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第二十七話・僕を照らす太陽

…しつこい二人に飽きずに見てください。では、どうぞ…


…あれから、どれくらい時間が経っただろうか…


出会った頃の沙織は、僕にとって【高嶺の花】だった…今でもだけど。


話しかけるたびに、僕は胸がドキドキしてたし…僕の話で笑ってくれた時なんて、この笑顔を忘れぬうちに死ねたらどんなに幸せかと本気で思えた。


僕に向かって『好き』と言いながら、涙を流してくれた沙織の姿は…これから一生、忘れられないだろう。


いきなり一緒に暮らし始めたことも、沙織が凄く甘えん坊だったことも…最初は驚きだったけど、今はもう僕の生活の一部になっている。


だから、沙織と共に同じ時間を過ごしていきたい…今という一瞬を積み重ねながら、二人で永遠を感じたい。


…必ず、幸せにするよ…ありきたりでつまらないかも知れないけれど、僕の想いそのものを伝える言葉…


…沙織なら、『私が猛を幸せにする!』…なんて言ってくれそうだけど、この役目だけは譲れない!…絶対に僕が、沙織を幸せにするんだ!…


…沙織に釣り合うほど、顔は格好良くないけれど…こんな僕でも良かったら、沙織………僕と…














美鈴さんとおばさんが家に来た日から約二ヶ月後…特別何もない、そんな日の夜遅く…




「…ねぇ沙織。」

「ん〜?」

「僕のこと…好き?」

「好き〜、愛してる〜。」

「僕も好きだよ…愛してる。」

「エヘヘ…いまさら何なの?…恥ずかしいわよ。」

「ダメだ、我慢できそうにない…キスしていい?」




恥ずかしそうにモジモジしながら、沙織は静かに目を閉じた。


ベットに並んで寝ている僕は、体制を直しながら沙織に唇を重ねる。


明日も学校だからエッチは無し…でも、体は確実に沙織を求めていた。


この狂いかけの気持ちをぶつけるように、沙織の唇へ何度も何度も口づけを繰り返してゆく。


そんな僕を知ってか知らずか…背中に回っている沙織の手にも、キスの度に力が込められた。


…愛してるんだ…沙織、まだまだ足りないよ…




「ん…猛、最近なんか変よ?…積極的というか、激しい気がするんだけど…」

「ごめんね沙織。だけど僕、沙織のことが愛しくて仕方ないんだ。」

「…もう、猛はいっつも直球で愛を語るんだから…」

「回りくどい言い方じゃ、沙織には伝わらないからね。」

「それもそっか〜………ん?…それってつまり、私がバカって言いたいの!? 許せない!!!」




…痛タタタタッ!…そ、そんなつもりじゃ…


怒った沙織が、パンチを無造作に繰り出す。


沙織も学習したのか、僕の肩ばかりを集中的に狙っている…恐ろしい格闘センスだ。


右手は沙織にうで枕してあげてるので、左手一本の防御では沙織の攻撃に太刀打ちできない。


…人の話をちゃんと聞かないくせに…勝手に暴走して…


今の沙織を止める方法は二つ…松永さんを呼ぶか、沙織とラブラブするかのどちらかしかない。


こんな夜遅くから、松永さんを呼ぶのは正直気が引けた。


仕方ないので、うで枕をしてる手で暴走する沙織を抱き寄せ…ギュ〜ッと力強く抱きしめる。




「…僕の話を、聞いてくれる?」

「は、離しなさいよ〜!」

「…あれは、完全に僕が悪かった…許してほしい。」

「そ…そんなこと言ったってね、簡単に許すもんですか!」

「…沙織が許してくれたら、キスしてあ…」

「よし、許す!」




………プライド…無いのかなぁ…


僕はまだ言いかけだったのに、沙織はひょっとこみたいな口をして『ウェルカム!』と言ってる…何とも情けない表情だ。


けどそんな沙織が好きな僕に反論する余地は無く、同じように口を尖らせてキスをする。


謝罪のキスは長い必要がないので、僕はすぐに口を離した。


………お、意外だなぁ…短いって怒ると思ったのに…




「………」

「沙織?…どうしたの?」

「…猛、結婚しよ?」

「またそんな…今月で、12回目だよ?」

「今日こそ本気なの!…それとも猛は、私と結婚したくないの!?」




僕の胸に抱きついたままの沙織が、ウルウルした目で訴える。


返事に困った僕は、沙織の頭を撫でながら天井を見上げてしまった。


…結婚のことをどうでもいいと思ってたら、回数まではわざわざ数えないよ…


沙織が真剣な顔で見つめてくるたび、僕も真剣に考えている。


…確か最初に結婚の話が出たのは、美鈴さんたちが帰った日の夜…エッチをした後に言われた。


一緒に暮らし始めた時の悪ふざけとは違う、沙織の心からの願いに本気で喜んでいる。


でも考えれば考えるほど、沙織の笑顔を守れるのかどうか本当に悩んだ。


………つくづく嫌になる…自分に何もないって…




「…また、何も言わずにごまかすの!?」

「………」

「お願い、正直に話して!…猛の気持ちを…私に聞かせてよ…」

「…僕は…僕は、沙織と結婚したい。」

「!!!!!…じゃあ、私と結婚してくれるのね!?」

「必ず結婚するよ。でも…今はまだ、早いと思うんだ。」




一瞬、エベレストの頂上に手が届くほど上がった沙織のテンションは…地球の地下深く、マントル付近まで落ち込んでいく。


そうなることを予想していた僕は、沙織の暗い顔を覗き込みながら正直に今まで考え抜いたことを話し始めた。


…今の生活がとても幸せで…沙織のことを永遠に守ってあげたくて…でも今の僕はただの子供で…沙織を幸せにできるようになるには、これからもいろんな努力が必要で………




「…だから、しばらくは沙織を幸せにする資格が無いと言うか…」

「………」

「大学のこともあるし、ちゃんと未来への道順が調ってから…」

「…ヤダ…」

「………沙織のわがままでも、今回は聞くわけにいかないよ。」

「ヤ〜ダ〜!」

「だ〜め〜!…大きな声出したって、今日の僕は負けないから!」

「う〜………ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ、ヤダーーーーー!!!!!」




…み、耳が痛いよ…この細い体のどこからあんな大声を…


沙織に耳元で叫ばれたから、キーン…と耳鳴りがしている。


真面目に話してたのに、沙織は明らかに不満そうな顔を浮かべていた。


…この…わがまま姫…




「猛は私のものなの! 誰にも渡さないために、結婚するの!」

「結婚しなくても、僕の全ては沙織のものだよ!」

「今はそうでも、大学や就職した時…私より綺麗な女の人がいたら、猛はどうするのよ!?」

「…これだけ言ってもわからないの?…沙織より綺麗な人なんて、この世にいるわけ無いじゃんか!!!」

「じゃあなんで玲奈とかEカップみたいな、綺麗な女がゴロゴロいるの!?」

「松永さんや真理絵さんなんて、沙織に比べたらマネキン以下の存在だよ!」

「………マネキン…ねぇ…」




突然、ドアのほうから声が聞こえてくる。


耳に聞き慣れたその声は、大きいわけじゃないのに…頭に響き渡った。


…あ、あ、あ…と、鳥肌が立ってきたぞ…


恐る恐る…ドアに寄り掛かって立っている女性を確認する。




「玲奈、アンタ何してんのよ!?」

「大声がしたから目覚めたっつーの。それより…まさか仲野くんが、私をマネキン呼ばわりするとはね………世も末だわ。」

「あ、ちが…僕がマネキンって言ったのは、女性としては美しいけど僕は松永さんに何も感じないという意味で…」

「…仲野くん、私と少し【お話】しましょ?」

「………はい…」

「仲野くんはソファーに座る?…それとも、床がいいかしら?」

「………床で正座します…」

「フフフッ…仲野くんは賢いわね。」




何回見ても、コワイ笑顔というのは慣れません。


松永さんに指で促され、僕はリビングへと向かった。


…もう…好きにしてください…














「…で、どう思います?」

「…うーん…仲野くんが正しいと思うわ。」

「そ、そんな〜…玲奈は私の味方じゃないの?」

「私はいつでも、アンタの味方よ?…だから、私は仲野くんが正しいって言ってんの。」




未だ正座中の僕と、離れたくないと言って僕の隣で一緒に正座してる沙織は、松永さんに先ほどの言い合いの説明をした。


松永さんはソファーに座りながら、頑固な沙織を諭すように話している。


沙織も最初はブーブーと言っていたが、松永さんに否定されたことにより少しずつ納得し始めた。


…話は終わってたはずなのに…松永さんは、どうしてあんなことを…




「…玲奈がそこまで言うなら、私も諦め…」

「でもね、そろそろ次の段階に進むのもアリかもね。」

「へ?…次の段階?」

「…二人とも、婚約しなさい。」

「!!!!!…こ、婚約ですか!?」

「そう。ダラダラと付き合ってるだけじゃなく、周りを納得させるためにも…正式に《形》を表しなさい。」




立ち上がって、ビシッ…と指を指しながら、松永さんは僕たちを見下ろしている。


確かに今のままズルズルと同棲を続けていれば、僕は良くても沙織のほうは問題になるはずだ。


メイリーグループ会長の一人娘が、高校生の身で男と同棲してる…関係者から見れば、少なくても好印象を持つことは無いだろう。


松永さんも会社の人間…いろいろと僕たちのことを、気にかけていたはずだ。


…高校生で結婚するにはまた問題がある…でも、同棲している男が婚約者なら…世間的にも何とか通じるかも知れない…


正座しながらも抱きついてくる沙織を見つめて、改めて思い知る…沙織の隣にいられるだけで奇跡なんだと…




「…僕も男だ。今の関係に甘えてばかりはいられないよね?」

「た、猛?…それって、つまり…」

「………僕と、婚約してくれる?」

「キャー、キャー!!!!! ちょっと玲奈、聞いた!?…録音、録音しなきゃ!」




跳びはねるように喜んだ沙織が、松永さんの手を掴んで引っ張り回している。


松永さんはうざそうにしながらも、一緒にあたふたしていた。


…自分の立場がわかってないんだから…全く…


しばらくして落ち着いたところを見計らい、松永さんに今後の予定を確認する。




「…いつ頃、挨拶に行けますか?」

「わからないわ。一ヶ月ぐらい後かしら?」

「…ねぇ、何の話?」

「?…沙織のお父さんに会いに行く話だよ?」

「何で、パパに会うの?」

「…アンタ、わからないの?…婚約するからには、親に報告するのは普通でしょ。」

「そっか〜!…猛も大変だわね。」




………完全に他人事なんですね…


松永さんと顔を見合わせ、軽く呆れてしまった。


それに嫉妬した沙織が、まだ正座してる僕を押し倒してくる。


…まただよ…本当に懲りないんだから…


『浮気、良くない』…と頬を膨らませた姿が凄く可愛くて、僕から唇を重ねた。


…浮気なんて出来るわけないよ…こんなに沙織を、愛してるんだからさ…















そして今、僕は飲み込まれそうなほどデカイ屋敷である沙織の家にいる。


松永さんに連れられ、客間と呼ぶには豪華過ぎる部屋の中で…黒いスーツを着て待っていた。


不思議と緊張はしてない…つもり。




「仲野くん…サイズは?」

「ピッタリですよ。じゃ、そろそろ行きましょうか。」

「やっぱり、私も一緒に行く? そのほうが仲野くんも安心できるでしょ?」

「大丈夫。沙織と二人で行かなきゃ、意味がないから。」

「…じゃあ私から一言、ドゥーユアベスト!」

「イエス、オフコース!」




…いよいよだ…我が人生最大の山場…かな?…


再び松永さんに案内されて、大きな両開きのドアの前に立った。


松永さんに一礼して、僕は扉をノックする。


…絶対に幸せにするからね………沙織…



はい、作者です。               猛ならこうプロポーズするだろうと思い、冒頭に書いてみました。本文には関係なくてすいません。                     さて…猛は沙織の父親に会いますが、無事に終わるでしょうか? 作者も疑問です…                 次回に続くので、次も楽しく読んでいただけたら嬉しい限りです。では、また次回…

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