第一回 『堅焼きパンの仕立て直しクッキー』
記念すべき第一回は……と大きく出たところ大した物はご用意できなかったのですが、『堅焼きパンの仕立て直しクッキー』が今回のテーマです。
堅焼きパン───乾パンは、拙作『シャルパンティエの雑貨屋さん』に於いてもっとも登場頻度の高いアイテムで、昔の大型乾パン(あるいはほぼ同じ物ですが、大航海時代のビスケット)をモデルとしています。現在では一口サイズの物が主流ですが、大型の乾パンは今も売られていまして手に入れることが出来ます。
非常食のみならず登山中の行動食などにもよく利用されていますし、一口サイズの方は手に入れるのもそう難しくありませんから、味をよくご存じの人も多いのではないでしょうか。
しかしこの乾パン、長期保存が主眼にありますから、長年の研究で進歩しているとはいえ味はシンプルで(わざとクセをなくしてあるそうです)、食事としてはともかく子供のおやつとしては極端に魅力的なものではありません。
そこで少しでも食べやすくする工夫が色々と編み出されてきたわけですが、そのうちの一つが仕立て直しのクッキーです。
作り方は至って簡単、砕いて練り直して焼く、これだけです。
最初から火が通っていますし、そのまま食べても大丈夫なお品ですから、調理の方も簡単なのです。
えー、早速ごめんなさい。
手元に『ビスケット』がありましたもので、今回はそれを使っています。
『ビスケット』を砕いて『クッキー』を作るというこの壮大なツッコミ待ち状態はともかく、作り方はほぼ同じですので、まあこんな感じなんだと思ってくださいませ。
まずはボールに入れて砕きます。
今回は比較的柔らかかったのでカレースプーンを使いましたが、前に乾パンで作ったときはめん棒を使いました。叩きつぶすと飛び散るので、ゆっくりと力を入れて、ボウルへと押し当てるようにしてつぶしていきます。
少し大きめの欠片が見え隠れするぐらいまで砕けたら、目分量で蜂蜜を入れます。
今回はベースが甘いビスケットなので、蜂蜜はほんの少しにしています。
次に水を加えて練り上げるのですが、数滴づつ様子を見ながら混ぜていきます。
一度にたくさん入れると取り返しがつかない上に、ぽそぽそしていたのが急に柔らかくなるので以前に作った時と同様に、様子を見ながら入れました。今回は6枚のビスケットに対してティースプーン2杯弱ぐらいだったでしょうか。乾パンベースの場合は、元がよく詰まっていますから、もう少し多めの水が必要になります。
水分は少し不足気味が丁度よく、ぽそぽそしていた生地がやっとまとまるぐらいでいいかと思います。クッキー生地よりは堅めにしておかないと、焼き時間が長くなりすぎてしまいます。
最後に軽く整形して、天板の上に並べておきます。
形は割と何でもいいのですが、薄くすれば焼き時間が短くて済みますが堅めのぱりぱりした仕上がりに、厚くすればしっとりタイプに近くなりますが、水分の抜けが悪いので時間の調整には苦心しますし、場合によっては焦げすぎないように上にアルミホイルを被せる必要が出てきます。
あとは比較的低温で焼くだけなのですが、今回は160度で10分を3回、途中で食味を確かめながら焼きました。
というわけで、出来上がりです。
今回のものなら、紅茶より珈琲の方が合うかなと思います。
上に飾ってあるのはレーズンですが、クルミやピーナツを砕いて飾るのもいいですね。
プレーンにして、後からジャムを塗って食べても美味しいです。
で、肝心のお味の方ですが、際だって美味しくはなりません。実にふつーです。
食感が大きく変わりますので食べやすくはなりますが、手間の割には今ひとつ……ってところですね。
しかしこの『ふつー』は、とても大事です。元の乾パンよりも食べやすくなっていれば、それでいいのです。
もちろん、ジネットの実家の小さな弟たちのように、毎日毎食堅焼きパンが続いて、味に飽きてきた子供達なら……喜んでくれるかなあ。
あ、でも。
このシンプルな作り方でも見かけはかなり本格的な手作り風クッキーに見えますから、料理の腕前をアピールしたい場合には有効活用できるかもしれません。……ちょっとずるいですが。
次回のテーマは特に決めていませんが、同様に作中で使用した小物についてつらつらと書いてみたいと思います。
ではまた。