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対決

テンマとソフィアはスーパーの中に侵入した。

スーパーの中は毒の粒子で満ちていた。

普通の人間ならまず、行動不能に陥るだろう。

テンマやソフィアは気息の影響を受けて動いている。

そのため、毒の影響に非常に強い。

ただし、絶対というわけではない。

二人からすれば、体に嫌な感じくらいは感じる。

行動不能になることはないが、不快感は確かに感じた。

そしてそれは、ゴルギウスの嫌な感じと同じだ。

「ゴルギウス……奴は無関係の人間まで巻き添えにするようだな。はっきり言って不愉快だ」

「テンマ、これもあなたをおびき出すためよ」

「ああ、わかっている」

「マリヤさんはどこかしら?」

「ほーっほっほっほっほ! よく来ましたねえ! セラフィエル! ソフィエル!」

「ゴルギウス! またおまえのしわざか!」

「マリヤさんはどこ!?」

「ほっほっほ。安心しなさい。彼女は大切に預かっているとも。そんなに大声を出さないでもらいたい。ここにいますとも」

ゴルギウスは足元を指した。

そこにはマリヤが倒れていた。

「あなたがたをおびき寄せるためにわざわざ、こんなところを占拠したんですよ。それにしても、ちょうどいい人質ができました。ふふふ、どうです? このわたくしに対してへたなことはしないほうがいいですよ? でないと人質の安全は保障しかねますからねえ。ほーっほっほっほっほっほ!」

ゴルギウスがあざ笑う。

テンマとソフィアにはそれを見ているしかない。

戦いの主導権はゴルギウスにある。

(ソフィア……マリヤを頼めるか)

(ええ、できるけど、あなたはどうするの?)

(俺がゴルギウスの注意を引き付ける。そのあいだに隙を見計らって、マリヤを助け出してくれ)

(そういうことなら任せて)

テンマとソフィアは精神波で会話した。

このようにわざわざ肉体の機関を使わなくとも二人は会話は可能だ。

「ゴルギウス、俺がおまえの相手になろう。ソフィアは手出しはしない」

テンマは手に白い剣を作った。

これもマテリアライズした剣だ。

名は『エスペラント(Esperanto)』という。

セラフィエルのつるぎだ。

「ほっほっほ、いいでしょう。このわたくしの奥義を見せて差し上げましょう! ギフト・プファイル!」

ゴルギウスが緑の矢を形成した。

これは毒の矢だ。

「ソフィエルの毒は中和したというわけですか。ですが、これならあなたの期待に応えられると思いますよ。くらいなさい、この毒の矢を!」

ゴルギウスの手から毒の矢が放たれる。

だが、進行方向は単純だ。

直線的に飛んでくる毒の矢をテンマは剣で斬り捨てる。

この程度の攻撃が通じるとはゴルギウス自身が思っていないだろう。

まずはこの程度でどこまでできるかという試しにすぎない。

ゴルギウスは片手を突き出し、毒の矢ギフト・プファイルを次々と撃ちつける。

このまま量で押し切るつもりか。

ゴルギウスは自分が絶対的なアドバンテージを握っていると思っている。

それをテンマは利用することにした。

ゴルギウスを油断させる。

テンマはわざと迎撃が追い付かないように見せかけた。

「ほーっほっほっほ! そこまでですか? 剣の振りが遅くなっていますよ! わたくしの毒は体内に侵入し、体を毒で侵させます! すばらしいでしょう! これがアルコンテスの力です! 世界の支配者アルコンテスの力は天使アンゲロスには破れません! さあ、セラフィエル! 毒の猛攻に沈みなさい!」

テンマは接近しなければ、ゴルギウスに打撃を与えられない。

武器の形状はテンマに不利だった。

「いい加減に粘りますねえ……いいでしょう。そんなあなたのために、すばらしい贈り物を与えましょう! 全方位ギフト・プファイル!」

テンマの全周囲を毒の矢が取り囲んだ。

逃げ道すらない完全な包囲攻撃だった。

テンマは剣一本でこの状況を打開するしかない。

この矢が一斉に放たれたら、テンマは終わりだ。

「さあ、絶望しなさい! そして恐怖をこびりつかせて死ぬのです! 甘美な死をあなたに送りましょう!」

ギフト・プファイルが一斉にテンマに向かった。

回避は不可能! 

この状況を打開する道具などない。

そう、思われた。

すさまじい毒の矢がテンマの体に突き刺さっているはずであった。

毒の煙幕が周囲からテンマを隠す。

「ふっ、終わりましたか。セラフィエルは死んだ。ウッフッフッフッフ! はーははははははは! やりましたよ! アカモート様が恐れるセラフィエルはわたくしが抹殺しました! これでわたくしはさらなる高みに到達できる! ほかのアルコンテスはいい顔をしないでしょうが、これも役得というもの……ん?」

煙幕が晴れるとそこには光の柱に包まれたテンマがいた。

テンマはさきほどの攻撃で傷ついていなかった。

これはテンマの光の力だ。

そもそもセラフィエルはフォス天使アンゲロスなのである。

そしてテンマのそばにはマリヤがいた。

さきほどの攻防の隙にソフィアがマリヤを奪い返したのだ。

「これで本気で戦えるな」

「本気ですと!? 今までは本気ではなかったと!? ええい、これ何かの間違いだ! そんなことがあるはずがない! はああああああ!!」

ゴルギウスの体から放電が起きた。

「これがわたくしの全力です! 行きますよ! ギフト・ドナー!」

ゴルギウスは毒の力を雷に昇華させた。

圧倒的な雷光がほとばしる。

こんな攻撃をもろに受けたら人体が消し飛んでしまうだろう。

だが、テンマは恐ろしくは感じなかった。

テンマが感じるのは戦いの愉悦。

強い者と戦えることの喜び。

ソフィアはテンマの隣にいた。

「ソフィア……マリヤを連れて離れているんだ。どうやらここで大きな火花が上がりそうだ。二人は退避してくれ」

「ええ、テンマ……気をつけて」

「俺を誰だと思っている? 俺は光之天使エンゲル・デス・リヒテスだ。俺の力は戦いによって何かを切り開くことにある。今がその時だ。こい、ゴルギウス!」

「フン! これで死になさい!」

ゴルギウスが膨大な雷の波動を撃ちこんだ。

それはまるで竜のごとく、流れた。

テンマはそれに対して、光の剣で斬りつける。

「はははは! はーははははは! 愚かな! それは自殺行為だ! 自らの愚かさを恨んで、ここで死ね!」

「そうかな?」

「な、何い!?」

ゴルギウスの雷はこのスーパーそのものを破壊してしまうほど強力だった。

だが、テンマは光でそれを抑え込む。

徐々に雷は拡散されていき、押し返される。

「バ、バカな!? このわたくしの攻撃だぞ!? そんな、そんなことが!?」

ゴルギウスが理解できないことが現実で起きつつあった。

テンマは雷が分散された時を見計らって、ゴルギウスに光剣エスぺラントを突き刺した。

「ぐ、がはっ!?」

テンマは急所を狙った。

ゴルギウスには致命傷だ。

「このわたくしが……な、なぜだ……」

ゴルギウスはそのまま倒れた。

そして白い粒子と化して消えた。

「終わったな」

「テンマ、さすがね」

「ああ、ソフィアがマリヤを助け出してくれたから、全力を出せた。ありがとう」

「ねえ?」

ソフィアは上目遣いでテンマを見る。

何かを訴えているようだ。

「マリヤさんを愛しているの?」

「ああ、愛している」

「そう……」

ソフィアの声が憂いをまとう。

「安心しろ、俺が一番愛しているのはソフィアだ。マリヤはあくまで母親にすぎない」

「ありがとう。私もあなたを愛しているわ」

その時、ゴルギウスが死んだことで、スーパー内の毒素が消え始めた。

そうしてアルコンテスとの最初の戦いが終わった。

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