ねたみはないよ、みくださないよ。
私は『あの子』が好きだ。
この気持ちは誰にも止められない。
だって、好きなのだから。
誰にも邪魔させない。
その気持ちに気づいたのは、ちょうど一ヶ月前。学校の教室で、窓からグラウンドの様子を見ていた。桜が散ってゆく下で遊ぶ下級生たちを、眺めていた。
ふと、視界の隅に『あの子』を見つけた。真剣に黒板を見つめていた。
顔は、あまり整っている方ではない。肌はうらやましいほど綺麗だけれど。真黒い髪は、きちんと手入れされているようで、つややかだ。
……きれいな髪だなあ。
そう思った瞬間、その子のことが突然愛おしく思えた。この人が好きなんだなあ、と気づいたのだ。
だから、今日の放課後に告白することにした。この気持ちを伝えなくちゃ、気がすまない。落ち着いていられない。
僕は『あの子』か好きだ。
この気持ちは誰にも止められない。
だって、好きなんだから。
誰にも邪魔させない。
とはいえ、この恋が叶うとも思えない。だって、向こうも僕が好きでなきゃ意味がないのだから。これから好きになってもらうにしても、難しすぎる。
難しいから諦めよう、と素直に思えるほど小さな気持ちでもないから、困っている。いっそ、『あの子』に直接言ってみたほうがいいかもしれない。もしかしたら、かなり可能性は低いが、両想いかもしれない。
隣の席にいるその子。真っ黒な髪は、この世のものとは思えぬほどきれい。顔も、とてもかわいらしい。お人形さんのようだ、というほめ言葉。他の人には、もったいなく思えて、使えなくなってしまった。お世辞でも。
……放課後、相談してみよう。上手く話せるといいな。
放課後の学校。夕焼けが象徴的。そんな中での告白は、妙に緊張する。
それにしても、どうして『あの子』は『あの子』なのだろう。
それが、ほんのちょっとだけ、つらい。
放課後の学校。中庭に呼び出されてしまった。
告白する前に振られるのかな。どうしよう。
……いいや、心配は要らない。『あの子』は僕の大切なひとだから。
――私たちは、両想い。今ようやくきづけたね。もっと早く伝えればよかった。
でも、そんなこと出来なかった。だって、『あの子』は、私たちは……
──僕たちは、両想い。今ようやくきづけたね。もっと早く伝えればよかった。
でも、そんなことは出来なかった。だって、『あの子』は、僕たちは……
『双子、だもんね』
これからもずっと、一緒だよ。ずーっとずっと、一緒だよ。
他の誰かが何と言おうと、気になんてしないもんね。
同性愛もあるし、兄弟に恋をすることだってある。
二卵性双生児同士の恋だって、ありえるんだからね。