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第九話・一つの思い

…凄く短いです。では、サクサク読んで下さい。


[第七話の続きから…]




………いつもより、星が近くで輝いていた…


…そりゃそうだ…だって、高層マンションからの眺めだからね。


僕は外を眺めて、現実を忘れていた。




「…どう? いい部屋だと思わない?」

「うん、かなりいい感じだね。」

「でっしょー! 部屋の数も、二人ならちょうどいいし…ね!」




…二人?…いや、その前になんでここに住むって決まってんだろ?


僕は得意げな松永さんを見ては、疑問が涌き水のように溢れてくる。


しばらくして松永さんは携帯電話をかけて、誰かを呼んでいる様子だった。


…はっきり言って、僕は何も理解していない。




「…ねぇ、松永さん。」

「? どうかした?」

「僕は今、どういう状況なの?」




…もしかしたら、これが最高の質問の仕方かも知れない。


僕の質問に、松永さんが一から説明しようとした時だった。


…呼び鈴がなり、慌てた松永さんは玄関まで走りだして…誰かを連れて来た。




「…吉岡さん?」

「こんばんは。」

「…はい、こんばんは。」

「これからよろしくね、仲野くん…」

「…こちらこそ…?」




とりあえず、僕でも理解出来る事がある…新しい疑問が増えた。


…吉岡さんの…これからよろしくってどんな意味だ?


私服の吉岡さんを眺めながら…僕は黙ってしまった。


…沈黙が流れ始めた頃、やっと…やっと松永さんが説明を始めてくれた。






……


………


…………


……………





話の全体が見えてくる…


要するにアパートが無くなって…隣のマンションを吉岡さんのお父さんが買ったから、吉岡さんと二人で住め…ってとこか…


…僕たちは、備え付けのソファーに座りながら話をしている。




「…はい。」

「はい、仲野くん。」

「話の流れはわかったんだけど、また疑問が出てきました。」

「では、どうぞ。」




話し合いの中で、質問があれば挙手…って感じを延々繰り返して、やっと最後まで到達した。


…しかし、それでもわからないことはある。


この際だから、僕は全部聞こうと思っている…




「…吉岡さんが、何で僕のためにそこまでしてくれて…一緒に住む話まで納得しているのか、僕にはさっぱりです。」

「…なんだって。沙織、答えてあげたら?」

「そ、それは…」

「…僕の気持ちは、あの時から変わらないんだ。だから吉岡さん…本当の気持ちを教えてほしい。友達なら友達で、構わないから…」




吉岡さんは、俯いたまま…答えてくれない。


この答えが、僕にとって今の状況で…一番重要な問題だ。


…ただの友達としてなら一緒に住むなんてことは出来ない…っていうか、ありえない。


…それに好きな人と二人で過ごして、何もしないって保証がない…僕も男だからね。











…だけど吉岡さんが僕を好きで、その覚悟もあるというなら…











…いや、それでも一緒に暮らすのは良くない気がするな…


僕がいろいろ考えてると…吉岡さんは小声で喋り始める…


…それは小さな…とても

小さな声だったけど…僕の心には、盛大に響いてくる…












…私…仲野くんが好き…











「…吉岡さん…」

「…仲野くんが…好き…で…でも、仲野く…んの気持ち…を…裏切って…」

「沙織、頑張れ!」




…吉岡さんの目には、涙が溢れている…


松永さんが吉岡さんの肩を掴んで、今にも泣き崩れそうな細い体を支えている。


…涙を拭って、軽く呼吸を整え終えた吉岡さんは…僕への気持ちを語りだした…




「…仲野くんが好きで…でも、本音が言えずに…仲野くんをずっと傷つけて…」

「………」

「…しかも私はわがままだから…玲奈やパパに…凄く迷惑をかけちゃった…」

「………」




………何も言えない…


…松永さんや吉岡さんのお父さんは、きっと迷惑したのだろう。


それを考えたら…簡単に否定するのは、僕がしてはいけないと感じた…


…でも…




「…はぁ…どうして皆、私みたいな女に優しいのかなぁ…」

「それは沙織が…」

「…皆、吉岡さんが好きなんだよ。」

「…え…」

「さすが仲野くん、いい答えだわね!」




ふふふ…って笑った松永さんも、僕と同じことをいうつもりだったんだと悟った。


…そう、皆の思いは同じなんだ。


松永さんは友達として…


吉岡さんのお父さんは、自分の娘として…


そして僕は………一人の女の子として…


…それぞれが違う理由でも、気持ちは同じ…吉岡さんが好きなんだ…


吉岡さんの赤くなった顔を見つめて、僕は優しく微笑んだ。












…目線を反らされたよ…アハハ…



はい、作者です。あえて短い場面での告白は印象づける…となにかで読んだので、そうしました。次回も大事な場面なので、読んでもらえたら嬉しいです。

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