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ゆうしゃ たい だいまおう なの

「え~~~~~ママと一緒に入りましょ!」


あれからお昼をかなり過ぎた頃、討伐メンバーはやっと起き出した。


「おじさ~~~ん!にくた………」


「わ~~~クウ殿!!!!アイナ様!領主権限でクウ殿と入浴は禁止して頂きます。」


「クウ殿止めてください!!おい!!!!隊長が向こうから来ないよう見張れ!」


「私……ホントに師匠を変えようかしら………」


「姐さん、これ以上はあたいも流石に黙ってられないよ。」


「アイナ様、ギルドもウルフの回収作業と処理に人を出していますのであまり問題を起こされる人手が足りなくなりますよ!」


「じゃあ♪私がクウちゃんと入りますわ♪アイナ様、それならいいでしょ?子供同士ならクウちゃんも大丈夫でしょうし♪」


セーラちゃんも問題あるの!俺は紳士だ………紳士………


「はぁ~………仕方ないわね。今回は諦めるわ。じゃあ、セーラちゃんにお願いするね………ママ寂しい……クスン♪」


次もありません!お風呂問題、何とかせねば今後も困るぞ。


「クウちゃんひとりではいれるの!こどもじゃないからへいきなの!」


中身は十分過ぎるほどおっさんなの。やば………つい心の中なのに口癖が…


「クウちゃん恥ずかしがり屋さんなのが珠に傷よね。あとは最高なのに…………特にもふもふが!」


完璧な人なんていません!しかも、俺一歳児だよ!


「クウ!諦めろ。一歳児が大人なんて通らないぞ。それに風呂場は危険なんだからダメだ!」


ごもっともで…正論過ぎて反論できない。


「むぅ~~…」


「ふふふ♪や・く・そ・く♪なんでもだったわよね?」


「はぅ!………そうなの………」


「約束って何の事?」


「クウちゃんセーラおねえちゃんとかけをしてまけちゃったの…………」


「クウも懲りないな……姐さんの件があったばかりだろ……」


「じゃあ♪お風呂に行こうか?」


「だれか!たすけてなの~!」


「「「「「「「いってらっしゃ~い♪」」」」」」」


「はくじょうもの~~!」


俺はセーラちゃんの脇に抱えられ連れて行かれた。


「クウちゃんってたまに難しい言葉も使うわよね。可愛いからいいけど…」


「ぐすん♪きれいきれいしてあげたかった………………」


「羨ましいな♪大金積んでもあやかりたい連中なんて掃いて捨てるほどいるのに♪俺がクウ殿になれたらな~♪」


「気持ち悪いこと言うな!そんなクウはあたい嫌だぞ!」


「これは手厳しい♪」


「「「「「「「わはははははは♪」」」」」」」


ちくしょ~楽しそうにしやがって…だが、諦めたらそこで終わりだ。俺はとことん足掻くぞ。


「セーラおねえちゃんおめめみえないからおふろめっ!なの?」


「お家にずっといるから中ならおめめが見えなくても手に取るように分かるから大丈夫よ!クスッ♪そうだ………ふふふ♪勇者よ覚悟するのだ!大魔王セーラが貴様の命を刈り取ってくれよう♪」


いきなりのジョブチェンジだと!?確かにこのままでは俺の紳士の命がやばい!


「セーラちゃん!?おひめさまからいつまおうになったの?」


「たった今なのだ♪うふふふふふ♪我が魔王城に到着だ!」


今の俺には本当にラストダンジョンだ。セーラちゃんテンションがノリノリである。


「セーラひめ!まどわされちゃだめなの!しっかりしてなの!」


もう!俺もこの寸劇?に乗ってやる!自棄だ!


「くははは!その程度の言葉届かぬのだ!」


マジ届かねえよ……………


「さあ!その聖なる衣を剥ぎ取ってくれよう!」


「キャーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


マッパにされました。くすん…………お婿にもういけない。


「では次は我が真の姿を見せよう!勇者よ刮目せよ!」


刮目できんわ!!!いくらなんでも俺の中の紳士がそれを許さない。全力で目を瞑るぞ。


「ふふふ♪勇者よ!恐れのあまり声もでないようだな!さぁ~まいるぞ我が城へ♪」


声がめっちゃ笑ってるセーラちゃん。違った意味で俺は声もあげられんわ!セーラちゃんの肌スベスベだな…………ハッ!?3.14159……………


「震えておるな勇者よ!まずは汝の体を闇に染めあげようぞ………ふふふ♪食らうがよい!」


泡立てた石鹸を素手で俺の肌に滑らせ優しく撫でるように洗う。このままじゃ天に~♪いやいや!闇に堕ちる~~~!


「あっ!めっ!なの。そこもめっ!なの。しっぽもにぎにぎしちゃめっ!なの。」


「ぬぅ~♪まだそんなに抵抗する力があったか!さすが癒しの勇者…だが断る!!」


ちょ!?セーラちゃん転生者じゃないよね?こんな事でまさか聞くとは思わなかったよ!


「勇者よ、我は髪を洗うので貴様は我のお腹を洗うのだ!」


お腹ならなんとかいけるか?俺のハートよ割れないでくれ!


「わかったの!まおうめ~かくごするの!」


「掛かって来るのだ♪」


セーラちゃんのお膝の上でお腹辺りにいたので正面に手を伸ばし肌を撫でる………羊が一匹~羊が二匹~………


「よし!では灼熱のマグマを喰らうのだ♪」


「はふぅ~♪」


暖かいお湯が気持ちいい。父も魔法でお風呂に入れてくれたな~まだ数日しか経ってないのに酷く懐かしく思う。


「では勇者よ!暗黒の瘴気に浸かり闇へと身を堕とすのだ♪」


ゆっくりと俺を抱えて湯に浸かり暖かさに包まれる。セーラちゃんの胸に体を預けながら俺はあまりの心地良さに闇に堕ちた。


「あらら………寝ちゃった♪ふふふ♪また私の勝ちね。勇者………ちゃま♪」


俺のホッペをプニプニしながらセーラちゃんは湯を楽しむのであった。





「キャーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


突然の悲鳴が館に響く!闇に堕ちていた俺はビックリして目を覚ます。


「なっ!?なんなの?……………………おねえちゃんどこかいたいの?」


目の前の髪の濡れた少女から悲鳴があがったので俺は目をパチクリしてた。目の前の少女も大きく目を開いている。


「あなたクウちゃんよね?」


「おねえちゃん?………なんかへんなの………だれか~~~~!!きてなの~~~!!!!」


様子がおかしい………寝ている間に何か危険な事があったのなら大変だ!俺が大声で叫ぶとメイドさん数人とバーツ様にアイナママさん達を含む女性メンバー全員が風呂場に駆け込んで来た。


「お嬢様どうされました!?御無事ですか!」


「セーラ!!何があった!?無事か!?無事なのか!?」


「バーツ!!レディの入浴を覗かないの!!祖父でもダメ!!ここは任せて!!………ホラッ出る!」


「セーラちゃん!?どうなさったの!?師匠早く見てあげないと!」


「なんだなんだ!?………ケガは無さそうだがどうした嬢ちゃん?」


セーラちゃんは俺を真っ直ぐ見つめながら呟く。その瞳から滴る雫は髪から流れる雫とは違うものだった。


「見えるの…………(もや)が掛かってハッキリとは見えないけど色が…………光が………見えるの………う…う……うぅ………うぅ~~~」


目の前の少女は俺を首元に寄せむせび泣いている。やった!やったぞ!!俺のアビリィティーと加護………もしくは神になったのが効いたのかもしれない!お~いトーヤ神にサーヤ神様見てるか~あの世に行ったら一杯礼言うからね!よしよし今は存分にお泣き♪


「いいこ~いいこ~なの~♪いやしのゆうしゃのちからをなめちゃめっ!なの♪」


俺を抱きしめむせび泣きながらうんうんと首を上下に揺すって頷くのだった。


「奇跡が……あぁ~~~旦那様~~~!!旦那様~~~~大変です!!!」


一人のメイドさんが浴室から急いで出て行くのだった。


「このままじゃ風邪引くからとりあえず出て体拭こうね。」


「いやなよかんするの………みんなおふろからでていくの!」


「遠慮しなくていいのよクウちゃん♪ママがフキフキしてあげるわ♪」


「師匠♪私もお手伝いします♪」


「あたいだけ除け者ってそんな冷たい事をクウは言わないよな♪」


「もふもふ成分補給に私もお手伝いします♪」


ああ~~さっきまでの感動が台無しだ………逃げられんしも~~~~


「だれかたすけてなの~~~(なの~なの~なの~)」


もちろん誰も助けに来なかった。




その夜。領主の館は盛大に宴が開かれた。街をウルフの脅威から防ぎ、領主の孫セーラの不治の目が快復の兆候に進むかもしれないと思えば喜ばぬわけがなかった。


「クウちゃん♪」


「はぁい♪」


セーラちゃんは俺を離さなかった。12歳の少女らしい明るい笑顔をしてた。俺は父に拾われてから自由に動けるまで育成速度遅延のせいで長い間、苦労した事を思い出す。この少女は過去のケガでその何倍もの負を抱え込んだだろう。理不尽な運命ってぶつける相手がいないので己の内に溜め込み徐々に心を蝕んでいくことを俺は前世と今生の人生で経験してる。だから、セーラちゃんの微笑みがとても眩しく見えた。


「師匠が珍しく我慢してるね。ネイちゃんいつまで持つと思う?」


「ミーナ・・・お前も思ってたか。流石にセーラ嬢ちゃんの事を考えれば自重はするだろうけど・・・そう長くはもたないだろうな。」


「だよね~~…王都には戻らないといけないし、クウちゃんを置いて行くと言うのは師匠の性格からして………ないわね。」


二人がそんな会話をしてる一方でアイナママとバーツ様が真剣な顔で話し合っていた。


「セーラのあんな幸せな顔…儂は初めて見ました。アイナ様!クウ殿を連れて来てくださった事、誠に感謝しております!いくら言葉を尽くしても足らない位です!」


「お礼ならクウちゃんに言いなさい。私は何もしてないわ。いえ、何も出来なかったと言う方が正しいけど…それで言いたい事は何?大体分かるけどあなたの口から直接聞きたいわ…」


「儂の家族はセーラのみ。孫の為なら何でもするつもりです。儂に出来る事なら何でも致します!もし、この身を差し出せと言われたら喜んで捧げましょう!ですので………何卒………何卒………儂はこのままでは死んでも死にきれません…」


腹の底から絞り出すように懇願するバーツ様の姿は領主の威厳あるそれとは違い、愛する孫を守る為ならなりふり構わない一人の初老の男であった。


「私もセーラちゃんの快復を望む一人よ。ただ…それを決めるのはクウちゃんよ!もし、セーラちゃんを盾にしてクウちゃんに強要するようなら許さないから、そこだけはしっかり頭に入れておいてね…」


「儂はそれで構いません!可能性があれば何でも従います。いざとなれば街を捨て領主を止めてでも孫と一緒にクウ殿について行きます。例え最低の領主と罵られようが構いません。儂は捨て石になってもあの子が幸せになれば………」


「バーツ………」


痛いほど気持ちが分かるアイナ。この世界は死が身近にありすぎる。残された者の痛みが分からないものには理解出来ないだろう。

ダークエルフである彼女は種族の中ではまだ若い方だ。それでも数多くの者に残され今があるのだ。数の問題ではないが同じ痛みである事に変わりないのだから。

二人が丁度話し終えた頃だった。俺を抱き抱えたセーラちゃんがメイドに連れられ二人の元へやって来た。


「お二人にお願いしたい事があります。今よろしいでしょうか。」


「クウちゃんもなの。」


「儂らも今から伺うとこだったのでちょうどよかった。遠回しに言うのは苦手なので率直に言わせて頂く。クウ殿!孫の為に街に残ってくださらんか!儂の出来ることなら何でもいたそう!この身を捧げてもいい!財なら全てを差し出しても構わん!どうか!どうか!!この願いを聞き届けてほしい!!」


腹の底から声を絞り出し鬼気迫る表情で懇願するそれは領主ではなく。セーラちゃんを思いやる一人の初老の男の姿だった。

宴の客も固唾を飲んでこちらを見守る。俺はそんな孫の為に己の全てを捧げようとするバーツ様の姿に父を重ねた。


「クウちゃんね………すてられたこなの。おとうさんがひろってくれて………ごはんをくれて………いつもしんぱいばっかりして………クウちゃんのためにいろいろしてくれて………いつもしゃーわせだったの。クウちゃんうまくいえないけど、バーツさまもおとうさんとおなじなの。だから…クウちゃんセーラちゃんとおはなししてきめたの♪」


「ここからは私が言うね。お祖父様、聞いて下さい。私決心しました。王都にクウちゃんと向かいそこで魔術を習います!出来れば学園に入学して本格的に魔術師を目指します。」


「習うとしてもお金は儂が出すからいいとしても目の治療と住む所はどうするんだ。」


「クウちゃんと相談して一緒に部屋を探して住みます。」


「「「「「「「「えーーーーーー!!!」」」」」」」」


この反応は予想してました。まあ、しかたないよな………俺一人では宿だって怪しいし、そうなると何処かに拠点となる場所を買うか、借りるしかないけど領主の孫であるセーラちゃんなら12歳でも相手にしてもらえるだろうしお互い王都でやっていくのに俺とセーラちゃんは相性が良かった。


「クウちゃんどういうこと?ママ聞いてないわよ!いきなり同棲?ハッ!?お風呂で何があったの?嘘でしょ…………」


「ちょっとセーラちゃん!!出会ってまだ数時間しか経ってないのに早すぎでしょ!クウちゃんは私も狙ってたんだから!ダメ!ぜーーーったいダメよ!」


「あたいもたった二人で同棲するのは不味いとおもうぜ。いや、変な意味じゃないぜ。大人としてだな…………」


「そうかそうか♪♪♪クウ殿といつも一緒なら治療も出来るし♪クウ殿は将来楽しみですからな♪一歳と若過ぎるがいずれセーラが姐さん女房になれば♪いや~~~心労が一気に消えてく感じがする♪♪♪」


「ちょっとまつの!クウちゃんひとりだとおへやかりられないからセーラちゃんにってきいてなの!」


「いや~めでたい!クウ殿さすがですな!やっぱ本物は違うよな!」


「おうよ!あのアイスランス見た時からビビっと来たけど!ありゃ間違いなかったな!」


「さすがクウ殿!!セーラ様を射止めるとは我輩祝福しますぞ♪」


「もふもふさいこーーーーー!!」


「未来の領主にかんぱーい♪うめ~~~~~♪」


うめ~じゃねえよ!!!!俺仮にも街の危機救ったよね!!おっさんやセーラちゃんの事も含めれば更にだよね!!!不条理だ!


「やだ!みんな気が早すぎ………クウちゃんは男の子と女の子どっちが欲しい?」


セーラちゃんは俺をどういう目で見てるの?って見えなかったんだ…………


「はなしをきくの~~~~~!!!」


「クウちゃん…お風呂で何かあったの!?」


「ダメよ!!ぜーったい!ダメなんだから!」


「クウをあたいは信じるからな!」


「もうどうにでもなれなの………………」


湿っぽい空気はどこへやら飛んでいき宴はますます盛り上がるのだった。


ふつおたコーナー(MC:たまご丼)


ペンネーム「東の森のエルフ」さんより頂きました


Q:最近やっとデレてきた彼が別の女と入浴したあげく同棲を宣言する顛末に私は心が落ち着きません。私はどうすれば良いでしょうか?


A:男は一人の女性より沢山の女性と入浴したいのが本音!貴女の友達を集めて彼と一緒に入れば彼のハートは鷲掴み!東の森のエルフさんならいけるいける!というわけでシーユー♪


ク:はぁ~あたたまるの♪ん!?したからたいりょうのあわぶくが・・・・・

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