雨のなか
激しく雨が降っていた。
つぶは矢のように見えた。
周りの人の差している傘に止めどない突撃を繰り返している。
──無意味。
全部どうだっていいこと。
私には関係ないし、何より意味を考えるのは疲れるから。
だから目の前で何が起ころうと気にも留めない。
そのはずだった。
目の前を通り過ぎたのが双子の姉だと気づいていなければ。
会えるとは思っていなかった。
会いたいとも思っていなかった。
彼女は外国にいると聞いていた。
生まれて一ヶ月しか一緒にいなかった。
両親が離婚して、母と遠くへ行ってしまっていた。
──ずるい。
向こうはお金持ちと再婚して。
こっちは片親のままだし、そうそう家に帰ってこない。
給料も多くないのよ。
普通以下の生活なのに……。
数年前まではそう思っていた。
でもどうでもよくなった。
あの人はあの人。
自分は自分。
まったく別の人間なのだから。
でも突然に見つけてしまうと。
名前を呼ばれて反応しているのを見ると。
違う。
なぜだか懐かしいような思いがあふれてしまう。
彼女の名を呼んだのは母親?
そんなのはどうだっていい。
私にそっくりな貴女?
こっちを振り返って、私の背後に焦点を合わせて、
そして向かって左を向いて目を見開いた。
キィィィィーーーーーーーー!!!
乗用車の通り過ぎた後に横たえていた。
紅。綺麗だった。
純白のひざ丈のワンピースが血に染まっていた。
貴女は口をそっと動かした。
私はゆっくり頷いた。
貴女は微笑んで固まった。
ああ……、冷たくなってゆくのね。
偶然私も貴女と同じ、ワンピースを着ていたの。
考えることって似ているものね。
なけなしのおこづかいを貯めて買ったたのよ?
貴女は親に買ってもらったのかしら?
──無意味。
私は口を歪めて笑った。
実の母の腕が肩に乗る。
物悲しげに微笑んでみせて。
気取った声を出してやった。
──私の妹、死んじゃった──