最後に契約の口づけをしていただくだけですよ。では急いで契約しましょ♪我、森の眷属にして自然と共に生きし者。我が主として我の全てを捧げ共に歩む事を願う………クウ様わたくしの魔石の上に誓いの口づけを。」
真剣な眼差しでモンスターの弱点である魔石を体内から胸の間に浮かび上がらせる。これは絶対の忠誠の証と俺は感じた。
何せモンスターは魔石を傷つけられれば生きられないのだから、命を物理的にさらすなんてマネ…俺なら出来ない。
それ位、契約を結ぶと言うのは決死の覚悟がないと出来ない。胸の谷間に顔を入れるのが恥ずかしいとかそんな気持ちで無下にしていい事じゃない。
俺は魔石に優しく口づけをすると、俺とリディアちゃんが繋がったのを本能で理解した。そして、頭の中に例のあれが出た。
*主従契約LV5を取得しました。
*聖魔樹リディアと主従契約を確認。
*サーバントよりスキル及びアビリティのマスターへの献上を確認しました。
*意思疎通のアビリティを取得しました。
*サーバント召喚のアビリティを取得しました。
*マスターよりサーバントへ加護の付与を行います………サーバントへの付与に成功しました。
「リディアちゃん♪あらためてよろしくなの♪きたいにこたえられるますたーになれるようがんばるの♪」
「はい!クウ様♪もう既にあぁ~リディアは幸せ者です♪このような素晴らしい加護をつけて頂き言葉に出来ません♪それにクウ様の手が♪繋がった心が♪ポアポアというか、とにかく最高なんです♪」
俺を抱きしめながら極上の笑顔を浮かべ蕩けている。しかし、ぽあぽあっ何?
「ありがとうなの~ポアポアがなんなのかわからないけど、いいこ~いいこ~なの~♪ところであっちのこたちどうしようかなの。」
「はぅ~♪出来れば全員にクウ様のマナをお与え下さればリディアは嬉しゅうございます。」
「じゃあじょうけんがあるの。みんなにリディアちゃんとおなじペロをあげるの。だから、きたのまちのひとがこまったらたすけてほしいの。」
やり取りを見ていたドリアードが全員頷き返事を返す。
「我らに出来る範囲でなら構いません。ぜひお恵みを!」
「ニーミナ前に出てこい!」
「ハッ!ここに。」
一人のドリアードのお姉さんが前に出る。顔にズルいな~と出ているが、リディアちゃんは無視して進める。
「我はクウ様と契約を既に結び、お供としてついていく為、族長はお前に委ねる。後は頼んだぞ。」
この一言で我慢してた他のドリアードもついに爆発する。
「「「「「「「「リディア様だけズルい!私達もクウ様のペットにしてくだい!!」」」」」」」」
こんな美女軍団に言われるなんて俺の人生でかつてあっただろうか!否!あぁ~転生万歳!だが、いくら何でも数が多すぎる。
「ごめんなさいなの。クウちゃんおとうさんとのやくそくでおうとにいっていろいろけいけんしなくちゃだめなの。だから、みんながいやというわけじゃないの。それにリディアちゃんのまもったもりにだれもいなくなったら、もりさんもかわいそうなの。だから、またリディアちゃんがかえってきてもきれいなもりがみられるようにまもっててほしいの。」
「済まぬなみんな。クウ様もこう仰られておる。ニーミナだけでは大変だろう。みんな一丸となって森を守ってほしい。」
ドリアード達は渋々だが納得してくれたみたいだ。
「じゃあ、いちれつにならぶの。ペロをくばるの♪」
こうして、次々と聖魔化していくドリアードにハグされたり、キスされそうになったり、三人が色々と防いでくれたりと慌ただしかったが、誰も血を流す事なく無事に事が済んだ。
「凄い光景ね~♪この森は世界一有名な森になりそうね。しかも、全員クウちゃんのお手付きな上にリディアちゃんが死亡したら交代待ちとか、世界中のテイマーが聞いたらどんな顔するやら。」
「実際に目の前でこうしても信じられませんよね。師匠の護衛について来て良かったです。クウちゃんに会えたし、こうして目にしても信じられないような出来事も体験出来たんですから。」
「あら!?ミーナが素直なんて天変地異の前触れかしら。」
「師匠ひど~い!クウちゃん慰めて~♪」
いつもの漫才はいいから!何だかんだで仲のいい師弟である。
「ミーナちゃんあそんでないでしゅっぱつのじゅんびするの!まだ、いそげばくらくなるまえにつくの。」
「クウちゃんまで!!最近扱い酷くない!?」
「クウ様と一緒♪どこまでもお供します♪」
「じゃあ、いいわね。リディア、お別れを言って来なさい。それまで私達は待ってるわ。」
「アイナだったな。すまんな、ありがとう。クウ様、暫しお待ち下さいませ♪」
しばらくしてリディアちゃんが戻って来たので馬に股がりその腕に包まれ町に向かった。
はて?何か引っ掛かる感じがしたがとりあえず町のみんなの笑顔が今から楽しみだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【名前】クジョウ クウヤ
【年齢】12
【性別】男
【種族】猫神族
【クラス】着ぐるみ師
【レベル】8
【HP】14/14 +70
【MP】1,210,001/1,210,001 +120+[245,000・20%UP]
【力】9 +10
【技】23 +20
【耐久】9 +30
【敏捷】30 +60
【魔力】10701 +60+[2140・20%UP]
【運】9 +20
【魅力】10022+50
【もふもふ】∞
【スキル】
調理LV1 家事LV1 農業LV1 もふもふ魔法LV2 魔力操作LV1+1[+3] +氷属性魔法LV1 +氷属性耐性LV1 +MP回復速度上昇LV2[+3] 双聖神魔法LV1 モンスターテイムLV5 主従契約LV5 [植物想造LV4] [植物成長促進LV4] [植物強化LV4] [植物操作LV4] [樹液精製LV4] [細菌想造LV4] [細菌操作LV4] [細菌成長促進LV4] [細菌強化LV4] [毒物創生LV4] [光属性魔法LV3] [光属性耐性LV3] [光属性魔法吸収LV3] [土属性魔法LV3] [土属性耐性LV3] [魔力強化LV3] [MP上限値上昇LV3] [鑑定LV5]
【アビリティ】
究極のマナ味 着ぐるみクリエイト 究極の抱き心地 育成速度遅延 言語翻訳・翻訳 +浮力上昇 神力 意思疎通 サーバント召喚 [聖魔樹の華香] [地脈吸引]
【加護】
サーヤ女神の加護
トーヤ男神の加護
聖龍皇アドアトラスの加護
【契約】
聖魔樹リディア【従】
【アイテム】
バンパイアニードル
フェアリーリング
聖龍皇皮のリュック
特別転生の番号札
絹の袋
ゴブリンの着ぐるみ
大量のミリオンバッタ(汚染)
【着ぐるみ】
アイスバードの着ぐるみ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ふつおたコーナー(MC:たまご丼)
ペンネーム「いきなり出世した」さんより頂きました
Q:社長がいい男の子を捕まえて寿退社しちゃい、後を全部任されました。私はどうすれば良いでしょうか?
A:いきなりトップになったからって威張っちゃダメダメ!言うこと聞かない奴はドンドン余所に飛ばしちゃえ!いきなり出世したさんならやれるやれる!というわけでシーユー♪
ニ:玉の輿いいな~私もペットにしてほしかったな~…………嫌な事は飲んで忘れよ!付き合うよ。
ネ:うぅ~あたい……あたい……みんなのバカ~~~~~!




