表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

マリンタワー

「うふふふ! ほうら!」

「うわっ!? やったな! くらえ!」

「きゃー!」

テンマとソフィアは海に入った。

海で互いに水をかけあう。

水はほんのりと冷たくて、ひんやりとしていた。

二人だけの時が過ぎていく。

こんな時間はセラフィエルだった時には考えられなかった。

セラフィエルだった時には、戦いの日々だった。

それが悪かったとか、間違っていたとは思わない。

ただ、違う時間の使い方があるということはわかった。

ソフィアとこうして過ごす時間は甘かった。

充実した時が過ぎていく。

このまま永遠の時を過ごしていたい気分だ。

「ねえ、少し沖の方に行かない?」

「ああ、浮き輪は用意してあるぞ」

「準備がいいのね」

「まあ、ソフィアは泳げないだろ?」

「……まあ、まあ、そうだけど……」

二人は沖の方へと行った。

浮き輪がソフィアを乗せて漂っていった。

「ふう……水が気持ちいいわね」

「ああ、暑いからこのくらいの水の温度はちょうどいいな……ソフィア?」

「? どうしたの?」

「サキエルのことなんだが……」

「あいつのこと?」

「まあ、そうだが」

「あいつがどうしたの?」

「おまえがあいつを嫌っていることは知っているが、あいつの力は必要だと思う」

「……」

ソフィアは顔をしかめた。

ソフィアとしても苦いが理解はしているのだろう。

「あいつは戦士としては有能だ。人間としてはだめだが、それを補って余りある。アカモートとの戦いは俺たち二人では厳しいだろう。援助してくれる者がいるならむしろ必要とした方がいい」

「わかったわ。テンマ君がそういうなら、私もあいつを認めるわ」

「ありがとう。じゃあ、そろそろ上がって、かき氷でも食べに行かないか?」

「ええ、それもいいわね」

二人は海から上がって、海の家に向かった。

海の家にはもうすでに多くの客がいた。

こんな季節なら、海の家も利益を上げられるのだろう。

もうけるチャンスだ。

「かき氷はどれにする?」

「私はイチゴ味がいいわ」

「じゃあ、俺ソーダにする」

二人は並んでかき氷を注文した。

氷にシロップがかけられていく。

ソフィアはそれを目を輝かせて見ていた。

二人はかき氷を受け取った。

ソフィアがかき氷を食べる。

「ううん! おいしい!」

テンマもかき氷を食べる。

「うん、うまいな」

「ねえ、こういう時、互いに交換するんでしょう?」

「まあ、そうだな」

「じゃあ、あーん?」

テンマは硬直した。

さすがにそれは恥ずかしかったからだ。

だが、ソフィアはスプーンを強引に持ってくる。

「テンマ君、食べないと溶けちゃうわよ?」

「ああ、ああ」

「はい、あーん」

「あーん、ふぐっ」

テンマの舌にイチゴシロップが広がる。

甘い味が染みわたる。

「う、うまい……」

テンマは周囲を見た。

周囲にはテンマたちをほほえましく眺めていた。

一部の男どもはテンマに嫉妬の視線を向けてくる。

ソフィアは美少女だ。

顔は整っているし、体のラインも美しい。

そんなソフィアが注目されないはずがなく、周囲からの視線をソフィアは受けていた。

こんな場所にソフィアを一人だけにしたら、絶対に声をかけられるだろう。

「じゃあ、テンマ君もお願い」

「え? い、いや……」

テンマは恥ずかしくなった。

あんなことをしただけでも恥ずかしいのに、さらにソフィアにあーんなんてさせるなんて……。

「私たちは恋人同士って設定でしょ?」

「そ、そうだな……じゃあ、あーん」

テンマは恐る恐るソフィアにソーダ味のかき氷を食べさせる。

「はむ……! おいしい!」

ソフィアは大満足なようだった。

「もっと、食べるか?」

「うん!」

そんな様子のテンマに周囲から殺意にも似た視線が送られる。

こんな美少女とあーんなどやっているのだから、当然か。

「ちっくしょう、なんであんな奴が……」

「ぶっ殺してやりてえ……」

テンマの耳にそんな物騒な声が入る。

やはり周囲からの嫉妬を買っているらしい。

テンマは容姿だけを取れば平凡だ。

それに対してソフィアは美少女。

一般的に考えて釣り合わないだろう。

もっともだからといってソフィアをほかの男に渡すつもりはないが。

テンマはソフィアを愛している。

それがすべてだ。

「なあ、そろそろ昼食にしないか?」

「そうね。そろそろそんな時間ね」

「このあたりにはうまい焼きそばを扱っている店があるんだ。そこに行って焼きそばを食べよう」

「いいわね」

テンマとソフィアは焼きそば屋に行った。

二人は空いている席に座った。

二人とも焼きそばとジュースを注文する。

「この後の予定だが……」

「うん、どうする気?」

「ああ、食事の後はあそこに行きたい」

テンマは指でその対象を示した。

そこには天へと向かう一本のタワーがあった。

「あれは何?」

「あれはマリンタワーだ。あそこに行くと周囲の風景が高いところから見れるんだ。いっしょにあそこに行かないか?」

「私もぜひ行ってみたいわ」

「じゃあ、食事の後で行ってみよう」

テンマとソフィアはいったん着がえて、合流し、マリンタワーに向かった。

テンマとソフィアは手をつないて歩いた。

こうしてソフィアの存在を手で感じ取る。

ソフィアが愛しい、そう思えた。

マリンタワーは中に入るためには券を買わねばならない。

テンマは券を買うとエレベーターで頂上まで移動した。

頂上では人々が風景を写真に撮ったりしていた。

テンマとソフィアは風景を眺める。

「すてきね。こんな高いところからだと、空も海もよく見えるのね。絶景だわ」

「そうだろう?」

(しゅはこの地上を消し去るつもりなのよ」

ふとソフィアが言葉を漏らした。

「わかっている。(しゅはこのウロボロス界を消滅させて新しい地を創造するつもりだ。そのためにも俺たちはアカモートを倒さねばならない」

「その前にアルコンテスを倒さねばならないわね」

「ああ、奴らは追いつめられているはずだ」

「自暴自棄になって襲ってこなければいいけれど……」

二人はここでアルコンテスの一人に襲撃されるとは思っていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ