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第二十九話・番外編1…完璧な女の場合

玲奈視点です。軽い感じで見てください。では、どうぞ…


突然、御主人様から連絡があった。


いつもなら真っ先に要件を伝えるはずなのだが、『屋敷に来なさい』…とだけ言われたので不思議に感じている。


だが疑問を感じたところで御主人様に仕える身の私には、考える必要性も意味も無い。


すぐに身支度を整えてから戸締まりすると、私は急いで屋敷に向かおうとした。


しかしエレベーターの前まで行くと、本能なのか知らないがとてつもない悪寒を感じてしまう。


…あのバカップル…昼間から、まさか…


エレベーターに乗り込み、ロビーではなく一階上のボタンを押した。


…実は来週から三年生になるので、学校は一昨日から春休みに突入している。


それにこの時間では仲野くんもバイトじゃないので、120%二人は一緒のはずだ。


最上階に着くと、ためらわずに仲野くんの部屋のドアノブに手を添える。


…仮に、二人が真っ最中だった場合は…一ヶ月間セックス禁止ね…


音をたてずに中へ侵入し、警戒しながらリビングに近づいた。


すると二人が、ソファーに座りながら脚を絡ませているではないか。


桃色のオーラを放ち、何とも幸せそうな顔で見つめ合っては濃厚なキスを繰り返している。


…うわ、やっぱりだわ…ベッタベタで、エロエロなんだから…


セックスこそしてないが、アメリカのポルノ映画並にいやらしい光景を目の当たりにした私の怒りは爆発寸前だ。


仲野くんが沙織を優しくソファーに押し倒すという状況を確認した瞬間、唐突に話し掛けて二人の雰囲気をぶち壊す。




「…お食事中、失礼してもいいかしら?」

「!!!!!…れ、玲奈!? い、い、いつからそこに!?」

「ち、違うんだよ、松永さん!?…こ、これにはわけがあって…」

「…ハァ〜…いいわね〜、婚約するって。誰にも遠慮せずに朝から晩までチュッチュチュッチュ………って、ふざけんじゃないわよ!!!!!」




怒号を上げながら睨むと、二人は黙って部屋の角に移動し正座をした。


…全く…婚約させたのは失敗だったかもしれないわね…


最低でも30分は、一般常識などをわかりやすくネチネチと伝えたいとこだが…今日は御主人様に呼ばれている。


仕方ないので軽い注意と、沙織だけにデコピンのオプションを付けてあげた。




「イギギ…何で、私だけにデコピンすんのよ!?」

「アンタは体に叩き込まなきゃ、一生理解しないでしょ!」

「ううぅ…猛、頭にヒビ入ってない?」

「あ、かなり赤くなってるよ…大丈夫?」

「………おでこにチューしてくれたら、治るかも…」

「…コラ! 少しは懲りなさい!!!」




沙織は私などお構い無しに、仲野くんを上目使いで誘惑している。


かなりムカついたので、赤くなってる沙織の額をもう一度デコピンで思いっきり打ち抜いた。


もがいてる沙織を見下ろし、そのまま部屋を後にする。


…帰って来たら、あの女の再教育から考えなきゃね…














屋敷に来たけど、御主人様の車が無いじゃないの…どういうこと?


書斎や寝室、全ての客間まで調べたが…使用人達も御主人様を見てないとのことだった。


それどころかあるメイドの話だと、『屋敷の護衛が何人か会社に呼ばれていた』…という。


…ってことは、御主人様は会社なの?…じゃあ私に用事って何かしら?…


元自分の部屋で少し考えるが、さすがに私もわからなかった。


のんびりしても仕方ないので、携帯で連絡を取ろうとした時…聞き慣れた声がドアのノックと共に聞こえてくる。




「レナ姉、レナねぇ〜!…ここか〜?」

「大?…大なの?」

「お〜、いたいた…探したんだぜ、レナ姉。」

「…はぁ?」














…私は、両親の顔を知らない。


気付いた頃には、施設で育っていた。


でも不思議と悲しいとか寂しいという気持ちは、一度足りとも感じたことは無い。


園長や兄弟姉妹のお陰で、毎日が充実していたからだ。


特に園長はおもしろい上に、何より私達を心の底から愛してくれていた。


親がいないことでイジメられないように、小さい子にも格闘技を教えてるのは…異常だと思ってたけど。


…まぁそのおかげで今の仕事に受かったわけだから、全面否定は出来ないわね…




「…レナ姉ってば、また無視すんのか?」

「あ、ごめん………じゃないわよ。一体どういうこと?」

「俺が聞きたいぐらいだって…いきなり御主人様に、『私の護衛をやめてくれ』…って言われてさ。」

「………え、クビ?」

「違うって!…『玲奈に聞けばわかるから、屋敷へ行きなさい』…だってよ。で、何か俺に用か?」




…何も聞いてないのに、わかるわけないじゃない…どうしよ?…


ちなみにこのスーツの男、梶川大輔かじかわだいすけは、私より一つ年下で同じ施設出身だ。


幼い時から私に金魚の糞で、頭が悪かった大は私のことを『玲奈』でなく『レナ』…と180cmになった今でも呼び続けている。


この仕事に就いてからは離れ離れだったけれど、私があまりにも優秀なお陰で…御主人様のご厚意により去年の春、何とか大も雇われることになったのだ。


…屋敷の警護に始まり、今はやっと御主人様専属の護衛の一人になったと思ってたのに…何かヘマしたんだわ、きっと…




「してねーよ。それに俺だって優秀なんだぞ?…レナ姉とは、比べもんにならねーけど…」

「じゃあ何で、御主人様の護衛を解かれるのよ?…きっと大じゃ頼りないから、違う人でも護衛にするんだわ。」

「そんなバカな。だってこの前の評定会じゃ、俺とレナ姉がトップだったのに…」

「…確かにそうだけど、理由が他にないんだもの。」

「いや、何か御主人様の話だと…『守ってもらいたい人間が増えた』ってことらしくて…」




………先にそれを言いなさいよ…やっと、意味がわかったわ…


物心つく前から、園長に遊び感覚で叩き込まれた格闘技。


年に二度の腕試しである評定会でも、私と大だけがダントツだった。


その結果とも言える大の実力で、護衛をクビになるはずがない。


つまり御主人様にとって沙織以外に守るべき人間が現れたから、わざわざその人間の護衛役に大を指名した…ってわけだ。


………そうよねぇ…彼はもう御主人様の【息子】なのよねぇ…ハァ…


一応、大にも知る権利があるので教えておく。




「…これから、沙織達のところに行くんだけど…」

「さ、沙織って御嬢様のことか!? 呼び捨てはマズイだろ!」

「いいのよ、私は。で、アンタには沙織の婚約者を護衛してもらうことになるからね。」

「こ、婚約者!?!?…嘘だろオイ、御嬢様って確かレナ姉の同級生じゃ…」

「デリケートなことだけに、慎重に慎重を重ねるようにしなさい。特に、沙織はわがままで大変なの。わかった?」

「…了解…でもスゲーな、レナ姉。何でも知ってて…」

「無駄口をたたく前に、さっさと荷物まとめて。先に行くわよ?」




ビッと敬礼した大は、走って部屋を出ていった。


一人になった部屋の中で、私は明日からの日々に不安を感じている。


何故ならこれからはあの二人と、さらに大の面倒まで見ないといけないのだ。


…まぁ、どうにかなるわね…沙織だって急に他人が来たら、仲野くんとのラブラブも減ると思うし…私の自由時間も増えるんだもの…ポジティブ、ポジティブ…


無理やり自分を納得させ、前向きに行こうと心に誓う。



















…それが、春の訪れだと気付くのは…まだまだ先の話だった。



はい、作者です。               やはり一話じゃ語れませんでしたね、玲奈は。未だに恋を知らない玲奈の今後の展開に、作者は頭を抱えています。              さて、大輔の登場ですが…本当はもっと早くに出す予定だったんです。沙織が暴漢に襲われる話を、作者が甘いだけの話にしたせいで出番が無くなったのです…                ボディーガードの設定を全殺しにしていますが、作者は満足なので許してほしいです。                当然、次回も玲奈編なので…楽しみにしてもらえたら嬉しいです。   感想と評価もガンガン受け付け中! …では、また次回…

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