表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/98

いんがおうほうなの

お読みになる前に!

*虫が苦手な方 *食事前・食事中の方 *グロテスクな表現が苦手な方へ


なるべく不快にならぬよう努力しましたが苦手と思う方は飛ばして下さい。18話で一連の場面が完結して19話より新しい場面になってますのでそちらまで飛ばしてください。

活動報告にて19話までに必要な補足を書きますのでそちらを見てください。


レクドナルドの街に平穏が再び訪れた朝、俺ら五人は東の王都へと旅立った。

あの街にはまた帰郷の際に寄らせてもらう事を決めていた。何故かと言うと………それは昨夜の宴で出されたポテポテの実とはやはりじゃがいもの事であった。蒸かしてから塩コショウのみで味を付けるシンプルだがとても調理法でとても美味しいじゃがいも料理だった。だが、ぜひ父には揚げ物であるフライドポテトをいずれは作って差し上げたかったからだ。

そうそう、ガイアのおっさんにハイウルフの変異種の魔石をお礼に渡されたが俺は受け取らず着ぐるみにしておっさんの約束の品に変えた。

だって俺には自分ルールがあるからね。俺がなるべく自分で狩り取った魔石の着ぐるみしか着ないつもりだ。

なのでアイスバードの着ぐるみをバーツ様に返したのだが…アイナママ達の四人が俺の着たアイスバードの着ぐるみを欲しがり揉めたので返せなかった。

あと、ウルフの回収は状態の酷い物や既に森の生き物によって半分は処分されており、残り半分近くは無事だったのでその素材や魔石を回収してもらった。

そのほとんどをギルドにて換金し街へ寄付し余った大量の肉はリュックに入れれば腐らないので俺が全部報酬としてもらった。

バーツ様はなかなか寄付を受け取らなかったがおじさんを呼んだら大人しく言うことを聞いてくれた。

こうして全てを無事解決し、一見落着で出発したはずなのに空気は最悪だった。


「あなた~♪王都に着いたら父に紹介してもらった商人のとこへまいりましょう♪あなたのために私頑張るから!それに~あなたとお風呂は毎日入りたいからなるべ…」


「あなたあなたとママは認めませ~~~~ん!!」


「「あっついに切れた…」」


「黙って聞いてれば!ママはまだ同棲を許した訳じゃありませんよ!」


「アイナ様には関係無いじゃないですか!クウちゃんのお母さんじゃないのに!」


「この泥棒猫が!!小娘だからって容赦してたのに!!!あ~~~どう料理してくれようかしら!」


「もう!けんかはめっ!なの。セーラちゃんもママとなかよくなの!ママもおこっちゃめっ!なの。」


「「だって!!あっちがケンカ売ってくるんだもん!!」」


「ミーナちゃん…ネイおねえちゃん…たすけてなの…………」


「クウちゃんが勝手に同棲を決めちゃったんだもん。ミーナちゃんは知りません!つ~ん!…」


「あたいはクウを子供扱いしない事に決めた!大人はちゃんと責任取らないとな!ふんっ!…」


「うぅ~……どうしてこうなったの…………」


「あなた~♪元気を出してください。セーラはいつでもあなたの味方ですわ♪」


セーラちゃんに肩車して手を伸ばし瞼の上に手を添えている俺。治療の為、俺は常にこうしてる訳だかそれが余計に三人を不機嫌にさせていた。


「ずっと我慢してたけど限界だわ!!ママにもクウちゃんとスキンシップさせなさい!泥棒猫!!」


「賛成!!治療は寝る時にクウちゃんにしてもらえばいいと思います!!」


「セーラ嬢ちゃん、みんなこうだしあたいからもお願いするから少し譲歩してもらえないか?」


「皆さん酷いですわ!私だって好きでクウちゃんを独占してる訳じゃないですのよ。そう!?あくまで治療の為!そう治療の為です!」


大事な事だから二度言ったのね。でも…嘘だってバレバレです。


「そんな見栄透いた嘘が通じると思ってるの?この泥棒猫が!!」


「いいかげんにするの!!!!!!!!!!!」


温厚な俺でも流石にブチギレである!!!


「セーラちゃんはおめめのためにしかたがないの!!!バーツさまのあのときのことばとすがたちゃんとおもいだすの!!!それとセーラちゃんもみんなをおこらせちゃめっなの!!!クウちゃんはセーラちゃんとおうとでいっしょにすむけどそれいじょうのかんけいじゃないの!!みんなはんせいするまであたまひやすの!!!クウちゃんそれまでさきにすすんでまってるの!!!」


俺は宙に浮かぶとそのまま高く舞い上がり全速力で街道に沿って東へ飛んだ。


「ああ~~クウちゃん!ママは!ママは!…」


「クウちゃん待って!もふもふがホント足らないの!…」


「あちゃ~~~!ありゃ~クウの奴、本気で切れてたな…………」


「くすん♪……………置いてかないで………あなた………」


「少し落ち着いてから話し合いましょうか…………」


「「「はい・だな…」」」


各々思う事があったのか…東の空に飛んで行った俺を思い重い空気の中、後を追うのであった。






と…………ブチギレした俺だが…三人に相談もせずに決めた事がそもそものケンカの原因である。まだ数日とは言え、親密な時を共に過ごした……そう、もう家族と言って良い人達だった。

父は自分以外の者の気持ちも理解せよと言っていた。そして、俺の精神年齢は60を越えた初老に達すると言うにも関わらず簡単にキレてしまった。以前の俺では考えられない事だ。もしかしたらだが…この肉体の影響を受けてるのかもしれない。簡単に怒ると言う事は冷静な思考が中断される訳でいざと言う時に冷静な判断が出来ず、結果…後悔する事になるのだ。俺はこの一件を反省する為に答えを模索するが……答えの出ない思考のループに囚われ頭を抱えていた……


「あぅ~じょせいをたいせつにしないとばちがあたるの…」


上空から街道に降り前方を眺めると小さな町が見えてきた。町の周りは田畑が広がっており緑が激しく揺れ動いた………俺は今見たものを信じられなくて目を擦りもう一度町を凝視する。一部の緑がまるで霧の塊ように広がると町の中へと入って行く。遠目だが町の人達が総出で追い払おうとしてるが緑の霧の規模に対して圧倒的に町の人の数が足りな過ぎていた。緑の霧は蛇のようウネウネうねらせて、さらに幾つも枝分かれを起こし町に散らばった。


「あれはなんなの?………ペチ♪………ん?」


頬に当たった物を掴むと緑の殿様バッタらしき物を掴んでいる事に気がつき慌てて投げ捨てた。


「ぬぉ!?…とのさまばったなの?……まさか!?あれって………」


そう、今や町全体どころか周辺の木々や草花までも全て喰らい尽くすが如く大群のバッタが蠢いていた。

その大群は徐々にその数が増し手をつけられない勢いと化していた。今から俺が向かったとしても既にどうしようもないレベルだった。

その場で立ち尽くす事しか出来ない俺はただ黙ってその光景を見続けていた。

…あれからどれくらい経ったのだろうか。突如バッタの大群が一斉に動きを止めた。見渡す限りの全てのバッタに一切動きがないのだ。

不気味だが俺は近くに寄って動かぬバッタの一匹軽くつついた。


「しんでるの…………なんでなの?…………」


一連の出来事に混乱するが町の人達の安否を確認する方が大事だと我に返り急いで町へと向かうのであった。






家々に急いで避難した人達が出てきて怪我人を介抱したり、バッタの死骸で埋めつくされた一面を見て、その場に座りこみ項垂れてる者など様々な様相であった。


「はじめましてなの………あたまをつよくうってるの………じっとしててなの………」


頭から血を流すおじさん。頭の出血は派手に流れるから見た目ほど大した事がないのだが周りは大抵混乱する。俺は地面に腰掛けているおじさんの頭にそっと手を触れ傷を塞ぎ癒した。


「……もうなおったの…おばちゃんとおじさんぼ~~っとしないでけがにんさがしてここにつれてくるの!」


「凄い!坊や一体……!そ…そうね…今すぐ連れて来るわ!」


「これは一体………ってこうしちゃいられないな!俺は東側の怪我人を集めてくるから…おまえは西側を頼む!」


「分かったわ!」


俺は周辺に転がっているバッタをポイポイ端に投げて何人か寝そべるスペースを作る。町の至る所はバッタで占拠されているからね。こうして、次々と運ばれて来る人達を見て治療し続けた。


「坊や…俺はこの町の町長のクライムだ。住民を治療して助けてくれた事に感謝する。見た処と坊やは宙にも浮き、手を触れただけで治す力といい何者なんだ?」


「アイナママといっしょにたびしてるの。アイナママはしってるの?」


アイナママの名を出すと一堂はざわめく。流石アイナママだ。この大陸で知らない人はいないんじゃなかろうか………


「アイナ様の御子息であらせられましたか!いやでも…行きに寄られた時に坊やは見掛けなかったが…」


「アイナママはほんとうのママじゃないけどそういわないといけないの。でないとアイナママがおこるの。」


「何か事情がおありのようですね。処でアイナ様はどちらに?一緒ではないのですか?」


「アイナママたちはこっちにむかってるとちゅうなの。クウちゃんだけさきにきたの。」


「そうでしたか………せめて………アイナ様が間に合えばこの町は救われたかも知れなかったのに…………………残念だ…坊やは最期の客人となりそうだ。ここではなんですからどうぞ我が家へ…みんな!!俺の家に来てくれ!今後の事について話し合おう……今はとりあえず…一息いれようじゃないか…」


俺はクライムさんの後についていった。町の人は下をうつ向き泣いている人、物に八つ当たりをしている人、呆然と虚空を見つめている人と様々だった。

重たい空気の中、しばらく進むと町の中央に大きな木の家があり、そこを目指している事が分かる……バッタによる影響だろう……木で出来ている為かあちこちを食い散らかしたが如く食い跡が残っており…窓の一部が壊れたり…花壇や子供が遊ぶブランコの残骸が転がって……無惨な爪痕がより一層に空気を重たくした。……ここがクライムさんの自宅のようだ。俺は黙ってクライムの後に続き中にお邪魔した。




中にお邪魔すると視線集まるなかテーブルの上に座布団のような物を置いてくれたのでその上に座る。そして…


「坊や………失礼、名前をお聞きしても宜しいでしょうか。」


ずっとこんな容姿の俺に敬語で接してくれるクライムさんに俺は敬意を払おうと思っている。中々出来る事じゃない。立派な人だ。


「みなさん、クウちゃん1さいです。アイナママとこっちにむかってましたがクウちゃんだけさきにきたの。よろしくなの。」


「よろしくじゃねえよ!!!小僧だけ来たって意味ねえじゃないか!!!ふざけんなよ!!!」


その通りだ……アイナママがもし先に来ていたとしたら事態は違っていたかも知れない。だからと言って俺のせいでもないのだが、この状況下では人に八つ当たりでもしなければやってられないのも痛いほど分かる。


「おい!止めんか!!馬鹿者が!…………すみませんクウ様………今町はご覧の有り様でして…壊滅したばかりで皆少々気が立っておりまして………」


この人もこうして何とか気を張っているが折れる寸前なんだろう………


「きにしてないからいいの。それより、むしさんぜんぶしんだの。もうあんぜんじゃないの?」


状況を確認する為にもまずは情報を集めて出来る事を探らなければ……おかしいのだ。バッタは既に死滅して事態は納まった筈なのにクライムさんは壊滅したと言っていた。つまり既に詰んでいると………


「ガキが!!!ミリオンバッタはな!作物や木々や草花を根こそぎ喰らい尽くすとその場で死ぬんだよ!!そして、体に貯めた瘴気の毒で土地を人の踏み込めない魔の土地に変えるんだ!!!何も知らんガキが!!!俺らの故郷が………これからどんな暮らしが待ってるかてめえに……」


悔しくて言葉を詰まらせながら俺を睨む青年。ごめんね…俺には絶対に理解出来ないほどの悲しみだろうね。故郷が死んでいく様を見せつけられるなんてどんな地獄だろう………他所から来た俺には決して分からないだろう…


「おい!!誰かセージを上に連れてってくれ。クウ様…重ね重ねすみません…」


全然構わない。むしろ彼の嘆きを聞いて俺は頭を切り替えた。俺に出来る事があればやってやる!!!


「かまわないの。あとさまもいらないの。クウちゃんとよんでなの。はなしをもどすの………ばったさんをどこかべつのばしょにすててやりなおせないの?」


まずは疑問に思っている事を一つ一つ聞いていこう。


「坊や…それは無理なんじゃよ。あのバッタにこの土地の養分を根こそぎ奪われたせいでここは土地が痩せ細ってしまったんじゃ…また、バッタを他の地に捨てればその土地が瘴気の毒に犯され……更にバッタの中に蓄えられた養分が過剰に大地に注がれれば土地に入った瘴気の毒が時と共に浄化されたとしても注がれた過剰な養分が逆に木々や草花を腐らせ荒れ果てた土地になるんじゃ…」


厄介極まりない存分である。土地の養分は作物や周辺の植物が持っていて、町の人達はその一部の恵みを貰い生きて来たのにそのサイクルが壊されれば打つ手無しだ………厄介な点は3つ。

一つは食料問題。これから過ごすのに食料がない為に他所から大量に調達しなければならない事。肉や魚等でしばらくは持つだろうが人はそれのみでは生きていけない。

二点目は瘴気の毒。父が危険視する程の猛毒…その毒を父は身を挺して大地から遠ざけたにも関わらず、あの森を死の森と呼ばれる場所へと変貌してしまう位に恐ろしい毒なのだ…それがバッタを通して大地に注がれれば人はもう踏み込めなくなるだろう。つまりどこにも結局捨てられない。

三点目はバッタに蓄えられた養分。つまりそれによって土地が死んでしまった事。土地の養分とは自然のサイクルを永い時を経て貯まる物だ。腐葉土や動物の糞等で土を甦らせる事も数年掛ければなんとかなるかも知れぬがそんなに待てない。


「ひどいの…………」


「だから、国からの厳命で大量発生したミリオンバッタを他所の土地で処分する事は昔から禁止されているのです。逆らえば町の住民全員奴隷堕ちか最悪は死刑に…………国からある程度の補償と支援はありますがとてもやっていける金額と援助は出ません。かといって町を離れても次の町で同じ仕事で食っていければいいがそうでなければ結局同じ事です。」


「・・・・・・・・・・・・」


言葉が出ない…酷すぎる…父を苦しめた瘴気。この世界の何処からかまだ湧き出していると父が言っていたが俺がいつか見つけてなんとかしてやる!でも今は目の前のこの人達を何とかしたい!


「クウさ………そんな顔しなくていいんですよクウちゃん♪気持ちは伝わってますから…貯えてた食料庫もやられ…ホントに何も出せませんが部屋だけは沢山あるのでご案内します。」


諦めちゃ駄目だよ!!!俺の中で間違っていると何度も心の声が上がる!


「まってなの!ちょっとだけでいいからクウちゃんにつきあってほしいの!クライムさんおねがいいなの!あと、クウちゃんたべものたくさんあるからみんなでわけてなの♪」


俺はリュックにウルフ討伐で貰った大量の肉を入れていた。次々とリュックから出てくるウルフのお肉にクライムさんも含め目が点になる一堂。


「とりあえずウルフのおにくなの。ぜんぶで500ひきぶんはあるからどこかほぞんできるばしょか…ひもちできるほしにくにできたらおねがいするの。おかねはいらないの。しかたなくいれてたから……あ~~これですっきりするの♪」


最後はわざとらしかったがクライムさんに俺はニッコリと微笑む。


「クウち………いえ!やはりクウ様と呼ばせて下さい!!ひとまずこれで凌げます!手の空いてるものは全員手伝え!!セージも連れて来い!クウ様なんといって……」


瞳に宿る光が少し強くなった気がするがまだまだだ!


「まだなの。クライムさんにおしえてほしいことあるの…………クウちゃんのかんがえがもしあたっていれば………まちをなんとかできるかもなの。だから、とりあえずまちでいちばんおおきなおさらやなべでもはこでもなんでもいいの。つちをいれてもまったくもれないおおきないれものをよういしてなの。それとまちのなかのばったさんをなるべくいっかしょにあつめてほしいの。」


皆が俺に視線を送る………多分ワラにもすがる思いなんだろうな。このまま待ち続けていても待っているのは破滅だ。いや!そんな事には決してさせない!特に父を苦しめた瘴気の毒なんかに俺は屈してなるものか!!俺の瞳に宿る光をクライムさんは見つめる…


「クウ様あなたは一体何を考えて………いや!私に出来る事があれば何でもお申し付け下さい。おい!聞いたな?祭りの時に使う大鍋があったろ!あれを持って来い!バッタの方は南のヨーラとヤサックの畑の所に集めるんだ。潰して瘴気の毒を喰らわないように気をつけて集めるんだぞ!」


やっぱり俺、この人の事好きだわ。四の五言わずに信じて動いてくれる。こんな容姿の俺にだ。


「よろしくなの♪とりあえずおにくどうするの?」


「坊や!おばちゃんの家に来てくれる?加工場があるからそこに出してほしいわ!しかし♪よく見ると可愛い子ね♪私の小さい頃みたい♪」


「おいおい!おばちゃん子供の前で嘘ついちゃダメだろ!」


「こらっ!!セージあんた!なんて事いうんだよ!まったくああいう大人になっちゃダメよ坊や♪」


「「「「「「「「わはははは♪」」」」」」」」


町の人にも活力が湧いて来たみみたいだ♪良かった。


「さっきはすまねえ………町の為にありがとな!」


デレた♪あれだ!不良とかが捨てられた子犬を拾って好感度を上げるみたいなあれ♪だが俺にはそっちの趣味がない!


「こんなことできにしてたらアイナママとたびできないの♪」


「おもしろい坊やだな!期待してるぜ!」


おばちゃんに抱っこされ加工場に着き、次々とウルフの肉をリュックから取り出すと世話しなく動く面々、皆黙々と必死に作業する。もちろん子供だって言われなくてもだ。無理もない、今だってギリギリなのだ。何かする事で希望を掴もうとするのは当たり前だ。俺の瞳には懸命に働くみんなの姿が何よりも尊く見えた。


「『みんながんばってなの♪』…………」


俺は小さく呟いた。そんな俺をクライムさんがじっと俺を見ている事に俺は気づいていなかった


「…………クウ様♪バッタの所に参りましょう♪」


優しく頭を撫でてくれて俺は我に返る。


「なの!?………あんないよろしくなの。」


ぼーとしてちゃ駄目だね………反省。加工場からバッタが集められた場所はすぐ近くだった。潰すと瘴気の毒が漏れる為に高く積み上げられないが幾つかの山が出来上がっていた。

そして、その傍らには二メートル以上はあるタライのような浅鍋が用意してあった。


「ひょっとしたら…だめかもしれないの…そのときはごめんなさいなの…」


「俺らにはどうせ後がないんです。クウ様が何をやられるのか分かりませんが俺らは責めませんよ。お前達そうだな!」


皆頷いて答えてくれる。それを聞いて俺は決心した。足下に転がっているバッタを掴むと黒々(くろぐろ)とした緑色から鮮やかな緑へと変色する。それを見た面々はざわめく。


「やっぱりなの!クライムさん…………クウちゃんしんじてこのばったさんをおててでにぎりつぶしてほしいの!」


真っ直ぐにクライムさんを見つめると俺からバッタを受け取り迷わず握り潰してくれた。周りには息を飲む者、軽い悲鳴をあげるもの様々であった。そして、ゆっくりと手のひらを開ける………


「愚問です!クウ様…………これは!!!!!!瘴気の毒が無い!無毒化されてるぞ!!」


目を見開き驚愕するクライムさん。だが、その顔には歓喜にうち震える表情を宿していた。


「奇跡じゃ!わしゃ~長いこと生きてきたが瘴気の毒を消す事ができるのは神様とその使途位とわしのじい様が言ってた。あぁ~~クウ様は神の見使いじゃ!あぁ~神よ感謝を捧げますじゃ。」


俺は町の人の治療で瘴気の毒に犯されたと思う黒く変質した箇所を究極の抱き心地の力でいけると思ったのだ。

この力で父の体内に溜め込んだ瘴気の毒を浄化した俺には自信があった。だが、父の体内にあった瘴気の毒とバッタの持つ瘴気の毒が同じとは確証が無かったが…つまりこれで俺が瘴気の毒に犯された人の治療も可能である事が証明された。

後はバッタの死骸にある瘴気の毒をサーヤ神の加護の力で俺自身が吸収しフィルターの役割をすればこのバッタは養分をふんだんに含んだ只の肥料になり問題の二点は解消される。大きな前進だ!


「いけるの!クライムさん!おなべにつちをいれてほしいの!」


「それはいいですが………理由を聞いても?」


ここで俺は次の手に移る。


「いっぴきずつやるとじかんがかかるの。だからつちをいれたおなべのなかにばったさんをどんどんいれてつぶして、クウちゃんがつちをきれいにすればはやいとおもうの。」


「なるほど!養分を含んだ土に戻り毒も大地へは流れぬし効率もいい!流石ですクウ様!!!!」


思いっきりハグするのはいいけどバッタを潰した手でハグは止めてとはやってもらった俺はとても言えなかった。


「あと、ばったさんこのままじゃくさってつちがよごれちゃうからクウちゃんのリュックにいれるの。ぜんぶはいっちゃうの。」


「分かりました!でもミリオンバッタはゆっくりと大地に還るのが特徴でそのせいで獣等もいなくなる厄介な奴なんです。今は逆に有難いですけどね。よ~~し!みんな力合わせて町をとりもどすぞ!」


とことん厄介なバッタだが、踏み潰す恐れもあるし万が一の事を考えて行動してもらった。


「「「「「「「「オーーーーーー!!」」」」」」」」


俺はリュックの口を開けバッタが積み上げられた山の傍らに置く。


「…………お前ら分かってると思うがクウ様の信頼を裏切る真似をしてみろ………その時は………」


貴重なリュックを預けた事に対し言ってくれてるんだろうけど、クライムさんの目がヤバかった。あれはアイナママと同類の狩る者の目だ…………


「こんな状況で盗む奴なんていねぇよ!!それにアイナ様の知り合いなんだしそんなことしたら本当に終わる事位分かってるってみんな!」


「念のために言ったんだ。分かってるならいい……」


アイナママ無双がこんな町まで…………そして、俺は…………………………………


「かんじちゃめっなの………これはたんぱくしつのかたまり………だいじなひりょう………クウちゃんはましんなの……………ましんにこころはふようなの…………うふふふ♪…………なんかたのしくなってきたの♪…………」


こうしてバッタを潰し中に手を突っ込み土を浄化させる。これは瘴気の毒が俺に移ると加護の浄化で即打ち消され、そうなると更にまた瘴気の毒が永遠に俺に来て浄化される。

エンドレスに繰り返されるうちに瘴気の毒の濃度が薄くなり無毒化されると言う訳だ。

バッタは既に死んでいたので掴んだ時、究極の抱き心地の効果ではなくサーヤ神の加護の力がうまくいったのが今回のポイントだった。

しかし、この作業は俺の心をガリガリ削っていた。詳しくは言わない…………察してくれ!!!!!


「クウ様!!このクライムなんぼでも土下座いたしますのでがんばってください!代われるものなら代わってあげたいのですが…」


「ふふふ~♪くらいむおじさ~ん♪クウちゃんはばちをうけてるからきにしないの♪うふふふ~♪」


「ああ~クウ様…………おいたわしや…………」


町の人の視線が凄かった。吐く人はもちろん、倒れる人、青ざめる人、こちらを見て泣く人、クライムさんと一緒に土下座する人、そんな俺を見てより懸命に作業を頑張る人と多くの人々に見守られながら俺は続けた。


ふつおたコーナー(MC:たまご丼)


ペンネーム「俺、最近出番なくね?」さんより頂きました


Q:息子が遠くに行ってから毎日が色褪せてたまりません。我はどうすればよいだろうか?


A:家に籠って待ちの姿勢しゃダメダメ!こちらから出向いて遊びに行っちゃえ!俺、最近出番なくね?さんならいけるいける!!そういうわけでシーユー♪


ク:町の猫神様を守れ!!みんな進め~~~~!!


ク:あれは!?どっちもだめ~~~~~~~!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ