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第一話・現実はツライ!?

軽い人物紹介になってます。次回もそんな感じだと思います…


母さんが死んだ。まぁ、何というか…正直辛い。だって母子家庭だったから、これからは一人で生活しなければならない。




母さんの葬儀を簡単に済ませた後、悲しんでる暇は無かったので僕は早速新しいバイトを探した。今までのバイトじゃ、とても生活できない。

新しいバイトは見つけたけど…ちゃんと学校に行けたのは、母さんが死んでから三週間後だった。




教室に入ると、皆の視線が気になってしまった。多分、担任か誰かが事情を説明していたのだろう。同情や憐れみの目で見られているので、凄く気持ち悪い。

誰にも話し掛けられないまま過ごしていると、聞き慣れた声が耳に届いてきた。


「よう、猛。やっと来たか…」

「…徹…久しぶり。」

「大変だったな…転校はするなよ?」

「しないって。親戚もいないから、する意味ないんだ。」

「…そっか…」


僕、仲野猛なかのたけるの唯一の親友である中谷徹なかたにとおるは、僕の顔を見ながら心配そうに話している。やはり担任から聞いたそうだ。

彼と僕は170cmそこそこ、55Kg前後と身長体重が一緒で、出席番号も並んでいるから後ろから見ると見間違うぐらい似ていた。顔は…僕の勝ちかな? 自己評価だから、そこも似たり寄ったりだろう。簡単に言えば、二人とも普通の高校生である。


「…で、何とか一人で大丈夫なのか?」

「うん。毎日バイトになると思うけど…」

「そうか。俺と違って、お前は頭いいのになぁ…神は残酷だぜ。」


僕は勉強が好きだ。お金がかからないし、何より母さんが喜んでくれた。そのおかげで成績も上がったのは、当たり前なのかも知れない。徹と違う点は、そこだけだ。

ちなみに徹はかなりのものらしい。この前、追試という地獄があると言っていた。一度見てみたいとは…思わないけど。


「そうだよなぁ…金が要るんだよなぁ…」

「うん、頑張って稼ぐよ。大学にも行きたいしさ…」

「よっしゃ、お昼は奢ってやる!」

「と、徹………ジュースもいいかな?」

「アホか! 美味しい水道水で我慢しろ!」

「…塩素入りじゃん。」

「アハハ!…図々しくてお前らしいよ。」


徹は笑ってた。僕としても、気を使ってもらうよりは笑ってほしい。

そういえば母さんも、昔から言ってたっけ…


【辛い時こそ笑いなさい。人生、笑えば何とかなるのよ!】


母さんはいつも笑ってた。笑顔が似合うというより、笑顔しか見た事ないかもしれない。素敵な人だった…


…ねぇ、母さん…ずっと笑顔なのは、それだけ辛かったからなの?…僕が…たくさん負担を掛けてたんだね…


「………猛?…泣いてるのか?」

「あ…本当だ、水分補給してくるよ。」

「…ああ、たっぷり飲んでこい。」


いけない、いけない…少しでも気を緩めると、涙が止まらなくなる…

僕はトイレで顔を洗い、鏡の前で自分を一喝した 。


【しっかりしろ!】


頬をバシッ! と叩くと、痛くてまた涙が出てきた。強すぎたらしい…

赤くなった頬を摩りながら、僕はトイレを後にした。すると、教室の方から一人の女の子が歩いて来た。


「あ…吉岡さん、久しぶり。」

「な、仲野くん…大変だったらしいわね。」

「うーん…その話はやめようよ。皆が聞くから、暗くなっちゃうし…」

「そうよね…気が利かなくて、ごめんなさい。」


彼女は、吉岡沙織よしおかさおりさん。僕と親しく話す、ただ一人の女の子だ。

僕は彼女が好きだ。まず惹かれたのは、その美しさだった。よくわからないけど、【美人】という言葉は彼女のためにあると思っている。

背は高く、僕は若干負けていた。体重まではさすがに教えてくれなかったけど、スレンダーな体つきからすると標準以下だろう。

それに何といっても、顔が魅力的だ。切れ長の目は性格がきつそうに見えるが、美しさをより引き立てている。眉は丁寧に整えてあり、その唇には人を魅了する魔力がある。小さくキュッとした唇で、キスをされたら全てを忘れそうだ…


「…何でそんなに、見つめているのかしら?」

「あ、ごめんね。吉岡さんがあまりにも素敵だったから、時間を忘れてたよ。」

「素敵だなんて…今更そんな当たり前な事を、口に出すまでも無いじゃないの。」


彼女が肩甲骨まで伸びた綺麗な黒い髪を、かきあげながら言った。その姿もまた、絵画に出てくる女神のようだ。


「…やっぱダメだ。これ以上ないぐらい綺麗で、話してると少し照れてくるよ。」

「あら、ありがと。仲野くんは素直で正直ね。」


…さっきから気付いてると思うけど、彼女は自分の美しさを否定しない。始めは引いていたけど、すぐに仕方ないと思った。だって…本当に素敵だもの。あの容姿じゃあ、否定するほうがおかしいに決まってる。


「…そろそろ時間ね、先に教室に戻るから。」

「うん、わざわざありがとう。」

「いいのよ、気にしないで。」


来た廊下を戻る後ろ姿に、僕はまだ視線を送っている。




どうやら彼女に、完全に参っているみたいだ。


この気持ちを、二度と伝えるつもりは無いんだけれども…



読んでいただき、ありがとうございました。次回は沙織の目線で人物紹介をしていきます。本文に入るのは、いつになることやら…

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