第十三話・日常
…凄く短いです…では、気軽にどうぞ…
「はい、あ〜ん…」
「…モフ!…」
「どう? 美味しい?」
「…う〜ん…ダメだよ…」
吉岡さんのマンションに住んでから二週間…
…今はちょうどお昼時間で、僕と吉岡さんは窓際の席で向かい合ってる…もちろん、一緒にお弁当を食べているからだ。
徹は学食で食べているし、松永さんは自分の席でパンを食べているので…今、僕たちは二人で食べていた…
吉岡さんは、いつも学食で食べていたけど…僕にあわせて、お弁当を作るようになった。
…そのせいで、松永さんは毎日コンビニでパンを買ってるらしい…意外に料理は苦手のようだ。
一方、吉岡さんの料理の腕前は…
「…確かに美味しいけど、このままだと…」
「な、何があるの?」
「…吉岡さんの料理以外、食べられなくなるよ…」
「…もう! 失敗したかと思って心配したのに!」
吉岡さんは笑いながら、ポコポコと僕の肩を叩いてきた…
…はっきり言おう、凄く美味しい。
吉岡さんほどのお金持ちは、料理なんてしたことないと思っていたのに…良い意味で裏切られた。
…あの時の婚約届けに、印鑑押しとけばよかったなぁ…
先にお弁当を食べ終わり…吉岡さんの美しい顔を見つめては、どこか弱点を探したくなる僕だった…
「…あんまり…ジッと見ないでくれる?…」
「何で? 吉岡さんも、よく見つめてるじゃん。」
「…食べてるところを…好きな人には見てほしくないの…」
「…わかったよ。向こうを見てるから、食べ終わったら…」
「ち、違うのよ! そうじゃなくて…仲野くんは見ていたいから、体ごと横は向かないで…」
…聞きました?…なんてわがままなことを…
ただ…こんなわがままが、ものすごくカワイイと思えるのは…僕だけなんでしょうか?
…顔を真っ赤にしながら、お弁当を食べてる吉岡さんを…見てはいけないから想像する。
…あ、いまの玉子焼き…狙ってたのに…
想像の中で、楽しんでると…学食から徹が帰ってきた。
「また一緒に食ってんのか? よく飽きないもんだな…」
「妬いてるくせに、強がるなよ。」
「だ、誰が!…お前と、吉岡みたいなバカップルを…」
「徹はわかってないなぁ…バカップルほど幸せなカップルはいないんだよ…ね、吉岡さん!」
「…うん…私も幸せ…」
…いつの間にかお弁当を片付け始めてた吉岡さんも、やっぱり顔を真っ赤にしながら答えてくれる。
…悔しがってる徹を見た限り、図星のようだ…
そんな様子を見ながら、松永さんはまた…ため息をついている…
今のところ、毎日がこんな感じで過ごしていた…
状況報告をしよう。
…僕と吉岡さんが一緒のマンションに住んでるのは、初日でバレた…
…住所変更や何やらで、担任が皆の前で言ったからだ。
もちろん、そこは高校生…みんなが茶化し始める。
『付き合ってるの?』
『結婚したのか?』
『毎日ヤリまくってるんだろ!』
………など、いろいろ。
…ひじょ〜に疲れたので、全ての質問にまとめて答えた。
…吉岡さんを愛してる…それで問題ある?…
…二度と質問はこなかった。
一応、前から吉岡さんのことを好きってのは皆にバレてたし…
吉岡さんが僕を好きってことも、女子の何人かは気付いてたみたいだ。
…おめでとう! と言う娘もいたそうで…
そんなこんなで、僕たちが茶化されることはなくなったけど…一つ変化があった。
…クラスの中に、何組みかのカップルが誕生している。
どうやら僕たちを参考にして、堂々と付き合いだしたらしい。
後に、『仲野・吉岡ペアのおかげ』…と言って、貢ぎ物が贈られてきたりと…僕たちは【縁結びの神様】的な扱いを受けている…
…苦笑いしか、出てこなかったけど。
…とりあえず、僕たちはラブラブな毎日を過ごしている。
ケンカ(主に吉岡さんのわがまま)もするけど、土日には必ず二人の時間を作っていた。
…危ない雰囲気を何度、松永さんに助けてもらったことか…
…吉岡さんは綺麗な体をしているし…美しい顔が、妖艶さに包まれると…僕の意思ではとても断れない。
一度だけ、ベットで松永さんに助けられたときは…心の底から感謝した。
やっぱり、ちゃんと責任を持てるまでは…しちゃいけない。
下の階に住み始めた松永さんに、今度お礼をしたいと考えている僕であります…
以上、状況報告終わり。
「…仲野くん? 大丈夫?」
「………え?」
「だってもう…バイトの時間よ?」
「!!!!! そうだ、もう放課後だった!」
…僕は吉岡さんにありがとうを告げて、走りだした。
いろいろあるけど毎日が幸せだ…と、僕は走りながら感じている…
…幸せは、長く続きはしなかったけど…
はい、作者です。二人がラブラブのまま、作品を終わらせてもいいのですが…やっぱりダメですね。次回からちょっとずつ波が現れ始めます…では、また次回。